異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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曜力艦アフェランドラ、大海を統べしは神座の業編

  あまいあまいあなた2*

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「ツカサ、こっちに来い」
「っあ」

 お湯の中で腰を掴まれて、簡単に捕らわれてしまう。

 だけど、こんな状況じゃ嫌がって逃げ出すなんて出来るはずもない。なにより……その……クロウが相手だと、嫌がろうと思ってても嫌がれないっていうか……。
 とにかく、甘やかすっては言ったけど、こういうのはあくまでもクロウの“食事”の延長線上になきゃいけないわけで、えっと、そうすると……。

「ツカサ……」
「んぎゃっ!?」

 うなじの方から低くてヒリつくような声で囁かれ、体を落とされる。
 だけど、尻が感じた感触はタイルの地面ではなく、明らかに生温かくてぬめってる硬いデコボコの上だった。要するに、だっこされている。背中をクロウの胸に預けるようにして、俺はだっこされてしまったのだ。

 当然、そんな事をしたら危なくなるなんて百も承知だ。
 もしこんな場面をみられたら、ブラックに大目玉をくらう。それは絶対にヤだ。
 だって、そんな事になったら絶対に「お仕置き」と言う名の羞恥調教をされるし、何よりまた俺の自由が奪われてしまうじゃないか。

 今まで数々の恥ずかしいえっちをされてきた俺だから解る、アイツはヤる男だ。
 結局気持ち良くなっちゃってるくせにとは思うが、しかし俺はノーマルだ。出来る事ならベッドで恥ずかしがる事も無く済ませたいタイプなんだ俺は。
 あんなの恋人だからって許せると思ったら大間違いだぞ、嫌なんだから絶対にもう二度とやりたくないんだからな!!

 でも悲しい事に俺にはブラックを抑え込める力などない!
 だから、挿入してるように見えるポーズだけは避けなくてはならないんだ!
 ああ何が悲しゅうてこんなことを胸張って言わなきゃいけないんだか。とにかく、早くこの座位状態をなんとかしないと……。

「くっ、クロウ、あのっ、この姿勢はダメ……」
「何故ダメなんだ? これならツカサの美味そうなうなじを存分にしゃぶれるし……」
「っあぁ……!」
「支える事無くお前の柔らかい所と触れ合えるだろう」

 そう言いながら、クロウは俺の胸と腹のあたりに手を押し付けてくる。
 大柄なせいか手までかなりデカくて、そんな事をされると体を掴まれているように感じてしまう。そのままぬめったお湯の中で胸を揉まれ、お腹を擦られて、思わず口から変な声が漏れた。

「はっ、ひ……ひっ、ぃぁっやっ……い、いましちゃ駄目……っ!」
「何故だ? ツカサは女のように胸を揉まれるのも……ヘソを太い指で犯されるのも大好きだろう……?」
「あ゛う゛っ、ぅっ、ぃ、いあ゛ぁっ! やぁああ! まっ、待って、こ……このっ、んっ、ぐ、状態っ、じゃ……やめ゛、ぇ……っ!!」

 久しぶりにへそを撫でられ、勢いよく太い指を突き込まれる。
 それがまるで内臓を押されているみたいで苦しくって、我慢出来ずに濁声でうめいてしまうが、クロウはそんな俺に興奮したらしく、うなじに軽く歯を立てて来た。

 牙が、肉に食い込む感覚がする。大きな手が、俺の平らな胸を女の胸のように揉みしだいて来る。胸肉を引き延ばそうとするその軽い痛みと相まって、体がいつも以上にゾクゾクしてしまって声が抑えられない。

「ん゛っ、ん゛ぐっ、う゛っうぅう゛……!」
「ハァ……はっ……ツカサ……どんどん柔らかくなってきたな……。ブラックに何度も抱かれてすっかり美味そうなメスの味だ……」
「ぃ゛、あっ、そう゛っな゛……ッ!  や゛っ、あ゛……!!」

 美味そうなメスの味ってなんだ、そんなの分かるワケないだろ。
 ツッコミを入れようと思うのに、クロウはうなじから俺の首筋に口を移動させて、かぷかぷと絶妙な牙の立て具合で俺を刺激して来て、言葉が出なくなる。
 おなかも抜き差しされるのからヒダを執拗に撫でられる動きに変わっていて、そのもどかしさが酷く辛くて、我慢しようと思っても腰が動いてしまう。

 ただ揉まれて、へその中を撫でられているだけなのに。
 そう考えると自分が一層恥ずかしくなって、頬が熱くて仕方が無かった。
 でも、違う。柔らかくなってるとか、そういうんじゃない。クロウが筋肉ばっかで硬いから、そう思えてるだけなんだ。人の体なんて、そんな急に変わらないはずだ。

 強くそう思って、歯を噛み締め声を抑えながら頭を振ると、首元にあったクロウの鼻がわらったように息を吐きだした。

「違う、か。腹を指で犯されただけで腰を動かすオスがどこにいる?」
「っ、やっ、あっ……!」
「乳首もこれだけで硬くなっているではないか。平たい胸をただ揉まれ、ヘソを虐められて、娼姫のように喜ぶオスがいるというのなら、見せて欲しい物だな」

 そう言いながら、クロウは両手で俺の乳首を軽く摘まんで引っ張る。
 普通なら何とも思わないはずなのに、お湯がぬめってる感じなせいか、それともさっきのゾクゾクした感覚が残ってしまっている野か、俺は声を上げてしまって。

「んぁあっ!? ひっ、引っ張ったらいたっ、ぁっ、あぅう……!!」
「果実の種のように小さい乳首が悪い。だが、この調子なら……いずれ胸も膨らみ、乳首も赤子が吸えるほど育つだろう。楽しみだな」
「ん゛んぅ……!! もっ……ばっ、か……バカっ馬鹿っ、馬鹿あ!! 甘やかすってこういうっ、ぃみっ……らのかよ……っ!!」

 体を虐めて恥ずかしい事を言うのが、お前が甘えるって事なのか。
 こんなんならもうやんないからな、やめるからな!!

「むぅ……まあ、そう怒るなツカサ。少し興奮しすぎた。甘やかして欲しいのは本当だから怒らないでくれ」
「も……もう、しない……っ?」
「しない。だから、そう怒るな……悲しくなってしまう……」

 そう言いながら、クロウは俺をぐるりと回して自分の真正面に置いて来る。
 するとなんと、目の前のオッサンはこれみよがしに熊耳をしゅーんと伏せて……っておい! お前絶対そんなのわざとだろ、わざと耳伏せてるだろ!?

 そっ、そんな、そんな風にスネられたって俺は許さないんだからな。
 調子に乗りやがってって気持ちは消えないんだからな!?

「ツカサ……怒ったか……?」
「うぐ……ぐう、ううう……っ」

 ええい目をうるませるな、熊耳をぷるぷる震わせるなあっ!
 ああもうっ、こ、こんなの、こんなのぉ……っ。

「……ツカサ……」
「っ、ああもう、解ったっ怒ってない、怒ってませんん!」

 もー何で俺はオッサンに対して可愛いとか思っちゃってんだよおおもう。
 相手は絶対わざとやってるのに。絶対に心の中でテヘペロとかやってるだろうに、どうして俺はたかがケモミミついただけのオッサンに陥落されてるんだ……。

「そうか、怒ってないか。嬉しいぞツカサ」
「んっ、お、お前……っ」

 ほら、すぐ耳をピンと立てて嬉しそうに顔を近付けてきやがる。
 俺は本当に怒ってるのに。ブラックと言いクロウと言い、なんで大人ってこんなにズルいんだろう。俺がアンタらに弱いの知ってるくせに、なのに大人らしくもしないで、こんな風な顔するなんて。本当に、ズルいよ。

「そうとなったら、一旦あがろう。湯の中ではお前の肌がしっかり味わえない」
「ふえっ」

 急に体を引き上げられ、お風呂から上がらされる。
 相変わらず抵抗する暇もなく引っ張り上げられてしまうが、クロウは俺の事なんて構わずにどっかとタイルの上に座った。
 そうして、俺を自分の目の前に座らせる。

「ツカサ、さあこい」
「…………と、いいますと……」

 あの、目の前で胡坐あぐらをかかれたらその……く、クロウのイツモツが見えてしまって目のやり場に困るんですけど……。
 どうしたもんかと目をそらすが、クロウはそんな俺の視線を遮るように両手をバッと広げて、再度さあこいと言わんばかりにふところを広げて来る。
 あのでも、来いと言われてもどうすれば良いのか解らないんだってば。
 仕方なくすがるように相手を見やると、クロウはふんむと鼻息を噴いた。

「今までずっとツカサに触れられなかったから、今日はその柔らかい体でオレをたくさん抱き締めて欲しい、たくさん、たくさんツカサの柔らかさを堪能たんのうしたいんだ」
「えっと……」
「オレを抱き締めてくれ」

 そ……そんなんでいいの……?

 よく分からないけど、まあ、裸で抱き締めるくらいなら、いつもやってるし……。
 クロウのお願いがイマイチ分からなかったけど、俺は素直に相手に近付いた。
 相変わらず筋骨隆々の体は、回復薬の泡風呂のせいかいつも以上にツヤツヤと輝いていて、なんだか見ているだけで気恥ずかしくなる。
 でも、やらないとクロウは満足しないから……俺は膝立ひざだちで近付くと、クロウの肩に自分の肩を合せるように少し腰を曲げて、胸の上までぴったりとくっついた。

「ど……どう……?」

 なんか、こういうのってあんまりやった事ないからドキドキするな。
 別に嫌じゃないし、えっちな事でもないんだけど……こういう事の方が逆に恥ずかしく思えてくるから不思議だ。これってどういう現象なんだろうな。

 不思議に思いながらもクロウの肩に手を乗せていると、相手はムゥと唸って、少し引き気味だった俺の腰をぐいっと寄せて来た。

「っ!?」
「ツカサ、もっと近付いて……体を、ゆっくりと上下に動かしてくれ……」
「ぇ……と……こ、こう……?」

 胸をぴったりとくっつけさせられて、そのまま体を軽く上下させる。
 お湯のぬめりが今も残っているのか、摩擦は少ない。だけどクロウはまだ納得していないようで、俺の体を更に引き寄せて、ごろんと横になった。

「うあっ」
「ツカサ……その柔らかい体でオレを抱き締めて、体で撫でまわしてくれ」
「っ……ぅ……」

 それって、要するに……クロウの体に自分の体を擦りつけろって事だよな……。
 でも、そういうのって、その……ふ、風俗のお姉さんとかがする奴じゃ?
 俺がそれをするのって、凄く変な事なんじゃ……。
 でも、クロウがして欲しいのは、風俗の奴とかそういうんじゃないかもしれないし……それに、このままだと湯冷めするから、だから、その……。
 …………え、ええい、ままよ!

「ツカサ……」
「ぅ……えっと……その……こ、こう……?」

 クロウの体をまたいで、体を弓なりに反らした格好で動かす。
 お湯のせいでぬるぬるしてるけど、ちゃんとクロウの腹筋やしっかりと硬い胸筋の起伏が分かって、その……角度を変えて動くと、クロウの乳首と当たったりして……ちょっと、変な感じになるって言うか……。

「んっ……ぅ……」

 腰を離しておいて良かった。
 つくづくそう思いながら、クロウの首に手を回して俺はぎゅうっと抱き着く。
 そんな俺に、クロウは手を回して……。

「ふあっ!?」

 片方の手で俺の尻をぐっと掴むと、そのまま引きずり下ろそうとして来た。
 慌てて抵抗しようとひざでふんばる。が、それで撃退出来ていたら、俺もクロウ達に対等な立場で意見を言えていたわけで……。

「もっと、体をくっつけてくれ」
「で、でも、そんな事したらヘンな所まで……」
「ヘンな所まで、ツカサが甘やかしてくれるのだろう?」
「う゛……」

 そりゃ、甘やかすって言ったけど。
 でも、そうなると俺ってば足を開いたままクロウの下腹部に股間を押し付ける事になるわけで、その……見た目的に凄く恥ずかしいって言うか、そんな事したらさしもの俺のイチモツも元気さを抑えられないっていうか。

 だけど、クロウは俺の事なんか気にもせずに尻を引っ掴んで俺の腰を無理矢理に落としてしまった。だが、何だかおかしい。
 その、腰を落とした所に、なんか、何か弾力のあるカタいものが……。

「ちょっ、くっ、クロウ勃ってる!?」
「ああ……ツカサの体があまりにも心地良くて、肉棒が疼いてしまった……。だが、お前ならココも甘やかしてくれるだろう……?」
「うぐ……っ、す、スケベオヤジみたいなこと言って……っ」
「そういうのは嫌いか」

 俺に見せつけるように軽く小首を傾げて熊耳を小さく動かすクロウ。
 だーっもう、お前っ、本当っ、ほんと覚えてろよ! バカっ、バカバカバカ!!
 熊耳が無かったら嫌がってるんだからな、俺は絶対こんなことしないんだからな!

「っ、も……もうっ、すればいいんだろ!? すれば!!」
「そうやって甘やかしてくれる所も大好きだぞ、ツカサ」
「うううるしゃい!! さっさとやるぞ、やるからな、やったら終わるからな!!」

 ヤケになってクロウの肩口に顔を埋め、ぎゅっと首に抱き着く。
 くやしい事に俺の体じゃクロウの腰下まで届かなくて、さきっぽから少し下までしか届かないけど……な、なんとかなるはず。
 別に、こんな事で気持ち良くなるほど俺は簡単な体じゃないし。
 さっきはヌメヌメしたお湯の中だったからちょっと変になっただけで、男同士でこんなことして気持ち良くなるなんて、絶対に無いんだからな!!

「ツカサ、腰を動かしてくれ……」
「う……。こ、こう……?」

 クロウの体をまたいでカエルのようになった無様な体勢で、腰を動かす。
 尻を掴まれているので大きく動かす事は出来ないけど、そのせいかやけにクロウの大きくて憎らしいモノに、小刻みにオレのが当たってしまうわけで……。

「く、ろう……お、お尻掴んだままだと、その……」
「甘やかしてくれるんだろう? ツカサの美味そうな尻で、オレの手を癒してくれ」
「っ、や……っ!  あっ、あ、ぁ……」

 大きな手で尻肉の片方をゆっくり揉みこまれて、体が震えてしまう。
 だけど、クロウの手は動きながらも俺の体をいつしか良いように動かしてきて。

「だ、めっ、クロウっ、そんな風に動かしたら……っ」
「動かしたら、どうなる? ツカサも気持ち良くなるなら、もっとしてやるぞ」
「うあぁあっ、やだっ、おっ、押し付けたら駄目……っ!」

 ぐいぐいと押されて、次第に自分のモノまで熱を帯びてくる。
 感じたくない覚えのある感覚が下半身に溜まって来て、勝手に体が震えた。
 ああもう、どうしてこうなるんだ。俺のこらえ性なし。

 ただくっつきあって、尻を揉まれて、は……恥ずかしい場所を擦り合わせてるだけなのに。こんな事で興奮するなんて、どうかしてる。
 これじゃ、俺が発情してクロウの上に乗っかってるみたいじゃないか。

「っ、う……っ。ぅ、やっ、はっ、はぁっ、はぁあ……っ」
「ツカサのおちんちんも硬くなってきたな……っ。ははっ……気持ち良いぞ……っ」

 クロウの声が、段々と興奮して来る。それと同時に擦り上げているクロウのモノが、更に熱く硬くなってきた。膨張する度に明確になるその独特な形が、こすたびに俺のモノを刺激して、なんだか恥ずかしくて……。

「は、ぅ……う、ぁ……うぅっ、う……」
「ツカサ……あぁ……っ、もっと、いやらしく腰を振ってくれ……」

 そう言われながら、更にお尻を強く掴まれて体を激しく揺さぶられる。
 もう、音なんてぐちゅぐちゅ言ってて、おちんちんが雑に擦れるのがもどかしくて、それでも何故か体の中が熱くなって腰がびくびくと震えてしまう。

 こんな風にされたら、駄目だ。
 我慢してるのに。恥ずかしい恰好をして、擦り合わせるのに耐えてるのに。
 こんなんじゃ、また不名誉な事になってしまう。
 だけど、クロウは俺をさらあに追い詰めるように俺の頭を掴むと、自分の目の前に持って来て……また、キスをして来た。

「んぅうっ!? んっ、んぅっ、ぅあっ、あ……んむっ」
「フーッ……ふー……っ……」

 すぐそばで荒い息が聞こえる。顔に、熱い息が掛かっている。
 だけどそれ以上にクロウの唇の感覚がやけに生々しく感じられて、体が勝手にびくんと波打ってしまう。角度を変えて何度も何度も触れられ、少しざらついた舌で唇のあわせを舐められると、すり合わせている物が爆発してしまいそうだ。

 恥ずかしい。キスくらいで、こんな事で、なんで感じてるんだ。
 ブラックとじゃないのに。クロウとキスして、こんなえっちな事して、それで興奮してるなんてどう考えても俺おかしいじゃん。絶対こんなの変だ。
 こんなの……ホントに、淫乱だって言われても仕方ないのに……。

「ツカサ……ッ、ふっ、ふぅうっ、つかさっ、っ、グ……ツカサ……ッ!」
「んっあっあぁあっ、やっらっ、もっだぇっ、うあぁ、あっんうぅう……!」

 必死にえようとして歯を食いしばり、何とか平静をたもとうとする。
 だけど、クロウは。

「ツカサ……ッ!」
「~~~~ッ!? ぅあぁああ!?」

 今まで尻を揉んでいた指で、いきなり……俺の、ぎゅっと締めていたお尻の穴を、ぐりっと指の腹で撫で擦って来て。
 その思ってもみなかった衝撃に俺は――――

「うあぁああっ、やっあっあぁあああ……~~~ッ……!」

 そのまま、勢いよくクロウの腹の上に射精してしまっていた……。

「ッ、グ……!」
「はぁっ、は、はぁっ、はっ……ぁっ、あぁっ、あ……」

 遅れて、抱き着いていた大きな体がぶるりと震え……体の下で、どくどくと何かが流れ広がって行った。

「ハァッ、ハ……はぁ……つ、ツカサ……」
「んむっ……」

 荒い息を吐いている俺の頭を掴んで、クロウはまたキスをしてくる。
 今度はいつも以上に長くて、俺は酸欠もあってくらくらしてしまった。
 こうなると、もう意地を張っても居られない。何度も探られて唇を離される頃には、ぐったりとクロウの腹の上に体を預けているしかなかったのだった。
 ……ああ……本当に情けない……。

「ツカサ……気持ち良かったぞ……」
「うぅ……」

 そりゃ、アンタは満足でしょうけどよ。俺は何か凄く屈辱なんですけど。
 でもまあ、クロウがすっきりしたって言うのなら……まあ、甘やかすって言ったのは俺だし……それなら良いんだけど……。

 何だかまごまごとしてしまい離れようと体をずらすと、それを良しとしないクロウは再び俺の腰を捕えて、軽々と上体を起こして見せる。
 あまりの切り替えの早さに目を丸くしてしまったが、クロウは相変わらずの無表情のままで、熊耳の片方をくるりと動かした。

「だが、ツカサの精液を食い損ねたな……ツカサ、もう一回……」
「い、今だめ……ほんと、勘弁して……」
「ムゥ。……じゃあ、近々喰わせてくれ。約束だぞ」

 そんな、アンタ毎日たくさんお食事摂ってるでしょ。
 なのにまだ俺の体液が欲しいの。

 思わず体から力が抜けてしまったが、しかしクロウがそれで満足出来ない事は俺も嫌と言うほど知ってしまっているワケで。
 だからこそ、今日は穏便に済ませる為に頷くしかなかった。

「解った……でも、色々と落ち着いてからな……」

 今は“謎の影”の事も有るし、こうやって乳繰り合えるひまは少ない。
 被害が広がらない為にも、絶対に早期決着を付けなくちゃ。

 そんな俺の思いをクロウは解ってくれたのか、俺をぎゅうっと抱き締めて頷く。

「ウム。それまでは、ツカサに甘えて我慢するぞ」
「ぅ……ぜ、善処します……」

 ……そうは言うけど、でも、クロウが無茶な甘え方をしないのは解っている。
 コイツは、そう言う奴なんだ。
 こうと決めたら強引で乱暴に事を進めようとするけど、でも、そうなるまではずっと我慢して、俺達の事を考えてくれている。こんな風にワガママを言って甘えようとするのは、本当に……二人きりのヒマな時くらいだって、分かってるんだ。

 だから、それを知ってるから――――俺は、クロウを怒れないんだろうな……。

「ツカサ……風呂から上がるまで、たくさんキスしたい。良いか?」

 良いわけない。後で絶対ブラックに怒られるに決まってる。
 だけど、俺にはクロウを拒否する事なんて出来るはずもなかった。


 ……クロウも……俺にとっては、大事な存在だったから。













 
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