異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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アコール卿国、波瀾万丈人助け編

  恋人のように思うのは2※

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 明かりを極力落とした、薄暗い部屋。
 眠っているロクを起こさないように片方のベッドに降ろし、空いてるもう一つのベッドに座る。
 目の前にはブラックが棒のように突っ立っていて、なんだか妙に緊張した。
 いつもは流されて無理矢理やってるから、改まると逆にやばいな。心臓めっちゃ痛い。こんなんだったらいつもの方が良かったかも……。

「えっと……脱ぐ……んだよね?」
「お、おう……」
「脱がそうか?」
「いっ、いい! 自分で脱ぐ!」

 やっべそうだった。ブラックが脱ぐなら俺も脱がなきゃ駄目なんじゃん。
 うわ……やばい。今更ながらに普通って凄く難しい。
 盛り上がってるカップルならまだしも、俺は盛り上がってないしそもそも俺達は恋人同士じゃない。さっきは変な雰囲気になっちまったけど、違うからな。

 なのに今からヤろうとしてるんだから、そりゃ緊張もするわけで。
 ブラックが上着に手を掛けるのを見ながら、俺もベストとシャツを脱いだ。肌着なんて上等なものは付けてないから、すぐに上半身は裸になる。
 でもそうなると、ズボンに手をかけるのを躊躇っちまうんだよな……。
 ズボンを脱いで下着を取ってしまったら、俺を隠す物は何もなくなる。
 相手もそうなるんだと思うと余計に恥ずかしくて、手が動かなかった。

 幾ら部屋が薄暗くったって、見えることには変わりないんだ。

「ツカサ君、大丈夫?」
「う、だ、大丈夫……ッ」

 ブラックの顔が見れない。絶対今俺の顔赤くなってる。
 でも、やらなきゃ終わらない。
 意を決して、俺は俯いたままでズボンと下着を脱いだ。
 ぐうう、何が悲しくてオッサンの目の前で素っ裸に。

 今更「初夜みたいに優しくしろ!」とか言った事への後悔が込み上げて、股間を両手で隠す。が、俺の視界の中に筋張った足の甲が見えて、思わず固まった。

「ツカサ君」

 これ、ブラックの足か。
 そんなに筋肉ついてなさそうに見えて、凄い引き締まってる。
 俺なんかすね毛すら生えてないのに、相手は随分男らしい足だ。
 思わず息を呑んだが、呑み切る前に顔を強引に上に上げられる。

「あっ……」

 薄らと明りに浮かび上がったブラックの顔は、陰影が強くなっていつもより大人の顔に見える。赤い綺麗な髪が深い色に染まっていて、うっすらと浮かび上がる菫色すみれいろの瞳と相まって、目を見張ってしまう。
 そんな俺の顔を見て、ふっとブラックは微笑んだ。

「ね、僕も裸だよ。見える?」

 そう言われて思わず目を下へとやって、慌てて背ける。

「ばっ、ばっきゃろ、お前」
「ちゃんと見せて、ツカサ君の裸」

 呟かれて、そのままベッドに押し倒される。
 サイドチェストに置いていた明かりが近くなって、ブラックの裸体が俺の目の前に曝け出された。

「っ……」

 しっかりとした肩に、男らしい厚い胸板。中年だと言うのに充分に鍛えられた体は、腹部に薄い起伏を作っていて逞しかった。
 俺の肉だけついた貧弱な体とは大違いだ。
 下の方は影になっていて見えなかったけど、これで見えてたら俺自信失ってたな……中年でこの体って詐欺だろ……。

「ツカサ君の体……改めてみたけど、本当抱き心地良さそうだよね」
「うわっ、そ、そんな事言うな! ってかジロジロ見んなよ!」
「だって、いつもは見る余裕なんかないから……。キスだってこういう時にしか出来ないし、あんまり味わえないし」

 言って、ブラックは予告もなく俺にキスをする。
 反射的に驚いて口を開いたのが災いして、ブラックこれ幸いとばかりに舌を入れて来た。……こんなの、やっぱり慣れない。生温くて濡れた生き物が這い回ってるみたいだ。自分の思い通りにならない物が、舌を絡めとって撫でるなんて、形容しがたい感じで背中がぞくぞくする。

 角度を変えられる度に息が頬にかかって、相手の顔が触れた。
 目を閉じると何をされているのかすらぼやけてくるのに、ちくちくとした無精髭の感覚は相手が誰なのかを伝えて来る。
 でも、今日はそれだけじゃない。

「んっ……!」

 熱い肌が、触れる。
 心臓が脈打ってるのが直に伝わって来て、思わず体がびくついた。
 これ、ブラックの……。

「ツカサ君……」

 低くて耳に残る声が、耳朶に直接吹きかけられる。
 熱い吐息が染み込んでいくようで、俺は思わず身を捩った。
 そうすると、ブラックの肌にまた体が密着して、居た堪れなくて体を引く。
 だけど、ブラックに下敷きにされている俺は逃げられるはずもなくて。

「ツカサ君の心臓の音、凄く速いね」

 くすくすと笑う相手が憎らしい。
 俺は精一杯睨み付けながらブラックに言い返した。

「アンタも……っ、早いだろ……!」
「うん。だって、初めてする事だし……それを、ツカサ君とやってるって思ったら……凄く、今、舞い上がっちゃって」
「ぇ……」
「体ばっかり恋人みたいになっちゃうね」
「だ、って……そりゃ、あんたが」

 アンタがヤりたいって言うからで。俺は、別に……。
 ていうか、無理矢理やられるのが嫌だから、せめて優しくしてほしいと思って俺はこうしてって言っただけなのに。なんで恋人とかいう話になってんの。
 そりゃ、慣らせば俺はアンタに都合のいいセフレになるだろう。
 別に恋人じゃない。こんなの、ブラックがただヤりたいだけじゃないか。
 なのに体ばっかり恋人ってなんだよ。
 俺は別に、恋人だなんて思って脱いだわけじゃないのに。

「僕が……なに?」
「あ……アンタが……しようと、するから」
「はは、うん、そうだね。僕がツカサ君を無理矢理犯してる。それはね、ちゃんと解ってるよ。けど……こんな事しても、君はずっと一緒に居てくれるから。だから……欲張りになってしまうのかもね」

 そう苦笑して、ブラックはまた俺の耳に唇を近付け、耳朶を柔く食む。
 何かを言う暇もなく、俺は反応して口を閉じた。

 ……欲張り。あんた最初から欲張りなのに、よく言うよ。
 俺の事なんかお構いなしにサカるし、一緒に居たいだなんて言うし、その挙句に恋人にしたいなんて遠回しに言うのかよ。
 これまで全部叶ってるだろ。まだ駄目なのか。
 アンタ、どんだけ――――俺の事、好きなんだ。

「……あっ……」
「ん? どうしたの」

 耳を噛まれたと同時に声を出してしまい、俺は思わず口を押さえる。

「ち、違う……なんでもない……」
「そう? ああ、声の事なら心配ないよ。我慢できなくなっても大丈夫だから」

 ああ、バレてない。
 思わずホッとして、俺は今更腹が熱くなって目を泳がせた。

 違う、違うんだ、そうじゃないんだ。

 何度も聞いてたはずなのに、なんで今更一気に恥ずかしくなったんだろう。
 ブラックが俺を好きだなんて、最初から解ってたのに。
 解ってて、聞き流してたのに。

 なんで、改めて「ブラックは俺を恋人にしたいんだ」って考えて、体が熱くなったんだ。どうして、一気に恥ずかしくなって、触られたところが全部むず痒くなったんだろうか。やっぱり、今日の俺、変だ。

 涙が出そうで、そのくらい顔が熱くて、でも逃げ出せない。
 今何かされても、何も我慢出来そうになかった。

「ツカサ君、顔真っ赤だよ」
「ぅ……う……」
「大丈夫、今日は恥ずかしい事はしないよ。ツカサ君のこと、大事にするから」

 耳から辿って、首筋へと唇が下りる。
 ちろりと首の付け根を舐められて、俺は指を噛んだ。そうでもしないと、声が出ちまうから。だけど、ブラックは構わずに肩口まで降りて、肌に吸い付く。
 僅かな痛みが走ったのを感じて、痕を付けられたんだと強く思った。

 じんじんと伝わってくる執着に震えていると、ブラックは舌を使ってゆるゆると胸に辿り着く。そうして、躊躇もなく俺の乳首に舌をつけ、そのまま口に含んだ。

「んっ、ぅあ……!」
「最初はここじゃ感じないって言ってたのに、変わっちゃったね」

 嬉しそうに言う相手に、ちょっとイラッとする。
 だけど、舌で転がされて吸われながら、もう片方の乳首を親指で強く押し潰されるとたまらなくて、俺は腰を浮かせて体を震わせるしかなかった。
 腰が疼く。下腹部に熱が集まって来て、また不都合な感覚が襲ってきた。

 どうしたって、自分が興奮しているのを知られるのは恥ずかしい。
 膝を立てるけど、ざらついた手に内腿を擦られると力が抜けてしまう。そのまま足の付け根まで何度も撫でられて、俺は足を震わせながら力を抜いた。

 ……体が、勝手に動く。

 ちょっと優しくされただけでこうなる自分に呆れるけど、どうにもならない。
 軽く乳首を噛まれて両方引っ張られると、俺の体は簡単に反応してしまう。

「ふ、ぁ……やっ、あ……あぁ……」
「ここだけじゃまだ、足りないよね」

 そう言って、ブラックは口を離す。
 ざらついた感触が去って、解放された乳首が空気に曝され冷たくなる。
 ブラックの顔を追う最中に目に入った自分の乳首は、薄明かりに照らされて濡れ光り、いやらしい程に勃ち上がっていた。

 ああもう、俺、こんなんじゃまともだなんて言えない……。

「今日はちゃんと、愛撫してあげるね」
「へ……っ、あっ、ま、待って、そこはいい、良いから!」
「恋人は、二人で気持ちよくならなきゃ駄目なんでしょ?」

 待てって言ってるのに、ブラックは力の抜けた俺の足を押し除け、股の間に屈みこむ。何をされるかなんてもう分かりきっていて、俺は身構えた。
 だけど、身構えて止まってくれるような相手なら、俺もこうなってない訳で。
 慌てる俺に構わず、ブラックはなんの躊躇もなく俺の半立ちになっているモノをぱくんと口に含んでしまった。

「ふあぁっ! ぃやっ、ちょ……っ、まっあっ、あぁあ……!」

 生暖かい口腔の感触と、包んで舐め上げる舌。気持ちいいのに、時々軽く当たる歯が怖くて、もどかしい気持ちになる。くびれをなぞられ、舌先で先端の穴をぐりぐりと弄られると、その感覚が辛くて俺はすすり泣いた。

「っあぁあ……ぅあっあ……ぁああ、やぁあっ、あ……っ!」

 人に追い詰められるのがこんなに辛いなんて、思っても見なかった。
 ブラックがゆっくり顔を上下させるたびに、前髪が下腹部を撫でる。まるで羽で撫でられているような感覚も相まって、急激に熱が跳ね上がる。
 ブラックの頭を掴んで止めさせようとしたが、手が震えて力が入らない。

 その内それがまるで縋っているように思えて来て、俺は涙に塗れた目を細めた。

「だえっも……! だめ、ぇっ、ぅあっ、あ、ああぁあ――ッ!」

 とどめとばかりに強く吸われて、俺は魚のように大きく跳ねながら射精した。
 自分でしていた時より、何十倍も、強い。
 頭が真っ白になって力んでいた体が一気に解放されて弛緩する。
 
 ブラックの頭を掴んでいた手も精一杯つっぱり、やがて力なくベッドに落ちた。荒い息で呼吸をするけど、体が熱くてちっとも整わない。
 曝け出した胸を上下させる俺に、ブラックは口を拭いながら軽く笑った。

「気持ち良かったみたいだね。良かった」
「ぅ……っ、ふ……」
「僕も、気持ちよくなってもいいかな」

 そう言って指で触れるのは、あの場所だ。
 またあのデカい一物を捻じ込まれるのかと思うと、ゾクリとしたが……どうしてだか、今は雰囲気に当てられているのか、それほど体は冷えなかった。
 それどころか、じわじわと体の芯がまた痺れて来て。

「ツカサ君。……薬、垂らすよ」
「ぅあ……」

 またコイツ、俺の回復薬勝手に使って。
 抗議したかったけど、僅かにねっとりとする冷たさに言葉が引っ込む。
 腰を軽く曲げられてまたあの場所を見られても、恥ずかしさはあったが逃げ出したくはならなかった。駄目だ、頭がバカになってる……。

「指、入れるね」

 ブラックの声も少し上擦っている。
 興奮しているんだと気付くと同時に、窄まりを指で撫でられて俺は震えた。
 襞を指でなぞられ、ゆっくりと爪先が入ってくる。その度に窄まりが我慢できずに蠢き、くちゅ、と嫌な音がした。
 指が入るたびに、濡れた音がする。
 頭はぼうっとしてるのに、その音だけはやけに耳に強く残った。

「うぁ……あ……ぁあ」
「もう柔らかくなってるね……慣れてくれてるんだ……嬉しいよ、ツカサ君。これなら二本目も楽に、ほら……」

 一本目が入りきったと思ったら、僅かに引き抜かれ一気に二本入り込んでくる。ぐっと広がった感覚に耐え切れず、俺は悲鳴を上げた。
 だけど、もう、ブラックは止まらなくて。

「ほら、二本……三本目も入るよ……ああ、これならもう僕が挿れても構わないよね……?」

 はぁはぁと、俺以外の荒い息遣いがする。
 指が引き抜かれて、尻の谷間を進むように、ゆっくりと濡れた何かが窄まりへと押し当てられた。ああ、これって。

「挿れるよ、ツカサ君……」
「ぅ……んぅ……っ」

 もう、ろくに返事も言えない。
 涙で歪む視界でブラックを見つめ、必死に頷くと、ブラックは微笑みながら俺に覆い被さった。また、ぴったりと肌が密着する。

「ツカサ君……」

 抱き締められ、そのまま――太くて逞しいブラックの欲望が強引に入って来た。

「あ……ッ! ……っ、あ゛っ、ぅ、ぅう……!」

 やっぱり慣れない。痛い。苦しい。体内を押し広げて進む熱さがたまらなくて、俺は無意識にブラックに抱き着いて爪を立てた。
 そんな俺を抱き締めて、ブラックは体をゆっくりと動かし始める。

 ずるりと抜かれて、深く、俺の思ってもみない場所までまた貫かれた。
 ぎちぎちに詰め込まれたブラックのものは俺の中を圧迫し、それをいっそう思い知らせるかのように、相手は俺を抱き締める。

 水音と荒い息、濡れた体が密着して出す音。
 自分の物じゃない熱い体温と、頬を擽る怖いくらいに綺麗な赤い髪。

「ツカサくっ……はっ……ぁ……はぁっ……!」

 硬くて厚い胸板からは、どくどくと激しい心音が聞こえてくる。
 だんだんと曖昧になっていく思考の中で、ブラックの熱い身体と、息と、自分を突き上げる感覚だけが強烈に伝わって来て、俺は訳も分からず泣きじゃくりながらブラックにしがみついた。

 苦しい。怖い。何もかもが解らなくなっていく。
 慣れない快感が辛くて、だけど、それに流されてしまいそうで不安で、がむしゃらにブラックの背中に爪を立てる。
 そんな俺を逞しい腕でしっかりと抱き締めて、ブラックはいっそう深く俺の中に欲望を突き刺した。

「ツカサ君……ぅ、あ……も……っ、もう……っ」
「ぁ、ああっ、ぁあ……! ひ、ぁ、っぁああっ……っ!」

 強く抱きしめられ、汗に塗れた肌が俺を包む。
 何故だかソレがとても嬉しく思えて――俺は喉を曝し、意識を手放した。









 
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