異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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王都シミラル、貴族の陰謀と旅立ち編

 そんなご奉仕聞いてません(号泣) 2※

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「ツカサ、背を向けるな」

 そう言いつつも、ラスターは背後から抱きしめてくる。
 泡の中で滑りを得た肌がぬるりと俺の背中に密着して、俺は思わずびくりと体を竦めた。その反応に気を良くしたのか、ラスターは俺の肩に顎を乗せ、耳元で小さく囁いて来る。

「お前の肌は、まるで穢れを知らぬ赤子のようだな……。あの汚れた世界で生きていたと言うのに、驚く程柔らかだ」
「っ……ぅ……」

 耳がぞわぞわする。
 思わず眉間にしわを寄せて体を縮ませたけど、そんな事をしてもどうにもならない。それどころか、ラスターはゆっくりと背後から俺の胸元に手を滑らせてきた。

「ひっ……」
「こういうことは、あまり経験がなさそうだな」

 あまりって言うか、二回しかしてないよ。
 どっちもブラックのアンチクショウが勝手にやりやがった事で、俺が望んだ事じゃない。こんな風に俺の体を触るのなんて、ブラックくらいしかいなかった。
 アイツだけが変態だと思ってたのに、やっぱそうじゃないんだ。
 
 そう思うと、何故だか今更怖くなった。

「あ、洗う……洗いますから、もう触るのは……」
「まだ洗い方を教えてもいないだろう。男を悦ばせる方法を教えてやると言っているのに、物分りの悪い奴だな」

 辛辣な事を言っているのに、耳元の涼やかな声は笑っている。
 それが妙に怖くなってきて、俺は風呂の縁に置いた手をぐっと握りしめた。
 なんでだ。こんなこと初めてじゃないのに。相手は俺でも見惚れちゃうような奴なのに、なんでこんなに怖いんだろう。
 解らないまま、ラスターの手が泡を纏って上がってくる感覚にびくつく。

 繊細な細い指が緊張で立ち上がった胸の尖りに触れて、俺は思わず身を固くした。だけど、そんなことで手が退くはずもなく。
 両の手の指が俺の乳首を擦り出し、洗うようにゆっくりと捏ねてくる。

「んっ……ぅ……うぅ……」
「経験が少ないとは言え、お前は敏感なようだな。そんな有様でよく今まで男にボロボロにされなかったものだ」

 されてますよ、プライドはクソ中年にボロボロにされてますぅ。
 って言いたいんだけど、胸から与えられる刺激がどうにもむず痒くて耐えられなくて、何も言えない。どうしよう、これ開発されかけてるんじゃないのか。
 やだ、乳首開発とかどう考えても真人間に戻れる気がしない。

 あいつのせいだ、あいつがあんなに舐めまわすから……。
 って思い出しちまったよああもう!

「どうした、急にココが勃ちあがったな」
「ひっ、あ、そんな、違っ……やあっ、引っ張んないでっぅあっ」

 ラスターが面白いとばかりに俺の乳首を指の間に挟めてしごいて来る。柔らかい皮膚を指でぐりぐりと弄われる感覚がどうしようもなくて、声が上がってしまった。でも違う、違うんだってば。
 別に、俺は。

「触るたびにお前の体が反応するのが判る。ここまで良いように動いてくれれば、男冥利に尽きるな。こんなに初心なのが嘘のようだ」

 背中でぐっと押されて、俺はタイルの床に上半身を無理矢理付けさせられる。
 そのまま太腿に手が下りていくのを見て、俺は痛いくらいに眉間に皺を寄せた。恥ずかしさと怖さと変な気持ちが綯い交ぜになって、もうどうしたらいいのか解らなくなってくる。

 逃げちゃえば楽なんだろう。だけど、逃げたってどうしようもない。俺の服がどこにあるか解らないし、地図もない。あの高い塀の全貌だって解らないんだ、捕まらないって確信がなけりゃ、逃げても藪蛇だ。

 仮に逃げられたとしても、その時には俺はもうお尋ね者だろう。
 貴族の屋敷から勝手に逃げ出した人間を放っておくほど、ラスターはバカじゃない。何よりコイツは俺の力に強く関心を抱いていた。ここで逃げれば面倒なことになるのは目に見えてる。
 追ってくる相手の執着が薄れる選択肢を選んだ方が、逃げるのに楽だ。

 ここで逃げたら、背負わなくてもいい苦労を背負う事になる。
 ブラック達にだって、会えなくなるかもしれないんだ。
 だから、逃げられなかった。
 でも、どうしても、怖い。

「だ、め……お願……」
「ツカサ……」

 首筋に柔らかいものが伝う。
 息が濡れた肌に掛かるのを知って、それがラスターの唇だと分かった。
 酷く狼狽する俺だったが、それに構わずラスターは太腿まで降りた手をまたゆっくりと上に移動させて来る。まるで俺の肌を確かめるように指を這わせて、足の付け根まで掌を上げ、指の先でその付け根の溝をゆるゆると確かめた。
 
 そんな場所、人に執拗に触られた事なんてない。
 指が股間に近付くたびに中心が緊張して、俺は足を閉じる。だけど、そんな事してもどうにもならない。諌めるようにラスターが首筋に軽く歯を立て、俺は悲鳴を上げ背を反らした。

「あまり恥じらうと、相手は業を煮やすぞ。覚えておけ」
「ぃたっ、あっ……でもっ、も……俺は……!」
「お前はただ俺の手に酔っていればいい」

 傲慢、自分勝手。本当ブラックといい勝負。
 悔しくて睨もうとしたけど、首筋を強く吸われ、ついに細い指が俺の中心に触れた事で、言葉が出ずに口が開いたままになってしまう。

 嫌だと咄嗟に言おうとしたけど、後ろから首を齧られるような恐怖と急所を握られた感覚に、何も言えずに俺はタイルの床に頬を押し付けた。
 覆いかぶさった大きな体が熱い。繊細な手がゆるゆると俺を煽る。
 どう我慢したって、そこへの刺激は耐えられるものじゃない。認めたくないけど敏感であるらしい俺は、ラスターの手にどんどんと熱を煽られていった。

 悔しい。自分の体なんて、大嫌いだ。

「あっ、ぅあ、あぁあ……やっ、やぁっ、ラス、タ……っう、ぅ……」
「出していいぞ。風呂は広いし、湯は流れる」

 青年らしい優しい声が、辛い。自分を追い詰めてるのが男だって解ってしまう。
 ブラックの声みたいに低くて耳をぞわぞわさせる声じゃない。言葉の使い方だって、体の感触だって違う。俺は、こんな触れ方、知らない。
 知らないんだ。

「やめっ、も、出ちゃ……いや、らすたっ、やっ、ぅあ、ぁああ……っ!」

 ぐっと強く扱かれて、腰が緊張する。
 下腹部にわだかまっていた熱が一気に出るような解放感に、俺はびくびくと体を震わせた。止めようもない感覚に、荒れた息が引き攣る。

 ラスターはそんな俺の肩口にキスを落とすと、俺をひっくり返した。
 仰向けになった俺は、蒸気に濡れた艶っぽいラスターを正面に見る。
 けど、相手は俺の顔を見て、先程までの笑顔を失った。

「ツカサ……」
「っ……ぅえ……?」
「何故、泣いてる」

 え、泣いてる?
 吐精感に酔ってぐったりしていた俺は、力ない腕で顔を拭う。湯気や泡で濡れて解らないけど、泡のない手で瞼を拭ったら、視界が先程より鮮明になった。
 そういえば、鼻の奥が痛い。
 あれ……俺、マジで泣いてたの?

「お、れ……」
「何か痛かったか」

 傲慢なラスターが、初めて心配した様な顔を見せる。
 痛い。……首筋が痛いっちゃあ、痛いけど。

「なんにも、いたく……ないです」
「バカを言え、なら何故そんなに泣いてるんだ」

 そんなこと言われたって……思い当たる事って、男とえっちするのが嫌って事くらいしか……。でもそれでビエビエ泣くなんて、俺って男としてどうよ。
 ブラックにはもう散々やられたし、あの時は泣いてなんてなかったのに。
 俺、なんか変だ。

「俺が抱いた女や男は、今まで一人もそんな顔で泣いた事は無かった。皆至福の笑みを浮かべ涙を流したものだ。なのに……お前はどうしてそんな風に泣く。痛くないと言うのなら、何に泣いたのだ?」

 ラスターは困惑している。
 俺だって何で泣いちゃったのかよく解んないよ。なんだろう、何か恥ずかしい。だらだら流れる涙を必死に拭いながら、俺は答えを探すように視線を彷徨わせた。
 でも、そんな事したって答えなんて解らなくて。
 
 結局俺は、泣く前に思っていた事を正直に話さざるを得なかった。

「俺……こういうこと、したくない……んです」
「あの不潔な……ブラックとか言ったか。あの男に操を立てているからか」
「いや、そうじゃなくて……」

 女が好きだから男に抱かれるのが嫌。なんて言っても通じないよな。
 この世界の人間って基本的にバイが当たり前なんだろうし。
 「好きになるのに性別は関係ない!」を地で行く人達に話したって、変人って思われるか「理解できない」って言われそう。

 でも、それがマジな答えなのかって言われると、悩む。
 俺自身、泣いてた事すら気付かなかったし。
 えっち自体は、エロ画像集めるくらいには興味ある。俺を押し倒してるのが美少女だったら、俺は喜んで身を任せるだろう。だから、美形のラスターになら、コロっと行っちゃいそうなもんだけどな。
 美形にかかるとノンケも形無しって、ウソだったのかな。

「操立てではないというのなら、どうして泣く」
「よく……わかんない、です」

 別に、ブラックじゃなきゃダメとかじゃないし。
 男にヤられるのが嫌なだけなんだよ、きっと。でも納得してくれなさそうだもんなあ。俺だって自分の事わかんないのに、喋れるわけない。

 正直に言うと、ラスターは俺の顔をじっと見つめた後――何度か軽く頷いた。

「そうか。嘘ではないようだな。……うむ……今日連れてきたばかりで肌を合わせようとしたから、それがいけなかったのかも知れんな。考えてみれば、お前は穢れ薄き類稀なる下等民だ。貴族のように夜の営みをきちんと教えられてない者に無理強いすれば、こうなるか」
「ラスター……さま」
「人は誰でも覚悟と言う物が必要だ。それを忘れていたな。……初心なお前を苛めすぎると、こっちが痛い目を見るのは理解した。よし、明日からは、俺が触れるのが当たり前になるまで側に居よう。そうすればお前も夜伽で怖がらずに済む」

 引いてくれたのは嬉しいけど、あの。
 ずっと一緒にいるって。夜伽って。脱出のハードル……上がってません?

 風呂の熱気のお蔭で青ざめた顔が相殺されてる俺に、ラスターは人を籠絡させる美形スマイルを惜しみなく披露した。

「無教養な下等民を、俺が立派な才媛に仕立て上げてやろう。そうすればお前も俺との夜伽に臆する事もなくなるはずだ」

 そう言う問題じゃないんですけど!
 くそう、この人やっぱり傲慢だあ……。













 
※うぶいDK萌え(^ν^)
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