異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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空中都市ディルム、繋ぐ手は闇の行先編

33.永遠に存在する記憶などない1

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「ほっほっほ、元気になられたようで一安心ですな」
「お、お騒がせしました……」

 王宮の廊下を颯爽と歩く背の高い老人。その後ろ姿に腰を屈めながら申し訳ないと返すと、老人……バリーウッドさんはまたもや笑った。

「一番大事なのは、事実に押し潰されないことだ。一人では抱えられずとも、大事な存在と分かち合うことで受け入れられると言うこともある」

 そう言いながら、バリーウッドさんは肩越しにこちらを少しだけ振り返り――俺とその隣にいるブラックを見ると、目をに歪ませた。

「心底想っている相手とならば、それは立ち直りも早くて当然と言う物だろうて」
「~~~~~っ!」

 ああああやめて下さいそういう話題しないでください!!
 見て見ぬふりとかしてくれたって良いじゃないですか、なんでそんな風にからかうみたいに言うんですかああああ。

「ふ、ふふっふふふふ」

 ああもうほらもう隣のオッサンがニヤニヤしながらこっちを見てるじゃないか。
 バリーウッドさんも人が悪いよ。絶対解ってて言ってるんだから。
 勘弁してくれと顔を歪めると、相手はまた肩を揺らして笑った。

「いや、すまんすまん。わしの周りでは、もうそんな風に反応してくれる者がおらんでのう。久しぶりでついつい」
「こ、困りますう」
「良いじゃないツカサ君。言わせておこうよ。ねっ」
「お前はもうちょっと恥を学べ!!」

 バカップルが公衆の面前でイチャイチャするのは最早公害と同じと言うのに、何故お前はその事に気付かないんだ。俺はこういう質問でイチャイチャしだすカップルを呪う方の人間だったんだぞ、今更ノロケるのを許してたまるか。
 頭が良いのになんで情緒面だけ悪い意味で若々しいんだよ。
 大人な恋人ってもっとこう……いや、そうじゃなくて。

「ゴホン……ええと、それで……今からどこに向かうんでしたっけ」
「ツカサ君忘れたの? 書庫に向かうって話だったじゃない」
「うむ。あそこなら狭いし窓も無いからのう。しかも誰も寄りつかんから、内緒話をするのには最適じゃろうて」

 そっか。そうだったな。
 バリーウッドさんが丁度いいタイミングで来てくれたお蔭で、なんとかブラックの色欲から逃れられた俺達は、昨日の話の続きをという事で場所を移動する事にしたんだっけ。別にあの館でやれば良かったんじゃないかとも思われるだろうが、俺達だけならまだしもバリーウッドさんが訪れたとなれば、何者かに聞き耳を立てられるかも知れない。万が一ではあるが、念には念を入れての事だった。

 しかし……クロウも来れば良かったのになあ。
 誘ったんだけど、後でまとめて話を聞くの一点張りで付いて来てくれなかったんだよな。俺に関しての事だし、ブラックには話しちゃったんだから、クロウにも聞いて欲しかったんだけどな……。

「やっぱりクロウも連れて来た方が良かったんじゃ……」

 クロウはブラックと同様に頭が良いし、なにより冷静で力も強い。万が一と言うのなら、クロウも連れて来て守りを万全にしておいた方が良かったと思うんだが。
 未だに未練を残す俺に、ブラックは先程の笑みはどこへやらの不満顔で返した。

「あいつは留守番で良いんだよ。昨日今日で許してたまるかってんだ。色々話すならまとまった後でも良いでしょ。ね」
「う……うん……」

 昨日からクロウの話題を出すと不機嫌なんだよなあ、ブラック……。
 やっぱり話し合いの時何かあったんじゃないのか?
 怪我はしてなかったみたいだけど、見た目だけなら回復薬で治せるし……。
 ……夕食の時にもうちょっと根掘り葉掘り聞いてみるべきか。うん、そうしよう。

「ツカサ君、また僕じゃない奴のこと考えてたでしょ」
「ん゛っ?」

 こんどはコソコソと小声で話しながら、ブラックが俺をなじって来る。
 思わずそんな事は無いと否定しようとすると……ブラックの大きな手が、俺の手をぎゅっと握って来た。驚く俺に構わず、そのまま指の間にしっかりと指を潜り込ませて来る。太くてがっしりした大人の指に入り込まれて、指の股がちょっとつらい。
 ブラックを見上げると、相手はもう不満げな表情では無く、少しほおを赤らめて嬉しそうに笑っていて。

「今はコレで許してあげる」
「ぅぐ……」

 ゆ、許してあげるって……バリーウッドさんに気付かれたら……いや、い、今更なんだし、それなら……少しくらい……いや、これはバカップルは撲滅すべきだという俺の信念に反することじゃないのか。だったらやっぱりここじゃ駄目だって……。

「えへへ……」

 ……ああもう、ちくしょう、ばか。
 デレデレすんな、嬉しそうな顔すんな、せめてこの状況はドキドキするみたいな顔をしろよ。なに当然な顔してニコニコしてんだ。
 そんな子供みたいな嬉しい顔されたら、そんな……ま、まあ、仕方ない……後ろを振り向かれたら離せばいいんだし、このくらいは……。

「ふむふむ」

 バリーウッドさんが唐突にそう言ったので思っきりビクッとしてしまったが、振り返らないで居てくれたので、しばらく手を繋いだままで居られた。
 ……もしかしたら気付いてない振りをしてくれたのかも知れないけど、それだったら申し訳ないな……。でもこういうのはお互い気付かないでいた方が良いんだろう。

 色々な感情が綯交ないまぜになって微妙な気持ちになったが、好意を無にしてはならないと思い、俺はブラックと手を繋いだままバリーウッドさんの後を追った。
 そうして、五分ほど歩いただろうか。前方の左壁に書庫の扉が見えて来て、俺達は一旦いったん手を離し書庫へと入った。……ここからは真面目にやらなければならない。

 内側からしっかり鍵を掛けて外から開けられないようにすると、壁際にワンセットだけ置いてある机に就いた。

「……さて、本腰を入れて話すかのう。貴方はどこまで知っておられるのかな」

 バリーウッドさんがそう問いかけると、ブラックは肩を軽くすくめてみせる。

「どこまでって、ツカサ君が昨日見た事までは知ってるつもりだけど?」
「ほう、なるほど……では、ある程度の事は受け入れていらっしゃるわけですな」
「まあね。別に僕に直接関係ある訳でもないだろう? 過ぎた事を聞かされたって、僕にはどうしようもないし、興味も無いよ」

 まさに他人事だと言わんばかりの口調で返すブラックに、バリーウッドさんは長い白髭しろひげをゆっくりとしごきながら、言い知れぬ静かな表情を向けた。

「己の存在そのものが、異世界の者にじ曲げられた結果だとしても、ですかな?」

 え……。
 それ……どういう……。

「……復讐でもしろってのか。今の僕がそれほど満足してないとでも?」

 バリーウッドさんの表情に気を取られている間に、ブラックが返す。
 咄嗟とっさに横を見ると、ブラックは真剣な表情でバリーウッドさんを見ていた。
 怒るでもなく悲しむでもなく、ただ、涼しい顔で。

 ――そんなブラックを見て、バリーウッドさんはフッと笑った。

「なるほど。シアンの言う通り、貴方はずいぶんと傑物けつぶつになられたようだ。さすがは、今の今まで彼をうしなわなかっただけの事はある」
「む……」
「逸脱したがゆえに、正常。とは言え、簡単にはその境地にまで辿たどり着けますまい。グリモアとなり衝動を抑え続けていられるのも、貴方のお力によるものでしょうな」

 バリーウッドさんのその言葉は、俺には何とも言えない。
 だけど、ブラックは口だけを笑うように歪めると、片眉を上げた。

「褒め言葉として受け取っておくよ。今はね」
「ははは、これはありがたいことですな。しかし、これで安心して話が出来ると言う物だ。……ツカサ様は、我々神族にとっても決して喪えない存在だ。どんな感情を持っていようとも、この方を死ぬ気で守ると言う者でなければ、この話を話すことは出来ませんからのう」

 し、死ぬ気で守るって……そんな、その、漫画みたいな……。
 ……でも、ブラックはいつもそのくらい俺を守ってくれてるのは確かなんだよな。
 自分の片足を失っても、俺が何度さらわれても……いつも、死ぬ気で守ってくれた。高い場所から落下する時だって、俺とどっちが下になるかもだもだするくらい本気で、俺の事を大事に想ってくれているんだ。

 だから俺も、ブラックの事を守りたいって思ってるんだよな……。
 ……ブラックを怪我をさせたくないと強く思う執着の強さを考えると、自分の感情に対して恥ずかしくなる。でも、これが否定も出来ない本心なんだ。
 ブラックのために、一人の男として、相手を守ってやりたい。
 そう思うのは、ブラックが俺の事を守ってくれているからに他ならないんだから。

 ………………俺、なんかちょっとクサいな。恥ずかし過ぎるんだけど……。

「さて、では本題に入るとしますかの」
「あ、あっ、そっそうですね! えっと俺、質問をまとめて来てて……」
「ほう、質問ですか。よろしい、その方が儂も答えやすい」

 ――という訳で、俺達……っていうか俺は、あらかじめ用意して来た質問をバリーウッドさんにぶつけてみた。

 質問一つ目。
 全ての神様が同様の存在なのか。バリーウッドさんは四柱すべての神と出会ったと言っていたが、その時どう感じたのか。やはり全員が異世界人だったのか。

 この問いかけに、バリーウッドさんは少し困ったような顔をした。
 いわく、四柱の神全てに会ったとは言え、文明の神アスカーは幼い頃に一二度の謁見しただけで記憶は少なく、またジェインとリンに関しては、ジェインは神族の国自体をかなり嫌悪しており一度降臨した後は姿を見せなくなっており、リンは二度ほど会ったが、彼は混沌の神の名の通りに素性が掴めず、またディルムを訪れても王宮に来ない時も会ったとのことで、この二柱に関してはほとんど情報が無いらしい。

 ただ、ナトラだけは慈愛の神らしく神族にも愛を与え、神族も彼女にはメロメロになっていたらしく、そこらへんのエピソードは多々あるようだ。
 バリーウッドさんから聞く限りでは、チート主人公の女版というか……とにかく、ハーレムみたいに男女問わずモテモテだったらしい。

 ただ、彼女を知る神族もまた代替わりによって少なくなっており、シアンさん達姉妹しまいは神様に出会った事も無いとの事だった。
 そう言えば、シアンさんは数百年生きてるって言ってたよな。
 それって神族からしてみればまだまだ若いって事だったんだろうか。いや、数千年生きているっぽいバリーウッドさんが特別なのかも知れないが……。

 まあとにかく、結局は「断定が出来ない」って事だな……。

 じゃあ、質問二つ目。
 文明の神・アスカーと戦った黒曜の使者と、キュウマのこと。それに、この書庫の一番奥にある読めるのに読めない変な漢字の文書の事だ。

 これに関しては、一つずつ答えてくれた。
 アスカーを殺すために出て来た黒曜の使者は、とても好戦的でいくつかの遺跡を自分一人で創り上げ、すでに人間の三分の一を味方に付けていたと言う。……だが、使者の戦力の九割はやはりそいつが作り出した数多あまたのモンスターで、アスカーは神であるのに大層苦戦していたようだ。
 一応スパイとして神兵が送り込まれたりしたらしいが、結局素性は解らず、神兵も作り変えられてモンスターの一派になってしまったりしたらしい。
 うーん……やっぱ対アスカー戦の使者ってちょっとダーク寄りなのでは……。

 閑話休題。
 次はキュウマのことだが、これはもう聞くにたええなかった。
 何がって、やっぱりアイツチート主人公の王道まっしぐらだったからだよ畜生。
 このディルムの動力部をチョイチョイと直したキュウマは、王宮の設計やこの島の住人たちのインフラなどにも着手し、数人の奥さまを引き連れてチート風を吹かせて善行やりたい放題だったらしい。

 あいつも黒曜の使者だけど、俺よりも頭が良くて力を自在に使いこなしていたようで、彼を神様と同一視する神族も多かったそうだ。バリーウッドさんは出会った時にキュウマが“黒曜の使者”だって気付いたらしいけど、その前にナトラが「黒曜の使者は敵ではない」と教えてくれていたから、最初は警戒していたものの最終的には意気投合したそうだ。あと、バリーウッドさんの娘を嫁にやったらしい。

 娘さんは人族と結婚し一族を抜けたため“真祖しんそ”ではなくなったらしく、もう天寿を全うしているかも知れないとの事だが、もしかしたら生きているかもとの事だった。
 下地げちとは連絡が取れず、キュウマも行方不明。しかも下地に降りたエルフは基本的に天界であるディルムとは絶縁状態のため、自分から連絡する事も出来ないらしく、バリーウッドさんは心配していた。
 キュウマの嫁か……機会があれば会ってみたいけどなあ。

 色々と気にはなったが、キュウマの武勇伝はさわりだけ聞いても凄く長くなりそうだったので、次の話題だ。この書庫の本のことに移ろう。
 あの【第貳試驗型丗界諸々覺書】という本の事を訊いてみたのだが、帰って来たのは予想もしない答えだった。

 バリーウッドさん曰く――
 『あの本は、いつからそこに在ったのかも、誰が書いたのかすらも判らない。神族すらも読む事が出来ない不可解な本』らしい。

 神族は「神に愛された種族」だからか、この書庫にある多くの書物を言語関係なしに読む事が出来るらしい。原理は解らないが、チート小説によくある「言語翻訳」的なスキルが作用しているんだとか。だから、あの一番奥の本も読めないと変だというのだが……何度解読しようとしても、出来なかったそうだ。
 ……俺達も「読めるのに読めない」って事が何度かあったけど、もしかしたら神様の意思で意図的に誰も読めないようにされてるのかも知れない。

 それだけ重要な本だってのが解ったのは良いけど……やっぱ解読不能かあ。
 ちょっと落ち込んでしまったが、まあ重要である事は解ったから良かろう。

 次の質問。三つ目と……流れで、四つ目も合わせて質問する事になった。
 どうして異世界の人間を神にえたのか。そして、その神が不適当な存在になった時に、何故この世界の人間ではなく異世界人が黒曜の使者として召喚されるのか。
 そして……役目を終えた後の神と使者は、どこに行ってしまったのか。

 この質問には、バリーウッドさんもすぐには答えられなかったようで。
 今まですぐに答えてくれていたのに、最後の質問には一分程の沈黙が続いた。
 しかし、バリーウッドさんは何かを振り切るように顔を上げると、俺を見やった。

「…………正直な話……儂らにも、判らんのです。儂は四柱の神を見て来た。黒曜の使者にも出会った。しかし儂らは……やがて、彼らを見失った」
「それは……」
「これは、儂の見て来た限りの“見識”でしかない。だから、正しいという事でもないのかもしれない……しかし儂は、そうとしか思えないのです」
「何がだよ」

 苛々しながら催促するブラックの言葉に、バリーウッドさんは自分が急いていた事に気付いて姿勢を正すと、少し目を泳がせて深く息を吸った。
 口を覆う程の白く豊かな髭を扱き、自分を落ち着かせる。
 そうして、真剣な顔で眉間に皺を寄せ、はっきりと言い放った。

「……神々も、黒曜の使者も――――ひとりずつだったのですよ」
「――――え……」
「思えば、誰も他の神と連れ立って来る事は無かった。神が降臨なさるのも、世界を統治する時も、必ずお一人でした。あのナトラですら……他の神と会った事がないと言い切ったのですよ」

 ナトラが、他の神と会った事が無いと言い切った?
 ……ちょっと待ってよ。それ、どういうこと。
 神様は一人ずつしか現れなくて、お互いに会った事が無いってこと?
 なにそれ。ど、どういうことなんだ。

「……黒曜の使者が殺したから、代替わりしたってことか?」
「そうだとしたら、キュウマも神を殺した事になるのですが……しかし、儂はそのような事をしたとキュウマから報告を貰った事は無いのですよ。あの凌天閣りょうてんかくの隠し部屋を共に開き、真実を知って友となった後も……神を殺したとは、言わなかった。それなのに、混沌の神であるリンが降臨なさり、その後キュウマは消えたのです」
「ん……んん……?」

 バリーウッドさんが何を言いたいのか、イマイチよく解らない。
 思わず顔を歪めるブラックと俺に、バリーウッドさんは頭を掻いて動揺したように体を左右に軽く回しながら「申し訳ない」と気弱に零した。

「申し訳ない……儂も、いまだに上手くまとまらんのです。……ただ、一つだけ言える事は、ジューザ様が降臨なさった時は黒曜の使者が現れたという報告を受けましたが、ナトラ様が降臨なさった時には黒曜の使者の影は見えなかった。なのに、彼女は消え、その後に訪れたキュウマが消え、リン様が現れた。……黒曜の使者は神殺しを行う役目を持っているのに、何故かキュウマの時は神が不在だったのです。順番から言えば……恐らく、ナトラ様が討たれる予定だったのでしょうに」

 確かにそれはちょっと変だ。
 ナトラの時代には黒曜の使者が出現していない。なのに彼女は姿を見せなくなり、その後にキュウマがやって来た。と、思ったら、彼も消えてその次にリンが来て……となると、確かに何か納得いかないものがある。

「あの……リンの時に、黒曜の使者は……」
「それが、リン様もやがてお隠れになったのですよ。けれど、この時も黒曜の使者が出現したと言う話は聞いておりません。リン様が降臨なさった頃にはシアンの特技も発現しておりましたので、もし黒曜の使者が現れればツカサ様の時のように“予見よげん”が現れたはずなのですが……それもなかったようで……」

 うむ……ううむ……?
 ナトラの時は黒曜の使者がいなくて、キュウマの時は神様がいない。
 なのに、二人とも消えたら混沌の神であるリンがディルムに現れて、そのリンの時も黒曜の使者は現れなかった。そして、俺の時も……神様がいるのかいないのか。

「……えっと……一応聞くんですけど、リンの後に神様って……」
「降臨したという記録はありませんね……」

 それって、えって……ええと…………ええ……?
 ちょっと待ってワケ解んなくなってきた。新たに問題増えてないかコレ。
 仮に俺が神殺しのために召喚されたんだとしても、今神様いなくない?
 なのになんで俺召喚されたの。滅茶苦茶おかしくない、なにこれどういうこと。

「えーと……結局、神の最後も使者の最後も解らないって事……?」

 ブラックが半疑問形で問うと、バリーウッドさんは困ったように眉根を寄せた。

「ぶっちゃけた話、対立していた、という記録は有りますが……我々は神々の最期を知る立場にはないのですよ。……後で見せると言ってた【六つの神の書】も、神々の功績を自動的に記した書板というだけで消滅したかどうかも謎ですからね……。ゆえに儂は、キュウマとあのアスカーの日記を見つけるまで、真実を知らなかったのです」
「それ……ツカサ君が見る意味あったの?」
「アスカー神の残した“黒曜の使者”に関しての情報と、黒曜の使者が出現したのちの神の功績を照らし合わせれば、大まかな確執は判るので……まあ、それもアスカーの日記を見てしまえば、見なくても良い物なのですが……」

 おい、いきなり価値が下がりまくってないか【六つの神の書】……。
 今までの神様の事が書かれている機密文書みたいなもんだと想ってたのに、実際は功績が記されている書板だったとは……あれ、でもそれならどうしてクロッコさんは俺にソレを読めって言ってくれたんだろう。

 クロッコさんも凄い書板だって思ってたのかな。
 でも、なんか内容を知ってたっぽいし……。

 そこまで考えて、俺は妙な違和感に気付いて制止した。
 何かが引っ掛かる。それは何なんだろうと考えようとした――――刹那。

「ツカサ君っ」
「――――ッ!?」

 隣から思いきり抱きつかれて、そのまま椅子から強引に引き摺り上げられる。
 何事だと思ったと同時、目の前に勢いよく白い色が飛び込んできて、視界が一気にさえぎられた。目の前にあったはずの机すら、うすぼんやりとしていて正体が掴めない。

「なんだこの霧……!」

 霧。そうか、これ、霧だ。

「うわあああ! ちょっ、なっ、なんでっ、なんで部屋の中にまで霧が!?」

 王宮の建物の中で霧が出て来た。
 ってことは、この次って…………。











※遅れて申し訳ないです…
 
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