異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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港町ランティナ、恋も料理も命がけ編

4.【急募】恋敵を仲良くさせる方法

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※すみません、ちょっと今回は時間が無くて短いです…(;´・ω・)モウシワケナイ
 
 
 
 
 
 港で働いていたたくましげなおばちゃんに聞いた所、ランティナの港は交易船が停泊する場所と、海賊が停泊する場所はそれぞれ分けられているらしい。

 海賊って言っても、彼らも無法者ではなくギルドに属する人達なので、そういう部分はちゃんと守っている。ランティナは輸送が街の最も大事な仕事であるため、海賊や交易と主としない船は中心街から少し離れた区域に着けられているのだ。

 この点に、深く俺は感謝した。
 港でまたステゴロとか勘弁してほしいですからね。ええ。
 俺は港や魚を見に来ただけなんだ。争うつもりはないんだ!

 だから本当に、海賊たちに遭わない港の造りで良かったよ……。
 おかげでのびのびと港を散策できる。
 俺は思いっきり伸びをして開放感を得ると、自分の目の前に広がっている光景に鼻息を荒くした。

「いやーしかし、ランティナの港は穏やかで綺麗でいいねえ!」

 白い石で造られた波止場に、沢山の船が縄を伸ばしてゆらゆら波に揺れている。
 船は帆船でもちろん木造だ。大航海時代を思わせる大きな船体の群れは、現代の鉄で覆われた船とは違う威圧感を持っていた。

 っていうか……なんか、当たり前だけどにおいが違うな。
 停泊している時の音だって、微かに木々が擦れて傾ぐようなギギギともゴゴゴともつかない独特な音があったり、船上をブラシで掃除する音が聞こえてくる。

 それに、俺が知ってる港はこんなに騒がしくない。怒号や笑い声、酒におぼれてふざけ合っているような活気がある声なんて、港では初めて聴いたよ。
 俺達が入れる港は、海の男がいる波止場ってより海浜公園とかだもんな。
 こんな違いがあると、やっぱ俺の住んでる世界とは違うんだなって実感するわ。

 でも、海の匂いはそのまんま。俺の世界と一緒だ。
 それに嬉しくなって、俺はひょいっと波が打ち際を見てみた。

「おー、めっちゃ綺麗!」

 日本も昔は(俺達人間のせいで)めちゃくちゃ汚い海だったけど、現在は努力のおかげでわりと綺麗になっている。だけど、この世界の海はそれ以上の透明度だ。
 なんせ、数十メートル下であろう海の底がきっちり見えるからな。

 なんなら、綺麗な石やら貝っぽい生物が動いているのも見えるぞ。
 行った事ないけど沖縄とかグアムとかそんな感じの海のようだ。魚の色も真っ青だったりオレンジ色だったり、南国っぽくて凄く綺麗だし見ていて楽しい。
 尾びれが異様に大きかったり、なんか目が光ってる変な魚が居たけど……そこはまあ、異世界だししょうがないよな……うん……。

「ツカサ君、落ちちゃうってば。危ないよ」

 波止場から身を乗り出していた俺を心配したのか、ブラックが肩を掴んで引き戻した。おおっと、確かに危なかったな。
 思ったよりはしゃぎ過ぎていたようだ。まったく恥ずかしい。

「んもー、港に来てすぐ飛んでっちゃうからびっくりしたよ」
「いやぁすまんすまん。この世界に来て初めての海だったもんでつい」

 思えばこの世界に来て数か月、川には何度もお世話になっていたけど、海は全く見た事なかったからなぁ。山とか草原とか続いてたから、目の前が一面真っ青ってのがホント目が覚めるようでさー。……でも、今の状況ではしゃぎ過ぎはイカンかったな、うん。
 自重しよう。
 ゴホンゴホンと咳払いをしている俺に、ブラックは少し首を傾げていたがちょっと嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ツカサ君は、本当に海が好きなんだね」
「ん? まあ、好きか嫌いかで言えば好きだな。だってさ、目の前が一面真っ青な場所って海しかないだろ? 泳げなくたって見てるだけで充分楽しめるし」
「泳げない?」
「たっ例えだよ例え! とにかく、山も好きだけど海も好きなの!」

 あぶねえ、せっかくどうでもいい嘘をついたのに、ここでバレてどうする。
 自分の迂闊うかつさに慌てつつ、そう言えばクロウはどこに行ったんだろうかと周囲を見渡すと、倉庫街の近くで何やら人と話していた。
 たぶん……倉庫で働くおっちゃんかな?

 ブラックと顔を見合わせてしばしその様子を観察していると、クロウがこちらを向いて戻って来る。何か訊いていたんだろうか、と見当をつけていたら、その通りだったようでクロウは俺達に新情報を教えてくれた。

「ツカサ、この街の北の端に砂浜の海岸が有るらしいぞ。そこなら旅人でも釣りをして良いらしいから、そこで食料を調達しよう」
「しょ、食料?」

 砂浜は凄く嬉しいんだが、食料を調達するとはいったい。
 も、もしやこいつ、街にあれだけ食べ物屋が在ると言うのに、夕食は自力で調達するつもりか……!?

「クロウ、夕食も店で食べられるから、採らなくても大丈夫だぞ……?」

 恐る恐るそう言うと、クロウは初めて「なん…だと……」という顔をした。
 お、お前さっきお店で美味しいパン食べたでしょ!
 美味しいっておかわりしてたでしょうが!

 逆になんでこの流れで自給自足しないといけないって思うの!

「獣人って自給自足だとは聞いてたけど、もしかして朝昼晩そんな調子だったの」

 うわぁとでも言いたげに顔を歪めたブラックに、クロウはわずかに眉をしかめる。

「失礼な。人並みの食事は知っているぞ。だが、ツカサは魚を見ると言っていた。それは魚を採って食うと言う事だと思ったから、俺は地元民に聞いて来ただけだ。土地の者は、その土地で美味い物を知っているからな」
「く、クロウ……俺のために……」

 そっか、俺ってばさっき「魚を見たい」って言ってたもんな。
 もちろん魚は機会が有れば食べようと思ってたし、出来れば魚の臭みをどうにかして美味しく食べられる術を探そうとも思っていたけど……まさか、さらっと言った事を覚えてて、俺の為に釣り場所を探してくれるとは。

「つ、ツカサ君?」
「ありがとうクロウー! お前ほんっと良い奴だなー!」
「ツカサがやりたいと思った事を叶えてやるのが、オレの務めだ」

 言っている事はまたもやよく分からんが、クロウは優しいよなあ。
 無表情で人の気持ちを解らない奴に見えがちだけど、ちょっと乱暴なだけで本当は紳士だし、なにより純粋で素直だもんな。
 ブラックもそうだけど、コイツも本当顔で損してるわ。
 折角格好いいし良い所もあるのに、欠点がデカすぎて見て貰えないっていう。
 そう思ってクロウに礼を言うと、相手はなにやら頭を下げて来た。

 ……もしかして、撫でられたいのかな。

 別に減るもんじゃなしと思って撫でてやると、クロウは嬉しそうにちょっと耳をぴくぴくさせた。熊だしオッサンだけど、やっぱ獣人って二割増しで可愛いなあ。

「やっぱりこの熊殺す、今ここで八つ裂きにして殺すぅうううう」
「うわっ、やめろブラック! わかった、分かったから落ちつけぇえええ」

 このくらい良いじゃん、なんで怒るんだよお前はもー!!
 ブラックに抱き着いてどーどーと落ち着かせるが、そうするとクロウも何か気に障ったのかブラックをじとりと睨んで口をヘの字に曲げる。

「拗ねれば構って貰えると思ってる痛いヤツがここにいる」
「三十過ぎて頭撫でられるのを嬉しがってるのもどうかと思うけどね!!」
「おいブラックお前それブーメランだぞ」

 アンタベッドの上で撫でられて「えへへ」って笑ってたでしょ。
 つーか良く考えたらオッサンが強請る事じゃねーよ「頭を撫でて」って。
 それを考えるとなんか物凄く情けなくなって、俺は溜息を吐きつつオッサン二人を軽く叩いていさめた。

「ったく、もう……喧嘩するなら置いてくぞ」

 折角の楽しい観光なのに、喧嘩ばっかりするとかホント信じられない。
 仲が悪くても良いから、せめてちょっとは我慢してくれればいいのに。
 いやでも、クロウを引き入れたのは俺だし、やっぱ俺が責任とって二人を仲良くさせないとダメなのかな……。
 うーん……。仲が悪い二人を仲良くさせる方法って、何があるんだろう。

 そういえば俺、学校ではそう言う奴と喧嘩したくなくて避けてたから、解決方法が分からないや……こんな事になるんなら、考えとくんだったなあ……。

 そんな事を考えながら一人で歩き出す俺に、オッサン二人が慌てて付いて来るが……俺はあえて気付かないふりをして、早足で海岸へと向かった。








 
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