1,140 / 1,264
廃荘ティブル、幸福と地獄の境界線編
2. 欺瞞※
しおりを挟む「あっちゃ~……うっかりやり過ぎちゃった」
気が付けば、目の前の愛しい少年は気を失い痙攣している。
揺さぶっても起きる事は無く、人形のように頭をゆらしていた。
「ん~……ツカサ君~、鼻水で窒息しちゃうよー」
だったら揺さぶるなよ、というツッコミがツカサから来そうだが、しかし今の彼は何も喋る事など出来ない。それがまた情欲を掻き立てて、柔らかい肉壁に己の欲望を擦りつけてしまうのだが……これ以上犯し続けるとツカサに怒られそうだったので、ブラックはゆっくり引き抜こうとした。……の、だが。
「あっ。あぁ~、ダメだぁ……ツカサ君のナカってば本当気持ち良過ぎて、出そうとするとペニスが擦られて勃っちゃうよぉ」
声が可愛いこぶって上擦り、ブラックは快楽に打ち震えながら再びツカサのナカにペニスを収めてしまう。そうなるともう、律動は止められなかった。
最早力も無く成すがままになっている体を、ブラックは思う存分貪る。ツカサの穴は締め付ける事すら忘れているのだが、それでも元々少年らしい慎ましい穴のお蔭で、失神していてもブラックのペニスを緩く包んでくれる。
この肉穴が解さずとも勝手に柔らかになり開く様を想像すると、余計に興奮が抑えられなくて、ブラックはツカサの肩を掴んで固定すると、深く突きいれて何度目かの精液を思いきりツカサに吐き出した。
「っ……ぅ……ふぅ……。んはぁ……ツカサ君のお尻、最っ高……」
しかし、これで何度目だっただろうか。
一度目で既に失神してしまっていたツカサだったが、その肉穴があまりにも具合が良過ぎて思わず三度もナカに放ってしまった所までは覚えているが、もしかすると今ので覚えている倍以上は出してしまったかもしれない。
そう言えば、結合部からは白濁が漏れ出ている。あまり汁だらけにし過ぎると肉壁の感覚が薄れると思い、今度は素直に抜くと、開き切った穴からどろりと精液が溢れ出て来た。久しぶりなせいか、たっぷり出してしまったようだ。
(あ~、でもスッキリしたぁ……。久しぶりだからちょっとヤり過ぎちゃったけど、明日からは少し我慢しないと)
なにせ、ツカサには色々試して欲しい事が有るのだ。
一息つくと、ブラックは軽く処理をしてツカサの体を横たえた。
「そういえば、この腕じゃツカサ君の体の後処理も満足に出来ないなぁ……」
裸になると、より自分の欠損が顕著になる。
わりと慣れてはきたが、やはり色んな事を行うには不都合が有り過ぎる。
特に、セックスする時には選択肢が狭まって大問題だ。
なので、そろそろ真面目に腕の事を考えねばと思っていたのだが……そんな時に、この千載一遇の機会がやって来るとは思わなかった。なにせ、最近はずっと余計な熊やら男やらが付き纏っていたのだ。それが今、奇跡的に二人きりになれたのだから、こうしてしけこんでも仕方がないだろう。
(このまま帰ったら、絶対あの熊公やら何やらに振り回される事になるし、二人きりの時間なんて部屋に居る時だけになっちゃいそうだし……。僕だってツカサ君の事を頑張って探したんだから、このくらいやっても良いに違いないよね?)
……思えば、自分達には二人きりの時間が少なかった。
せっかく婚約したと言うのに、邪魔をされ二人きりの時間を奪われ、挙句の果てに長い時間をかけて放浪する事になったのだ。
二か月も経っていないじゃないかと他人は言うかも知れないが、一日ツカサと離れ離れになったら、それはもうブラックからすれば百日離れたのと一緒なのである。
だが、それの何がおかしいと言うのだろうか。
愛しいその存在を視界に捉えられなくなったら、誰だって不安になって苛つくようになるだろう。相手を愛すれば愛するほど、手放す事なんて出来ないはずだ。
恋人とは、その相手を一番愛している存在にだけ与えられる称号だ。相手が自分の全てを受け入れてくれた証なのだから、ブラックがこうしてツカサを一人占めする事も当然の権利なのである。
だから、ツカサを独占する時間くらい、与えて欲しかった。
……いや、誰が与えなくとも、最初から自分でこうしようと決めていたのだが。
「うーん……腕、ホントにどうにかしなきゃなぁ……」
せっかくツカサを手に入れても、存分に愛せなければ意味が無い。
ありとあらゆる行為を行うためにも、腕の再生は不可避だ。
……しかし、具体的にどうすれば良いのかは、まったくの無策だった。
(ツカサ君と二人っきりになりたい! って一念だけでここまで来ちゃったけど……本当に曜気だけ吸ってて治るかなぁ。……まあ、アテが無いワケじゃ無いけどさ)
そう思いながら、ブラックはツカサのくれたバンダナで覆われた左腕を擦る。
今は痛くもなんともないが……。そう思いつつ、バンダナを解いた。
記憶が確かならば、この腕は断面が今もなお綺麗に残っているはずだ。そのはずだったのだが……――
「……あれ?」
解いた腕の先は、何故か……しっかりと肉が付き、皮が張っていた。
(変だな。バンダナに包まれている限りは、傷はそのままの状態で保たれているはずなんだけど……どういうことだろう)
少し気になって、ブラックはその腕を凝視する。
と……金の光が散った黒い影のようなモヤが、まるで鎧のように左腕を取り囲んでいるのが解った。かなり強い気だ。
だが、残念な事にブラックはその「気」を知っていた。
そして、何故自分の腕が黒い影に覆われているのかという事も。
(……なるほどね……。こりゃ案外、嘘も本当になりそうだ)
己の“能力”を真に誇った事など今まで一度も無かったが、ツカサの持つ凄まじい力を借りて超常的な事象を引き起こす事が出来るというのなら……この忌まわしい呪いすら、少しは好きになれるかもしれない。
(ツカサ君が、どんどん僕の中の僕を好きにさせてくれる……)
本来なら、己を恨むほどの力だった。
けれど、ツカサさえ自分の傍に居てくれれば……全ては必ず良い方向へ進む。
この左腕が、その証拠だった。
「今は、喋らない方がいいかな……。全部聞いたら、ツカサ君絶対泣いちゃうだろうし……それに、ドンビキされちゃったら嫌だもんな……」
……別に、ツカサを信頼していない訳ではない。
ブラックの事をここまで信じ愛してくれている相手を、今更疑う気など無かった。
だが、信頼しているのと嫌われるのを怖がる事は別だ。
ツカサはどんな事が有っても自分を受け入れてくれるだろう。けれど、自分の事を知ったツカサが何を思いどう行動するのか解らない。
下手をすれば……己を顧みず破滅してしまう事すら考えられた。
ツカサは、それほど……ブラックのことを思ってくれているのだ。そう分かるからこそ、今はまだ全ての事を打ち明けようと思えなかった。
(不安なら、ツカサ君をしっかり鍛えてから話す事だって出来る。……だけど、強くなればツカサ君は増長して無謀な事を平気でするようになるだろう。死なないからって慢心して、今以上に命を簡単に捨てるようになるに違いない)
そんな事は、とてもじゃないが承服できなかった。
ツカサは博愛主義であり、目の前で困っている物がいれば絶対に救おうとする。
己の弱さを考えずに、出来る事を最大限の力でやろうとしてしまうのだ。
そんな少年が、己の希望する方法で体を鍛え、自分の力を本当に納得できるようになってしまったら……待っているのは、地獄だ。
出来る事の幅が広がるせいで、ツカサは簡単に死地に赴く事になるだろう。
そうして無限の命を酷使し、腕が消えようが首が無くなろうが人を救うために自分を犠牲にして戦おうとするに違いない。そうなってしまえば、ブラックですら止める事など出来なくなってしまうだろう。
(この子は、弱いからこそ……こうやって生きていられるんだ。その力が他人から貰ったものだと思っているから、増長せず自分を抑えていられるんだよな)
だからこそ、ツカサを今より強くする事など出来なかった。
……それもまた、彼から言わせれば「ブラックのわがまま」なのだろうが。
「……まあ今は……なるようにしかならないか」
顔も下半身もぐちゃぐちゃにして、すやすやと眠る可愛い恋人。
一生その姿が変わらないとしても、心はきっと別だろう。その事を考えると、胸が痛くなったが……今考えてもどうしようもない事だと思い、ブラックは息を吐いた。
「ツカサ君……もういっそ……ここで一生暮らそうか?」
他人さえいなければ、ツカサがどうなろうと彼は一生隣で生きていてくれる。
幸せに暮らしていける。
この腕さえ治れば、ブラックだっていつものように彼を守れるだろう。
「…………やっぱり、早く治さなくっちゃね」
そのためには、ツカサにも多少無体を強いる事になるが……二人の幸せのためなのだから、彼も許してくれるだろう。
眠るツカサの頬に口付けて、ブラックは小さく息を吐いたのだった。
→
20
お気に入りに追加
3,684
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。





久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる