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プレイン共和国、絶えた希望の妄執編
22.どうしてそうなる 1
しおりを挟む※遅くて申し訳ない……
あとちょっと短いです(;´・ω・`)次えろだからユルシテ…
意外と速い終決となった巨岩の遺跡の探索だったが、外で一生懸命にモンスター達と戦っているナザルさん達を思えば、早期解決の方がむしろ良い。
あらかた……というか恐らく全滅レベルでモンスター達は退治したし、遺跡の中にあるモンスター自動精製機(適当に名付けた)は壊しておいたので、今後モンスターが出て来る事は無いだろうが……それにしても色んな意味で恐ろしい遺跡だった。
俺達のパーティーにはブラック、クロウ、ブラウンさんと手練れが三人揃っていたから、数日で攻略する事が出来たけど……普通の冒険者がチャレンジしたら罠で命を落とす奴も出たかもしれない。
ヤバい遺跡だから、他の奴に見つからなくてよかった……というのも有るが、そう言う所を含めて俺達が攻略できてよかったよ。
何にせよ……この遺跡の事は話せないので、クロウには第二層へ降りる階段を固い土の壁でフタして貰い、それと同様に天井に開いた穴もしっかりと封印して貰った。もし遺跡にモンスターの残党が残っていても、これならもう外には出て来られないだろう。ひとまずは安心だ。
――という訳で、俺達はソラさんに事の顛末を説明した。
もちろん、モンスター精製装置の事も、あの遺跡がどんな物だったかも話さずに。ただ、「古代の遺跡にモンスターが住みついて大量繁殖していた」と言う事と、この巨岩の上に生い茂る森は勇者と遺跡のお蔭なので、遺跡には金輪際立ち入らず誰にも話さないように……と釘を刺しては置いたが。
この森は、遺跡の「植物を育てる機能」によって保たれているらしいのだが、もし遺跡が内部にあると外部の人間にバレたら、調査でどこをどう探られるか解らない。
最悪の事態になって遺跡を停止させられてしまえば、またフォキス村の人達は居場所を失なう事になるのだ。そんなこと、勇者は望んでいないだろう。
俺達だって村の人達を悲しませたくない。
だったら、誰かに発見されるまでは隠そうと四人で話し合って決めたのだ。
俺達は別に国の調査団でもないし、ぶっちゃけ面倒事には巻き込まれたくない。何より、ここでヤバい発見をしたって事でプレインの……えーっと何だっけ。十二……機関だか師団だか覚えてないが、とにかくシディさんが属している上層部の人達に目を付けられかねない。
シディさんもマグナも、俺達がそうならないように取り計らってくれたんだから、ここはもう、隠蔽一択っきゃないでしょう。
そんなこんなでの調査報告だったが、ソラさんは疑いもせずに全てを飲み込み、俺達に何度も頭を下げて礼まで言ってくれた。
その上、宴を催し報酬までくれると言うのだ。
だけど、こんなひっそりと長閑に暮らしている村の蓄えを頂く事は出来ない。
というわけで、俺達は報酬は丁重にお断りしておいた。宴は結局押し切られて参加する事になってしまったが……。
ラトテップさんやリトさん達には「欲が無い人達だ」と褒められてしまったが、真相はそう褒められたものでもない。ぶっちゃけた話、遺跡で素材を手に入れまくって【リオート・リング】に保存してあるので、報酬を貰わなくて良かっただけなのだ。
格好いいこと言っちゃったけど、結構ゲスいかもな……。ま、まあ、ソラさん達には損失がないんだからこれで良し!
と言う訳で、俺達は一日置いて宴に参加する事となった。
正直ブラックは乗り気じゃなかったんだけど、断る雰囲気じゃなかったからなあ。
村人達もモンスターを撃退した事で気が昂ぶっているのか、物凄いお祭り騒ぎで止める事が出来そうになくて、結局流されてしまったのだ。不満だろうが、今回ばかりは我慢して欲しい。
つーか、前は宴とか普通に参加してたのに、なんで今回は嫌だったんだろ。
ブラックも酒を飲める場面は結構ホイホイ参加してたよな。
よく解らないけど、あれかな、今回は俺達の他にも客がいるからなんだろうか。
だったら、早めに切り上げた方が良いかな。俺も酒とか飲めないから長引いて酒を進められるようになったら困るし……そもそも俺達には使命が有るのだ。出立も早い方が良いだろう。じゃないと、ライクネスの王様にずっと睨まれてるみたいで居心地悪いし。
――――と言う訳で、俺達は村の広場で村人総出の宴に参加する事になったのだが……。
「み、みんな既に酔っぱらってる……」
日が落ちてまだ間もないと言うのに、でっかいキャンプファイヤーを囲んで円座になった村人達は、赤い顔をしてケタケタ笑い合っている。
俺達に料理を運んでくれたソラさんが言うには、初めての狩りで興奮した気持ちを治められないでいるのでしょうとの事だったが……それにしたって出来上がり過ぎである。ブラックとクロウも「お、おう」みたいな感じになっちゃってるし。
トカゲ肉に果実のソースを掛けた料理とか、見た事のない香草とかで蒸し焼きにした料理とかは美味しかったけど、もう酒のにおいが凄くてそれどころじゃない。
見れば、少し離れたところに座っているリトさんとマボさんや、ラトテップさん達も酒を勧められてだいぶぎこちない笑いになってしまっている。
これはこっちにお鉢が回って来たらヤバいぞ~と思っていると、完全に酒に飲まれたナザルさんが酒瓶を持ってこっちにやって来た。
「おおぃ、飲んでるかぁ~」
「の、のんでますのんでます」
と言っても、主にブラックとクロウが、だが。
俺は相変わらず「ツカサ君はお酒呑んじゃだめ」と真顔で注意されているので、一滴も飲めていないんだが、飲んでますと言わないと酒を勧められるので嘘を言わなければ仕方がない。
だが、それで引き下がるようなら酔っ払いが面倒臭いと言われない訳で。
「なぁ~にぃ~?! それにしてはお前ら盛り上がってね~じゃね~かぁ~!」
そ、そんなフンドシ鉢巻で餅ついてる芸人みたいな言い方しないで下さい。
思わず慄いてしまい、無意識に助けを求めようとブラックの方へ少々寄ってしまうが、ナザルさんにはそんな俺が軟弱に見えたのか、グイグイ距離を縮めて来る。
「お前らせっかくの宴だってのに騒げね~のかこるぁ~~!!」
「宿屋の親父は酔うとこんなになるのか」
「い、いやクロウ、それは人によりけりだと思う……」
「ごちゃごちゃ言ってね~でお前ら飲めごるぁああ!!」
「うわ、やめて、コップに酒いれんのやめてくださいいいぃ!」
いくら常飲するのがエールと言う酒と言っても、それは酒っぽさなんてまるでない温くてほの甘苦い飲み物でしかない。
なのにワインをその上からガバガバ注ぐなんて! 酒乱過ぎるでしょあんた!
「うわーもー、これだから酔っ払いは始末に負えない……」
「ぶ、ブラック助けてえぇ」
ナザルさんになぁ~にぃ~されても素面のブラックは、流石の貫録だ。というか、さっきから酒瓶一本開けてるのにまるで酔ってる気配が無いのも凄い。
あんたほんと色んな物に耐性ありすぎと思いつつも、今のこの状況を打破できるのはブラックしか居ないので、俺はブラックの腕に抱き付いて助けを求める。
もう恥ずかしいとか関係ない、酒臭いオッサンより素面な変人だ。
俺のそんな思惑を知ってか知らずか、ブラックは俺の態度に気を良くしたらしく、嬉しそうに口を緩めながら俺の肩を抱いた。
「大丈夫ですよ、ちゃーんとしっかり酔っぱらってますから。ね~、ツカサ君」
「そ、そうそう、酔っぱらってる。俺酔っぱらってますから」
だからもう勘弁して下さい、と肩を抱かれつつぎこちない顔で笑うが、ナザルさんは納得出来ていないのか俺の顔を覗き込んでくる。
「そうかぁ~? 全然酒臭くないぞ~?」
「やだなあ鼻がマヒしてんじゃないですかアハハ」
アハハじゃないよブラックなんとかして。
酒を飲むなと言うのなら、飲ませないための努力はしてくれよお!!
頼むから穏便にナザルさんを引き剥がしてくれ、と目で訴えると、ブラックは俺に「まあ、任せてよ」と言わんばかりにウインクして、クロウと目配せをした。
え、何を行うんですか……と不安になっていると……クロウがいきなりナザルさんを背後から羽交い絞めにして、ちっとも感情が籠っていない声で「どうどう」とか言い始め……いや待って、何、なに実力行使してんの!
「おっ、おいクロ……っ」
「あ~酔っちゃった酔っちゃったな~~~~! って事で僕達は先にお暇しますね。さあ行こうかツカサ君」
「えっ、ちょっ、ちょっとぉお!」
何をどう質問すればいいのか解らない内に、さっさとブラックが立ち上がる。
暴れる暇すら与えられずに小脇に抱えられて、俺はいとも簡単に宴から運び出されてしまった。おいおいおい良いのかこれ。
「ぶ、ブラック、何やってんの!」
「ん~? 何って決まってるんじゃない、お酒なんてツカサ君にはまだ早いからね。良い子はもう寝る時間なんだから、早く寝ないと! ねっ!」
「………………」
ねってなんだ。ねって。
それに、寝るって……真面目な意味の寝るだよな?
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