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首都ラッタディア、変人達のから騒ぎ編
5.酒池肉林の天国も、蓋を開ければ苦悩の坩堝
しおりを挟む「わ、私……人族がこんなに真っ白な肌の色してるなんて知らなくて……だから、指名とかもなかなか取れなくて……だから、だから、ツカサさんに指名して貰えて本当に嬉しくって……!」
「他の人は魔族とか見た事ないみたいだもんね。確かに紫っぽい肌に赤い目は驚くかも……でも勿体ないよなあ、ミミネルさん滅茶苦茶可愛いし、黒髪ロングで赤い角とか超ヤバいじゃん。体型もボンキュッボンだし俺的には最高なんだけど……」
「は、はわ……そ、そうですか?」
「そうだよ! こんだけ可愛いんだし、後は客の慣れだよ慣れ! そうだ、異世界の魅力って感じで宣伝して貰ったらどう? 人族って流行り物好きだしさ、ミミネルさんが優しくて話し易いって解ったらみんな指名してくれるって!」
「ふ、ふえぇ……ありがとっ、ありがとツカサさん~っ!」
目の前で目を潤ませていた巨乳魔族のミミネルさんが、感極まって俺をその豊かな胸へと誘う。抵抗なんてするワケも無くそのたわわな胸に顔を埋めた俺は、本日何度目かの天国を味わっていた。
魔族のおっぱいも柔らかい。今日これを知っただけでも大収穫だろう。
はあ……し、しかし……幸せすぎる……!
「ミミさんずるいですぅ! 私っ、つぎ私のお話聞いて下さいツカサさんー!」
「ティルタはさっき散々ツカサ君に聴いて貰ってただろ! 今度はアタシだよ!」
「違うよお、イオナはラーラの次だってば! ラーラが次なのー!」
そんな甲高くて可愛い声が盛りだくさんで俺の耳に届いて来る。
低くてうるさい中年の声じゃない、何回聞いても顔が緩んでしまう声だ。
しかし何時間もいると酒と香水の匂いが充満する空気に酔ってしまい、俺は少し気分が悪くなっていた。うむ、まあ、こんだけ長居してれば仕方ないんだけどね。
本当は三十分くらいで帰ろうと思ってたんだけど……でも女の子達に引き止められたらどうしようもない。
最初は席に一人だった女の子も、他の客が帰るにつれて俺の席に集合し、ついには店中の美女が俺の元に大集合。そんな空気で帰れってのが無理だ。
しかも身の上相談とか始まっちゃって、さっきみたいに色んな獣人に次々迫られたら……ねえ。そりゃ男としては受けない訳には行かないでしょう。
ってなことで、俺は今こうしてハーレムでウハウハしているという訳だが。
「ぷはっ、し……しかし……みんな大変なんですね。それぞれ悩みがあるし、接客するのって大変だし……あの、正直……お客はどうなんです?」
ミミネルさんの豊満なおっぱいから逃れた俺は、座り直して周囲を見る。
人外娘たちの隙間から見る店はやっぱり俺の他に誰もいなくて、お世辞にも繁盛しているとは言えなかった。なんていうか……すごい寂しい。
そう言うと、ティルタという牛耳の巨乳娘さんがしょんぼりと耳を垂らす。
「それが……あんまり人が来てくれないんですぅ……。確かに、私達獣人は島から出ないで暮らしてきましたけど……冒険者さんや商人さん達とは仲良くなれたし、だから、人間の大陸でもやっていけるって思ってたんですけど……」
「一応、このラッタディアが一番アタシ達に慣れてるって言うから選んだんだぜ。なのに、あんまり成果は良くなくてね……チッ、どいつもこいつも軟弱なんだよ」
「イオナは虎族だから力が強いの。だから、お客さんの腕すぐ折っちゃうんだよ。ラーラはむずかし事わかんないから、すぐ失敗しちゃうの」
「お前は野鼠族だもんな……」
勝気で筋肉のある虎の獣人イオナさんは、オレンジ色のショートヘアでちょっと肌が浅黒い。元気マッスルな美女ですね、ストライクです。大してラーラちゃんは見た目完全なロリでグレーの巻き毛とちょこっと出た野鼠の耳が可愛い。あざとい系ですね、二次元的ロリも俺の守備範囲です。
……いかん、欲望がだだもれして思考が偏る。
平常心を保たないと腕を折られるぞと己に言い聞かせつつ、俺は困り顔の彼女達にあらかたの苦悩を聞いた。
俺のテーブルに座っている四人の美女&美少女と、周囲でハーレムの如く侍ってくれているその他美し可愛い店員さん達の話と総合すると、こうなる。
彼らは人族の大陸から遠く離れた場所にある、南方の列島国――ベーマス王国で平和に暮らしていた。そもそもの彼女達は水商売をするような人間ではなく、農業だとか傭兵だとか他の事を生業としていたらしい。
だが、ある日彼らの国の王が行方不明となり、そのために内乱が起こって様々な部族が職を失った。今では店をやる事もままならないと言う。
この店の獣人たちは、みんなそんな自分の国から逃れてきた者達だ。
いわゆる難民というものだが、その中にはベーマスで同族である獣人を支援していた心優しい魔族、そして彼女達を守るために付いて来た傭兵の獣人もいる。
そんな獣人達は内乱が収まるまでという約束で店舗を借り、日銭を稼ぐため日々頑張っているのだと言う。
「じゃあ、この店は一時的な物なのか」
さっき俺に説明をしてくれた牛耳の美青年(トーリスと言うらしい)に問うと、姿勢正しく立っている彼も、ティルタさんのようにしょぼんと耳を垂れた。
「はい。私達は縄張りはちゃんと守りますので。……ですから、人間の場所を侵す意思はありません。ハーモニックは魔族や獣人に対して知識のある方が多いので、ここで許可を貰って店をやっています。……ですが……私達はこのような人に奉仕する店をやった事が無くて、四苦八苦している内に最初は応援して下さったお客様方にも敬遠されるようになってしまい……」
そう言いつつまたぐすぐすと鼻を鳴らすトーリスさんに、ティルタさんが「お兄ちゃんたらもー」とか言いつつハンカチを渡しに行く。
お、お兄ちゃん。しかも、モーて。た、た、たまらん。
いや駄目だ堪えろ俺。今真面目な話してるんだってば。
「あの、じゃあ……皆さん接客業は初心者なんですか。なら、なんで接客業を? 普通にお店とかで働いた方がよくないですか」
力持ちのイオナさんや、人を気遣えるミミネルさん、こまごま動くラーラちゃんだって、働ける場所は沢山あるんじゃないだろうか。
だが現実はそうではないようで、俺の言葉にみんな一斉に溜息を吐いた。
「それがさ……アタシは力が強すぎて建材もモノもぶち壊しちまうし……」
「ラーラはおさんどん食べちゃって向いてないの。注文すぐ忘れちゃうの」
「私は……医学の心得があるんですが……この姿ですので、どうしても患者さんが怖がってしまって……うぅ……」
その他諸々出てくる「出来るのに出来ない」という悲しみの声。
うーんそうか……みんな一応真っ当な職業で働こうとしたけど、人間との差異が有り過ぎて満足に働けなかったんだな。
力が有り過ぎると言うのも考え物ってことか。やりきれない話だ……。
「それで、ハーモニックへの渡航を手助けして下さった【世界協定】の方々に相談しましたら、お酒の相手なら良いのではないかと提案を頂きまして……」
「なるほど……でも、上手く行ってなくて、自信喪失になってると」
「ラーラ達このままだとごはん食べられなくなっちゃう」
「お客のツカサ君に言うのもなんだけど……何かいい案ないかな? アタシ達は今この店を潰す訳にはいかねーんだ。ここは何かと都合がいいし、昼間は好き勝手に動ける。だから……」
「こっ、こら、イオナさん! でも……本当に私達困っていて……ツカサさん、よかったら知恵を貸して頂けないでしょうか?」
うっ、ミミネルさんにうるうるした目で迫られるとやばい。
イオナさんも虎耳がぺたっとなっててギャップ可愛いし、やだ、本当これ地獄。萌え地獄だわ。あーっラーラちゃん俺の膝の上に乗ってこないでー!
やばいから! 膝の上に乗られたら股間が最悪の事態になった時に誤魔化し効かないからぁ!
「ツカサちゃん、ラーラ達をたすけて」
「だ、だけど、俺ガキだし……」
「けれど、私達に親身になってくれたわ。嫌がらずに私達全員の悩みを聞いてくれたし……何より……私のこの姿を怖がらなかったもの。そんな人族、貴方が初めてなの。だから……」
「そうだよ、アタシの怪力だって……か、か、可愛いって言ってくれたし……」
「私もですぅ。ツカサさんは、私の話し方、個性も出てるし可愛いって褒めてくれましたぁ! おっぱいだけ褒める人じゃない、良い人ですぅ!」
……ヤバいな。萌えに任せて褒めまくったのがいけなかった……。
いやでもだってみんな可愛いんだもん!
ミミネルさん達もそうだけど、俺ここに来て初めて豚の獣人もやべえ萌えると思ったよ!? だって獣人にしたらつぶらな瞳にふくよかな体つき、それでいて金髪ふわふわな髪の毛でおしとやかって綺麗好きって結構やばくないか?
何故か豚さんだけ人間比率より獣比率の方が高かったけど、それが逆に良い。
いや、実際そんな感じだから、本当テンションあがっちゃって。
つい喋りまくっちゃったんだが……まさか皆、俺程度の褒め言葉にも感動してくれる純粋で心が綺麗な人達だったとは……。
でもなあ、悩みとか聞いてたらみんな大変そうだしなあ。
俺でなんとかできるならしてあげたいけど……キャバクラ運営するゲームくらいしかやった事ないのに、俺に助けてあげられるのかどうか。
ゲームじゃ上手く行ってたけど、現実はそうも行かないし……。
それに、あんまり遅くなったらブラックにバレそうだしなあ。
天国から地獄に落とされるのは嫌ですマジで。
「うーん……やっぱり……」
「ツカサさんお願いします! 助けて下さい!」
「うわっ!」
ミミネルさんが俺の手を取って自分の方へと引き寄せる。
勢い余って俺はミミネルさんの魔族おっぱいにまたもや顔を埋めてしまった。
あ、やばい。暖かい。柔らかい。理性が消える。
「ツカサさん……私達を、助けて下さい……!」
「かしこまりましたぁあ!! 俺のリアルドリームクラブ開店じゃあああ」
なに、魔族のおっぱいって、もしかして隷属魔法がかかってるの?
思わず叫んでしまった俺は、そんな事を考えながらもおっぱいから顔を離せなかった。ああ、下の辺りがヤバい事になってるのがバレて殴られませんように。
→
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