異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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空中都市ディルム、繋ぐ手は闇の行先編

13.例え血を分けたとしても1

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   ◆



 現状、ゲームで言う所の進行率は全く満たされていない。
 パーセントで言うと10%行くか行かないかだ。

 エーリカさんが味方になってくれて、シアンさんの元上司で現右腕という神族の〝真祖しんそ”であるバリーウッドさんに話を取り付けたはいいが、得られた情報はと言うと「エメロードさんがシアンさんを憎んでいるのは一朝一夕の事では無く、かなり根が深い問題だ」という事と、それに関して「シアンさんの息子であるアイスローズさんが詳しく知っているかも知れない」という事だけだ。

 あと、それと……エメロードさんは、果たせないような約束はさせないってバリーウッドさんは言っていたけど……それが本当なら、俺達がここで色々調べていれば彼女が言っている「犯人」に辿り着くのかな。

 そもそも、なんでシアンさんの無実の証拠をエメロードさんが持っているのかって所や、どうしてそれをダシにして俺達に犯人捜しをさせたいのかってのも謎ではあるんだが……。まあ、考えていても仕方がない。
 手掛かりのない今の状況では、とにかく手探りでとっかかりを探すしかないんだ。

 ……とまあそんなワケで、俺達はバリーウッドさんがアイスローズさんに取り次いでくれるまで、別荘で再び待つ事になったのだが。

「ツカサく~ん。今の内に、お尻を慣らしとこっか?」
「ヒッ……」

 時間が出来たとなるとすぐこれだ。

 横から伸びてきたブラック手をなんとか避けて、俺は一緒に座っていたソファから逃げる。良く考えたら何で俺はブラックと二人でソファに座ってんだ。いくらなんでも自然に受け入れすぎだろオイ。あれか、今いる場所が、一階にあったくつろげるリビングのような共用部屋だったからか。

 だけどそれにしたって男二人でソファは無いだろう。俺はもう十七歳だぞ、パパ~とか言って一緒に座る歳でもないんだぞ。いや俺パパとか言った時ないけどね!?

 ああもうっ、折角小休憩でも取ろうと思ったのに、なんでコイツはまたスケベな事をしてこようとするんだ。俺は休みたいの、一服入れたいの! 
 それなのに、一息ついた途端に「お尻慣らしとこ」だなんて……。だがそう何度もヤられてたまるかってんだ。あっ、あんな苦しいのなんて、一回で充分なんだ。
 もう今日は絶対えっちな事はさせないんだからな!

「おやー? ツカサ君、僕とお尻を慣らすって約束したんじゃなかったっけぇ?」
「ム。約束を破るのはいかんぞツカサ」
「ぐ……ぐぬぬ……」

 そりゃそんな約束しましたけど、でもこんな一日に何度もやるなんて聞いてない。
 これは約束の過度な解釈だ。俺は悪くない、こんなの不当だ。

「やっ、やるにしても部屋とか、よ、夜とか……そういう時だろ!? なんで昼間にっ、こんな人が来そうな部屋でっ、そ、そ、そんなことするんだよ!」
「え? 夜なら良いの?」
「だ……だって、約束だし……」

 う、う、うううう、馬鹿みたい馬鹿みたいなんでこんな事言っちゃってんの俺。
 そりゃ約束だよ、約束だけどさ、でもそんな、こんな恥ずかしいこと言うとか。
 だあもうチクショウ、こんなこと言わせんな!!

「ふ~ん? でもさあ、それじゃあツカサ君の体はいつまで経っても慣れないよ? ずっと僕とセックスするの先延ばしにしてフェラだけしてたいの?」
「そっ、そんなの別に……」
「ちょうど良いから、今ここで色々決着付けよっか。ほらおいで」
「ぃっ……」

 俺が反応するよりも早くブラックが立ち上がる。慌てて逃げようとしたけど、相手の腕のリーチは長く、俺は簡単に捕えられてソファに引き戻されてしまった。
 そうしてそのまま、膝の上に抱き上げられる。
 目の前には既にもうクロウがスタンバイしていて、俺的には四面楚歌だった。

 この状況はヤバい。非常にヤバい。

「ツカサ君もさあ、早くお尻をめちゃくちゃにされたいでしょ?」
「ひゃあっ!?」

 背後からズボン越しに尾てい骨の辺りを撫でられて、思わず驚いてしまった。
 そんな事をすればブラックが調子づくと解っているのに、布を尻の谷間に押し込むように太い指をくいこませて来る感覚にどうしても耐えられない。

 太い指の感触を布越しに感じるたびに股間まで刺激されてるような気がして、俺は反射的に足を閉じてしまう。目の前にいるのがクロウだけだって解ってても、こんな事で股間の辺りがじわじわ反応してしまうのが恥ずかしくて仕方なかった。

 だ、だって、愚息を直接揉まれたっていうならまだしも、尻の谷間を指でぐいぐいされてるだけで変な感じになるなんて、こんなの……。

「さて、ツカサ君は昨日、火山で駄熊と色々あったって話をしてくれたけど……襲った所の詳しい部分って、話してくれてなかったよね? それを今、聞こうじゃないか。こういう話はさっさとやっといた方が良いからねぇ」
「ぃっあっ、や、だ……っ! は、話すっ、話すからそれやめろってばぁっ!」

 ズボンの上からムリヤリ穴を触ってくんな! ズボンが伸びたらどうしてくれる、やめろっ、頼むから指でぐりぐりしてくんなああああ!

 本当に勘弁して、と泣き言を言いそうになったその時。
 コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

「……チッ。ツカサ君、あとでたっぷり聞かせて貰うからね……」
「う、うううう」

 そう言うと、ブラックは入れと声をかける。
 だけどひざの上に座らされたままじゃどうにも我慢出来ず、俺はブラックの一瞬の隙を突いてドアが開く前に横に避けた。
 ふっ、ふうう、なんとかセーフ……。

「皆様、アイスローズ様がいらしたのでご案内してもよろしいでしょうか?」
「ああ。早くな」

 ブラックの機嫌がすこぶる悪い。
 だが俺だってぐいぐい尻を触られたせいで、まだ下半身がおかしいんだからな。
 くそう、こ、これもブラックが昨日あんなに弄繰いじくまわして放置するから……いや、イカンイカン。俺は冷静になるんだ。俺しかまともな話が出来ないんだから、なんとか俺だけは平静を保たないと……!

「こちらですアイスローズ様」

 ヒエッ。も、もう来ちゃったの?!

 とにかくクロウを俺達の側のソファに座らせて待っていると、エーリカさんが俺達の向かい側のソファの傍に誰かを連れて来た。
 もしかして彼がアイスローズさんだろうか。
 思わず見上げるその人は――――息をのむほど、美しい青年だった。

「っ……」

 青を含んだ銀色の髪に、シアンさんと同じ青くて美しい色の瞳。
 目はシアンさんに似ていて切れ長で怜悧な感じを思わせるし、細い輪郭や小さく整っていながらも高い鼻も親譲りだなと思わせるが、穏やかそうに少し上がり気味になった眉や穏やかに微笑む口元は、クールビューティーな若い姿のシアンさんよりも親しみやすい印象を覚えた。

 いやでも美老女姿のシアンさんには似てるかな。しかし本当に綺麗な人だ。
 片目を少し隠しがちな髪の毛はサラサラとしていて、肩幅もそこまで主張してないから、モテ度は世界協定に居たメスお兄さんといい勝負だと思う。
 ということは……この人もメスなのかな?

 失礼にもまじまじと見てしまった俺に、アイスローズさんは微苦笑した。

「初めまして、皆様。私がアイスローズ=オブ・セル・ウァンティアです。貴方がたが、母がいつも話してくれていた御三方ですね。母がいつもお世話になっております。それと……今回の事にも巻き込んでしまって、本当に申し訳ありません……」
「あ、い、いえそんな……お気になさらないで下さい」

 出会うなり深く頭を下げて来たアイスローズさんに、俺は慌てて答える。
 彼が言っているのは、プレイン共和国に関するゴタゴタでの事だよな。ということは、アイスローズさんは結構深い所まで教えて貰っているのだろうか。

 それとも、バリーウッドさんが今回の事を話してくれたのかな。
 アイスローズさんの振る舞いに目をしばたたかせる俺達に、彼は更に申し訳なさそうに眉根を寄せると、向かい側の席に座って膝の前で両手を組んだ。

「貴方がたの事は、私も多少は存じております。ブラックさんとより絆が深まったということも、種族の異なる母をツカサさんが慕ってくれているという事もね」
「そ、そんな……」
「照れる事はありませんよ。……私はとても嬉しいんです。母は、昔から仲間と言う物を作れた試しが無かった。母が受け身で全てを諦めるせいで何もかもが失われて、セレストのことだって……」
「え……」

 セレストって、なんだ。名前なのか? それとも何かの物なのかな?

 どういう事だろうと眉根を寄せた俺に気付いたのか、アイスローズさんはハッと我に返り慌てて「気にするな」と言わんばかりに手を振った。

「今のは話は忘れて下さい。身内の事ですので……それに、そんな事を話している場合ではありませんでした。申し訳ない。……ええと、それで……貴方達が聞きたい事は……母と姉上様である女王陛下のことでしたよね。私も全てを知っているとは言えませんが、出来る限りの事をお話します」

 アイスローズさんがそう言うと、エーリカさんがタイミングよく俺達にお茶を運んできてくれた。

「……まずは、落ち着きましょう。長い話になりますから」

 そういって、彼は白磁のカップに口を付けた。














※遅れすみません_| ̄|○ すけべはおあずけ
 
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