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アコール卿国、波瀾万丈人助け編
9.理不尽な約束と触手の擽りプレイ※
しおりを挟むアコール卿国にも、この世界の命は満ち満ちている。
光の粒子が夜の森を照らすと、木々の葉の色が光に浮かび上がりとても綺麗だ。月の明かりも遮られがちな森だけど、この【気】の光のお蔭でそれほど怖いとは思わなかった。
が、それでもやっぱり、同じ風景を三日も見ると飽きてくるわけで。
「ツカサ君、どこいくのー」
「トイレ」
「あー小便? あんま撒き散らさないようにね~」
「煩い、それをやるのは年齢的にお前の方だろ」
景色が変わらずだれて来ると、もうこれである。
まあ仕方ないよな、俺だってもう森飽きてるもん。冒険って言ったら色んな景色が見れるもんだと思ってたけど、こういうノれない日ってあるよな。
地図から見ればすぐに越えられそうな森だったけど、実際歩くとわりと長いし、ちょこちょこ休憩していればすぐに日も暮れる訳で。
幸い料理や修行の事なんかは問題ないんだけど、今まで開放的な場所を歩いてきた分、閉塞的で景色が変化しにくい森はかなりの飽きを感じさせた。
地図上の距離を考えると、明日すぐにでも森は抜けられそうなんだがな。
そしたらすぐに街が見えて来るから、それまでの辛抱だとは思うんだけど。
「はー……明日は街に着くってのだけが、モチベ保ってる理由だよなあ」
俺は色々とやる事が有って気が紛れてるけど、ブラックはそうもいかない。
あいつはどうやら俺より森に飽きているらしく、表立って文句は言わないが「森の中はもうウンザリ」とでも言いたげに時々腑抜けた顔をしていた。
俺と話したりじゃれる分には嬉しそうなんだけど、なんだろうな、森とかの狭い景色は嫌いなんだろうか。
「にしても……静かな森だよなあ」
この三日、旅人の食料を盗むと言うロバーウルフどころか、他の旅人とすらすれ違った事がない。まあ、狼とかの獣に関しては、懐いてくれたペコリアちゃん達が俺達を見守ってくれているので出会った事は無いんだけど、道を歩いてて全く人とすれ違わないってのはなんかこう……不安になる。
特に夜にもなると、お化けが出るとか以前に、次の街はちゃんとすぐ近くにあるのかなあ……とか色々泣きたくなるような不安が襲ってくるのだ。
地図ではちゃんと存在している次の街。
だけど、今ある地図が最新版だという保証はない。この世界にはGPSもなけりゃ常に更新される地図なんてのも存在しないのだ。
行ってみたら廃墟だった……なんてこともあり得る訳で。
それに、他の地域から来た旅人が俺達と同じ道を通るとは限らない。
もっと言えば、地図自体が正確ではない可能性もある。
俺達が買ったアコール卿国の地図がいい例だ。道や細かい目印はちゃんと書いてあるけど、その代わりに縮尺が解らないから、この森の規模なんてまったく想像が出来なかった。
そう、この世界の地図には決められた縮尺なんて存在しない。
伊能忠敬レベルで細かく測量する人でもいなけりゃ、自分が今どこにいるか正確に分かる地図なんて作れっこないのだ。
あの時の俺は地図に間違いなんて有るはずがないと思いきってたから、特に何も考えずに「細かい表記があるもの」を買ってしまったんだよなあ。
今となっては、多少高くても「正確な測量をする人の地図を下さい」って言えば良かったと悔やむばかりだ。
おかしいと思ったんだよ、同じ国の地図が何種類かあるなんてさ……。
まあでも、これも勉強代だよな。今の地図は、距離が不正確でも目印はちゃんと記してあるし、周辺の事も細かに書いてある。この世界の地図としてはアタリの内だろう。次は地図屋の店主によく説明して貰ってから買わなきゃな。
「っと、それよりもトイレトイレ……」
夜になると綿兎の森はかなり静かになる。
静かとは言っても時々梟っぽい鳥の声がするし、定期的に「大丈夫ですか」って感じでペコリアが出て来てくれるから怖くは無いが、それ以外は無音なので遠くの音すら聞こえてしまう。つまり、用を足すのがかなり恥ずかしいのだ。
男同士とは言え、流石に静かな場所で音を聞かれるのは困る。
俺は充分に距離を取って周囲を確認すると、ようやく用を足した。
「ふうー。……お? ここからも川に行けるんだ」
今回の野宿の場所は、そこそこ川に近かったらしい。
こりゃ幸いと川で手を洗って、俺は周囲を見渡した。
光の粒子は相変わらず尽きる事もなく地上から湧き出ている。川からもその光は生まれて来るのか、心なしか水面もほんのり光っているようだった。
「へえ~……夜の川には来た事なかったけど、結構綺麗じゃん」
こうしてると、婆ちゃん家の近くに流れてた渓流を思い出すな。
俺の婆ちゃんは結構な田舎に住んでいて、夏の夜には渓流の上を蛍が飛んでいたんだ。勿論こんなに明るく照らす事は無かったけど、なんだか懐かしい。うう、俺ちょっとホームシックかも……。
「ホームシックか~……。無理もないよなあ……俺がこの世界に飛ばされて来て、もう一か月以上経つんだし」
ラクシズに居た時は親身になってくれる人ばかりだったから、そこまで寂しくはなかったけど……一人になると、やっぱり元の世界の事を思い出してしまう。日本での生活が恋しいってのもあるが、それ以上に家が恋しくてたまらない。
俺って意外と父さんや母さんのこと好きだったんだな。
ちったあ親孝行しときゃ良かったかなあ。
……もう、日本には戻れないかも知れないんだし。
「…………駄目だ駄目だ、こんなことじゃ軽く死んで今度は異世界転生になるかもしれん! それはダメだ、余計に酷い事になりそうな気がする!!」
弱い心は隙を生むってなんかバトル漫画で言ってた気もするしな!
うん、一人にならないようにしとこう。それが一番いい。
俺は気合を入れ直すために自分の両頬を思いっきり叩くと、踵を返した。
落ち込んだ時は早く寝るに限る。そうすりゃ朝には忘れてるしな。
さて、早く戻らなきゃ。と、俺が焚火が見える方へと歩き出そうとした時。
「うわっ!?」
いきなりがくんと足を引っ張られて、思いっきり地面に倒れる。
何が起こったのか解らないままとにかく立ち上がろうとするが、引っ張られた方の足は何故かびくとも動かなかった。それどころか、痛みを訴えてくる。
まるで何かに……巻き付かれているかのような。
「…………」
まさか、まさかですよねー……。
嫌な予測をしてしまって血の気が引いたが、いや、まさか。こんな朗らかな森に“アレ”が居るはずがない。それにこの感覚はアイツじゃないはず。だって、なんか細いもん。細いのに足をとられてるんだもん。
じゃあ、なんでしょうね。と、俺は恐る恐る後ろを振り返って……絶叫した。
「ぎゃあああああなんだこいつぅうう!!」
振り返った俺が見た物は、俺の予想を全く裏切った謎の生命体だった。
ってか、生物なのかも怪しい。
何故ならそいつは細い緑の蔓の集合体だから。
小さな花には不釣り合いなほどに数多の蔓を伸ばし、蜘蛛のように周囲の木々に巣を張っている。恐らく中心にある小さな花が本体だとは思うのだが、蔓が生物を捕える意味が解らない。ここ良い土あるでしょ。水もあるでしょ。なんで俺を捕まえたの、なんなのこれ。
ハッ、そうだ、図鑑。モンスター図鑑になにか書いてあるはず!
こういう時は慌てず騒がず図鑑を起動してえーとえーと……あった、これだ!
【ネストパーボ】
ネスト種という造網植物であるが、同時にモンスターに指定される。
小動物の多い森に棲息しており涼しい気候を好む。
基本的に森の中で蜘蛛の巣状の網を張り、小鳥や小動物などを捕え
細い蔓のような触手で固定し養分とするのだが、稀にハニビーなど
甘い香りをさせる存在を捕えて蜜を摂取しようとする。
性質的にはネペント種と変わりないが、蔓を切れば逃れられる為
危険度はネペント種よりも少ない。弄ばれたくなければ注意されたし。
下位互換でもしっかりエロ触手じゃねえかあああああ。
でもナイフ、ナイフで切り取れる程度の触手なんだな、分かった。
だったらグロウで葉を刃の様に尖らせて、蔓を切ればいいんだ。
ふっふっふ、何度も触手に弄ばれる俺じゃねえぞ!
ではさっそく、と俺は周囲の草をちぎって精神を集中させようとした。が。
「ひっ、うわあっ!?」
無事だった片方の足を捕えられ、ついでに両手も蔓の餌食になる。
ヤバイ、と思った頃にはもう遅く。俺は蜘蛛の巣に絡まった獲物のように、両手両足をしっかりとネストパーボの巣に縫い付けられてしまっていた。
逃げようと思って力を入れても、やっぱり動かない。
おいっ、ネペント種より弱いんじゃなかったのかよ!
「くっ……あ、慌てるな俺。葉っぱはあるんだ、これにグロっ、ひぁっ」
細い蔓が、俺の半袖の中に入って脇を擽って来た。
ちょ、まって、そこ窪みだけど穴空いてないから、何も出ないから!
脇を締めようとしたけど腕は動かない。その間にも無事だったもう片方の脇に蔓が這い寄ってきて、俺は思わず肩を竦ませた。
「ひゃっ、や、まって、待ってってば、うぁっ、ふはっひゃっ、うひゃひゃっちょ、ま、あっは、ひっひぅうっ! ひぃっひっ……!」
くすぐったい、駄目、こちょこちょしたら駄目だって。
俺そういうの弱いんだよ、くすぐったいの駄目なの!
必死に止めさせようとするけど、俺の反応を面白がったのかそれともお気に召さなかったのか、蔓は増えて今度は脇腹へと侵入してくる。
Tシャツのように薄い俺のインナーでは、細い蔓を阻止する防御力などない。
あっという間に素肌に張り付かれて、脇腹のみならずへそまで絶妙なこそばゆさで弄られ始めてしまった。そうなると、もう、どうしようもない。
「ひゃぁあっ、はっ、ゲホッ、ぅああっあっはっ、はひゃぁあっ、ひっ、も、やめえっぐっ、ふひゃはっ、はうぅう……!」
くすぐった過ぎて声が裏返る。変なうめきしか出てこない。
足の指をぐっと握って堪えようとするが、くすぐったがりの俺がやっても効果は無い。力が入って更に蔓の攻撃に敏感になるだけで、ただの生き地獄だ。
終いには穴とは何の関係もない乳首まで、細い蔓は標的にして来た。
笑う最中に、繊細な動きで乳首を弄られる。
くすぐりだけでもかなり辛かったのに、そんな事されたら耐えられない。
俺は泣き笑いの表情で必死に歯を喰いしばって耐えながら、蔓が千切れないものかと暴れた。だけど、笑って力が入らない。
蜘蛛の巣のような網に体が掛かって跳ねるだけで、ネストパーボは全く怯んじゃいなかった。それどころか俺の抵抗をうざったく思ったかのように、足の戒めを強くして更に網へと縫い付けてしまう。そうなると、最早逃げられない。
抵抗できなくなった俺の体を、蔓が這いまわる。
脇を、首筋を、へそを、横っ腹を、乳首を、ちろちろと弄ぶように擽る。
細い蔓はズボンの裾から這いよって、膝の裏を、脛を擽って。
もうだめ、もう、笑い死ぬ。
喘ぐような笑い声で助けが呼べない。だけど、俺は必死でブラックとロクに助けを求めようとした。このままだと、気が狂ってしまう。そんなの嫌だ。
せめて気付いて貰えないか、と、一際大きく口を開いて焚火の方を見た。
すると、そこには。
「へえ、なかなかそそる格好してるね……ツカサ君……」
ブラックが、実に楽しそうな笑みを浮かべてつっ立っていた。
「ふぁぁあっ、あっ、はひゃっ、はっ、た、たすけっ」
嫌な予感がする。嫌な予感がするけど、助けてと言わざるを得ない。
こんなんじゃ発狂してしまう。くすぐったくて死にそう。もう笑うのは嫌だ。
涙目で必死にブラックに助けを求めると、相手は悠然とこちらに近付いてきて、じっくり舐めまわすように磔の俺を観察した。
「どこもかしこも擽られて苦しそうだね。……助けてあげようか?」
必死に頷く。涙が飛び散ったが構う暇なんてない。
助かるならなんだっていい、早くこの地獄から解放してほしかった。
「でもなあ、さんざん助けてあげたお礼を反故にされてるからなあ」
今更それ持ち出す!?
ああもう分かった、分かったから、なんでもする。何でもするから!
だから助けてよ、お願いだから。もう本当に辛いんだって!!
擽られ続けて息も絶え絶えの無様な俺に、ブラックはにっこりと笑う。
「僕の言うとおりに、してくれる? なら、助けてあげる」
あああバカバカてめえ俺の事好きなんじゃないのかよ!
こんな時にそんなスケベ丸出しな交換条件とか恥ずかしくないのか卑怯者おお! ちくしょう、でも、もう、だめ。もう死ぬ、つらい、もう。
「わかっ、ひぁ、あぁああ……ゲホッ、ぐ……っ、……わか、たからっ……!」
「そう。じゃあ話は早いね」
ブラックが近づいて来る。そして、ネストパーボの網を掴んで――呟くように、一言だけ言葉を口にした。
「……フレイム」
瞬間、何かが燃えるような音と共に、俺の体は乱暴に地面に振り落とされた。
何が起こったのか解らず、未だに擽りによって痙攣している体を必死に起こすと……そこには、蜘蛛の巣状に燃え上がっている炎の塊が有った。
これが……フレイム?
なんだか、火力が違いすぎるような気がするんだけど。
「さ、ツカサ君行こうか。まだ動けないよね? 僕が抱いて行ってあげる」
「っあ……!」
有無を言わさずに掬い上げられ、俺はガクガク震えながらブラックに縋った。
自分の体の制御が効かなくて落ちそうだ。必死にしがみついたけど、ブラックはしっかりと俺を横抱きにしていて落とすことはない。
そうして寝床まで戻ってくると、ブラックは俺を降ろした。
……だけど、寝袋の上とかそんな優しい場所じゃない。
焚火を背にして、俺はまだ震えの治まらない体で立たされたのだ。
「ぶ、ブラック」
「ねえツカサ君。この機会に言っておきたいんだけど……僕はね、君が好きだからいつだって君に触れていたいし、出来ればこういう事も沢山したいんだ」
言いながら、ブラックは俺の足をズボン越しに撫でてくる。
ゆっくりと下から擦りあげるような大きな手の動きは、まだ平静を取り戻していない俺にはかなり辛い感覚だった。
「っ……ぅあ……」
「僕は、ツカサ君が僕の事を嫌いでも、ずっと一緒にいると言った。……でもね、どうしても……君が隣にいると……触れたくてたまらなくなるんだ。出来る物なら体を無理矢理拓いて、どんな場所で触れても、僕の手を嫌がらないように仕込んでしまいたいと……そう思ってすらいる」
「……ぅ……っ」
指がゆっくりと足の肉を確かめるように押し込んでくる。
そうして太腿まで上がって来て、俺は思わず足を締めた。だけど、ブラックは俺の顔を見ながら笑うだけで。
「でも、それをするとツカサ君は口を聞いてくれなくなるから、今まで一生懸命に我慢してたんだ。けどさ、僕は助けたお礼だってまだちゃんと貰ってないんだよ。それっておかしいよね? 君がお礼をくれるって言ったのに、これって詐欺だと思わない?」
指が、ゆっくりと太腿を登ってくる。
肉の柔らかさを確かめるように指先で押し込んで、掌でじっとりと触れて。それで終わりかと思っていたら、内股まで掴んで、いっそもどかしくなるぐらいに強弱をつけて揉み始めた。
「う……ぅ……ど、しろ、ってんだよ」
「うん。だからね……ツカサ君は今さっきので僕に三つ分の借しが出来ただろう? それをね、利用させて貰おうと思って」
「それ、って」
「これは別にして、三回……僕の好きなように君を求めていいって言うのはどう? 勿論、今はまだ君の嫌がる場所じゃやらないよ。だけど、その三回の間はツカサ君は僕の言うとおりにしてくれるっていうの。どうかな?」
そ、そんな約束頷けるわけないじゃんか。
どう考えたってろくでもない事になるに決まってる。それに、ブラックが三回だけで満足するとも思えない。目の前で俺の太腿を揉みしだいてる相手は、またギラついた目つきで俺を見てるんだ。絶対にこの三回でなにかまた仕掛けてくる。
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「ツカサ君、頷くだけでいいよ」
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「頷いてくれたら……ここ、どうにかしてあげるから」
ねっとりとした声で囁かれて、武骨な指が半起ちになっていた俺の股間を擦る。擽られた時に、快感なんだか苦痛なんだか理解出来なくて体が反応してたんだ。
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「っ、は……ぁ……あぁ……」
「声が泣き声になってる。可愛いね……。辛いだろう? 僕なら、ツカサ君を楽にしてあげられるよ……気持ちよくなりたくない?」
手がゆっくりとズボンの中に入ってくる。
その手が、下着の上から俺のものをじれったいぐらいに触れて。その指の動きを追い、俺は無意識に触れて欲しがって腰の方を動かしかけてた。
頭に酸素が足りない。くすぐられ過ぎて意識がぼうっとしてて、そのくせ下半身を襲うじれったい快感だけが明確で、わだかまる熱をどうにかしてほしくて。
「ぅっ、んぅうっ……うぅ……! ぶら、っく、も……ねぇ……」
「駄目。頷いてくれるまで、気持ちよくしてあげないよ」
「ば、か……ひきょ、ものぉ……!」
「だって、君の事が好きなんだ。僕はいつだって君が欲しいんだよ、ツカサ君……ねえ、頷いてよ。僕を求めて……卑怯者でもいいから、バカでもいいから。僕にもちょっとくらい、触れさせてよ」
ばか、ばかばかばか。まだヤキモチ焼いてんのか、お前は。
お前の触れたいとロク達の触れたいには違いが有るんだよ。お前は「好き」だけじゃないモンまで欲しがってるから、だから、俺はどうしたらいいのか解らなくて拒むしかないのに。それが嫌なら、じゃあ、どうすりゃ良かったんだよ。
一緒にいるだけじゃダメなのか。
アンタは、何でもかんでも欲しがり過ぎだ。
欲しがった結果俺が辛くなるのに、なんで解らないんだよ。ばか。でも、もう、駄目だ。何でこうなるんだ。アンタが触ると、俺はなんで砕けちゃうんだろう。
もう正直な話限界で、どうしようもなかった。
「ぁ……も、わか、った……わかった、からぁ……!」
泣きそうな声で、必死にブラックを見上げる。
いつのまにか涙が浮き上がってる視界で見た相手は、思っていた物とは違う表情を満面に湛えていた。
「ブラック……?」
「ごめんね、本当にどうしようもないよね……でも、僕もどうしたらいいのか解らないんだ……。もっと普通の人みたいに振る舞って、そして君を好きになれたら……こんな酷くていやらしいこと、しなかったのにね」
どこか悲しそうな、顔。
思わず言葉を失ったが、口を閉じる事は許されなかった。
気付く間もなくブラックがキスで俺の口を塞いで、それと同時に下着の中に手を潜り込ませる。さんざん焦らされた俺の欲望はもう先走りを垂らすほどに硬くなっていて、少しざらついた指に竿を撫でられるだけで簡単に反応してしまった。
熱い掌に包まれてゆっくりと扱かれると、勝手に声が出てしまう。
「んっ、んぅうっ、ふっ……っぁ、あぅ、う……っ」
「気持ちいい……? でも、君はもう、ここを弄るよりも気持ちよくなれる場所を知ってるよね」
答える間もなくまた口を塞がれて、俺は背を反らす。
荒い息の逃れ場所がなくて苦し紛れに伸ばした舌を、ブラックは絡めとって強く吸い上げる。一気に脳髄が痺れて意識がぼやけそうだったのに、それは背後を探る指によって阻止されてしまった。
「んん゛っ!? んぅううっ」
指が下着の上から、俺の尻を探っている。ブラックにされた事を思い出して身を固くするけど、キスや下半身への刺激が許してくれない。
扱く動きと同じように指で尻の谷間をゆっくりとなぞられ、俺は声にならない声を漏らした。ゆっくり谷間へ沈む指を、どうしても意識してしまう。
下着と一緒にめり込んでくる指が、とうとう窄まりに触れた。
同時に強く扱かれて、俺は思わず強くブラックにしがみつく。
「っ、っぅううっ! んっ、ぅ……ふぅう、んんっ、ぅ……っ!」
指が下着を巻き込んで、窄まりをなぞって押してくる。
大きな掌は俺のものを強く掴み、後ろを探る指の動きに合わせて強弱をつけ擦りあげ、口は塞がれたままで、もう何が何だかわからない。
ただ腰が震えて、どうしようもなく気持ちよくて、されるがままに体を預ける。
凄まじい快楽を与えてくれる指やキスのことしか考えられなくて、俺は無我夢中で行われている事に応えようとしていた。
気持ちいい。もっと、もっとしてほしい。熱を開放してほしい。
俺の手よりも大きい手で触れて、こうして包んで、縋らせてほしい。
口腔を蹂躙する舌も、合わさる唇や無精髭でチクチクして痛い頬も、自分を抱く他人の存在を感じて俺の熱を上げていく。下着はもうしとどに濡れていて、ズボンにまで浸みて来そうだった。
「ツカサ君……続きは、街に着いてからゆっくりしようね……」
興奮を隠さない気味の悪い声すら、たまらなくて。
俺は必死に頷いて、強く刺激された勢いで達してしまったのだった。
「あっ……あ、ぁ……」
ずるりと落ちそうになる体を、しっかりと支えられる。
そのまま抱き締められて、俺は荒い息を漏らした。だ、だめ、何も言えない。
ぼやけた頭で余韻に浸っている俺に、ブラックは嬉しそうに微笑みながら何事か呟き始めた。
「あとね、ツカサ君。あのトリートメントって薬……あまり外で使わない方が良いよ。蜂蜜が大好きな生き物は沢山いるからね……僕も、この匂いは好きだけど」
言いながら俺の髪に顔を埋めるブラック。
相手の荒い息遣いや熱が伝わって来て、俺は何だかまた変な感じになりそうで、身を捩って耐えるしか出来なかった。うう、余韻が辛い。
けど、理由は解った。蜂蜜の匂いが原因で俺は擽られてしまったのか。
じゃあこれも早くムルカちゃんに教えてあげないと……犠牲は俺一人で十分だ、俺の与り知らぬ所でリアル女子が辱められるのはどうも夢見が悪い。
……っていうか、ああ、約束しちまった。しちまったよ。
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こんな変態プレイがクセになったらどうすんだ。俺は出来れば性癖を保ったまま日本に帰りたいんだ、元のまま美食とヘンタイの国へ戻りたいんだよ。
なのに、ブラックにまた触られたら。
「うぅう……体まで変態になりたくないよぅ……」
女子に罵られるのはもう仕方ない、甘受しよう。
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なりたくないけど、約束したからには絶対三回は掘られちゃうんだ。
ああ、もう、気が重い……。
次の街が廃墟だったりしないかな……と儚い願いを抱きつつ、俺はパンツの替えをどうしようかと悩む事しか出来なかった。
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