異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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ラゴメラ村、愛しき証と尊き日々編

  確かめるためとは言いながら2

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 せっ、せいこういって、え、え、えっちってこと!?

 だだだダメダメダメ、恋人でもないのにアドニスとえっちするとか無理だって!
 第一ブラックが絶対怒るし俺だってそのっ、あ、アドニスは仲間だとしか……っ。

「あの低能中年との性行為だけでは情報が足りなさすぎます。かと言って、水麗候すいれいこうにこんな事を頼む事は出来ませんし、愚かな紅炎こうえんのグリモアにも君を任せたくはない。そうなると……今確かめられるのは私自身しかいないんです」
「そ、そりゃそうだけど……っ」

 でも、だからって、アドニスとえっちするなんて……。
 しかも実験の為って、俺と触れ合って嫌じゃないのかお前は。

 思わずどうすればいいか硬直してしまった俺に、アドニスは今更ながらに説明不足だった事に気付いたのか、眼鏡を直して俺をまっすぐに見つめてきた。

「性行為と言っても何も君の陰部に陰茎を挿入するような事はしません。余計な面倒事は私だってゴメンですからね。ただ、実験結果の比較をするために異なる行為を何度か行う必要は有ります。行為といっても、陰茎を挿入したかしてないかで実験値も違う可能性があって……」
「わーっわーっわー!! だからそう言う事シラフで言うなってば!!」

 なんでこの世界の大人どもは人前でそう簡単に陰茎とか肉棒とか言えるんだよ!
 もうちょっと言葉をつつしんでくれよ頼むから!

「ああ、今すぐという訳では有りませんよ? 私だって、勝手にツカサ君を犯せば、あの不潔な中年が君を理不尽に怒る事くらい承知してますからね。それに比較を行う為には、あの男から行為の内容を詳しく聞いてみないと判りませんし……」
「うっ……うぅぅ……」

 そ、それって、比較って、あの、あ、あの……。

「ツカサ君だって、困っているのでしょう? あの男の事だから、君が激しい行為の後で気絶する事に対して不満を漏らしていているんじゃないんですか。なにせ、ハタから見ても性欲だけは一人前に見えましたからねえ、あの不潔な中年は」
「っ…………」

 ハタから見てもって……不満っぽいのも顔に出てたのか?
 ……じゃ、じゃあ……やっぱり、そう、なのかな……。
 ブラックは前に「俺が自分から誘うまで挿れない」と言ってたけど……やっぱり、自分の思い通りにならなくて面白く無いからそんな事言ったのかな……。

 でも考えてみればそうかもしれない。だって、ブラックはオッサンなのに俺なんかより体力が有って三回やってもまだしたいって言ってたし、一晩中ヤりたいっても言ってたもんな。だから、本当は俺が気絶して中折れ状態になるのも不満なはずだ。
 なのに、俺が気絶したらそこでやめて、今だってずっと……その……しない、で、ずっと意地張ってる状態なわけで……。

 ……それってやっぱり……俺に不満が有るからなのかな。
 でもそうだよな。ブラックが俺に「求めろ」って言うのは、現状に不満が有るから要求している訳で、本当ならブラックだって色々ヤりたいだろうに俺が言うまで我慢してるんだ。

 今じゃほとんどセクハラするぐらいで……あれ……じゃあやっぱり、ブラックは俺とのえっちに満足してなかったのか……だから、挿れないの? 今まであんなに好き勝手つついて来たのに、今更になってそう思ったから…………。

 ………………やっぱ、俺とするの……あんまり気持ちよくなかったのかな……。

「何か、思い当たる所があるんですね?」

 アドニスにそう言われて、何も言えなくなる。
 そんな俺に、アドニスは優しく微笑んだ。

「ツカサ君、確かめてみるという行為は、存外大事なのですよ。そうだと思い込んだままでは、思わぬ恥をかく事も有る。かまどの火だって、出かける前にきちんと確認しておかなければ、火事になってしまうかもしれない。取り返しが付かなくなる前に身を持って知る事も、一つの防衛策なのです。恐れや抵抗感が有るのは解りますが……情報も答えも集めないまま、悩んで立ち止まっているのは、賢いとは言えませんよ」

 ……ぐうの音も出なかった。

 でも、事実なんだから仕方ないよな……。
 俺は答えを出せずに立ち止まっている。いや、答えを出して、進んだ先に、絶望が待っているんじゃないかと思ったらどうしたら良いのか解らなくて、怖くて、だから考えないようにして悩んだままで居た。アドニスは、そんな俺の心をすぐに看破してしまったのだ。

 ――――考えたくなくて、ふたをした色々な事。
 でも……もう、こうなってしまっては、結論を出さずにぬるま湯につかってるだけじゃ、ダメなんだよな、きっと……。例え結果が最悪でも、もうちゃんと見詰めなきゃ行けないんだ。
 俺がずっと恐れていた事が、その先に起こったとしても……。

「…………やらなきゃ……進まないもんな……」
「ええ。……私としても、君に危険が及ぶ事が有るのなら、放っては置けない。怖いのは重々理解していますが……命の危険があるというのなら、不意の事でそれに陥らない為にも、君が『どのような切欠で気絶して、どれだけ耐えられるのか』という事を知っておくのは大事なのです。……任せて、くれますね?」

 アドニスの言う通り、それは確かめなきゃ行けない事なんだろう。
 でも……。

「もし、違ってたとして……それが、どういう事になるのかな……」

 本当に、確かめなきゃいけないのかな。
 もしかしたら別に確かめなくても良い事かも知れないし……。

 どうしても素直に頷けなかった俺に、それでもアドニスはイライラする事も無く、俺をしっかりと見て答えてくれた。

「普通の恋人同士なら、私もとやかく言いません。ですが……我々は“グリモア”で……君は、その“グリモア”を満たす“破滅を生む餌”だ。そのような情報が存在する以上……私は、君が命を落とす事が無いようにしておきたいんです」
「アドニス……」

 見返した相手は、俺の臆病な表情を見ても、少しもわらわない。
 それどころか安心させるように微笑んで、俺の手をまた強く握った。

「たとえ、君があの男の恋人であっても……私は君に命を捧げると誓いました。……だから、私は君に死んでほしくは無い。他人に肌を許すのは君には難しい事かも知れませんが……グリモアであるあの男との接触が安全であると確信できなければ、私は納得できません」
「…………」

 アドニスは、俺の事を大事に思ってくれている。
 オーデル皇国での事を、今でも感謝してくれてるんだ。そんな相手が好意で言ってくれている事を断り続けるのも気がひける。大体、アドニスは俺を心配して診察してる訳だし、それに俺は悪い意味で普通じゃないんだから、一つでも解る事が有るなら試すべきなんだよな。

 グリモアの事なら、アドニスにだって関係有るんだし……なにより、この事で少しでも何か解れば、本当に気絶の原因が解るかも知れないんだから。
 だったら……俺が今ここで悩むより、ちゃんとブラックに聞いて貰った方が……。
 そ、そうだよな。一人で悩むからいけないんだ。そうだ、この前そう思ったばかりじゃないか。一人で悩むのはダメだって思った矢先にこれなんだもんな……まったく俺って奴は……。

 自分一人じゃ決められない、覚悟も決まらない事なら、話すべきだ。
 ブラックにだって関係が有る事なんだから、ちゃんと言おう。
 いやらしい事じゃないんだし……きっと、ブラックだって協力してくれるはずだ。

「やってくれますか、ツカサ君」

 ようやく決心がついた俺に、アドニスが問いかけて来る。
 もう迷う事は止めた俺は、その問いにしっかりと頷いた。

「ブラックが良いって言ったら……協力する。というか、協力するように俺からも言ってみるよ。……俺だって、もう、足手まといは嫌だし」
「そうなった覚えはありませんが……いいでしょう。頑張りましょうね、ツカサ君」

 医者のようにそう励まされて、少し気が楽になる。
 そうだよな。アドニスはあくまでも医者……いや、薬師として、俺を診療しようとしてくれているんだ。しかも、俺を助けたいって言う一心で。
 これだけ誠実に対応してくれているんだから、俺だって応えなきゃ。

 それに、黒曜の使者の力がグリモア達に悪影響をもたらすなんて事も有り得るんだから、確かめられる暇が有るならそれに越したことはない。
 どういう結果になるかが怖いけど……俺が考えてる最悪の結果が出るかもしれないけど……でも、不安を抱えているより、解き明かした方がずっといい。

 ブラックの為にも、はっきりしたほうが良いんだ、きっと。
 …………よ、よし。頑張るぞ。恥ずかしいけど、でも、アドニスには前にも色々と弄られた事が有るから、他の奴よりも抵抗ないし、まあ……何とかなるだろ!
 お、俺だって男だ。今更体を弄繰り回されても我慢できらァ!

「所でツカサ君。一つ確かめたい事が有るんですが」
「えっなっなに」

 うお、急に話しかけて来るなよ。
 何を確かめたいのかとアドニスを見ると、相手は先程俺に見せた物を差し出した。
 それは、大小二つのリング。
 一つは俺の手首の半分ほどで、もう一つは親指に嵌める指輪程度の大きさだ。

 大きな方は銀色で、小さな方は金色だが……これで本当に俺の「気の枯渇の原因」が解るのだろうか。もっと言うと、俺の気絶に対してなにか役に立つのかな。
 やっぱ説明は欲しいよなあ……。

「あの、アドニス……この二つのリングって結局なんなの?」
「ああそうそう、あの場で言えばまた君が過敏に反応すると思って言わないでおいたのですが、これは君の絶頂時における体内の気の消費量と、それによって君の心身が損失を補おうと吸収する曜気がどこから来るのかを探知する曜具になります」

 神童マグナ=ロンズ=デイライト氏にも協力して作って貰いました、とアドニスはサラリと言うが、おいちょっと待て、お前マグナと会ってたのか!

「まっ、マグナ元気だった!?」
「ええ。君の所へ行くと聞いたら、自分も向かうと言わんばかりの顔をしていましたが……立場上それも難しい方ですからね。君に会ったら、心配するなと伝えてくれと言われました」
「マグナ……。でも、良かった……ほんとに無事で……」

 シアンさんから保護したとは聞いてたけど、曜具を作れるんなら大丈夫だよな。
 なんてったって、マグナは曜具の事になるとすぐ周りが見えなくなるほどのメカニックだ。元気に曜具を制作できてるなら、変な扱いはされてないって事だよな。
 しかしアドニスとマグナの合作とは……これ実はけっこう凄い曜具なのでは。

「この二つのリングが感知した事は、私が装備しているリングに転送されます。体に変化が起こった時に起動するので、まずは通常時の記録を取っておきたいんです」
「へー。で、それどこにつけるの?」
「君の耳と陰茎です」

 …………うん?
 なんだって?

「ゴメン、アドニス。もっかい言ってくれる?」
「君の耳と陰茎です」
「え……」
「耳といんけ」
「もう良いもう良いごめんなさい!! ちょっ、ちょっとまって、なにそれっ、なっ、なぁ!?」
「ナニソレも何も、曜具ですってば。本当は首輪が良かったんですが、それだと色々と不都合があるでしょう? ですから、曜気を取り込む上半身を監視する為にイヤリング、そして放出する際に曜気の流れが一番よく通る下半身……特に陰茎を監視する為に専用のリングを作ったと言う訳です。別にいやらしい意味はありませんよ」

 う、うううう……そんな事言われたって……。
 だってそれをアソコに付けるって、それぶっちゃけコックリングって言う奴なんじゃないの。アダルトグッズと同じなんじゃないの。
 もし勃起したらどうなんの。千切れない? 俺めっちゃ怖いんだけど。
 曜具だから勃起しても平気なのかな。それとも俺のが粗チンとでも言いたいのかな。あれっすごくイラッとして来たぞ。落ち着け、落ち着くんだ俺。

「そ、それちゃんと膨張するように出来てんの……?」
「抜かりは有りませんよ。性行為を想定しての作りですから、もちろん自動的に伸びます。ただ、外されると困るので、行為中に強く触られると安全装置が働きますが」
「そ、そうなの……」

 じゃ、じゃあ、一応俺のイチモツは安心なんだな。引き千切られはしないんだ。
 そうだよな、ここは不思議なお道具が沢山ある世界なんだ。金属製っぽいコックリングでも、俺の肌には優しいしちゃんと伸び縮みも出来ちゃうんだよ。

 だったら、付けてたって何の問題も無いよな。……ない、はず……。

 自分を騙し騙ししながらそう納得しようとしていると、アドニスが席を立って強引に俺を立たせてきた。何事かと思って相手を見やると、アドニスはふっと笑って。

「ではズボンの合わせを開けて下さい」

 なんてことを、言い放ちやがった。

「ずっ……」
「監視者が嵌めないと情報の転送が上手く行かないんですよ。恥ずかしいのは解っていますが、通常の状態を調べる為なので我慢して下さい」
「う、ううううう」

 そうか、これか……コレの為に二人きりで部屋に籠ったんだな……。
 確かにこれは誰にも見せらんないわ。ズボンからブツを出して他人にリング嵌めて貰うって、何のプレイなんだよ本当に。
 ああでもここまで来てしまったら仕方ない。
 あの、あれだ。医者に診せるようなもんだから、我慢出来るから……!

「ツカサ君、良いですか?」
「う、うぐ……お、お願い、します…………」

 顔がまた熱くなってくるのを必死でこらえながら、アドニスに言う。
 相手は俺の顔をじっと見つめていたが、ふっと笑ってその場にひざまずいた。
 そうして、俺のシャツの中に手を入れると、ズボンのベルトを外して、合わせ目を解いて……

「っ…………」
「このシャツすそが長くて邪魔ですね……ツカサ君、持っていて下さい」
「んん!? う……わ、わかった……」

 チクショウ、こんな時に裾長シャツの弱点が出ちまった!!
 シャツをたくし上げるとか、まるで自分で下半身を見せてるみたいじゃないか。
 いや、見せてるんだけど、見せなきゃいけないからたくし上げるんだけど!!

 うううう……やっぱ身内でも恥ずかしいよぉ……。

「良い子ですね、そのまま動かないで」

 アドニスの声が優しいのだけが救いだ。
 恥ずかしくてすこし内股気味になってしまった足に、ズボンと下着が一緒になってずりずりと落ちて来る。繊細で長い指が俺の素肌と布の間に入り込んで、無理矢理に降ろしてくるんだけど、その感触をどうしても意識して足を震わせてしまって。

 下腹部が外気に触れて、その下の俺のモノが、アドニスの前に曝されていく。
 俺を辱めないようにとアドニスは素早くやってくれているのに、それでも俺はその時間がとても長く思えてしまい、間近で見られているんだと思うと顔が熱で痛んで堪らなかった。

「……相変わらず、十七歳とはとても思えない可愛らしい陰茎ですね」
「う……もっ、変な事言うなって……っ!」

 恥ずかしい。医者に診せるような物だって思ってても、恥ずかしいよ。
 だってアドニスは仲間で、信頼できる奴で、だからこそ、自分の急所をじっと見られているって言うのが、どうしようもなく耐え切れない。
 早く終わらせてほしい一心でアドニスを見やると、相手は俺の心を悟っているかのように頷き、銀色のリングを持つと――――綺麗な指で、俺のモノを掴んで……

「っ、ぁ……!」

 や……嫌だ……なんだよこの声。何でこんな変な声が出るんだよ。
 我慢しようと思ってたのに、アドニスにソコを軽く掴まれて持ち上げられると、内股がビクビクと震えてしまう。口を噤んでも、触れられているという感触が俺の体の奥をくすぐるみたいで、無意識に体が動いていた。

 そんな俺を見て、アドニスは何故か軽く笑っていて。

「……本当に君は……感じやすいんですね……」
「も……やだ……お願い、早く……っ」

 変なこと言ってないで、早く終わらせて。
 涙目で必死に訴えると、アドニスは俺の顔を見てニヤリと笑い、リングを俺のブツに通して、根元まで押し込んだ。そうして、下腹部にぴたりとくっつけて……軽く、リングを撫でる。
 すると、リングは一気に俺のモノに嵌るように収縮した。

「ひあぁっ!?」

 キュッと締まった感触に、思わず声を上げてしまう。
 そんな俺にアドニスは実に楽しそうに笑った。

「ふふ……相変わらず嬌声も可愛らしいですね」
「っ、もっ、もう、何言って……!」

 こんな変な状態でアホな事言ってるんじゃないよ。
 そう、言おうとしたところに。

「ゴルァアア!! インケンクソ眼鏡ぇええ!! 何ツカサ君と二人っきりで部屋に籠ってんだオラァアアアアッ!!」

 バターンと扉が開いたと思ったら、そこから赤いオッサンがずんずん入って来た。
 わあ、鍵は締めてあったはずなのに……って、ブラック!!
 うああ帰って来ちゃった。

 まずい。この状態を見られたらまずいぞと思っている内に、ブラックはもう俺達の姿がみえる所にまで来てしまっていて。ブラックは、しっかりと今の状態を目撃してしまった。そう。股間丸出しの俺と、その股間を間近で見つめているアドニスと言う、とんでもない状態を……。

「なっ…………」
「おや、お帰りなさい。早かったですね」
「おっ、お、ま……お前ぇえええええええええ!!」
「わーっ!! やめてー!! ここで剣も炎も出さないで――――!!」

 ブラックが反射的に腰の剣に手を掛けようとしたのを見て、俺は慌てて物騒なオッサンに飛び掛かった。もちろん、フルチンのままで。

 しかし、それぐらいで場が収まるはずも無く…………。
 ブラックが現状を理解して落ち着いてくれるまで、たっぷり一時間も掛かってしまった。









 
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