異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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ラクシズ泊、うっかり調合出会い編

 回復薬の調合? できらぁ! 2

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 俺のたどたどしい読解力でも、図書館の本はすんなりと読む事が出来た。
 ありがとう日本語文法。
 ブラックに教えて貰った【神秘! 家庭の薬品辞典】とかいうふざけた本には、名前のワリにはきっちりと回復薬の作り方が図説で載っていた。彼が言うには、これが一番分かり易い本らしい。もうちょっとタイトル一考しろよ作者。

 読んでみた結果だけど、材料が俺の知らない物ばかりで更に難易度が増した感じだった。


【回復薬の作り方】
 モギの葉:5枚/ロエルの茎:3本/バメリの花粉:3振
 ロコンのひげ:2束/聖水:小瓶1

 モギの葉とロエルをすりつぶし、バメリの花粉を加えて練る
 充分に混ざったら、焼いたロコンのひげを細かくしさらに混ぜる
 聖水をその中に加えて混ぜ、聖水の色が青に変わったら完成
 色が変わらなかった場合薬効は期待できない。
 バメリの花粉は使わなくても良いが、薬効は下がる。


 なんだか簡単すぎて不安。本当にこれだけでいいの?
 一応他の本も調べてみたが、これ以上に詳しいものはなかった。全部この地域で採取できる物なのか植物辞典で確かめたが、バメリはこの地域には生えないので入手できないようだ。薬効は落ちるらしいけど、諦めるしかないか。
 ロコンと聖水に関しては、街で手に入るとブラックが教えてくれた。
 残りのモギとロエルは、道端に生えてるとのこと。

「材料がそんな身近なモンでいいの?」
「今の所これが一番量産できる製法だからね。じゃないと本にして伝播するなんて難しいだろう? 木の曜術師も基本的にはその作り方をしてる」
「それで薬効が違うって、やっぱ職業補正あるんだよな」
「さあねえ……僕は木の曜術師じゃないからなんとも言えないが、彼らは植物を理解できる分、他の人間が気付けないことも解るんじゃないか」

 なるほど、タケノコ堀りの達人が竹林を見ただけでどこにタケノコが埋まってるか解っちゃう……みたいなもんか。
 それで一応納得しておくとして、俺は最後に魔物の事について書いてある本を開いた。こっちも図と一緒に沢山のモンスターの名前が並んでいる。その中にロクショウと同じ姿を見つけ、俺はわくわくしながらその項目を読んでみた。


【ダハ】
 ライクネス地方最弱のモンスター。森の中や暗くて狭い場所に潜む。
 弱毒があるが人間には効果がない。噛まれた部分が腫れる程度である。
 臆病な性格で、集団でなら襲ってくるが、一匹だとすぐに逃げてしまう。
 毒牙の処理が面倒なので食用には不向き。
 一般人には厄介者であり、冒険者には鬱陶しいザコな存在である。
 項目の無駄とさえ言えるモンスターのうちの一匹。


 ……ロク……おまえなんて不憫な……。
 いいや違うぞ、ロクは俺を助けてくれたし付いて来てくれた。頭も凄くいいし全然臆病じゃない。それに情に厚いし可愛いし、弱毒だって人間に優しいって事じゃないか。弱酸性はお肌にいいんだぞ。弱毒だって加工すればいいんだそうだ。
 臆病なのは警戒心が強いってことだし、仲間同士で仲良しさん……。
 とにかくロクは可愛いの! ザコでも可愛いからいいの!
 自分が好きな物を貶されると悲しいってのはこんな気持ちなんだな、納得。

 でもロクが隠れそうな所は解ったぞ。暗い場所や狭い場所か。
 休みが貰えたら、奴隷屋の所からしらみつぶしに探してみよう。その時またパートナーになってくれるかは解らないけど、元気な姿が見られればそれでいい。もっと知識が欲しかったけど、今知るべき情報はこれだけだ。
 手早く本を戻すと、俺は早速素材採取に出た。

「ええと、ロコンは野菜屋で買えるよ。聖水は道具屋。教会に行けば無料だけど、延々説教されるからやめといた方がいい。蛮人街に棲んでるのがバレたら、信仰を押し付けられる可能性もある」
 
 歩く最中にブラックから話を聞いて、うへる。
 ええー、こっちの世界の教会って、ゲームみたいな物分りのいい感じじゃなくて、俺の世界みたいなガチ宗教家のお家なのかよ。絶対行かんとこう。
 そんなことを聞きながら、俺はとりあえず街の外に向かう事にした。
 買えば揃う道具は後回しにしないと、荷物が多くなるからな。
 
 ずっと隣にいるブラックに関してはもう諦める事にした。付いて来るなら付いてくればいい。それに、悔しいけどコイツの言う事は中々に興味深い。だから、話だけは聞いてやるのだ。終わったらポイよ。
 無残に花を散らされた俺の恨みは深いぞえ。

「街のすぐそばなら、装備ナシで出ても問題はないから大丈夫だよ」
「ふーん、なんか見えない障壁でも張ってあるとか?」

 バリアっすね、バリア。
 ファンタジー的にはありがちな事を言うと、ブラックは驚いたように両眉を上げた。

「よく知ってたね。そう、大抵の町はモンスターの侵入を防ぐために、強力な障壁を展開してあるんだ。だから、ランク3のモンスターが大挙して押し寄せない限りは平穏無事だ」

 ランク3。そういえば図鑑にもランクのことが書いてあったな。
 数字が増えるほど強くて、最高はランク8。それ以上になるとまた別の称号になるらしい。当然俺のロクちゃんはランク1でした。いいの。可愛いから。

 心の中でロクのことを思いつつ、一般街の外門を抜ける。
 街に出入りするには身分証明が必要なのだが、俺は蛮人街から来たので身分証明できない。そこもブラックがやってくれた。う、うう。感謝してないんだからな。
 ちょっと申し訳なく思ったけど、酷い事されたし、三日寝込んだし。
 頑張れ俺、尻尾振るんじゃない。
 
 心の中で「許してあげても……」と呟くもう一人の自分をぶちのめして、俺は周辺に生えてる草を見分けることに集中した。
 それにしても、雑草と言えど本当その種類は多種多様だ。
 草を選別しつつ、田舎の婆ちゃんが教えてくれた事を思い出す。
 俺達が普段気にしていない道端の雑草も、調べてみれば様々な効能が有ったりするし、面白い特徴を備えていたりする。だから、俺にはそんな面白い事をもっといっぱい知ってほしい、役に立つことを教えたいって婆ちゃんはよく言ってた。
 婆ちゃん、元気にしてるかな。多分元気だと思うけど。
 
 そういえば、モギの葉ってヨモギに似てたな。
 がさがさと探していると、目当てのモギの葉が見つかる。確かに葉っぱはヨモギそのものなんだけど、モギの葉は低木……つまり背の低い木の葉っぱみたいで、生えてすぐのモギの木がそこかしこにあった。
 成長した木がないのは、時々伐採されてるからかしら。

「えーと、ヨモギだったら新芽を取るよな」

 開いて青々としている葉っぱはムシして、新芽を頂く。少し丸まった新芽のモギの葉は、やっぱり裏面が白い。本当ヨモギに似てる。
 ロエルは外門から続く高い壁の側にあった。本には書いてなかったけど、どうやら暗所が好みらしい。青々とした太い茎を伸ばして、先端に緑色の細長い葉をつけている。茎って書いてあったから、折らずに引っこ抜いた方がいいかな。
 これも難なく入手できた。

「随分と豪快な取り方するね。ナイフならあるよ」
「んにゃ、これでいい。切って採取したら、なんか持って帰る途中に品質が悪くなりそうだし。それに使う場所を切り間違えて失敗したら困るからな」
「そうか……それもそうだね」

 最も詳しかったあの本でも、茎のどの部分を使えばいいっていう説明はなかった。だからこそ、一部分だけを持って帰るのに不安なんだ。
 ロエルって下から上にかけて細くなって行ってるんだけど、これってもしかしたら、使う部分によって回復薬を作るの失敗したりしそうじゃん。
 大根だって青い部分と白い部分を使い分けないと全然料理の味違うし。

 さて、後は街で揃う素材だ。全部揃えたら、湖の馬亭で回復薬を作ってみよう。









にわかに素材調達生産系話っぽくなってますが
元々このお話は、RPG的無双冒険とえっちしながらも合成料理調合アリで
各地の料理に舌鼓を打つちゅう、へっぽこ旅のつもりでした…
のでこれからそんな感じです。えろも頑張ります。
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