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ラゴメラ村、愛しき証と尊き日々編
熊、つがいを望む3*
しおりを挟む「ツカサ、お前は俺達に嫌われた嫌われたと言うが、具体的にどうなると嫌われたと感じるんだ?」
再び髪を撫でながら問いかけると、ツカサは目を瞬かせて答えを探すように視線を探るように動かす。
「え、と……無視、されたり、冷たくされたり……なんか……いつもとちがう感じ、だったり……。もう俺に、興味、ないのかなって……」
「ふむ、なるほどな。……ならば、無視せずに、ずっと見ていればいいのだな」
「え……」
ツカサがそれほどまでに願うのならば、こちらとしてもしっかりと答えてやらねばなるまい。もう二度と「嫌われて独りになる」などという誤解をしないように。
そう思えば余計に気分が高まって来て、クロウは深呼吸を繰り返しながらツカサの首筋に唇を押しあてた。
「んっ、う……」
いかに若いツカサと言えども、これほど酔っているなら感度も鈍くなっているはずだ。その状態で彼が思い知る程の愛情を教えるには、いつものような性急な行為では足りないだろう。ここは……そう、ブラックのようにねちっこくツカサに思い知らせてやらねばなるまい。
(だが、傷付けるような事は言えんな……)
可憐で純粋なツカサの事だ、ブラックのようにわざと恥ずかしがらせるような卑猥な言葉をかければ、すぐに赤面して涙ぐんでしまうだろう。
その姿が愛らしくて欲望を掻き立てるのだが、まあ、今はそんな場合ではない。
彼が欲しがっているのは、クロウやブラックが自分を嫌っているのではないという確かな証だ。それを教え込んで二度とこんな事を思わせぬためにも、二番目の雄たるクロウがしっかりと思い知らせてやらねばなるまい。
「クロウ……」
不安がっているツカサに口を緩めると、クロウは首筋を唇で食んだ。
「あっ……」
可愛らしい声と共に、首の筋が小さく動く。
だが浮き出る筋すらも柔らかく、牙を使う手間すらいらないほどの感触だ。これが晩餐だったとしたら、極上の肉だと誰もが認め称賛しただろう。
人族の子供の肉は柔く、獣人族の一部の輩には「最も好む肉」と言って憚らないような野蛮人もいたという。以前のクロウは、あんな痩せぎすで筋肉も無い自分達より劣る種族の肉が美味いものかと思ったものだったが、今は素直にその評価に納得できる。食べる妄想すらも勿体ないと思う程の極上の肉がここにあるのだ。
子供ほど柔くは無く、だが大人とは明らかに違う脂肪と筋肉が絶妙にまじりあった上質な肉体。ほんの僅かな間だけの、少年の中性的な肉付きをツカサは持っている。
しかも、その肉はクロウとブラックが犯せば犯すだけ柔らかく、触れずにはいられないほどの感触になって行くのだ。
腰から下の、男の骨格になり切れていない未熟でふくよかな下半身など、ツカサの体でしか見た事が無い。
筋張って不味い臭いばかりの人族の男とは全く違った、芳しい体。
ツカサの心根から好きになったが、肉とその迸りを知れば知るほど、体まで好きになってたまらなくなった。心身ともに満たしてくれる存在など、そうはいまい。
いや、これから先もずっと現れる事は無いだろう。
だからこそ、クロウもブラックも、自分を満たしてくれたツカサを欲しがるのだ。
「ツカサ……お前は知らないだろうが、お前の体は誰よりも美味く素晴らしい……」
鎖骨のあたりにまで唇を落とし、軽く歯を立てながら吸う。酔っていてもそれなりに反応するツカサを見ながら、両手でゆっくりと胸を撫で回すように触った。
「ぅ、あ……ん、ぁ……う、ぅ……」
「お前の交尾がヘタだなんて事は無い。もし本当に下手なら、ブラックはお前の事を執拗に辱めたりしないし、なにより……これほどまでにツカサの体を淫らに作り変えているのに、今更手放すはずがあるまい?」
優しく揉みしだく胸は、明らかに普通の少年とは異なっている。
未熟な柔軟性を残す薄く固いはずの胸は、最早その名残は無い。
大人の男の広い掌に何度も揉まれる事によって、男の都合のいい肌に作り変えられ、今はもう性の判別がつかない頃の子のように心地の良い手触りになっていた。
ここまでやって、まだ「ツカサを完全に堕とす、自ら誘って来るようにする」などと嘯く男が、どうして自分の至高の逸品を捨てられようか。
(まあ、あいつの場合……例え交尾に満足がいかなかろうが、ツカサを手放す事など決してないだろうがな……。それどころか、今以上に調教しそうだ)
ブラックの執着は並ではない。
ツカサを逃さない為なら、本気で人非人のような事すら行うだろう。
だが、ツカサの事を思う程度の情がまだあるから、我慢をしているだけだ。これでツカサの方から「離れる」などと言えば――――考えただけでも恐ろしい。
(……オレも、片足の腱くらいは切るかもしれないがな)
愛しい物を手に入れ、子を産ませるためなら平気で相手の足すら壊す。
獣人とはそう言う物だ。基本的にすべてが力によって成り立っている。
だからこそ、ブラックがやりたい事もなんとなく理解出来た。
ただそれは――随分と遠回しで、他人の事ばかりを気にする初心なツカサには、まったく意味を持たなかったようだが。
「あっ、ん……や、ら……むねばっかぁ……っ」
「ツカサの胸が一番心地良いのがいけない……こういう事を許すからいけないんだぞ、ツカサ……。オレも調子に乗ってしまうだろう」
顔を上げて笑ってやると、ツカサは先程までの怯えた顔とは一転して、嬉しそうに笑ってくれる。まるで、クロウの詰るような勝手な言葉を喜ぶように。
――そう。ツカサは、こうでもしないと解ってはくれないのだ。
愛しているなどという言葉は、内心どう思っていようが呟ける。
好きだという言葉にも種類が有り、誰もその言葉の真意を測る事は出来ない。
信じ込まなければ何も信用する事など出来ない。言葉とはそう言う物なのだ。
だが、ツカサはそれを信じる事が出来なかった。
いや……自分自身が「本当の好意」しか示せないから、それほどまでに自分達を思っていたからこそ、こちらの言葉を信じる事が出来なかったのだろう。
自分の思いが真実であればあるほど、相手が自分を同じ位に思っているのかと不安になり、嫌われる事に怯えてしまうのだ。
己の高揚に酔って盲信する事など無く、相手の事しか見えていないから。
そこまで盲目に……自分達の事を、思ってくれているから……――
(たまらんな……。それほど強く思ってくれているのに、オレ達に嫌われたくなくて必死に自分を抑えて、媚びようとしていただなんて……。これだから、ツカサからは離れられんのだ……)
普段の穏やかな博愛の裏に隠した、神に縋るかのような深く重い情愛。
これほどまでに大切に思われて喜ばない男などいないだろう。
それを、計算では無く真実から行っている。
だからこそ、ツカサを誰にも渡したくは無かった。
「…………ツカサ……オレのこの手を感じても、まだ信じられないか……?」
うっすらと立ち上がった乳首を親指の腹で捏ねながら、肉付きの良い内腿を付け根までゆっくりと擦り上げる。
股間に近い場所に指をやる度にツカサはひくひくと反応し、もどかしい愛撫に子供がむずがるような顔で涙を浮かべたが、赤面した顔は嫌がってはいない。
それどころか酩酊したような潤んだ瞳をこちらにむけて、悦楽に酔い、口を微かに開いて浅く呼吸を繰り返している。
ちらちらと見える舌先が、なんとも艶めかしい。涙に濡れて煌めく琥珀色の瞳は、間違いなくツカサ自身のもので。クロウの手や低い声に反応して光を含ませ反応する様は、支配欲を大いに満たした。
気付けばツカサの幼く愛らしい肉棒は緩く勃ち上がっており、クロウの愛撫に興奮してくれた事が明確に解って、心が愛しさに引き絞られた。
今すぐ裸にして、全てを食らってしまいたい。
そんな事を思っていると……ツカサも緊張がほぐれたのか、おずおずとクロウの顔を見上げながら、ある事を問いかけて来た。
「……お、れ……いい、の……?」
「ん?」
「俺で、いいの……? クロウと、えっち出来なくても……いいの……?」
不安そうに、クロウを見つめる幼い顔。
嘘偽りなど欠片も無い、クロウの事を心から「失いたくない」と思っている顔。
そんな素直で可愛らしい執着を見て、頷かない事など出来ようはずもない。
クロウはツカサの頬に口付けると、その汗ばんだ体をぎゅっと抱きしめた。
「ツカサが許してくれるなら、オレは一生傍に居るつもりだ。……なに、獣人は長命だ。お前達が許してくれるまで、気長に策でも練るさ」
だから、何も心配しなくていい。
わがままだって、何でも言って構わない。
クロウは、ツカサのそのブラックに操を立てる純粋な心が愛しいのだから。
そう言って、幼げな顔を見やると――彼は、涙ぐんでクロウに抱き着いて来た。
「……お前が離れたいと言っても、意地でも離れんからな、ツカサ」
「う、ん……うん……っ」
酔っている間にこんな事をまた約束させて、悪い大人だ。そうは思う。
だが、唯一無二の生涯の花嫁を目の前にして、何も宣言しないほどクロウは貧弱な獣ではない。ツカサは、どれほど年月を費やそうが手に入れようと決めたメスだ。
どんな手段を使ってでも……絶対に、最後には犯して子を孕ませてやる。
そのためなら、長い雌伏の時も喜んで耐えよう。
(……まあ、雌伏というほど辛くはないがな。素股も出来るし)
ツカサの心地良い肌に己の肉棒を擦りつけるのは、交尾には劣るかも知れないが、これはこれで非常に気持ちがいい。心が手に入った状態なら、このような自慰行為にも似た交尾でも全く不満は無かった。
むしろ、愛しいツカサに精液を放つことだけでも嬉しい。
(そうだ、より信用して貰うなら、昂ぶりを見せた方が早いな)
男の肉棒など興奮すれば見境なく勃起するものだが、何でも良いという訳ではあるまい。目に見える自分への執着の証を見せれば、更にツカサは喜ぶだろう。
そう思い、クロウはツカサの耳元で囁いた。
「ツカサ……辛いだろう……? 今楽にしてやるからな……」
「あっ、や……やらっ、そこっ、クロウ……っ」
ズボンと下着を脱がして、下半身を露出させると、自分の胡坐の上に座らせる。
素肌の太腿が自分の固い足にめりこむ感触が心地いい。
そんな事を思いつつ、クロウはツカサを抱えたまま片手で己の愚息を取り出した。
「今日は、半殺し覚悟だ……食事ではなく、たっぷり愛してやろう」
「んっ、ぇ……ぅええ……!?」
なんだ、段々酔いが醒めてきたようだ。
だが、だからと言って止める訳にはいかない。
クロウは己の肉棒とツカサの愛らしい肉棒を纏めて持つと、そのまま擦り上げた。
「やっ、あっ、い、いっしょにしたらだめぇ……!!」
「何度達しても良いぞ……全部舐めとってやるからな……っ」
卑猥な言葉だが、ツカサにはそれもまた愛の言葉なのだろう。
自分が正直に性欲を現す事で、ツカサもそれを受け入れてくれる。嫌われてしまうかもしれないと思うような嗜好でも、ツカサは笑って許してくれた。
彼の前では、何も隠さずに愛を謳う事が出来るのだ。
……そんな愛を受けて、どう嫌えばいいのか逆に教えて欲しい。
嫌う事が出来るなら、自分も今こうして積極的に苦汁を舐めるような真似はしていないだろう。半殺しにされても平気なくらい、彼が愛しい。自分の全てを受け入れてくれると確信できる唯一の存在が、愛しいのだ。
だから、己の性欲を肯定してくれるのなら、なんだってやってやろうと思えた。
欲を曝け出して、彼を求めてやろうと思ったのである。
その事がきっと、ツカサが孤独に怯えずに済む唯一の対処法なのだから。
(……己の欲のままに番を構うなど、普通なら相手に嫌われそうなものなのだがな……。まったく、ツカサはどこまでもオレを甘やかしてくれる……)
ブラックも間違いなくそう言う気持ちだろうが――
今はただ、この純粋な少年を恐怖に陥れる程に愛されているあの男が、少しだけ憎らしかった。
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