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空中都市ディルム、繋ぐ手は闇の行先編
真情
しおりを挟む※ブラックが酷いです(暴力表現注意)
「――――で。ツカサ君の“衝撃が快楽に変換される”ってどういうこと?」
たったの三度くらいの精液を放っただけで、狭くて心地良いツカサのナカは満杯になってしまったらしく、突く度にぶちゅぶちゅと淫らな音を立てている。
だが、ツカサは突き上げられ続けて意識を失っているらしく、ブラックの肩に頭を預けて揺さぶられるままに体を動かしていた。
たった三度ほどいつものように突き上げただけなのに、だいぶ間が空いていた為かツカサはまた最初の頃のような状態に戻ってしまっているようだ。
恐らく、感覚まで処女に近い状態だった時に戻っているのではなかろうか。
何度犯しても初々しい反応をしてくれるのは嬉しいが、自分が付けてきた痕がすぐに消えてしまうのはいただけない。放って置くとまたキツすぎる肉穴に戻るのなら、やはり毎日犯して自分好みの体に引き戻すしかないかとブラックは思った。
(まあ僕としては望むところだけど、ツカサ君がどう言うかなぁ……。うーん……やっぱり“アレ”を早いとこ完成させて、免罪符でも作るしかないかな?)
とはいえ、今はその事を深く考えている場合では無い。
自分の腕の中で痙攣しているツカサを抱き込みながら、ブラックは腰を動かした。
「はっ……は……ぁっ……んぐっ」
意識は失っていても、己の唾液に溺れる事は無い。
喉を曝して己の唾液を嚥下するツカサが可愛らしくて、頭を掴み強引にキスをすると、空気を取り込む術を失った体は無意識に口を動かしブラックを愉しませた。
柔らかい唇が動く感触は、まるでブラックの唇を愛撫しているようだ。
無意識の動きすらも自分を楽しませてくれるツカサに思わず股間が疼き、また“酷いこと”をして泣かせたくなったが……今はそんな場合では無い。
ゆるくナカを突くだけで大仰に痙攣するツカサは楽しいし、まだまだ夜が明けるまでセックスを楽しみたかったが、今は目の前で浅ましく股間を膨張させているクズと話をせねばならないのだ。
それを思うと気が重かったが、ツカサと繋がっているなら多少は耐えられる。
己を包む肉壁の心地良さに酔いながらも、ブラックはツカサの肩越しに居座る熊男を目を細めて睨み付けた。
相手はというと、ブラックの先程の問いを聞いているのかいないのか、未だに拘束具によって足を開き無意識に体を反応させているツカサを見ながら、興奮する股間を隠しもせず食い入るようにツカサのどろどろになった下着を凝視していた。
恋敵の前で己の恋人を犯して見せるのは、実に胸が透く行為だ。
しかし、今はその事に酔っている訳にも行かない。
早く返答しろと眉根を寄せると、相手は視線を左右に一往復させてから、ぽつりと答えた。
「……ツカサは、他人に曜気を与えられるが……お前達“グリモア”は、ツカサの承諾を得ること無く触れさえすれば無条件で曜気を奪えるのだったな」
「それがなに?」
「オレも、同じ事が出来る」
――――何を言われたか、一瞬理解しかねた。
だが、すぐにその異常性と相手の特異性を思い知る。
頭の中では既に幾つかの仮定が提示されていたが、ブラックは考えを今すぐ定めるべきではないと思い直した。
「詳しく話せ。お前の話は毎回ブツギリで分かりにくいんだよクソが」
「……恐らくトランクルに滞在している時からだと思うが……あの時オレは少し急いていて、ツカサから力を欲しいと思った。そうしたら、望むがままに力を得られるようになって……最初はうまくかちあっただけだと思っていたが、何度かツカサに力を貰う内に、それはオレが引き起こしている事だと悟ったんだ」
なるほど。この男もバカではないらしい。
恐らく、ツカサから曜気を貰う時に“曜気の流れ”を己で制御し操ってみたのだろう。もし曜気の受け渡しをツカサ自身が制御しているなら、必ずどこかで曜気の流れは制限を受けて途切れるはずだ。しかし、己が望んだ量を望んだ速さで巻き取れた時、それは間違いなく“自分が支配している”という事になる。
流れの把握は曜術を使う曜術師の基本動作ではあったが、通常“他人から曜気を受け取る”という行為が有り得ない事であるがゆえに、その方法は思いつきにくい事だっただろう。だが、この熊男は獣人であるにもかかわらず曜術を扱う事の出来る謎の例外的存在だ。その特異性が、この方法を思い付かせたのかも知れない。
しかしそうなると……まずい事になる。
「お前だけか?」
「それはよく判らない。オレが特殊な存在だからなのか、それとも……ツカサが受け入れてくれたから、オレもグリモアのように“奪う”事が出来たのかは不明だ。だが、現実にソレを出来るようになったオレは、確かめるために、何度かツカサから密かに曜気を奪った。微々たる量だけだがな」
この熊はツカサに触れる機会が多かった。だから、その時に吸ったのだろう。
もしくは、エサを食う時に精液や汗だけでなく曜気も奪ったのか……なんにせよ、油断ならない熊だ。この男は阿呆のように見えるが、頭の中では意外にまともな事を考えている。口調からして下民の出ではないことはすぐに予想が付いたが、しかし、ここまで曜気に関しての知識が有るとは思わなかった。
(まったく、これだから油断できないんだよな……)
実際、その小賢しい頭脳が有るおかげで、この忌々しい駄熊はツカサに取り入り、事もあろうに乱暴を働いておいて許されるという離れ業をやってのけたのだ。
何故曜術が使えるのかは未だによく解らないが、こうしてツカサに取り入り様々な事を知ろうとするこの熊を侮る事は、絶対に出来なかった。
ブラックがそんな事を思っているのを知ってか知らずか、相手は続ける。
「その段階で、妙なことに気付いたんだ。相手に曜気を渡す時、程度の違いはあれどツカサは必ず反応し、疲労する。だが、基本的にツカサが自身が望んで曜気を渡す時は、そんな風に疲労する事は少ない。何故そうなるのだろうかと考えて、そして、ふと……ツカサの体が別の反応をするという事に気付いていたんだ」
「は? じゃあ、その機能を見つけた切欠は判らないってこと?」
ふざけた答えだが、目の前の熊男はたしかに頷いた。
「痛がるな、と、そう思った時に……ツカサの体が反応した。それから、ツカサには“曜気を奪われる場合に、衝撃を快楽に変える”能力が有ると気付いたんだ。何故そんな事になるのかは分からないが……恐らくそれは、本来ならグリモアに関係することなのだと思う。オレは、何らかの理由でそれを例外的に使えているんだ」
――――なるほど。
もし、ツカサのその自己防衛機能とも呼べる不可解な機能が、本来ならグリモア達に“支配”された場合に引き起こされるものだったとしたら……辻褄が合う。
つまり、それは支配する側に都合のいい道具にする為の機能なのだ。
曜気を喰らいながら、媚薬を獲物の体内に巡らせて遊ぶ。
強引に曜気を奪う時に痛みに叫ばれる事が無いように、快楽に変換させる。
時には、その機能を自分の嗜虐心を満足させるために行う悪意に満ちたグリモアも居るかもしれない。だがそれは、グリモアには当然の権利なのだ。
徹底的に虐げられ、奪われるために存在する機能。
それが……曜気を奪われる時に衝撃が快楽に変換される理由なのだろう。
(はは……なんだか凄く胸糞悪いな)
自分が「正攻法でツカサを絶頂させている」という自負があるからこそ、このような自惚れに満ちた支配者の所業が我慢ならなかった。
ブラックは、ツカサに愛して貰っている。だから、彼の体に無条件で触れることが出来、そしてツカサからの愛情を受ける事が出来るのだ。
それを「機能」というクソッタレなモノで踏みにじられるのが憎らしい。
自分が行う分にはいいが、こうやって卑怯に使われるのは非常に不愉快だ。
ブラックはそんな機能など使わずに、ツカサを最高に気持ちよくしてやれる。今回だって、その機能の事を聞いても使う事は無かったのだ。
ブラックとツカサの間には、あいまいな関係など何一つないのだから。
なのに、この熊男は使った。
一方的にツカサに甘えて、わがままを言って、そのふざけた機能を悪用してツカサを今度こそ自分の物にしようとしたのだ。
その事を考えると――――我慢が、出来なかった。
「……まあ、でも……ちゃんと喋った事は評価してやるよ」
ツカサの足の拘束を解き、ベッドに解放してやる。
片手で抱えて優しく寝かせてやり、ブラックはベッド脇の壁に適当に寄りかからせていた剣を取った。そうして、下半身を直しもせずに酷い恰好をしたまま剣を抜く。
だが、目の前の熊は全てを悟っているのか逃げようとはしなかった。
その覚悟は敵ながらあっぱれだが、許してやる義理は無い。
「お前さあ、分かってる? 僕言ったよね。ツカサ君に手を出したら殺すって」
「承知していた」
「ふーん。じゃあ死んでも良いんだ」
鞘を捨て、目の前で椅子にしっかりと座っている相手の首に、銀光を反射する刀身を添える。今にも切り捨てられそうな程に剣は輝いていたが、それでも駄熊は何かを覚悟するように拳を握って耳を伏せた。
「……………」
ブラックが何かを言う度に、少しだけ反応しているのが解る。
怒られて反省している子分のつもりなのだろうか。だが、もう遅かった。
「テメェ調子に乗り過ぎなんだよ」
そう言って、ブラックは剣をすぐさま引くと――――
椅子に座った愚かな男の左肩めがけて、剣を突き立てた。
「ウグッ……!! ぅ゛……あ゛……!!」
「ツカサ君を犯そうとするな、と僕は散々言っただろう。なんで分からないんだ? お前の頭は獣以下なのか? 我儘でツカサ君を困らせて迷惑をかけて僕の恋人を酷く消耗させた罪がこの程度の事で済むと思うか?」
また剣を深く差し入れ、骨ごと切り捨てようかと少し上に動かす。
そうされれば致命傷になると相手も解っているらしいが、しかし、「深く反省している」と態度で示したいからなのか何なのか、熊男はその場から動かなかった。
これで誠実さを示したつもりなのだろうか。片腹痛い。
ツカサが許したとしても、許せない。
だから本当に、今ここで切って捨てて殺してやろうと思っていた。
――だが、そうすればツカサが悲しむ事も知っていて。
結局、ブラックも、「殺す」とまではいけなかった。
「はー……死んでほしいのになぁ! クソが」
「…………ッ、ぐ……」
「僕はそれなりにお前に温情をくれてやっているつもりだが、馬鹿にしてるのか?」
「ッ……ちが、う……オレが……っ、ツカサを、信じきれずに……それで……」
それは、ツカサから聞いた。
この男は過去に孤独を味わった経験が有る。それが心の傷になっていて、今まではツカサに頼られる事で、自分の存在意義があると思っていた。だからこそ、ツカサが完全にブラックに堕ちたことで自暴自棄になり、ツカサに八つ当たりしたのだと。
……そこまでは言っていなかった気がするが、しかしそれは事実だろう。
その話を聞いた時から、こうするつもりだった。
殺したい、というのが本音だったが、ここで殺しをして神族達に邪悪と認定されるような真似はしたくない。ツカサに避けられるような事も絶対に出来なかった。
だから、百歩、いや、一億万歩譲って、刺すだけにとどめたのだが……。
(やっぱり、足りない。ペニスから斬り落として体を八つ裂きにしても足りないんだが。どうしてこういう奴らって僕が言ったこと聞かないのかな? 馬鹿なのかなあ)
軽くえぐると、相手が耐えるようなうめき声が聞こえる。
これがツカサの声なら勃起は避けられないが、熊男の声など萎える一方だ。
本当はブラックだってこんな残虐行為などしたくはない。面倒だし殺さないようにするのも大変だからだ。しかし、躾けというものは人族にだって必要なものであり、疎かにすれば、今回のように愚か者が調子に乗るスキを与えてしまう。
だから、もう二度とさせないために、こうするほかなかったのである。
…………躾というよりも、怒りが抑えられなくて刺した、という方が適切なのかもしれないが、今のブラックにはそんな事はどうでも良かった。
「二度とするなよクソが。もう、二度は言わない。今度やったら確実に殺す」
そう言うと、相手は何か信じられないような顔をしてブラックを見た。
目を丸くして驚いたような顔を向けられ、その様が実に気持ち悪くてブラックは剣を引き抜いた。ああ、剣が血で汚れてしまって憂鬱だ。
「許して……くれるのか……?」
刺された場所を手で押さえて止血しながら、驚いたような声を出す駄熊。
そのマヌケな声に、ブラックは目を見開いて睨み付けながら歯軋りをした。
「許してるわけねえだろバカかお前は? 殺すぞクズが。……ツカサ君がお前を必要としている間は殺せないだけだ。そうじゃなけりゃ今すぐ首と胴体を切り離してる」
「…………」
何を言いたいのか解らないが、熊男はブラックをじっと見ている。
肩から血を流しているというのに、その顔は相変わらず無表情だった。
だが。
「ツカサの言う通りだ……」
「あ゛?」
何が言いたいんだと睨むと、相手は首を振った。
「感謝する。……オレはもう二度と、あんな事はしない。堂々と、ツカサに抱きたいとねだる。我慢も遠慮もしない。素直になる」
「は? 何言ってんのお前」
「だから、オレは……今度こそ本当に、お前達の仲間になろうと思う」
「…………」
「オレは、お前達のために命をかける。愛しいツカサのためにお前を守る。群れの長であるお前のために、ツカサを守ろう。だがその代わりに……オレは、ツカサを愛す事を隠さない。言いたい事を言う。付いて行く。約束など無くても、己の意思で……」
そう言って、一拍置くと……駄熊は口元だけを笑みに歪めた。
「だから、オレはお前達の仲間だと……言っても良いか」
…………何を言っているのだろう、この脳みそが茹だっている男は。
恐怖のあまりに狂ったのではないか。そうは思ったが……――――
「……勝手にしろ」
何故か言葉が出なくて、ブラックはそれ以外の事は言えなかった。
(チッ。ああもう、だから嫌なんだよコイツ。たまに理解不能なこと言うしさあ)
だが、こんなどうしようもないクズでもツカサにとっては無くてはならない奴だ。そのことが非常に悔やまれてならなかったが、ブラックは深々と溜息を吐き出すと、ツカサのバッグから回復薬を取り出して駄熊へと放った。
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