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廃荘ティブル、幸福と地獄の境界線編
強欲
しおりを挟む目的に向かって走っていたつもりだったのに、いつの間にか手段の方にばかり目が行ってしまい、本来目指していた物を見失う場合がある。
時にはそれが利益を生む事もあるが、大抵の者は迷走し始めるものだ。
……けれど、それは当事者でない存在にとっては絶好の“付け入る隙”になる。
迷走している相手が自分よりも思考が幼い場合は、特に。
(あは……ツカサ君たら本当、簡単で可愛いなぁ……)
目の前で廃虚をちらちらと見たり、心配顔で森を眺める横顔は、ほのかに紅潮していて実に愛らしい。己の恥知らずな姿に恐れる素足は震えているが、興奮に膝が赤らんでいることは隠しようが無かった。シャツの側面の切れ端から見える太腿も空気に鳥肌を立てているが、その汗に湿る肌は誤魔化せはしない。
明らかに、興奮している。
彼の不安げなようで切なさを抱く表情と、下半身を見ればそれは明らかだった。
絶頂を抑制するための拘束具を嵌めた陰茎は、残念ながらシャツに隠れているが、それでもシャツを突き上げる小さな膨らみはしっかりと主張している。
その膨らみは少年らしい細い腰にすら負ける笑ってしまうほどの幼い山だったが、薄らとシャツに先走りを染み込ませる様は、快楽を知っている確かな証拠だ。
まだ大人にすらなり切れていないその瑞々しい純粋な肢体は、既にもう、オスを知ってしまっている。そして、その快楽を教えたオスは、この自分自身なのだ。
そう思えば、ブラックも興奮を禁じ得なかった。
(外が怖くても、僕が愛撫すればそれだけでツカサ君は感じてしまう……。ふふっ、ツカサ君たら本当に淫乱で可愛い……)
だが、ツカサ自身は自分がそれほど淫らである事に気付いていない。
今も自分の理性を必死に奮い立たせて、身を隠せ尚且つ安全にセックス出来る場所を探し、焦るように視界をせわしなく動かしていた。
「ひ、人の家はやっぱり申し訳ないし……でも、森って……」
ブツブツ言いながら、ツカサは大通りを行ったり来たりする。
その間にも快楽は蓄積されて足の震えは酷くなり、歩幅も小さくなっていくと言うのに、ツカサは迷う事を止められなかった。
人の家、などとブツブツ呟いているが、周囲の家は所有者が放棄した物だ。
使えるのなら勝手に使えば良いと言うのに、本当にツカサは変わっている。もしや彼の世界は廃屋ですら何かに使ってしまう世界なのだろうか。
そこが気になりもしたが、ツカサの姿を見ているとその疑問も霧散してしまう。
自分の目の前で、可愛らしい尻をちらちらと見せているツカサは、まったく無防備極まりない。前の方の違和感に集中してしまっているのか、それとも体温があまりに高すぎて少しの風の動きではもう感覚が解らないのか、とにかくツカサは周囲を気にするばかりで、後ろに関しては何も気付いていないようだった。
その迂闊さが、どうしようもなく愛しい。
だが、場所探しに集中されすぎるのも少し寂しかった。
(んもうツカサ君たら、一つの事に気を取られると、そればっかりしか考えなくなっちゃうんだからなぁ。……まあ、今は薬も飲んでるから、理性の方が強くなりすぎて快楽に酔いきれずに普通に集中しちゃうんだろうけど……そう必死に探されちゃうと、ちょっと悲しいなぁ……)
散歩をするのなら、その前に自分を満足させるための場所を探せ……なんて、回りくどい事をせずに、散歩しながら頂いた方が良かっただろうか。
しかし、そうするとツカサの恥ずかしがる姿を堪能できなくなる。
(それもこれも、ツカサ君が悪いんだからねっ。本当は朝から晩までずっとセックスするつもりだったのに、家事が忙しいだとか菜園の手入れとか、何かに付けて僕から離れようとするんだもん。だから、僕もこんな意地悪しちゃうんだよ?)
この左腕も、ツカサが寝ている間に治したような物だ。
正直な事を言えば、あの家で過ごしている間は、家全体にツカサが放つ豊かな曜気が溢れているようで、ただ暮らすだけでも治療にはなったのだが……やはり、ツカサから直接奪う曜気に比べたらどうしようもなく矮小だ。
悔しい事だが、あの駄熊の言う通りツカサが生み出す曜気は濃厚で、精液から直接摂取すれば自然物から吸い取るよりも遥かに深い多幸感を得られた。
今まで、意識してツカサから曜気を奪おうなんて考えもしなかったが、いざ試してみると、最早普通の摂取では満足出来なくなってくる。一度味わってしまえば、もうその濃密な味からは逃れられなかった。
グリモア特有の凶悪な食欲がそうさせるのか、それともブラックがツカサを運命の相手と決めているからなのかは判別できない。
けれど、現在激しく体力を消耗していたブラックにとって、その甘美な味は求めずにはいられないもので。だから、一日中セックスをしたいと思っていたのに。
なのに、ツカサはこうなのだからどうしようもない。
(まあ、僕と積極的にセックスしようって頑張ってくれてるのは伝わってるんだけどさぁ……。でも、ツカサ君の頑張りって、僕の性欲と釣り合わないんだよなあ)
正直、ツカサが望む回数の五倍くらいはやりたい。
その尻穴から溢れ出るほどの精液をぶちまけたいし、思う存分欲望をぶつけて肉穴が開きっぱなしになるほど犯したかった。
けれどツカサは、この通り、恥ずかしがるし割り切らないし。
(なら、僕が鍛えるしかないよねえ。……僕とツカサ君は婚約したんだ。でもそれ以上に、僕達は唯一無二で永遠の絆によって結ばれている。ツカサ君の恋人は、僕以外にいないんだよ。だったら、ツカサ君も僕以外の相手なんていらないよね? 僕とのセックスに慣れるしかないよねえ?)
足をもじもじと摺り寄せながら恥ずかしがるツカサも非常に可愛らしいが、今からずっと一緒にいるのなら、そろそろセックスに慣れて貰わなければならない。
ブラックが何をしても、すぐに受け入れてしまいたくなるように。
「うーん……うぅうん……」
――そんなどうしようもない事を考えているブラックの前で、ツカサは未だに深刻そうに悩んでいる。廃屋をチラチラ見ながらも、足は徐々に森へと向かっているようだった。やはり、家の中よりも自然の中でセックスをしたいらしい。
その方が余程変態染みているが、ツカサにとってはそちらがマシなようだ。
旅の途中で何度かセックスしたが、やはりアレで野外セックスへの抵抗が少なくなったのだろうか。
「人の家はやっぱり……でもなぁ、森……」
などと言いつつ、ツカサは腰を屈めて廃屋の中を覗き見ようとする。
(あっ…!)
だが、そんな事をすれば……男にしては非常に豊かすぎる柔らかな臀部が、シャツから零れ出てしまうわけで。
「っ……!」
無防備に曝け出された双丘に、思わず股間が反応する。
恐らく少し屈む事で自分の興奮を少しでも抑えようとしたのだろうが、前にばかり意識が行ってしまっているせいか、肝心な尻の事など忘れているようだった。
これが正に、頭隠して尻隠さずと言う事だろうか。
張りのある尻肉と、その向こう側に見える少し膨らんだ会陰の部分が、どうしようもなく欲をそそり、ブラックは思わず生唾を飲み込んだ。
男には股の間の穴は無いが、それでも何も無い膨らみも実に魅力的だ。
少し尻の谷間が開いて陰部が覗く姿勢になっているのも、まるで自分を誘っているようで、途轍もなく淫らでたまらなかった。
(ああ……そんな格好をされたら、我慢できないじゃないか……っ)
無意識に手が伸びてしまう。
優しく股の間から尻の谷間を撫でると、思っても見ない方向からの刺激だったのか、ツカサは思いきり体を飛び上がらせて甲高い声を上げた。
「ふあぁあっ!?」
どうやら本当に後ろの方は失念していたらしい。
ツカサらしいなと苦笑しながら、ブラックは一度拒否された指を背後から股の間にねじ込んだ。そうして、会陰の部分を執拗に擦り上げてやる。
時々、気まぐれに陰嚢の裏側も擽ってやれば、ツカサは両手で口を塞いで甘い声を必死に抑えながら震えた。ああ、本当に可愛らしい反応だ。
そんな事をされたらブラックも抑えが利かなくなると言うのに。
「ほらほらツカサ君、早くセックスする場所を決めないと……日が暮れて散歩も出来なくなっちゃうよ……? 僕の左腕も、いつまでたっても治らないかも……」
背後からツカサを抱き込み、会陰から尻の穴まで一本の指で何度も往復させると、ツカサは「んっ、ん、ぅ」と泣きそうな喘ぎ声を漏らしながら首を振った。
「もっ、わかっ……わかった、から……! きめ、ぅ、から、それっやめてぇ……!」
可愛い。可愛い、本当にツカサは何もかもが可愛らしい。
その少年らしい甲高い喘ぎ声も、必死に快楽に抵抗しようとする姿も、抗いきれずに体を悦楽に震わせてしまう淫乱な所も、本当に愛しくてたまらない。
愛しくて、愛し過ぎて。
「だーめ。ツカサ君が決めるまで、ずっとこのままだからね」
もっと、虐めたくなってしまう。
「う、ぁ……あぁ、あ……っ」
ツカサのシャツの裾を押し上げる股間の膨らみが、緩く震える。先走りの汁は先程よりも広がっていて、快楽に浸りきっているのは明らかだった。
陰茎を拘束されている事によって、体の中で熱が暴れているのだろう。
だが、許してやる気はなかった。
(ツカサ君、もっと、もっと鍛えてあげる……。でも、ツカサ君だって嬉しいよね? だって、ツカサ君は僕の恋人なんだから。いずれは、こうなる事だって覚悟して、僕と婚約してくれたんだから……)
きっと今からやる事は、まだ初心さを残すツカサには辛い事だろう。
だが、ツカサは許してくれるはずだ。
何故なら、ツカサの一番の幸せは――
ブラックとのセックスで交歓し、絶頂した時なのだから。
「……ツカサ君……ほら、頑張って探して……? 僕と、精液でぐちゃぐちゃになるまでセックス出来るような場所を……」
わざと低い声でそう言いながら柔らかい耳を食むと、ツカサは涙を散らしながら、再び可愛らしい声で子犬のように小さく鳴いたのだった。
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