異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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首都ディーロスフィア、黒曜の虜囚編

3.暗黒の間と不屈 1

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 俺を連れて行くって、どこに。

 思わずギアルギンを見つめると、相手はクスクスと笑いながら近付いて来た。

「だがその前に、お前……おっと、レッド様、そんなに怖い顔をしないで下さいよ。君には、これを付けて貰おう。君に逃げられたら流石に困るのでね」

 そう言いながらギアルギンがマントから取り出したのは、ブラック達に装着させたものと同じ【契約のかせ】……らしきものだ。
 でも、それがマグナが説明してくれた【契約の枷】と同じ物かどうかは解らないんだよな……。ここは聞いておくべきか。

「これは……契約の枷か……?」

 訊くと、ギアルギンはクッと口角を上げた。

「良く知っている。あの小賢こざかしい“半端者”に教えて貰いました? フフ、しかしこれは君が知っている枷とは少し違う。あいつらに着けたのと同じ、改良版です」

 そう言いながら、俺の顎を掴んで強引に上を向かせる。
 剥き出しになった首に、ギアルギンはいとも簡単に枷をめやがった。

 カチリ、と音がしたが……これは簡単に外せないんだろうな……。

「あの枷は、装着者が反抗的な態度を見せた時に、主が口頭で起爆を宣言しなければ爆破できなかったが……この改良版の【契約の枷】は、それに加えて自動起爆の設定が出来るようになった。例えば……この神殿から出た瞬間に起爆……と言ったようにな。……命が惜しければ、従う事です」

 最後だけ丁寧な話し方しやがってぇえええ……。
 まあでも良いもんね、俺別にこの神殿から出る用事ないし! きっとブラック達も、この神殿にいるだろうし……たぶん……。

「おい、ツカサを怖がらせるな! 殺すなんて事は俺が許さんぞ!!」
「えぇ、えぇ解ってますとも。ですから、彼の場合は……致死量にならない程度の、苦痛をともなう毒を注入する方向に変えてますからご安心を」

 レッドの敵なのに敵じゃないっぽい発言に、ギアルギンは呆れたように言う。
 だが、そのうっかりな発言は俺にとっては好都合だ。苦痛ぐらいなら耐えられる。いざとなったら力ずくでも首輪を壊せばいいんだし……。

「ああ、言っておきますが、苦痛毒と言っても生半可な物ではありませんよ。精神が狂いかねないほどの苦痛ですからね。頭を壊されたくなければ、何度も逆らわない事です。……まあ、一度味わえば二度と逆らう気など起きないでしょうが」
「………………」

 そ、そんなにヤバい毒なの……?

 ……ど、ど、どうしよう。やっぱ、まずは様子を見る……かな……。

「では参りましょうか」

 ギアルギンが俺達を扇動するように部屋を出る。
 俺はと言うとレッドに肩を掴まれて、再び強引に部屋を連れ出されてしまった。
 ……この時点で何回目の肩掴みだよと思ってしまったが、我慢だ我慢。

 再びあの扉番とびらばんさんに大変申し訳ない自動ドアを潜り抜け、今度は階段を下りて一階へと向かう。どこへ行くのかと思ったら、階段の横にある狭い通路に入りどんどん奥に歩いて行く。議会が開かれる場だというのに、なんというか、そう言う場所らしくないな……でも俺も国会議事堂とか行った事無いし、もしかしたら議事堂系の建物はこういう廊下も有ったりするのかな?

 まあ何にせよ、ついて行かない訳にはいかない。

 うながされるまま、細い廊下を右に左にと曲がりつつ歩く。と……俺は、廊下が微妙な角度を付けて下っている事に気付いた。どうもこの廊下、気にせず歩いている分には下っている事に気付かないように出来ているらしい。
 だから何回も降り曲がっているわけか……。

 でもそうなると、俺達が向かっているのは更に地下ってことになるよな。
 どこに行くんだろうかと思っていると、何度目かの曲がり角の真正面に、以前……ハーモニック連合国の首都であるラッタディア――の地下世界ジャハナムで見た、少々レトロな昇降機が見えてきた。あの、格子状の引き戸を自分で開けて入るタイプの奴だ。これは見た事があるから驚かないぞ。

 しかし、やっぱりコレもプレインの技術者が開発したんだろうか。
 驚きはしないけど、やっぱ気になるよな。
 そんな事を思いつつ、俺はレッド達と共に昇降機で更に下へ――と思っていたら、昇降機は何と昇降ではなく、横に滑らかに移動し始めた。

「よよよ横!?」

 鉄壁の通路を地下鉄のように快速で移動して行く昇降機にビビッていると、レッドが動揺する俺を見かねてかまたもや解説してくれた。
 ぐぬぬ……こう言う所がやっぱりブラックに似てる……これも“導きの鍵の一族”の習性って奴なんだろうか……。

「これは昇降機ではなく、軌道式走行機といってな。あー……」
「彼は軌道車を見た事があるので、理解出来ると思いますよ。ねえ、ツカサ君?」

 確かに俺は、パルティア島と鉱山を繋ぐ続く長く広い土のトンネルで、レールの上を走る電車ならぬ軌道車をしっかりと目撃した。しかも乗車もしたさ。
 でもギアルギンに訳知り顔でニヤニヤされるとイラッとするぅう……。

「じゃあ話は早いな。この箱はあの軌道車の簡易版で、上部に箱が在るのが見えると思うが……アレに炎の曜術を発する曜具を詰め、瞬時に何度も膨張させる事で推進力を得て動いている。……とはいえ、俺も端的な説明を受けただけなので、内部構造は解らないんだがな」
「そんな仕組みに……てことはレッドも気になったのか」
「ああ、炎の曜気があるのに目に見えない事が不思議でな」

 ふーん、なるほどな。自分が扱う属性の曜気なら、曜具の中にあっても感じる事が出来るのか……そういうのもブラックが言ってた「気配」みたいな物なのかな。
 俺は「見たい」と思えばすぐに色んな曜気を見る事が出来るけど、このチート能力が無かったら、俺も「気配」で曜気を感じ取れるようになってたんだろうか。
 まあでも、たらればの話をしても仕方ないよな。

 それにしても……レッドはそれほど深刻そうには見えないな。
 この走行機の仕組みをわざわざ聞いちゃうくらいだし、緊張している様子も無い。レッドにとっては危険が無い場所なんだろうけど……そもそも、どうしてレッドはギアルギンと……いや、この国の悪い奴らとつるんでるんだ?

 仮面を付けたいけ好かない犯罪者はまあ、何通りか納得のいく答えが想像出来る訳だが、しかしレッドだけはその理由が解らない。
 まさかブラックに復讐する為ってだけじゃないだろうし……復讐するだけだったら、ブラックを牢獄に入れておく必要はないよな?

 そんな面倒な事をしなくても、ティーヴァ村で決着を付ければ済んだはず。
 なのに、ブラック達を牢屋に入れて俺を連れ出して……一体どういう事なんだ。

 考えていると、急に昇降機、いや走行機が減速しだした。
 ふと進行方向を見ると、車止めが見える。と言う事は……ここが終着駅か。

 プロピレア神殿からかなり離れた場所のようだが、一体どこに連れて来られたのだろうか。再びレッドに肩を抱かれて連れ出され、神殿とは様変わりした無機質な鉄の通路を真っ直ぐに歩いて行くと――――

「…………なに、この音……」

 金属同士が擦れ合うピストン音に、何かが重苦しく動く音。時折、蒸気が噴き出す音も通路の先から聞こえて来る。
 何があるのかとレッドを見やると、彼が口を開くより先にギアルギンが答えた。

「君が知っている物と同じかどうかは解りかねるが……見た事がある光景と似ている事は確かだ」

 まるで、はぐらかしたような言葉。
 あなどったような態度を見せて俺が怒らせ扱い易くしようとしているのか、それとも。
 何にせよ思い通りになる訳にはいかない。俺は気を引き締めると、通路を抜けて、すぐ目の前の鉄柵に手をやり視界に広がる光景を見た。そこには。

「っ……! これ……まさか…工場……!?」

 鉄柵の向こう……いや、鉄柵の下には……数えきれないほどの人々が、巨大な金属の部品を加工している広大な工場が広がっていた。
 よくみると、ベルトコンベアらしきものや、周囲から時折蒸気が噴き出しているのが見える。……俺は、この光景と非常によく似たものを見た事が有った。

 それは――――オーデルの地下に存在した、巨大な施設だ。

 あの場所は“大地の気”を集めるための様々な作業を行っていたので少し異なるが、しかし様子はまるきり一緒だ。オーデルとプレインは種類の違いは有れど、同じ技術大国であると言えるが……しかし、工場がこれほど似る物なのだろうか。

 不可解な光景に顔を歪める俺だったが、ギアルギンに「行きますよ」と急かされて移動を余儀なくされる。
 鉄柵で囲まれた狭い通路を、壁伝いに工場を迂回しながら真向いの扉へ向った。

 扉の先はすぐ階段になっていたが、工場には続いていないようだ。
 ……こんな場所のどこに向かおうというのか。

 にわかに動悸が治まらなくなってきて、緊張しながら一歩ずつ確実に階段を下り、薄暗くなってきた周囲に視線を動かしていると――暗くなる道を照らすためか、壁に緑色の明かりを灯すランプが現れ始め、その先にやけに頑丈そうな金属性の赤い扉が見えた。やはりこの扉にも、内部と話をするボックスが付いている。

 今度はギアルギンが何事か喋ると、扉の鍵が外れる音がした。

「さあ、どうぞ」

 ゆっくりと内側へ開く扉の中に、招かれる。

 扉の先は――。

「…………え?」

 扉の先には、小さな部屋が有って、真正面にまた扉が有り……。
 数人の兵士が、こちらを見てじっと突っ立っていた。

 驚いている内に、背後の扉が閉まる。
 この部屋が一体何なのかと訳も解らず固まっていると、急に肩を掴むレッドの手が強くなった。まるで、この状況に怒りを覚えているかのように。
 だけど、レッドの表情を確認する暇も無く……俺は、ギアルギンに強引に手を引っ張られて、様子のおかしいレッドと引き剥がされてしまった。

「さあ、ツカサ君。君の出番ですよ」
「出番って……」

 どういう事だと咄嗟にギアルギンの顔を見上げると、相手は気味の悪い笑みを口元に浮かべ、とんでもない事を言い放った。

「今から君の身体テストです。と言う事で、服と装備一式をここで脱いで、こちらに渡して頂きましょうか」

 その言葉に、一瞬思考が止まる。

 …………服と、装備一式って……まさか……ここで裸になれって言うのか!?

 こ、こんな……兵士達が見てる前で……。















※レがつく展開には成りませんが、屈辱プレイと言えばそうかもしれない
 ので一応分けておきます。読まなくても良いように後で回想入れるので
 もし苦手だなあと思いましたらスルーしてやってください
 ツカサの心境がブラックにされてる時と全く違うので辛く見えるやも
 しれませんが、ご了承ください(´・ω・`)

 
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