異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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世界協定カスタリア、世界の果てと儚き願い編

  まことの姿が見えるもの2

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 図書館に戻った俺は、ケルティベリアさんにみっちり尋問を受け、その間ブラックはラセットと険悪な雰囲気になりながらも、特別閲覧室で地図の事を調べた。

 時は金なりだからな。やれる事は同時にやっとこうって訳だ。
 なので、俺は一人でケルティベリアさんと向き合う事になってしまった訳だが……肝心の尋問はと言うと、思った以上になごやかだった。

 ケルティベリアさんの訊き方は穏やかだったし、何より俺がおびえて萎縮いしゅくしないようにと思ってか光るヒポカム達を連れて来てくれたのだ。
 お蔭で俺はリラックスして話す事が出来たんだが、俺の話はケルティベリアさんにとっては、よく解らない話になってしまったようだった。

 まあ、俺も「イメージしてばーっと出しました。アレは海水です」みたいな事しか解ってないし、あの変な魔方陣も俺の腕の光の事も説明のしようがないからなあ。
 でも、魔方陣はともかく、ケルティベリアさんがいつも俺の腕に巻き付く光を視認できたのは驚きだった。だって、この世界って“自分が使用する属性以外は、術を発動する時の曜気の光が見えない”んだぜ? 曜術師のランク最高位である“限定解除級”のブラックだって、自分の属性の曜気しか見えないんだ。

 唯一例外が居るとすれば、ラスターくらいなものだろうな。
 ラスターは「あらゆる存在の気の流れが見える」っていう特殊能力を持っていて、そのせいで俺が普通じゃないってバレた訳だし。

 でも、ケルティベリアさんは曜術を使う訳じゃないのに、俺の水の曜気が見えた。
 ……と言う事は、ケルティベリアさんは水の属性の曜術も使えたりするのかな?

 訊いてみると、彼の答えは「そうでも有るだろうが、そうではない」という難解な答えだった。

「我々の一族……ソグードは、カティナという術を使うが、手を貸してくれる“大地の恵み”は、曜気でもあり、そうでもない物だ。そうだな……言わば、曜気や大地の気として名を頂き形を成す前の段階の、原始的な【属性のない力】とでも言おうか……。もっと本質的で、曖昧あいまいな力なのだ」
「うーん……力を生み出す大元の部分から、直接持って来てる……的な……?」
「そのような表現が一番近い。魂は魂という力、だがその力の根源には、この世界を構成する大いなる神の力が有る。我々は、それを【大地の恵み】と呼び、分けて頂き還元をする。そんな盟約を交わしているから、カティナを使えるのだ」

 ぶっちゃけよく判らないんだが、あれかな、漫画とかアニメとかゲームとかで良く有る、地球自体の力を持って来てる的な。ゲームで言うなら「全属性」かなあ。
 小分けにされる前の力と言われれば、なるほどめちゃくちゃ凄い力に思えてくる。

 でも、ケルティベリアさんが言うには「盟約によってその力は争いには使えない」らしいので、俺達が使う曜術のように自由に創造したり取り出したりするって行為は出来ないんだそうな。
 水を出せても、それはてのひら一杯ののどを潤す水にしかならない。
 だから、俺がさっきやったような、力を行使するという事は出来ないんだって。

 けれども、その代わりにソグードと言う部族には、特殊な能力が備わっている。
 それが、“おそれるもの”を見る事が出来る力だという。

「我々の目は、我々がの真の姿を見通す力を持っている。……今回、監視役に選ばれたのは、君の真の姿を見る為でもあったのだ」
「じゃあ……その目の力で俺の術の発動の時の光を見る事が出来たんですね」
「ああ。しかしあれは凄まじい光景だった。眼下の紋様は誰しもが見えただろうが、我には君の腕を支配していた光の方が、よほど恐ろしい物に思えたのだ」

 腕のって……あのいつも腕に巻き付いて来る蔦っぽい光だよな。
 確かに最初はギョッとするけど、そんなに怖い物かな。
 少し不思議で首を傾げていると、ケルティベリアさんは俺をまじまじと見ながら、難しそうな顔をした。まるで、どう表現したら良いのか解らないとでも言うように。

「ふむ……。あの光は、我にはあまりにも強大でおそろしいものに感じたのだが……それを物ともせずに操るのは、やはり黒曜の使者の能力なのだろうか……」
「そんなに凄いものだったんですか?」
「うむ。こう言ってはなんだが……神か、そうでなければ邪悪が過ぎるが故に神にも近い何か――と、言った所だろうか。我の目で見た君の力は、そういう物だった」
「じゃ、じゃあく……」

 やっぱしそんなにヤバいんだろうか、黒曜の使者の力……。

 今まではブラックやクロウという規格外のオッサンに囲まれていたから、俺もこんなレベルだろうって思う程度だったんだけど……ここまで深刻に言われると、流石に落ち込む。……まあそりゃ元々「災厄」なんて言われてたんだから、邪悪な存在だと言われても仕方ないけどさ。

 落ちこんでしまった俺だったが、そんな俺を気遣ってか、光るひっぽちゃん達が俺にモフモフした頭を押し付けてぐりぐりしてくれた。
 う、うう、本当に優しいなあミフラのひっぽちゃん……。

 ケルティベリアさんも「君自身が邪悪ではない事は知っている、心配するな」と言ってくれたけど、それでも彼も監視役として中立で居ないといけないからなあ。
 ありがたいけど、ぶっちゃけ素直に喜べない。
 うう……こんな事がなけりゃきっと仲良くなれたのに、やっぱこういうのヤダ。

 どうせなら、どこか別の場所で何のしがらみもない状態で出会いたかったよ。
 そんな事を考えていると、ブラックの声が近付いてきた。

「おーいツカサ君ー。尋問終わった―?」

 物騒なことを朗らかに言いながら、ブラックが駆け寄ってくる。どうやらあっちも地図の捜索が終わったみたいだ。後ろには物凄く嫌そうな顔のラセットも居る。
 とはいえ喧嘩もしてなさそうだし良かった良かった。

 さっそくブラックの話を聞いてみると、どうやら地図が複数見つかったらしい。
 縮尺や地形、そして街の配置などには違いがあるものの、それらが示す物は大体が同じで、恐らくは年代が違う物ではないかとブラックは推測していた。
 学問都市という名に恥じず、ミレットは当時の高度な技術でいくつものバージョン違いの地図を作っていたようだ。当時は本当に正確さが段違いだったんだろうなあ。

「とにかく驚いたのは地形だね。最初は山だったり荒野だったりした所が、穴ぼこになったり街が建ったり潰れたりしてて、変化が激しいんだ。蔵書の登録情報に登録日が記載されて無かったら、僕も年代順に並べられなかったよ。だってさ、凄く内容が変わってるんだもん」

 その全てを頭の中で組み合わせて把握する事は大変だっただろうけど、ブラックには苦にもならなかったようだ。この短時間で「解った」と言うのだから、そう言う事なのだろう。さすがは超記憶力。
 ……そのチートちょっと分けてくれないかな。いや、チートじゃないんだけども。

「それで、例の【エンテレケイア】という遺跡の事は解ったのか」

 ケルティベリアさんが問うと、ブラックは難しい顔をしながら「半分解って、半分解らない」と変な言い回しをしながら、説明を再開した。

 いわく、その【エンテレケイア】のある遺跡は“ユーハ大峡谷”にあるのは解っている物の、登録されていた地図は『神と黒曜の使者の戦い』の後に大きく地形が変わっており、そもそもの話、俺達が目指していた“ユーハ大峡谷”はそれ以前には存在していなかったらしい。

 つまり、神と使者の戦いで大地か山が割れて、大峡谷となる地形が生まれたと言うワケで……って、どんだけ恐ろしい戦いが繰り広げられていたんだ……。

「周囲はそんなに変化が無かったから重ねる事が出来たけど、戦いの後は何故かこの遺跡も放棄されてたらしくて、それ以上の情報が無かったんだよね。だから……この“ユーハ大峡谷”に【エンテレケイア】があるとしても、その遺跡は後世に作られたものかもしれない。ツカサ君が貰った地図と、王様の情報からすると、遺跡が存在する事は確かだけど、正確な位置が解る……とは言えないだろうね」
「じゃあやっぱり、丸腰のまま行くのは危険かな」
「うーむ……国境の山に近い場所だし……危なくは有るけど、まあ問題は距離だね。この大陸の東端に近いミレットからは、ディオメデの馬車を使ってもかなりの日数が掛かる。なんせ、“ユーハ大峡谷”はプレインの南西にあるからね。斜めに横断する事になるし、カスタリアに戻れば更に時間が掛かる」

 ブラックのその見解には、ケルティベリアさんも困り顔だ。

「ううむ……それは難しい問題だな……我々は急がねばならないのだが……」
「でも、ツカサ君が頑張ってくれるなら別だ」
「え?」

 どういう事だとブラックを見ると、ウインクして立てた人差し指を揺らした。

「ツカサ君、一生懸命あの笛の練習してたでしょ? もうそろそろ、短時間でもロクショウ君を呼べるようになって来たんじゃないかなって」
「あっ、そうか……ロクに頼んで空から連れて行って貰えばいいんだ!」

 あーっ、失念してた!
 そうかその手が有った。俺はロクショウに会いたいって理由だけで笛を練習してたけど、そもそもロクは準飛竜ザッハークに進化していたんだった。
 オーデル皇国でもロクに乗せて貰って旅程を大幅に短縮出来たし、プレインに来る時だって、ロクが手伝ってくれて物凄く早く到着する事が出来たんだ。
 俺が何分呼び出せるかは解らないけど、ロクが居てくれたら距離が稼げるぞ。

 思わず顔を明るくした俺に、ブラックは笑いながら手を叩いた。

「じゃあ決まりだね! 早速出発……」
「いや待て、恐らく外はもう夜のはずだ。今日はここに一泊して大峡谷に向かおう」

 おお、さすがは大地を知る部族のケルティベリアさん……。でも、それなら素直に休んだ方が良いよな。この国じゃ気の付加術も使えないし、モンスターがいる可能性のある国境近くだし、気を引き締めてかからないと。それにしても、ケルティベリアさんの体内時計って便利だな。

 という訳で、とりあえず図書施設で一泊した俺達は、元来た道を戻って再び地上に戻った。遺跡を探索したい気持ちも有ったけど、今はそんな場合じゃないからな。

 しかし、ケルティベリアさんの体内時計は本当に凄い。彼が「朝になったようだ」と言っていた通り、地上は陽が出て間もない早朝になっていて、清々しい空気に満ちていたんだからな。

 俺だって自分の体内時計には少し自信が有るけど、正確だとは言い切れない。
 やっぱり自然と共に暮らしてる人達ってのは、動物に勝るとも劣らないパワーを持っているんだな……現代っ子な俺もサバイバルしたらそうなるのかしら。
 いや、そんな場合じゃ無かったな。

「……よ、よし。じゃあ吹いてみるか……」

 しかしリコーダーを人前で吹くのは少々恥ずかしかったので、三人には俺に背中を向けて貰い、俺もその背中を背にして誰もいない方向を見やった。
 これなら誰も見えなくて恥ずかしくない。俺は満を持して笛を吹く事にした。

「――――……」

 すうっと冷たい息を吸いこんで、銀色に光るリコーダーに触れる。
 願うのは、目の前に自分の相棒が出てくる事だ。

 にごった音にならないように息だけを笛の口に送り込んで――俺は、指を動かした。

 光に従って、今まで散々練習した旋律を指で奏でる。
 はやし立てるような少し早いリズムで刻むのは、どこか遠い国の古い音楽にも似た独特の音。足を打ち鳴らすように指で音を示す光を追い、曲を奏でて行く。
 しっかりと、曲を間違えずステップを踏めるように。
 何故か、今日は大丈夫だと、頭の中で確信が湧く。そしてそれはその通りだった。

 今まで出来なかったところを過ぎて、ロクの事を思いながら息を継いでいると……ふと、目の前に青とも緑ともつかない光の粒子がちらちらと舞っているのが見えた。
 その小さな光たちは曲が進むたびに形を成し、空中で形を変えていく。

「――――……!」

 指が戸惑って、曲が少しリズムを崩しながらも、終盤に入った。
 それと同じくして光の集まりが収束し、輪のように広がり形を成し始めた。
 ――それは、複雑な文様を中心に刻んだ、巨大な魔方陣。
 曲とともに出現したそれに目を見張りながら、俺が、最後の一節を吹き終わった。刹那。

「なっ……!!」

 誰かの驚いた声が背後で聞こえる。
 だがその声をかき消すかのように空が鳴り、まるで空を飛ぶ時の轟音のような音を響かせながら、魔法陣から大きな竜の頭が出現した。
 それは、紛れもない……俺の、ロクショウだ。

「ロク……!」

 思わず名前を呼ぶと、ロクショウは俺を見つけた途端に、その名前の通りの綺麗な緑青ろくしょう色の瞳を輝かせて一気に魔方陣から飛び立った。
 そうしてすぐに凄まじい風を巻き起こしながら俺のそばに降り立ち、すぐに頭を地面にくっつける。俺はそんなロクショウに矢も楯も止まらず駆け寄ると、思いっきり抱き着いて黒く光る兜のような頭をめいっぱい撫でまくった。

「ああぁあああああロクぅうううう!! 会いたかった会いたかった会いたかったよぉおおおお」
「グォオオン! グォッ、ギュッ、キュー! きゅー!」
「んんんん可愛い声一生懸命出しちゃうところ最高に可愛いぃいいいい」

 俺に甘えるように、小さい蛇のダハだった時みたいにキューキュー鳴くロクショウに、俺は顔から色んな汁を出しながら頬ずりした。ああすまんロクよすまん、あとでちゃんとぬぐうから許して。でも可愛さが天元突破しちゃっててもう俺にはこの衝動を抑えられないんだああああ。

「ツカサ君また色んな汁を……」
「これは……まさか、竜……なのか……」
「こ、こいつモンスターじゃないか!! しかも黒い竜だと……!? な……なんと汚らわしい……ッ」

 ……ん? 何か今物凄く失礼な言葉を聞いたぞ。
 誰だウチの世界一可愛いロクを侮辱したのは……っておめえかラセットぉおお!!

「何が汚らわしいだこの顔だけイケメン! ロクの可愛さも凄さも健気さも知らないくせに初対面で色々言ってんじゃねえ!! 文句言うと置いて行くからな!!」
「グオッ、グォオ!」

 ほらみろロクも怒ってるじゃないか。
 黒い竜が汚らわしいって、どういう思考だよ。黒い兜って格好いいじゃん。ダークナイト的なアレで超中二病擽られるし燃えるじゃん! なんで汚らわしいの!?
 なんかアレか、闇の属性がどうのって話なの?
 この世界でそんな属性なんて聞いた事無いだろ馬鹿なこと言ってんじゃねえ。

「ツカサくーんそんなのどうでもいいから早く行こうよー。日が暮れちゃうよー?」
「ど、どうでも良いってお前な……」

 可愛いロクがあんな事を言われたのに……いやコイツはそういう奴だったな……。
 まあいい、呼び出せる時間も気になるし、早い所ロクに頼まなくちゃ。

「ロク、お願いが有るんだけど……俺達を大峡谷まで連れて行ってくれないか?」

 こう言う場所なんだけども、と説明すると、ロクは目をぱちぱちさせて話を聞いていたが、任せてと言わんばかりに嬉しそうにぐおんぐおんとのどを鳴らした。
 あぁ~も~可愛い格好いい上に素直で優しいとかどんだけ俺の心を持って行ったら気が済むのロクちゃんは~! こんなに可愛い竜なんてどこ探しても居ないよ!

「ロクしゅきぃぃ……」
「グォゥ、キュッ、キュー」
「はいはい良いからさっさと乗ろうねえ」

 だあっ、は、離せブラック、俺はロクを抱き締めていたいんだ!

 邪魔をするんじゃないとブラックを振り払おうとするが、しかし小脇に抱えられてしまっては最早抵抗する事も難しい。チクショウこの体格差なんとかならないの。
 そうこうしている内に俺はくらも載せていない状態のロクにまたがされてしまった。
 おい、これ大丈夫なの。

「あ、裸の状態で乗ったら危ないぞ。我がロープを持って来ているから、それを腰に付けて体に巻いて貰え」

 思わず心配していると、ケルティベリアさんがこっちにロープを投げてくれた。
 おお、これならとりあえず落ちる心配はないな。

「ロク、巻いていい?」
「グォン!」

 ケルティベリアさんも手伝ってくれて、俺達三人……あと、渋々乗ってきやがったロクの可愛さを理解出来ない奴は、しっかりとロクの首や前足にロープを結んだ。
 前足はかなり小っちゃいんだけど、大丈夫なんだろうか。
 ブラックが言うには、準飛竜の前足は細くてちっちゃいけど、強度は俺達の腕の倍以上って言ってるし、多分平気なんだとは思うけど……落ちないように頑張ろう。

「ロク、頼むぞ!」
「グォオオオオオ!」

 俺の声にロクは待機を震わせるほどの声を上げて、巨大な翼で一気に地上から空へと飛び立った。翼が風を孕み周囲に猛烈な風圧が掛かる。その風に耐えながら、俺は必死にロクの首にしがみ付いていると――不意に、風が止んだ。
 恐る恐る、目を開けてみると。

「わぁ……っ!!」

 木々や草がまばらに生える荒野と、その向こうに見える町や海、そして進行方向には、果てしない程に広い大地が広がっていた。
 殺風景な世界だけど、でも、その広さを見るとやっぱり体がゾクゾクしてくる。
 こんなに広い世界に自分は居たんだと思うと、なんだか妙に興奮してしまった。

 飛行機に乗った時も思ったけど、本当に飛べるって凄いよな。
 だって、俺達の目だけじゃ見えない広い世界を、もっと広く高く見せてくれるんだもん。雲の上の世界ってのも憧れるけど、でも一番素敵なのは、自分の見れる範囲を超えた世界を簡単に見る事が出来るって所だと俺は思う。

 道端を見て歩くのも好きだけど、やっぱり浪漫っつったら大空だよな。
 自分が行けない場所に憧れるのは、今も昔も人のサガって奴なんだろうなあ。

「いいなあ、凄いなあロク、こんな凄い景色をたっくさん見れるんだから!」
「グォッグオゥッ!」

 羽ばたきを緩く繰り返しながら飛ぶロクショウにそう言うと、ロクは照れたようにテヘテヘと首を左右に振ってくる。んもー、可愛いなあ。それダハの頃からのクセだよなあ。あの時は手足が無かったから、首で感情表現してたもんなあ。
 あの時のロクも本当に可愛かった……。

 おっきいロクも好きだけど、ロクが色々と変化できるようになったら、また小さなロクとも遊びたいなあ。あ、でも小竜人もいい、気兼ねなくぎゅって抱き締めてやる事も出来るし!

 今回はちゃんと呼び出せたんだから、次だってきっと成功するよな!
 アンナさんとの約束で一週間に一回って話だったけど、ロクの術が上達すれば、きっと次はそれより多く会えるはずだ。そう思うと楽しみになって来たぞ。

「それにしても、竜まで従えるとは……さすがは黒曜の使者だ……」

 ワクワクしている俺の後ろで、そんな声が聞こえる。
 しかし俺が何かを言おうとする前に、俺の背後にいたブラックが言葉を返した。

「いや、ツカサ君は小さな蛇だったダハを相棒にしてただけだ。最初から竜を従えていたワケじゃないし、言っておくけどツカサ君とロクショウ君は相棒らしいから、他の守護獣とは関係性が違うぞ」
「ブラック……」

 俺がいつも言ってる事だけど、でも、それを覚えていてくれたって事が嬉しい。
 思わず振り返った俺に、ブラックは言ってやったぞって顔でニンマリと笑った。
 うむ、今日は褒めてやる。

「それはすまなかった。……しかし、君は本当に生き物に好かれるんだな。その純粋な心が故か……何にせよ、素晴らしい事だな」
「え……」
「我の目には、このロクショウと言う“やがて竜になるもの”も、きみも……強き者であるのに“おそれるもの”には見えない。……我の立場でこんなことを言うのは、本来ならばならぬ事なのだろうが……我は、君がまことの黒曜の使者である事を嬉しく思う」
「ケルティベリアさん……」

 ブラックに隠れて顔は見えないけど、彼の声が優しさに満ちている事だけは解る。
 本心からそう言ってくれてるんだ。そう思うと心が温かくなったような気がした。

「えへ……ロク、良かったなあ」

 鎧のような首の鱗を擦ると、ロクも嬉しそうにぐおぐおと鳴く。
 そうだよな。やっぱり、好きなものの事を解って貰えるのは嬉しいもんだ。

 ……願わくば、ラセットもそんな風にデレて欲しい物だが……あいつの好きなものは、お姫様しか居ないのかも知れない。だとしたら、俺達を敵視するのも当然な訳で……はぁ、あいつとは仲良くなれないかも知れないよなぁ……。
 本当厄介な人が付いて来ちゃったよ。

 【エンテレケイア】の遺跡でも、無事に調査が住めばいいんだけど……。













※お掃除ロボの事とかまったく触れてませんが、それもおいおい…(;´∀`)
 
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