異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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神域島ピルグリム、最後に望む願いごと編

18.自分の何かが欠けて行く

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「それで……一体どうしたんだ? もしかしてあの部屋に何かあったのか?」
「ん、ちょっとね……」

 んん?
 ちょっとって何だろう?

 亡者の兵士達と出会った部屋には、詳しくは確かめていないが緑色の光や白い光を放つ、なんらかの物体が在った。
 あれが何なのかは戦闘していたせいでよく解らなかったけど、俺が呼ばれるって事は何か手助けすることがあるって事だよな。しかし何に必要なのか解らない。

 すぐ目の前にある部屋に入ろうとすると、不意にブラックが俺の手を引いて違う方へと歩き出す。どこに行くのかと思ったが、もしかして下の階に安置している亡者の兵士達に関連する事なのだろうか。

 だとしたら俺にも関係あるよな。
 彼らに関して何か新たな発見があったのかも知れない。それに、俺が関係してるのかも。いや、正確に言えば「俺の頭の中に響く声」が必要なのかもな。

 そんな事を思いながら暫く付いて行こうとするが、ブラックは階段を素通りして最上階の奥の方へと歩いて行く。この階にはもう罠は無いんだろうかと心配になったが、ブラックがさっさと歩いて行くんだから平気って事なのかな。
 そんな事を考えていると、ブラックは行き止まりの横の部屋に俺を連れ込んだ。

 そこは他の部屋と変わらず殺風景な部屋で、窓すらない。廊下から光が差し込むだけの少し薄暗い部屋だった。この狭さからすると……元は倉庫だったのかな。
 でも、ここに何があると言うんだろうか。

「なあ、ブラック……」

 と、相手を振り返ろうとすると……俺は、背後からぎゅっと抱きしめられた。

「なっ……!? えっ、な……なに……?」

 思わず驚いてしまうが、何も言わずに俺をただ抱き締めるブラックに、段々と心が落ち着いて来て……その……な、なんか、温かくなってくる。
 こんな湿度のある密林地帯で引っ付き合うなんて熱くなるだけなのに、でも、こんな風にただブラックに包まれていると、熱いって思うより先に微睡むようになって。

「…………」

 ブラックのにおいが、暖かさが、吐息が、聞こえるはずもないのに解る心音が、俺の中に染み入って来るようで、体が知らずの内に弛緩してしまう。
 もしかしたらこのまま眠ってしまうんじゃないかって自分でも思うくらい、心がとても落ち着いてしまっていた。……さっきまであんなに気分が悪かったのに。

 そんな俺の変化を見取ったのか、ブラックは息だけで笑って少し体を離した。

「落ち着いた?」

 低い、少し笑みを含んだ優しい大人の声。
 すぐそばで聞こえるのが何だか恥ずかしくて、俺は目を泳がせながら頷いた。
 悔しいけど、落ち着いたのは本当だったから。
 するとブラックはクスクスと笑って、俺を軽く持ち上げると壁にもたれて座る。俺はと言うと、ブラックの足の間に捉えられてそのまま一緒に座ってしまった。

 ……この体勢はちょっと、その……ヤバいと思うんだけど……でも、今はブラックが俺のためにひっついてくれてるんだと思うと、拒否の言葉も言い出せなかった。
 だってこれ、たぶん……俺がゲロ吐きそうな顔してたから、ブラックも心配になって俺の事を隠れて励まそうとしてくれてるんだろうし……。

 …………。
 ああもうっ、なんで俺って奴はそんなに顔に出やすいんだよ!!

「あは。ツカサ君まーた『なんで俺は判りやすいんだ』とか思ってるでしょ」
「ぐっ……」
「良いんだよ。そこがツカサ君の可愛い所で……僕が大好きな所なんだから」

 そう言いながら、ブラックは俺の事を深く抱きしめてくれる。
 背中にブラックの体が当たって、少し体を預けるような形になる。だけど、今は服とマントがあるからちょっとはマシだった。
 でも、マシだからってその、こ、この格好でホッとする俺ってちょっと……。

「…………情けない、よな……」
「ん? なにが?」

 ブラックは「アレのこと?」とは言わない。でも、多分俺が何を言いたいか解ってはいるんだ。解ってて、敢えて言わないで居てくれる。
 それは俺の言葉に沢山の意味が有って、俺が何を言おうか選ぶのを待ってくれているからだ。……こういう時、自分と相手の精神年齢の差が解って嫌になる。
 だけど、その差に救われても居て……俺は、気付いたら自然と言葉を零していた。

「……ひと、殺したの……初めてで……」

 ぽつりと零すと、ブラックは自分の胸に預けた俺の頭を撫でる。
 しっかりと俺の体を腕で捕えて撫でる姿は、傍目から見たらどう映るだろう。
 そんな事を現実逃避するようにぼんやり考えたが、ブラックの言葉が引き戻した。

「ああ、あの亡者達……。そうだね、ツカサ君は人型のモンスターを殺したのは、これが初めてだったよね。今まで獣ばっかりだったし」
「……うん」
「それが心にグサッと来ちゃったの?」
「グサって言うか……」

 言っていいのか、迷う。
 だけどブラックには散々自分の事を話していて、弱みも沢山見せてしまっている。
 それを相手も受け入れて、それでもなお俺をこうして抱き締めてくれてるのだ。

 俺はもう、格好悪い所を全部……ブラックに、知って貰っている。
 だったら隠す事なんてないし、それに俺は前から自分の気持ちをなるべく頑張って伝えようって決めていたじゃないか。なら、もう、ブラックに強がる必要はない。
 だってコイツは……絶対に、どんな形でも俺を受け止めてくれるから。

「ツカサ君?」
「……あの、な、ブラック……」

 ――――それから俺は、ブラックに戦闘中の事を話した。

 「声」に彼らの弱点の事を教えられたこと。それを聞いて、俺は兵士が「まだ生きているかもしれない」と思ったこと。だけどそう思ったのに、いざとなると自制が効かず結局ブラックとクロウの命を選択して……過剰な防衛によって、有ったかもしれない命を奪ってしまったことを。

 ……もちろん、ただ伝えただけじゃない。
 ブラックは俺が「異世界から来た」って事を知っているから、俺の世界では人殺しや闘争すらも滅多にない事で、殺人は倫理に反する事だと言う一般的認識や、だから人型の生物を殺したと言う事に激しい嫌悪感と後悔があるという事も話した。
 それに、今までの戦いと全く違うように思えたから辛かったと言う事も。

 だって、今までは純粋に「命を糧にするため」とか「相手が戦おうとするから、同等に命を懸けた勝負をする」って認識があったんだよ。だから俺は戦えたんだ。
 それに、対人でも相手を拘束するだけとか余裕があった。
 でも今回の事は違う。俺はそんな事すらも考えられなかった。

 ただ相手を排除したくて、ブラック達の命と軽々しく天秤にかけて、力任せに兵士の命を奪ってしまったんだ。……正面から、向かっていく事すらせずに。
 それのどこが「戦い」だと言うんだろうか。どこに正当性が有るんだろうか。
 俺がやった事は「過失」だ。もし俺にもっと冷静さが有ったのなら、力があったなら、彼らを拘束して戦いから解放する事も出来たかもしれない。
 なのに俺は、あの時考えてしまったんだ。

 ――ブラックとクロウの命を救うためなら、相手がどうなってもいい……と。

 …………そんなの、戦いじゃない。人殺しだ。相手が人間かも知れないと解ってて俺は殺したんだ。人殺し以外の何物でもないじゃないか。
 真正面から戦ってもいない、覚悟もしてない、お互い納得済みでも無かった。
 正当性なんて何一つなかったんだ。
 だから、俺は……耐えられなかった。自分の浅ましさと愚かさに。

 ――――そんな俺の独白をブラックは黙って聞いていたが……話し終わると、数秒して、なんだか気の内容な声を漏らした。

「……ふぅーん。そっか、そんなこと思ってたんだ」
「…………うん……」

 俺の話、つまらなかっただろうか。呆れちゃったのかな。
 少し心配になったけど、ブラックは両腕で俺を深く抱き直すと、いつの間にか斜めになっていた姿勢を正した。

「よいしょっと……。まあ、気持ちは解るけど……ツカサ君の頭に飛んできた声の言う事が本当なら、僕も人殺しって事になっちゃうよ?」
「なっ……そ、それはだって、ブラック達は知らなかったし……!」
「でも、アレは生きてたかも知れないんでしょ? だったら、僕も人殺しだよね」
「う……で……でも……」

 ブラック達は知らなかったじゃないか。きっと、彼らを「なにがしかに改造された哀れなモンスター」だと思って戦っていたはずだ。
 そう思っていたのなら、人だと思わなくても仕方ないじゃないか。
 だけど、ブラックは呆れたように息を吐く。

「そもそも、相手は人型のモンスターだよ? その時点で殺したら人殺しでしょ。それとも、ツカサ君の世界では人族そっくりの存在を殺しても罪にならないの?」
「そ、それは……」

 世界が違うし、俺達の世界にはあんな存在は居ない。
 いないけど、でも…………。

「迷うでしょ? 迷うって事は人殺しだって半分思ってるって事だよ。なら、相手が人の心を持っていようがいまいが、人型のモンスターを殺した時点で僕は人殺しさ」
「だ……だってアンタは正々堂々戦ってるじゃないか! それは殺しじゃないよ!」

 モンスターは自分から向かって来る。命を賭けて勝負を挑んで来るんだ。
 その戦いで相手や自分が命を落としたって、それは自己責任だろう。戦いってのはそういう物なんだ。だから、ブラック達は違う。
 必死に訴えるように体を捻って相手を見上げた俺に、ブラックは少し驚いたような顔をすると……何故だか、嬉しそうに笑って俺の頬にキスをして来た。

「っ、ん……ぶ、ブラック……っ」
「んふ、ふふ……嬉しいなぁ……ツカサ君、そんなに僕を一生懸命庇ってくれるんだね……。ほんと好きで好きでしょうがないよ……」
「やっ……い、いま、そんな話してるんじゃ……」
「だってツカサ君が悪いんだよ。僕のこと必死に清廉潔白にしようとするから」

 せ、清廉潔白って。
 なにもそこまで言ってるんじゃないぞ。俺は、戦闘の在り方をだな……。
 そう言おうと思うけど、ブラックは俺を拘束して何度も何度も口やら頬やらにキスの雨を降らせてくる。実際やられると凄まじく鬱陶しくて、マジでやめろと言いたいんだけど……ブラックが嬉しそうに笑うもんだから、何も言えなかった。

「ねえツカサ君……キミは僕を“真っ白な存在”だって言ってくれようとするけど……でもね、僕は名前の通り褒められた奴じゃないんだ」
「…………」

 ブラック、と、呼びそうになった口が言葉を閉じ込める。
 名前の事を言い出されると、ブラックに何も言えなかった。
 だけどそんな俺を見てブラックは笑みを深めると、額にキスをして来る。
 ちくちくとした無精髭の感触も一緒に襲ってきて、痛くすぐったい。顔を顰めた俺に、ブラックは悪戯っぽい笑みを浮かべて頬ずりをした。

「ホントは、ツカサ君も解ってるだろう? ……だけど、それでも、ツカサ君は僕を自分の場所に連れて行こうとしてくれる。温かい場所へと手を引いてくれる……」
「っ……ぁ……」

 もう一度、キスをされる。
 触れるだけだけど、ゆっくりと唇を深く押し付け合うように。
 ……それが何故か、異様に胸をぎゅっと締めつけて堪らなくなる。思わず息を呑む俺に、ブラックは更に体を密着させてきた。相手の影が掛かる。見上げた菫色の瞳は……暗い場所に居るのに、なんだか強く光っているように見えた。

「でもね、ツカサ君…………僕、今の話を聞いて……嬉しくなったんだ……」
「…………?」
「ツカサ君も、やっと僕達の世界から戻れなくなってきた。そう思ったんだよ」

 …………なに、言ってるんだ?

 ブラックが何を言いたいのか解らない。ただ見上げる顔は、先程までの愛嬌のある笑顔ではなくて、どこか寒気を覚えるような笑っていない目を俺に向けていた。

「ねえツカサ君、僕だって人殺しだよ。たくさん殺して来たんだよ。決闘だなんて格好つけて言うけど、所詮は人殺しさ。オークもゴブリンもレイスも、人型の存在なんて、飽きる程に殺してきた。盗賊なんて人とも思ってないんだよ。ツカサ君の前じゃ遠慮して殺さなかったけど、討伐の名目で殺した件数なんて数えきれない。この世界の冒険者は、全員……そういう経験をしてきてるんだよ?」
「ブラ、ック……」

 菫色の目が、ギラギラとした光を湛えている。
 興奮したその色の奥になにか昏い物を見たような気がして竦んだ俺に、ブラックは目を半月のようにねっとりと歪めると……俺の頬を殊更丁寧に舐め上げた。

「ぅ、あ……」
「ふっ、ふふ……。何度も言うけどね、この世界は人の命が軽いんだよ。だから、正直な話をすると、僕にはツカサ君が何故こんな事で悩んでるのか理解出来ないんだ。だってさ、人殺しなんて街中でも普通に起きる事だよ。兵士達だって人を殺す覚悟で兵士になったんだよ? それが普通さ。みんな、人を殺せるんだ」
「…………」

 言葉が、出ない。
 ……生きている世界によって倫理観は異なる。それは俺だって解っている。
 異世界では人の命が軽い事だって、物語を読んで理解していた。だけど……いざ、こうして大事な人から「違和」を聞かされると……本当に自分とは生きている世界が違うのだと思い知って、頭が何も考えられなくなってしまう。

 相手と決定的に違う部分を突き付けられた気がして、言葉も出なかった。

「……だからね、僕は、ツカサ君がどうしてそんなに人殺しに怯えるのか、未来永劫理解出来ないんだと思う。だって、それは普通の事だもの」

 ブラックの手が、俺の背中を伝う。
 視界が動いて、気付いたら俺は地面に押し倒されていた。

「……っ…………」

 陰のかかったブラックの顔が、目の前にある。
 興奮した獣のように目を見開いて、俺を凝視している顔。恐らく情けない表情をしているだろう俺とは全く異なる表情だった。

 今は何故かそれが、少し怖くて。
 思わず息を呑む俺に、ブラックは目を細めて笑うと……また、キスをしてくれた。
 何度も、何度も何度も口を啄んでくる。その触れ方は次第に深くなって、一回のキスが段々長くなってきて、息を奪われる。
 鼻で呼吸するのにすら慣れていない俺は無意識にブラックの服を掴んだけど、相手は俺のそんな行動を楽しむように、舌で俺の口を散々弄んで顔を離した。

「っ……は……はぁ……はっ……」
「あは……っ。ツカサ君、本当キス下手だね……可愛いよ……」

 髪を撫でられ、何だか余計に恥ずかしくなる。
 この状況を人に見られたらと思うと、どんどん心の中に焦りが湧いて来て、咄嗟に逃げようとしたけど……逃がしてくれるほどブラックは間抜けじゃない。

 俺の頬を両手で固定すると、視界まで逃さないようにしてしまった。
 だけどその表情は、さっきとは少し違っていて。相変わらず菫色の目はギラギラと光っていて昂奮しているけど……その表情は、なんだか穏やかだった。

「ブラック……?」

 呼びかけると、相手は更に嬉しそうに顔を緩める。
 そうして、ブラックはまた俺に軽くキスをした。

「ねえツカサ君……キミは、兵士を斃した事を悔やんでるみたいだけど……むしろ僕は、ツカサ君が人を殺す勢いで僕を守ってくれて凄く嬉しかったよ」
「え……」
「だって、ツカサ君は人を殺してまで僕を守りたかったって事だよね……? それって特別な事でしょ? 僕だって、ツカサ君の為なら、ツカサ君が許してくれるなら、邪魔な奴を全員殺してあげたいんだ。一緒の気持ちなんだよ。だからね、僕……ツカサ君が僕と一緒の気持ちになってくれて……この世界にやっと染まって来てくれて……とっても嬉しいんだ……」
「っ……ぁ、う……」

 今度は首筋に口付けられる。
 その吸い付き方は顔に降ったキスよりも強くて、思わず体が動いてしまう。
 だけどブラックは構わず、俺の肩口でぶつぶつと呟いた。

「ツカサ君……ねえ……もっと、もっと堕ちて来てよ……。僕と一緒になって……? 僕は否定しないよ。ツカサ君がどんな事になったって、全部肯定してあげる……。だって、ツカサ君は何一つ間違った事なんてしてないもの。人殺しだって、この世界では普通の事だ。僕達には普通の事なんだよ。誰かを助けるために人を殺しても、誰もそれを責めやしない……」
「ぅ……」
「僕だけは、最後までツカサ君の味方だよ。だって、僕は君の生涯に一人の運命の恋人だもの。ツカサ君だって、そう思ってくれてるよね? ……ね? だから、僕は、どんな事になったってツカサ君の傍にいるよ……絶対に離れない……。だから……ツカサ君も……僕の世界で、永遠に一緒に居て……」
「…………っ……」

 正直、ブラックの言っている事は半分も理解出来ない。
 だけど、俺を肯定してくれている事や、こんな事でうじうじしている俺を嫌うどころか、こちらの世界に染まって来たのだと喜んですらくれている。

 価値観が違う、罪を犯したと思っている俺を、こうも受け入れてくれているんだ。
 だけどブラックが言うように、俺がこの異世界の倫理観に「堕ちて」しまったら、俺はもう……本当に、今までの俺とは違う存在になってしまうかも知れない。

 それでも、良いんだろうか。
 それでもブラックは、俺を大事にしてくれるんだろうか。
 ……いや、きっとブラックは……俺を裏切る事は無い。
 この胸に触れる指輪を渡してくれた時点で、もう、覚悟してくれているんだ。

 俺と……一生を、共にすると。

「ブラ、ック…………っ」
「あぁ……ツカサ君、泣いてるの……? 可愛い……僕、興奮しちゃうよ……いいよ、今は泣いて。……ふふ……泣いた分だけ、心が受け入れる……ツカサ君も、きっといつかは気にならなくなるよ……」

 それは、人殺しが……と言う事なんだろうか。

 そうなっても、ブラックは俺を抱き締めてくれるんだろうな。
 だけど……怖い。怖いよ。やっぱり、俺は人を殺してしまったんだ。
 ブラックはそれを否定しなかった。どんな形であれ、俺はもう人殺しなんだ。
 でもそれも、いつか慣れてしまうんだろうか。それが、一番怖い。

 …………その理由が「今までの自分でなくなる」という身勝手なものだと言うのが、どうしようもなく苦しくて、悔しくて……俺は、ブラックの優しさに甘えて、情けなく泣き続ける事しか出来なかった。













 
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