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世界協定カスタリア、世界の果てと儚き願い編
――縺九▽縺ヲ縺ョ**縺ョ險倬鹸
しおりを挟む――これを見ているだろう君に、一つ昔話をしよう。
偉ぶった言い方をするが、こんな世界で暮らしていたらそうもなる。だから、もし君が俺よりも年上だったのなら、子供のたわけた「ごっこ遊び」だと許して欲しい。
俺が歩んだ物語は、きっと君には関係が無い事だろうから。いや、関係するのかも知れないが……俺は、そうはならないようにしたい。だからこそ、この「手紙」を――いや、映像を残すんだ。
……前置きが長くなったな。余計な所はあとで編集して消しておくか。
…………ゴホン。
ええと、とにかく……きっと君には「昔」となる、俺の「今」の話をしよう。
きっと手助けくらいにはなるはずだ。
――――俺が今いるのは、かつて神と異世界人が争った“星の終わり”と呼ばれる場所だ。ここには昔、ジェインという神が居城を構えていたらしい。
彼はもうこの世界には存在しないが、しかしその恐ろしさはこの場所と……アニマが失われてしまったプレイン神国を見ればわかるだろう。俺達の世界では最早曖昧な物になってしまった【神罰】も、この世界ではまったくの現実になる。そこに疑念や否定などはまったく存在しなくなるんだ。
もし君がこの遺跡を造ってしまえるような“神”と、敵対しなければならなくなったのなら……どうか、この国以外の場所に逃れ、仲間を……君自身を信じてくれるような人々を、出来るだけたくさん作って欲しい。
“神”が人々の想いで存在するように、黒曜の使者もまた人々の想い……いや、きみ自身の他人への想いの深さによって、この世界での意義を見出す。
だからこそ、沢山の人と出会って、旅をして、色々な事を見て欲しい。
“神”は、君のその道筋の遥か先にある存在なのだから。
……そんな物と、君は戦わなければならないのだろうか。
君がこれを見つけるのは、何代先になるか解らないが……もしかしたら、もう俺の代で“終わり”なのかもしれないが……それでも、ここに遺しておきたい。
「もしも」という不安は、決して侮ってはならないものなのだから。
「キューマ、それはなに?」
あ、え、いやこれは……。
「あっ……これが前に言っていた、擬似人格投影装置ってキカイね。もうキューマの擬似人格は入れたの?」
……いや、まだだ。
それだけじゃ情報が足りないかも知れないから、メッセージ……ええと、俺の伝言でも入れておこうかと思ってさ。俺の日記だけじゃ、いつ紛失するか判らないし。
念のため、こっちにも入れておいた方がいいだろ?
「ふふ……。キューマったら本当にマメなんだから。冒険者が日記をつけるなんて、とても珍しいことじゃない?」
そういうリズだって、日記をつけてるじゃないか。
「賢者は日々の研鑽を怠らぬ者。記録を元に、明日をどう生きるかを常に考えるものなの。だから、日記は変な事じゃないわ。……ほ、ほんとよ。ほんとだからね」
照れているのが丸わかりなのに、そうやって隠そうとするんだな。
…………。
ああ、お前って奴は本当に……。
「なに?」
いや、なんでもない。
とにかく……他の場所にも「足跡」を残す為にも、ちゃんとして置かなきゃな。
もしも次の黒曜の使者がここに辿り着けなくても、どこかできっと俺の「足跡」を見つけてくれるはずだ。そしてきっと……それは、手助けになるだろう。
「……そうね。それが、貴方が言う“遠い未来に役立つもの”ですものね」
…………ああ、そうだ。
俺はもう、こういう悲しい事は金輪際終わりにしたい。
この俺が召喚された時代が、ナトラさんの時代で平和だったからこそ、もう……ジェインとアスカーの時のような事は起こしてはならないんだ。
「だけど……遠い、遠い未来……。なんだか、想像できないわ。過去だってまだ私達には想像も出来ないような壮大さなのに」
確かに、途方もない時間だ。
けれど俺達は、そうしなければならない。そうだろう。
「……ええ。みんなのために……私が“最後まで”貴方の傍にいる事を許してくれた、他のみんなのためにも……役目を果たさなくっちゃね」
…………ここも、切って置くか。流石に残すのは恥ずかしいしな。
ええと……ゴホン。
――――さて、旅をしたほうが良いと先ほど俺は言ったが……それには、もう一つ理由がある。それは、君を助けるためのヒントを、俺が各地の【空白の国】の遺跡に残して来たからだ。一つの場所にまとめるのは不安だったから、バラまいておいたんだが……面倒だと怒らないでくれるとありがたい。
いくら“神”が消す事の出来ない場所であっても、そこに“神”が入れない……という事は決してないからな。手数は増やすに越したことはない。
……そうだ。何故【空白の国】に隠して置いたのかも説明しなければ。
【空白の国】は、この世界の“バグ”のようなものだ。
消したはずの物が残る、決して消せないようになってしまった。それは、誰にとっても予想外の産物でしかないだろう。だとしたら、誰もそこにヒントが残されているなんて解らないはずだ。神族も、神ですらも、俺の言葉が残っているとは思うまい。
だから、そこに俺の言葉を一つ一つ残していけばいいと思ったんだ。
あの「声」にも惑わされない、「神」すら指図できないこの世界の“バグ”に、俺達が知り得た全てのことを書き記そう。この世界に拉致された、哀れな者のために。
「今」の俺達のように、大切な人を見つけて、幸せに生きて行けるように。
それが、俺の「俺」としての、最後の仕事だ。
きっとこれが、俺達の最後の長い長い旅になるだろう。
この俺の、救真としての、最後の。
「……キューマ、行きましょう。次は“テウルギア”よ」
ああ、そうだな。
最後の場所から、順々に。
一巡りして変わる、この恐ろしくも愛しい世界のように。
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