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イスタ火山、絶弦を成すは王の牙編
もう我慢しない2
しおりを挟む「あっ、ぅ」
その違和感の正体を考えている間も、クロウは舌で首筋を撫でて俺を追い詰める。太腿を這う手も指に力を入れて肌に食い込ませながら撫で上げて来て、それだけで俺は酷く辛くなり足を閉じてしまった。
だけど、クロウは俺を解放してはくれない。
それどころか、抱えた俺を調理台の上へと載せて真正面に陣取ってしまった。地面に足のつかない場所へと座らされてしまったら、俺にはもうどうする事も出来ない。
どうしたものかと思ったが、クロウが食べたいって言うのなら……その……応えてやらなきゃっていうか、そもそもそういう約束だしっていうか……。
「服をたくし上げろ、ツカサ」
「ぅ……うん……」
ま、前もやったんだから、このくらいなんて事無い。
クロウは今日頑張ってくれたんだし、せっかく仲直りも出来たんだし、今はイヤだとか恥ずかしいとか言わないようにしなければ。少しでも躊躇ったら、またクロウが不安になってしまうかもしれないし……。
だけど、やっぱこういうのって慣れないよ。
恥ずかしくてまた顔が熱くなってしまったが、今更ちょっと待ってとは言えない。
ぎこちなく服をたくし上げて肌を見せると、クロウの手が胸を撫でて来る。
「っ……」
クロウの掌は、皮が熱くて少しざらついている。だけどとても熱くて、今は軽く湿っていた。その感触はブラックとはまた違うもので、乳首の周りを指でなぞられると、反射的に腰が震えてしまう。
そんな俺にクロウは軽く笑って、触れないようにしながら、乳首の周りを指でくるくるとなぞって来た。少し力を入れて指で肌を沈ませながら、時々爪で擦って来て、その刺激は僅かな物なのに顔がいちいち歪んでしまって辛い。
俺達の他にはペコリアしか居ないとは言えど、そこそこ開放的な場所でこんな風にやらしい事をしていると思うと、凄く恥ずかしくなる。
恥ずかしがったらいけないと思ってるんだけど、でも、自分の裸をまじまじと見られているんだから赤くなったって仕方ないよな……?
「周りを撫でただけで、もう緩く勃ち上がって来たな。相変わらず淫らな乳首だ」
「ぅ、あ……だ、だって……そんな風に触るから……っ」
「ツカサの乳首は誰が触ったってこうなるんじゃないのか?」
「そっ、そんなこと……っ」
ない、と言おうとした所で、まだ膨らんだ程度の乳首を片方きゅうっと抓られて、俺は思わず体を緊張させて声を飲み込んでしまった。
「ぃっ、う……!」
「摘ままれているだけで腰が動くなんて、堪え性のない体だな」
「だ、って」
「胸を弄られるだけで足を閉じて震わせているのに、だっても何もないだろう」
俺を詰るように言いながら、クロウは放っておかれていたもう片方に顔を寄せた。
ねっとりと舌で舐め上げられて、我慢出来ずに高い変な声が出てしまう。だけど、クロウはそんな俺に構う事も無く、濡れて冷えた感覚に勃ち上がってしまった乳首を待っていたかのように、乳首を口に含んで軽く擦って来た。
「うあぁっ! ぅっ、ゃ、吸うのだめっ、指と一緒にするのヤダ……っ!!」
「嫌? 体はイヤどころか喜んでいるようだが」
「や、ぁ……っ、う、うぅう……っ」
やっぱり、変だ。普段はこんな風に俺を詰……いや、詰ってたかも知れないけど、でも、こうも意地悪に俺をいじめたりなんかはしなかったはずだ。
こんなの、まるであの時と一緒じゃないか。俺が約束を破って体を洗おうとした時に怒ってお仕置きしたあの時と……あ、あああ、やっぱりまだ怒ってるのか?!
どうしよう、またクロウを嫌な気分にさせたくない。
こういう時ってどうすればいいんだ。媚びるのは何か違うよな。でも嫌がってたら、またクロウが悲しむかもしれないし、黙るのもなんか違うし。
じゃあどうしたらいいんだと困り果てるが、クロウは俺の事など構わずに、乳首を摘まんでくりくりと捏ね回したり、わざとらしく音を立ててちゅうちゅうと吸ったり舌でぴたぴたタッピングをしてきたりする。
乳首よりも大きな舌に押し潰されて弄られると、それだけでもう堪らなくて。
服を持ち上げる両手はいつの間にか強く布を掴んで、抵抗する事すらも出来ない。俺は顔をぎゅっと顰めながら、高い声が出ないように理性で抑え込んで、相手が満足するまで耐えているほかなかった。
だけど、そんな俺の態度が気に入らなかったのか、クロウは口を離して不満そうに俺の顔を見上げる。潤んだ視界で見ているせいか、余計にクロウが不機嫌そうに見えた。思わず俺が眉根を寄せると、クロウは目を細めて手を移動させる。
「オレの愛撫は、気持ち良くないのか?」
「え……」
「そんな泣きそうな顔をして耐えるのは、嫌だということか」
イヤ、って……そ、そんな。
そりゃその、えっちな事をされるのは恥ずかしいけど、でも、そうじゃなくて。
い、嫌だったらこんな事してない……でもそう言ってもクロウは納得してくれないような気がする。だってそれはまだ俺の本心の表面上の言葉で、本当は……その……ほ、本当の、ところは……。
「黙っているということは、その通りという事か」
「ちっ、違うっ!」
そうじゃない。そんな事なんて微塵も考えてない。
咄嗟にそう返したが、俺を見つめて来るクロウは納得していないようだ。
……本当の事を……鼻で笑われるかもしれない事を言うのは、とても苦しい。
けれど、そこまで話さないと解ってくれないのかも知れない。クロウもブラックと一緒で、本音を欲しがっているんじゃないのかな。
二人はどこか似ていて、それをお互いに理解しているからこそ、少しずつ仲良くなっていっている事を俺は知っている。
だったら、クロウだって、ブラックと同じなのかも知れない。
俺だって、本当の言葉が貰えるなら欲しいと思う時が有る。だったら、もう二度と俺がクロウの事をないがしろにしたと思わせないためにも、言わなければならないんじゃないのか。本音を話すくらい大事だって、そのくらい大切だって、伝える為に。
…………それは、俺にとってすごく難しい事だったけど……。
「…………は、恥ずかしい、んだ」
「恥ずかしい?」
疑うような口調で返してくるクロウに、頷く。
顔はもうカンカンに熱くなっていて、熱いどころか痛い。情けなくてみっともない本音を言わなければならないと思うと、体中から発火して死んでしまいそうだった。
けれど、言わなければ伝わらない。
クロウにもブラックにも、本当の気持ちが必要なんだ。
だから俺は煩いくらいに鳴る心臓を抑えて、真っ赤になりそうな視界を必死で相手へと向けながら、震える口を開いた。
淫らだと、そう言われても仕方がないような事を言うために。
「ほ、本当は……ブラックだけに、こうなるべきだって、分かってるんだけど……でも、クロウにだけは、その……さ、触られたり、えっちなことされたり、すると……すぐに、俺も反応、しちゃって……すぐ、た、勃ちそうで、恥ずかしくて……」
「ツカサ……」
「でも、そんなこと、言ったら……笑われるんじゃないかって……」
そう言うと、クロウは急に俺の脇に手を突っ込んで、俺を持ち上げた。
「く、くろう!?」
予期せぬ行動に驚いて名前を呼ぶけど、クロウは全く構わずに俺を床に寝かせる。何をするのかと思ったら、そのまま俺の服を脱がし始めた。
二の句を言う暇もなくズボンと下着を剥ぎ取られて、強引に足を割り開かれる。
あまりに性急な行動に硬直してしまったが、しかしクロウの腕は俺の体の動きなど物ともせずに足を曲げさせて押し入って来た。
え、なにこれ。どうしたの。食事の続き?
また何かされるのだろうかと思わず唇を軽く噛んだ俺に、クロウは橙色の瞳をじっと向けて来ると――――上着の紐を解いた。
「えっ……」
「そうか。ブラック以外はオレだけ……か。お前はオレに愛撫されて本当にそれほど感じていると言うんだな」
なに。なんで脱ぐの。これ、食事だったんじゃ、ないの。
目の前でクロウが上着も、中に着ていた服も脱いでしまう。
俺は下半身が裸で、クロウは上だけ何も着てなくて……そう思っていると、俺はシャツまで脱がされて丸裸にされてしまった。
俺は全裸で、クロウは浅黒くて逞しい上半身で――――
「なら、オレに抱かれても嫌じゃないということだな?」
……ん?
だかれ。だかれて……抱かれて……?!
抱かれてもイヤじゃないって、それ、も、もしかして、いやもしかしなくても、えっちな方の奴だよな。ブラックとしてる方のやつだよな!?
しょ、食事って言ったのに何で脱いで、いやでもクロウは食事って言ったんだから本当はそっちのハズ、でも今は話がこじれててクロウも機嫌が悪くて、だから俺の、だ、だから、だからこれ、なんで、なんで……。
「く……クロウ、ごはん食べるって……」
「ああ食べるとも。今からな」
必死に絞り出した言葉を、クロウはせせら笑うような声で流す。
嘘は言っていない、だけどやっぱりおかしい。
どうして上着を脱いだんだ。なんで俺を素っ裸にしたんだ?
こんなのいつもと違う。変だ。おかしいよ。
お、落ちつけ俺。混乱するんじゃない。何でこんな事をするのか聞くんだ。
クロウの裸なんて風呂で見たりするじゃないか。食事の時にクロウが服を脱いだりしないからって、いつもと違うと焦ったりする必要はない。
これはあれだ。趣向を変えたという奴だろう。クロウだってたまには裸になりたいのかもしれないじゃないか。だから違う、変じゃない。
今から行う行為は、食事以外の何物でもない。裸になったって、食事なんだ。
だから怖い事なんて何もない。
……そうは思うけど……どうしても、聞かずにはいられなくて。
どんな答えが返って来るか判らなくて恐ろしかった癖に、俺はつい自分を組み敷く相手を見上げて、問いかけてしまった。
「クロウ、その……なんで、服を脱いだんだ……?」
「オレに触られて感じていると言うのなら、無理矢理抱かれても感じるだろう?」
――――え?
いま、何言って……。
「直接肌を合わせるのは久しぶりだな……あの露天風呂以来か……。もう二度と肌を合わせる事など出来ないと思っていたが、馬鹿な考えだった。家畜になった下等な犬のように待つなど、誇りある獣のする事ではなかったというのに」
「く、クロウ……」
声が、震えている。
そういうつもりじゃないのに、俺は何故か体を震わせていた。
怖いのか、それとも別の感情から来る震えなのか。自分でもよく分からない。判らないけどこのまま流される事が一番恐ろしくて、俺は無意識にクロウの腕を掴んだ。けれど、クロウはそんな俺に、笑いかける。
何の感情から来る笑みか解らないほどの、穏やかな笑みで。
そうして……とどめを刺すかのように、クロウは俺に優しい声で告げた。
「言っただろう。オレは“もう我慢しない”と」
→
※今回も遅れてすみません……
ちょっと最近諸々の事情が有りまして、それゆえ12時過ぎての更新が
しばらく多くなると思います(;ω;)申し訳ない…
早く更新出来る時はいつも通り日付変更前にやりますので、
一時的に更新時間が不安定になりますが、毎日更新は続けますので
ご了承いただけると助かります…!本当に申し訳ないです(´Д⊂ヽ
えっちな攻防は続く
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