異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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世界協定カスタリア、世界の果てと儚き願い編

  エンテレケイア遺跡―受命―2

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『……そうだな。いきなりそう言われても、すんなり飲みこめねえか』

 深刻そうに呟くと、キュウマは「たとえ話だが」と前置きして説明を始めた。

 ――神と言う物が存在する世界なら、必ず神話と言う物が存在する。
 一柱ひとはしらの神に収まらない神話の場合、その内容は複雑になり多様化する。その中で、異質な物語が一つ混ざる事が有った。それが……神殺しの物語だ。

 る時は敵対する者に殺され、或る時は邪神と化した神を英雄が殺す。
 だがもっともスタンダードな消滅は、別の神によるものだ。

 しかしこの“神殺し”という神話は、人々が残虐で物悲しい話を求めたから作られたのではない。これがもし「作り話」なら、それには意味が存在するからだ。

 神と言うのは不変の存在、恵みをもたらす存在だ。しかしだからと言って神が衰えないという保証はなく、その存在が常に正しく優しいという訳ではない。
 神だって道を踏み外すし、誤る事も有る。時には自らの愛した人間達を恐怖の底へ突き落す事だって無くはない。時には邪神となって、何百万の人間を虐殺したりすることだってあった。
 神だからこそ、誰も止められないからこそ、暴走してしまうのだ。

 だが、そんな時、必ずと言っていいほど“ある存在”が都合よく世界に誕生した。
 それが――――

「神殺しの、英雄…………」

 俺の呟きに、キュウマは頷いた。

『黒曜の使者は、神の再生を促すための存在……少なくとも、元々は災厄だった訳じゃないんだ。……神やその信徒から見れば、悪魔以上の災厄だったろうけどな』
「なるほど……つまり、ツカサ君はこの世界を正常にするために呼ばれた訳で、黒曜の使者が【災厄】だと誤解されたのは、神や信者の妄言から始まったって事なのか」
『まあ、そんな所だな』

 俺って使命とか有ったんだ……知らなかった……。
 でも、神殺しなんて、そんなの急に言われても実感がわかない。大神官とか魔王様とかに言われたらまだ体中がビリビリくるような緊張感が有ったんだろうけど、俺と同い年の奴に言われても冗談かと思ってしまいそうだった。

 だって、キュウマの語り口は俺の友達と凄くよく似てたし、今まで俺と同じ雰囲気の日本人になんて会った事が無かったんだもん。
 キュウマを見てると、どうしても悪友の事を思い出しちまうんだよ。
 でも……キュウマの話は本当なんだ。友人達との悪ふざけで作ったような話なんかじゃない。これは、現実の、俺が今いる世界に関わる、重要な話なんだ。

 例え、自分には想像できない壮大な話であっても。

「でも、そんな神話みたいなこと……本当にやらなきゃ行けないのかな」

 ぽつりと呟いた俺に、キュウマは眉間の皺を親指で撫でながらうなった。

『……それは、俺も解らない。実際に神殺しを行った事もないし、その光景を見た訳でも無いからな……。もしかしたら、神殺しっていうのは、俺達が考えている事とは別の意味が有るのかもしれん』
「別の意味?」
『ああ。神殺しの神話全部が救世……世界を救う神話って訳じゃないからな。それは例えば……天岩戸あまのいわと神話みたいなもんだ。あれは殺してないけど』
「天岩戸神話って……アマテラスが弟のスサノオに我慢出来なくなって、岩戸に引きこもったって言うあの神話?」

 それなら俺もオタクの基礎知識としてぼんやり知ってるぞ。
 太陽そのものである女神様のアマテラスが、弟のスサノオの蛮行にガチギレして、天岩戸っていう洞窟に籠ってフタしちゃったんだよな。
 その困った事態を、選りすぐりの神様達が解決したって神話だ。

 確かにアレも神様がいなくなってまた出てくる話だけど、黒曜の使者の『神殺し』とどういう繋がりが有るのかな。

『アレは、一説には“日食にっしょく”の事を指してたんじゃないかって説が有る。太陽そのものであるアマテラスが隠れた……つまり日食が起きたのは、弟のスサノオが蛮行を繰り返したからじゃないかと昔の人々は考えた。だから、ああいう神話が残ったってな。まあ、あくまでも説の一つだが……そういう神話は俺達の世界にも沢山あるんだぜ。だから、神話の内容は“必ずしも劇的な事実を語っている訳じゃない”って事だ』

 例えば、ふるい神を殺す事で冬を起こし新しい命……つまり、春を連れて来る新しい神が生まれて来るのを祈ったという神話や、誰かが殺した訳ではないが神が死ぬ事で夜になり、新たに生まれる事で朝が来るという神話も存在するのだそうな。

「じゃあ、ツカサ君は絶対に神様を殺さないといけない訳ではないって事?」
『そう明確に言える保証はないけどな。だが、どんな世界にでも、新たな段階へ進むために“つかさどる物”を壊す必要が有る。そうしないと先に進めない。だから……』
「黒曜の使者と言う存在が、現れる……と?」

 ブラックの言葉に、キュウマは軽く頷いた。
 だけどその表情は理解して貰えたことに納得したような表情では無く、落ちこんだような表情に見えた。それも、俺達に対してではなく……何か、別の事に。

『……なんだ、意外と冷静なんだな』

 先程の表情を振り払ってこちらを見る相手に、俺は苦笑した。

「まあ……神様と黒曜の使者が戦ったって物語を知ってたからな……。でも俺、対峙する予定の神様の心当たりもないんだけどなあ……」
『うむ……そこが問題なんだよな……』

 言いながら、キュウマは眉根を寄せると何かを考え込むように腕を組んだ。

「問題って、どういうこと?」
『俺の時代から何年経ったかは解らないが……どうも、俺が生きていた時代と、お前が今いる時代の黒曜の使者には違いが有るらしい』
「違いって……他にも変えられた部分があるってこと……?」

 まさか、また神様になにか弄られたんだろうか。
 でも俺には何がどう変化したのか解らない。解っている事と言えば、俺の今の状態が、神様によってかなりエグい状態にされてしまったということぐらいだ。
 グリモアと黒曜の使者の関係とかな。

 ……元々は黒曜の使者が創り出し、自分のとしていた七人のグリモア。
 だけど今はその関係性が改変されており、俺は七人のグリモアに『支配』されると、意識を失って自分を支配したグリモアの成すがままになり、曜気を絞り取られてしまうようになってしまった。
 神が、次の黒曜の使者の力を削ぎ落すためにそんな設定を付け加えたんだ。
 おかげで、俺は様々な心配をさせられるようになってしまった。

 『支配』されるとその間の事が全く判らなくなるという部分も怖いけど、一番怖いのが……ギアルギンが言っていた、俺が気の枯渇で死んだ後に起こる事態だ。

 俺から曜気を無尽蔵に引き出し扱えるようになったグリモアは、欲望のままにその力を存分に使い溺れるようになる。そうした果てに黒曜の使者を殺し……最後には、黒曜の使者の曜気に飢えて狂い、全てを破滅させてしまうというらしい。
 それは間違いなく、神様が次代の黒曜の使者に与えた罰と抑止力だった。

 個人的には今もまだ半信半疑だけど……俺が『支配』された事実が、その可能性もあると言ってるようなもんだからな。ぶっちゃけ、そんな危ない事をする奴はレッド以外に居ないと俺は思ってるけど、それでも用心するに越したことはない。

 だけど、これ以外にまだ作り変えられているんだとしたら……。

「……俺、日本でもこの世界でも神様になんて一度も会った事が無いのに、どうしてそんなエグいくらいに恨まれてるんだろうか……」
『…………神は、それほど黒曜の使者が怖いって事さ。話は戻るが、神殺しは黒曜の使者の使命であり、この世界に必要な事だ。文明神アスカーと過去の黒曜の使者が争ったのも、そのシナリオ通りと言っても良い。この世界のことわりでは、神が存在するなら、必ず神を殺す存在も現れる……そういうサイクルで生きてるんだ』
「……それは、誰かに決められた事なのか?」

 ブラックが、テーブルの下の見えない所で、俺の手を覆ってぎゅっと握る。
 その手の大きさと温かさが、いつの間にかどくどく言っていた心臓を鎮めて行く。気が付かなかったけど、俺も相当緊張していたらしい。

 冷静に話をしていたつもりだったけど……やっぱり、自分が「神殺しの使命を帯びている」なんて言われたら、緊張しちゃうもんな。それに、俺の状態はキュウマから見ても変らしいし……。

 何を言われるか不安だったから、ドキドキしてたんだろうか。
 それがブラックのてのひら一つでやわらぐなんてくやしかったけど、でも、相手が俺の事を気遣ってくれた事を思うと、悔しさよりも嬉しさの方が強かった。

 ……男としては情けないのかも知れないけどさ。
 そんなことを思う俺を余所よそに、問いかけられたキュウマは難しい顔で答えた。

『残念だが……それは解らん。俺もただの異世界人で、今のところ世界の真理って奴には辿たどり着けていない。今の状態の俺が知っているのは、黒曜の使者が初めに教えられた事だけだ。あとは経験則の曖昧な予想しかない』
「えっ、使命って最初に教わるもんなの?」

 待って待って、俺放り出されたって言ったじゃん。本当ならそうだったの?
 なにそれいつ制度が変わっちゃったんだよ俺も教えて貰いたかったんですけど。
 思わず聞き返すと、キュウマは深く頷いた。

『ああ……本来なら、な。……だが、お前にはそれすらも与えられなかった。確実に、何か変化が起こっている。とは言え、俺が知らされた事を教えてやらなきゃ比較ひかくも出来んよな。順に話をするから、ちゃんと聞けよ』
「は、はい」

 二人して気の抜けた返事をすると、キュウマは軽く溜息を吐いて語り出した。

『俺が知らされた事は、簡単に言うと四つだ。一つは、さっき言った【黒曜の使者は、召喚された時に神を“裁定”しなければならない】と言う事。二つ目は【黒曜の使者はありとあらゆる曜術、魔法、法術を創り、顕現させられる】という事。三つ目はお前がさっき話した【グリモアは協力者でもあり、黒曜の使者を脅かす存在である】という事。そして最後が…………【世界を見よ】というものだ』

 ――――世界を、見よ?

 それって……この世界を見てこいって事なのかな。
 だったら異世界チート小説じゃあよく言われる事だし納得できるけど……あれにだって、世界の安定がどうとかお前の異世界人としてのマナがどうのっていう、旅をする理由がちゃんとあったような気がするぞ。

 でも、黒曜の使者はそんな物じゃなく……神と何かするっていう明確な目標があるワケで、だったら世界を見ろなんて事は言われないよな。
 神様を「裁定」とか言うのにすれば、それでクリアなんだろうし。
 なのにどうしてそんな事を言ったんだろう……ていうか、誰が言ったんだ?

「神を裁定するとはどういう事だ。神殺しなら、戦えってのは解るけど、裁くのは変だろう? それに、誰がそれを指示したんだ。神様以上に偉い奴がいるってのか」

 何故か微妙に不機嫌になったブラックが、ぶっきらぼうにキュウマの言葉に問う。
 なるほど、サイテイってそういう意味なのか。じゃあそれも変だな。

 俺は殺すにせよ殺さないにせよ、神様と戦うのが役目なんだよな、たぶん。
 じゃあ、俺が裁く必要なんてないんじゃないか。敵対するのが役目なんだし……。それとも、っていうのには成敗するって意味もあるのかな。

 よく判らなくて向かい側を見やると、キュウマは頬を掻きながら顔を歪めた。

『裁定ってのは……すまん、俺も未だに意味が解ってないんだ。もしかしたら、本体の俺はその意味を見つけたかもしれないが……俺は本来そっちの説明で設置された物じゃないから、分からないんだ。すまんな……』
「い、いや、いいよいいよ! 教えてくれるだけありがたいんだし!」

 だって、今のこの世界じゃ黒曜の使者の本質を知ってる人なんて、どこにも居ないかも知れないんだぞ。“導きの鍵の一族”とかいう本の護り手の一員だったブラックだって知らなかったんだから、概要を教えて貰えるだけでも万々歳だよ。

 しかし、なんでキュウマがその事を知ってるんだろう……。やっぱりキュウマも俺と同じ黒曜の使者なのかな。こうなるともうそれっきゃないよな。

「あの……今更な質問するけど、キュウマも黒曜の使者なんだよな?」
『今更だな。まあいい、それより先に話す事が有ったからな……。ああ、質問の答えだが、本体の俺はそうだ。きちんと神様に会って、今のような事を教えられた』

 その言葉に、今度はブラックが素っ頓狂な大声を出した。

「ハァッ!? 神を殺すのに神に今の事を教えられたってのか!? なんだいそれ、めちゃくちゃじゃないか!」
『……まあ、考えて見ればそうだな……。だが、相手は優しい女神だったし、親しみやすい感じだったから……もしかしたら、俺達が殺す神ってのは別の神だったのかもしれない。最初に会った時、彼女はその辺りの事を何も言ってくれなかったからな。でも、少なくとも俺は……神も同じ人間なんだなって思って嬉しかったし、彼女を殺さなければと言う使命感も湧かなかったんだが……』
「お前女神さまに会ったのかよ!!」

 なんだそれ羨ましいぞ。
 俺は何も言われずに放り出されたのに。

 思わずけわしい顔になって睨むと、相手は苦笑いしながら肩を竦めた。

『会ったと言っても、白い部屋にポンってな訳じゃないさ。まあ、似たような展開は有ったけど、俺が実際に神様と対面したのは冒険してずいぶん経った後だ。その時の神様は“ナトラ”で……彼女は、本当にいい神様だったぞ』
「ナトラって……慈愛の女神さまじゃん!! ああああ羨ましいぃいいい」
「ツカサ君……」

 ええいうるさいブラック、気持ちは解るけど悶えさせてくれよ。
 だってだって俺なんて女神さまになんて一度も会った事無いのに、このキュウマは女神様に出会えたしこんな高そうな服も来てちゃっかり勇者様しちゃってこのー!

『お前相当女に飢えてるのか……可哀想に……』
「うぎぎぎぎ憐みの目を向けるなあああぁ」
『ま、まあ……アレだ。とにかく、俺の時はこの“四つの決まり”を教えられたんだ。だから俺は冒険者として旅をしてレベルを上げ、どんな事が起こっても良いように、鍛えて“来たるべき時”に備えていたのさ。……七人のグリモアと共にな』

 グリモア。
 キュウマもまた、七人のグリモアを集結させていたのか。
 ……あれ?
 グリモアって、七人揃えば異世界に帰れるかもしれないんじゃなかったっけ?

「な、なあキュウマ……俺、グリモアが七人揃ったら、その……」
「……?」

 ――帰れる……とか言う話を聞いたんだが。
 と、言おうとして、俺の手を握ってくれている隣の恋人の事を思い出し、口が勝手に閉じてしまう。何故だか「元の世界に帰れる」なんて言葉を言いたくなかった。

 だけど、それを察してくれたらしいキュウマが、少し目を見開いて俺を見た。

『ああ、そうか! お前もあの【ロールプレイングゲーム】を読んだんだな』
「…………うん」
『安心しろ。あの本に書かれていた事は、恐らく事実無根……というか、アレは文明の神アスカーが仕組んだ罠みたいなものだろう』
「ほっ、ほんと!?」

 思わず変に上擦った声で聞き返すと、キュウマは苦笑した。

『グリモアは七人揃えば天下無双の存在になるが、しかし曜術師は前提として“自分の欲望に正直で、他の曜術師とは仲良く出来ない”という欠点を持っている。だから、アスカーは俺達黒曜の使者の能力を改変して、グリモアと共倒れするように仕組んだ。攻撃力最高クラスの暴れん坊が七人もいたら、一人で制御できる訳が無いからな』
「えっと、じゃあ……」
『七人揃えれば、グリモアは遅かれ早かれ必ず仲違いを起こすだろう。その場合に間に挟まれるのは、一番ニュートラルな性格である俺達黒曜の使者だ。アスカーはその事を知っていた。なんせグリモアと俺達の関係を歪めた張本人だからな』
「…………」
『だから、俺達が必ず読むであろうあの本に、イヤミったらしく勿体もったいぶって、あんな文言を書いたんだろう。俺達“転移者”の中には、その情報を死ぬほど欲しがってる奴なんてのも居ただろうからな。だけど、何も起こらなかった。事実、俺は七人全員を揃えたが、そんな気配は欠片も無かったぞ。アレはやっぱり嘘だったんだろう』
「じゃ、じゃあ……心配ないんだ! そっか……良かった……」

 二重の意味で、良かった。素直にそう思ってしまった。
 だって、七人揃えても帰れるって訳じゃない事が解ったし、急にそんな事が起きてブラック達やロク達と思いがけずお別れするなんて事も無くなったんだから。

「何だかよく判らないけど……良かった?」

 ほっとした俺の表情を見ていたのか、ブラックが不思議そうに覗きこんでくる。
 それが何だかおかしくて、心が温かくなって、俺も苦笑して頷いた。

「うん。良かった」

 ブラックの顔を見上げて笑うと、相手はいつものようにだらしない笑みで笑った。

『……お前ら本当に……。まあいい、この世界じゃ珍しくない事なんだしな』
「ん?」
『いや、気にするな。それより話を戻すぞ。ええと……俺の時代と今の黒曜の使者が違うって事だな。……誓って言うが、俺の時までは、黒曜の使者に掛かってたデバフは【グリモアの支配】だけだったぞ。それは間違いない。だから……もし変化が起こったとすれば、俺の時かもしくはその次の代なんだろう』

 そうだよな、キュウマの話からするとそうなるよな。
 でも、何が起こったというんだろう。
 問いかけるように顔を歪めた俺に、キュウマは首を振った。

『だけどな……俺の代やその次の代で神が黒曜の使者に何か仕掛けを施したとは思えない。今は話せないが、そういう確信が有る。だから恐らく、お前が黒曜の使者の事を知る事が出来なかったのには、何らかの外的要因があったんじゃなかろうか』
「外的要因……例えば?」

 ブラックが問いかけると、キュウマは数分たっぷり考えてから……項垂うなだれた。

『…………すまん、俺も解らん。だが、そうでないと説明が付かないんだがなあ』
「だめだコイツ。ツカサ君もう帰ろう。目的が解っただけありがたいしもうコイツに用はない。あの道具どっかに売っ払おう」
『どわーッ、待て待て!! 鬼かお前は!』
「だって、それ以上の話がないんだろう? だったら金目の物は売り払……」
『待てと言っとるだろうが! ああもう本当に曜術師ってヤカラは! 黒曜の使者の事はこれくらいしか知らん、俺も知らんが、しかし俺は別の目的でお前ら……黒曜の使者を待っていたと言っただろうが! そっちの目的を果たさせろ!』

 慌てながらキイキイ怒鳴るキュウマに、ブラックは眉を上げた。

「目的? ああそう言えば別の目的が有ったんだっけ」
『クッ……最初に話しただろうが……! これだからオッサンは……。ま、まあいい、とにかく俺の使命はそっちが本題だからな……。だが、焦りは禁物だ。今日はずっと話をして疲れただろう? もうすぐ夕飯時だし、ひとまず書斎に戻って休憩を取るといい。長話は頭をバカにするからな。……それに、お前の仲間も心配しているようだし』
「あ、そう言えば……」

 ケルティベリアさんとラセットを置き去りにしてたんだっけ……。
 今頃監視対象の俺達が消えて大慌てなんじゃなかろうか。今戻って行ったら、凄く問い詰められそう。いろんな話を聞いて結構頭がパンパンなのに、いま捲し立てられたら情報が耳から零れて行っちまうよう……。

 ああでも絶対根掘り葉掘り聞かれるんだろうなあ……。
 その事を考えると、今から気が重い。思わず項垂れた俺に、キュウマは溜息を吐きながら、手をひらひらと振った。

『安心しろ。お前達を招いた事は俺が説明するから』
「え……いいの? って言うか、お前の姿って他の奴にも見えるの?」
『俺の本体なめんじゃねーよ。困った事態になるのも想定済みだ。お客様のもてなしだってきちんと用意してるから心配すんなって』

 そうは言うけど、ゲームやファンタジーでの「おもてなし」って意味が違う場合があるからなあ……。暴力的な部類の奴じゃ無ければいいんだが。

 ……それにしても……今日は色々と有って、疲れた……。
 ちょっと眠って整理したいな……。













※色々込み入ってますが、次は小休止です…
 こらもう新年度余裕で食い込むわ(´^ω^`)しにたい
 でもずっと重要な話ばっかりって肩がこるので休憩回が欲しくなるのです…
 
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