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出会うまで編
5.パートナーは森の蛇(地味)
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そんなこんなで、俺には新たな知識と仲間が増えた。
仲間になってくれたのは、最初に助けた空色の目の青大将。
増えた知識は、彼(彼女?)が持ってきてくれる無毒な食べ物に関してだ。
青大将はあれからずっと俺について来て、俺の横を嬉しそうにしゅるしゅると這っていた。最初は帰り道が一緒なのかなと思ったけど、俺が立ち止まると窺うように見上げてくるので、どうやら俺に付き添ってくれてるつもりらしい。
可愛い。帰れと言えるはずがない。
それで暫く同行してると、青大将は俺の腹が鳴ったのを聞きつけて、どこかから食べ物を持ってきてくれるようになった。
最初は躊躇ったけど、食べてみると、味は様々だがどれも食べられない事はない。ヘビの味覚がどうなってるかは解らないけど、青大将にはどうやら毒がない食べ物が解るらしい。これには本当に助けられた。
この世界で何を食べたらいいかなんて、俺には解らないからな。
ちなみにあのツタニンジンは無毒だったが、食べると柿の味がした。普通に美味しかったがなんであんなに放っておかれてるのか謎。
まあそれは置いといて、俺は青大将のおかげでこうして命を繋いでいた。
気付けば空はもう薄く橙色になりかけている。
異世界初日はやはり森で野宿する事になりそうだ。
「うーむ……だいぶ歩いたけど、やっぱまだ森は抜けられないみたいだな……」
「キュ?」
「うん、俺はね、森を抜けたくて……って言っても、通じないかあ」
俺に動物と話せるスキルがあれば苦労もしなかったんだろうけど、無い物を嘆いても仕方がない。俺は神様の加護とやらを受けられなかったんだから。
でも、この青大将はそれなりに俺の事を理解してくれてるのだから、もう少しトライしてみてもいいのかもしれない。
よし、いっちょジェスチャーしてみるか。
「えーっとね、森じゃない、森イヤイヤ。バーッと広いところ。俺みたいなの沢山いる所、解る?」
「シュシュ? キュー?」
のびのびと体を伸ばして、青大将は必死にこちらのジェスチャーに応えようとマネをしてくる。俺が正しい行動に頷くと、相手もなんとなく理解したようで俺のズボンの裾を口で引っ張ってきた。
もしかして連れて行ってくれるのかな。
青大将の後ろ姿を追いながら暫し走って行くと、遥か向こうに明確な光が見えた。あれは……もしかしなくとも、出口!?
「やった! 伝わってたんだな、ありがとう青大将くん!!」
青大将が先に森の先に出たのを見て、俺も一気に草むらを抜ける。
踏み込んだ森の先には――――素晴らしい風景が広がっていた。
「うわあ……」
広い広い草原に、その真ん中を突っ切る長い長い道。遠くには森と険しい山が見えて、夕方の光にそれらが輝いている。
生ぬるい風が通るたびに、草原は微かな音を立てて揺れていた。
空だって、とても大きい。
遮るものは何もの無くて、ずっと遠くまで橙色が続いていて。
まるで、夢の中の風景みたいだ。
「綺麗だな……」
「キュー?」
「はは、そっか。お前には見慣れた光景だもんな」
不思議そうにしている青大将の頭を撫でると、相手はまた嬉しそうに目を細める。何はともあれ、ジェスチャー作戦は大成功だ。
この蛇君みたいに頭がいい生物になら、ジェスチャーである程度は理解して貰えそうだな。言葉が通じなかったら人間にもジェスチャーを使おう。
どこで会えるかはまだ解らないが。
「うーん、森を抜けたし、これからは道を歩いて行けばなんとかなるかな」
こんなに綺麗に整えられた道なんて、人間……少なくとも人型の知性のある存在じゃないと作れないだろう。
道の先に道標のようなものも見えるし、実は街も近いのかも。
本当、青大将君には感謝しないとな。
てかまあ、今更だけど青大将じゃないんだけどね、この蛇君。
「とにかくありがとう、色々助かったよ」
「キュー!」
「……でも流石に、ここでお別れだよな」
青大将は森の動物だし、名残惜しいがこれ以上連れ回すわけにもいかない。
助けた恩(とは言っても俺も助けられたので本当は帳消しなんだが)はもう充分返して貰った。食べられる森の植物がどういうものかも教えてもらったし。
これ以上して貰うと、バチがあたりそうだ。
そんな俺の気持ちを読み取ったのか、青大将は必死に鳴きながら足に巻きついて来た。もしかして、これって、あれかな。
「俺にずっとついて来てくれるのか?」
「キュキュー」
「俺さ、人間の街とか行くけど、いいの?」
「キュー!」
一生懸命鳴きながら、青大将君は頭をぶんぶんと縦に振る。
こんなに俺にひっついてくれる相手とどうして別れる事が出来ようか。
よし、キミは今日から俺のパートナーだ!!
青大将……じゃなくて、ええと……とりあえずヘビ。
ヘビ、ゲットだぜ!
これから一緒に行くんだったら、ちゃんとした名前を付けてやらなきゃな。
「じゃあ早速名前を決めよう! どんな名前がいいかなー。えーと、じゃあスタンダードにヘビーちゃん」
「ギュー」
「空色の目だからソラちゃん」
「ギュギュー」
「うーん、じゃあ、青大将だけど緑色だから、緑青色でロクショウ?」
「キュ」
お、なんだか反応が良いぞ。
「ロクショー、ロクちゃん、ロク」
「キュキュー!」
略称も続けて読んでみると、青大将ことロクショウは嬉しそうに尻尾を振る。名前の意味とかは多分解ってないと思うんだけど、響きが好きなんだろうか。
まあロクって名前が良いって言うならいいか。
そんなこんなで幸先よくこの世界を知るパートナーを手に入れた俺は、えっちらおっちら夕日に暮れる長い道を歩き始めたのだった。
→
仲間になってくれたのは、最初に助けた空色の目の青大将。
増えた知識は、彼(彼女?)が持ってきてくれる無毒な食べ物に関してだ。
青大将はあれからずっと俺について来て、俺の横を嬉しそうにしゅるしゅると這っていた。最初は帰り道が一緒なのかなと思ったけど、俺が立ち止まると窺うように見上げてくるので、どうやら俺に付き添ってくれてるつもりらしい。
可愛い。帰れと言えるはずがない。
それで暫く同行してると、青大将は俺の腹が鳴ったのを聞きつけて、どこかから食べ物を持ってきてくれるようになった。
最初は躊躇ったけど、食べてみると、味は様々だがどれも食べられない事はない。ヘビの味覚がどうなってるかは解らないけど、青大将にはどうやら毒がない食べ物が解るらしい。これには本当に助けられた。
この世界で何を食べたらいいかなんて、俺には解らないからな。
ちなみにあのツタニンジンは無毒だったが、食べると柿の味がした。普通に美味しかったがなんであんなに放っておかれてるのか謎。
まあそれは置いといて、俺は青大将のおかげでこうして命を繋いでいた。
気付けば空はもう薄く橙色になりかけている。
異世界初日はやはり森で野宿する事になりそうだ。
「うーむ……だいぶ歩いたけど、やっぱまだ森は抜けられないみたいだな……」
「キュ?」
「うん、俺はね、森を抜けたくて……って言っても、通じないかあ」
俺に動物と話せるスキルがあれば苦労もしなかったんだろうけど、無い物を嘆いても仕方がない。俺は神様の加護とやらを受けられなかったんだから。
でも、この青大将はそれなりに俺の事を理解してくれてるのだから、もう少しトライしてみてもいいのかもしれない。
よし、いっちょジェスチャーしてみるか。
「えーっとね、森じゃない、森イヤイヤ。バーッと広いところ。俺みたいなの沢山いる所、解る?」
「シュシュ? キュー?」
のびのびと体を伸ばして、青大将は必死にこちらのジェスチャーに応えようとマネをしてくる。俺が正しい行動に頷くと、相手もなんとなく理解したようで俺のズボンの裾を口で引っ張ってきた。
もしかして連れて行ってくれるのかな。
青大将の後ろ姿を追いながら暫し走って行くと、遥か向こうに明確な光が見えた。あれは……もしかしなくとも、出口!?
「やった! 伝わってたんだな、ありがとう青大将くん!!」
青大将が先に森の先に出たのを見て、俺も一気に草むらを抜ける。
踏み込んだ森の先には――――素晴らしい風景が広がっていた。
「うわあ……」
広い広い草原に、その真ん中を突っ切る長い長い道。遠くには森と険しい山が見えて、夕方の光にそれらが輝いている。
生ぬるい風が通るたびに、草原は微かな音を立てて揺れていた。
空だって、とても大きい。
遮るものは何もの無くて、ずっと遠くまで橙色が続いていて。
まるで、夢の中の風景みたいだ。
「綺麗だな……」
「キュー?」
「はは、そっか。お前には見慣れた光景だもんな」
不思議そうにしている青大将の頭を撫でると、相手はまた嬉しそうに目を細める。何はともあれ、ジェスチャー作戦は大成功だ。
この蛇君みたいに頭がいい生物になら、ジェスチャーである程度は理解して貰えそうだな。言葉が通じなかったら人間にもジェスチャーを使おう。
どこで会えるかはまだ解らないが。
「うーん、森を抜けたし、これからは道を歩いて行けばなんとかなるかな」
こんなに綺麗に整えられた道なんて、人間……少なくとも人型の知性のある存在じゃないと作れないだろう。
道の先に道標のようなものも見えるし、実は街も近いのかも。
本当、青大将君には感謝しないとな。
てかまあ、今更だけど青大将じゃないんだけどね、この蛇君。
「とにかくありがとう、色々助かったよ」
「キュー!」
「……でも流石に、ここでお別れだよな」
青大将は森の動物だし、名残惜しいがこれ以上連れ回すわけにもいかない。
助けた恩(とは言っても俺も助けられたので本当は帳消しなんだが)はもう充分返して貰った。食べられる森の植物がどういうものかも教えてもらったし。
これ以上して貰うと、バチがあたりそうだ。
そんな俺の気持ちを読み取ったのか、青大将は必死に鳴きながら足に巻きついて来た。もしかして、これって、あれかな。
「俺にずっとついて来てくれるのか?」
「キュキュー」
「俺さ、人間の街とか行くけど、いいの?」
「キュー!」
一生懸命鳴きながら、青大将君は頭をぶんぶんと縦に振る。
こんなに俺にひっついてくれる相手とどうして別れる事が出来ようか。
よし、キミは今日から俺のパートナーだ!!
青大将……じゃなくて、ええと……とりあえずヘビ。
ヘビ、ゲットだぜ!
これから一緒に行くんだったら、ちゃんとした名前を付けてやらなきゃな。
「じゃあ早速名前を決めよう! どんな名前がいいかなー。えーと、じゃあスタンダードにヘビーちゃん」
「ギュー」
「空色の目だからソラちゃん」
「ギュギュー」
「うーん、じゃあ、青大将だけど緑色だから、緑青色でロクショウ?」
「キュ」
お、なんだか反応が良いぞ。
「ロクショー、ロクちゃん、ロク」
「キュキュー!」
略称も続けて読んでみると、青大将ことロクショウは嬉しそうに尻尾を振る。名前の意味とかは多分解ってないと思うんだけど、響きが好きなんだろうか。
まあロクって名前が良いって言うならいいか。
そんなこんなで幸先よくこの世界を知るパートナーを手に入れた俺は、えっちらおっちら夕日に暮れる長い道を歩き始めたのだった。
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