異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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ファンラウンド領、変人豪腕繁盛記編

34.すてきな観光地をつくろう!―分析と解析―

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※報告だけの回になってしまったです…( ^)o(^ )会話すくねえ






 
 
 クラッパーフロッグ達とアンナさんの協力を取り付けた事で、トランクルの復活計画は更に加速する事となった。
 翌日から【変化の術】で人族に化けたアンナさんが、カエル達を従え村長さんと詳しい取り決める話し合いを始め、その動きを見た村人達はより活発になったのである。

 恐らくアンナさんの爆乳美人っぷりに煽られた人が多かったんだろう……いや、彼女が何をしに来たかを聞いて、トランクルがもっと素敵な街になると奮起した人もいたと思うけどね! 俺は!
 とにかく士気が上がったのは良い事だ。アンナさんサマサマと言えよう。

 ちなみに、アンナさん&クラッパーフロッグ達と、トランクルの村の取り決めは以下の通りになった。

 まず、アンナさんにはカエル達と意思疎通して、週一くらいの報告をして貰ったり、要望などを聞いて貰う。その代わりに、彼女はトランクルの宿の風呂に自由に入って良いし、客が少ない時はベッドでも自由に寝られるようになった。
 クラッパーフロッグ達に対しては、湖に棲んで花粉を駆除、もしくは食べて貰う代わりとして、湖に居る間の安全の保障と、外敵が来た時には冒険者ギルドへすみやかに報告するという約束を取り決めたらしい。

 村長さんは金銭的なお礼も提案したようなのだが、アンナさんとカエル達は人族の金なんか貰っても仕方ないと言って、頑として受け取らなかったらしい。
 そのお蔭か、より一層アンナさん達に対する村人達の好感度は強くなったみたいなんだが……まあ、人間とモンスターが求める物って別物な時も有るしね……。

 とりあえず変な事にならなくて良かった……んだけども……一つ問題があるんだよな。それってえのが、ラスターの事だ。
 元々人間離れした力の持ち主だし、特殊な能力が有るのは解っていたけど、どうやらラスターは“気の流れ”を見る能力で、アンナさんが普通の人間ではない事を見抜いてしまっているのか、始終彼女を疑いの目で見つめていた。

 アンナさんが悪い存在じゃないのは解ってるみたいなので、何かを言おうという気にはならないみたいだけど、かなり心臓に悪い。

 だって、相手は腐ってもこの国の騎士団長サマなんだぞ。
 傲慢ごうまんな態度のせいで忘れがちだけど、ラスターは王様にも信頼される凄い実力者なんだ。しかも、ラスター自身「俺は勇者だ」みたいな妄言を前に吹聴してたし……そんな奴に魔族だってバレたら、どんな事になるか解らんじゃないか。
 魔族って、普通に考えたら勇者の敵だよな……?

 まあ、黙ってくれてるのも、俺達が連れて来た人だからって事なんだろうけど、本当ヒヤヒヤだよ。どうかラスターがアンナさんを無害だと思ってくれますように。

 ……とまあそれはそれとして、クラッパーフロッグの事が一段落ついた俺達は、その足で子供達の為の預り施設へと出向いた。
 この前は上空から見ていたせいで良く解らなかったが、預り所として使おうとしている施設は、広いワンフロアの二階建になっている。
 ここに、預かりエリアと軽食を食べられる場所を作るとの事で……もしかして、アレかな。フードコートみたいな物を作るつもりなんだろうか?

 だとしたら、この世界にしては現代的だな。
 子供の預りエリアは、フードコートにする一階に小さなものと、二階により本格的な物を作る計画とのことで、この施設を担当している村人が目をキラキラさせて、施設の展望を語ってくれた。
 そこまで燃えられたら、俺達だって頑張らない訳には行けないよな。

 ってなわけで、簡単に一階の預かりエリアと“遊び場”に軽い助言をして、二階に置く遊具は改めて資料を作って渡すという事で今日はおいとました。
 なんせまだ行く所があるもんでな。

 それはというと、アンナさんが風呂に入りに来るあの宿。復活したトランクルのランドマークとなる、レトロな宿だ。
 かつては王族や金持ちがこぞって泊まりに来たという、この世界では珍しい四階建ての巨大な洋館に行かねばならないのである。

 この宿は大通りに入口の扉を構え、湖の側に全ての客室の窓を向けている。
 全室オーシャンビュー……いやレイクビューって奴だな。
 今までは憂鬱花粉で窓も開けられなかっただろうが、今はクラッパーフロッグ達が居るので何も心配はない。むしろ、この洋館はあの頃よりもグレードアップしていると言っても過言ではなかったろう。

 アドバイスの為に……と俺達とラスターは洋館を案内して貰ったが、これがまあ、まだシャンデリアも赤じゅうたんも敷かれてないってのに、間取りだけでなんとなく金持ちが来てたんだろうなって解る作りで。

 エントランスホールは広いわ、遊技場らしき所やサロンもあるわで、まだ壁すらレンガ積みっぱなしって感じなのに、完全にお高い感じになっている。
 ただ、元々ある図面に手を加えて、一階には浴場やエステ(厳密に言うとエステとは違うみたいだが、俺には良く解らんかった)などが置かれるので、貴族の洋館と言うよりはだいぶ高級リゾート臭がしているが。

 洋館の責任者であるダニエルさんが言うには、最上階は今まで通り貴族のために使用し、三階は金持ち、二階と一階の数室は安価で泊まれるようにするらしい。
 浴場は紫狼の宿をパク……真似て、大きな風呂と、個人用の風呂を用意したとのことで。男女で風呂を分けてない所が少し気になったが……まあ、時間によって男女別にするとかそう言う事なんだろう。

 俺としては色々と不思議な部分もあったが、今の所は別に不満は無かったので、内装を整えて設備を入れる時にまた呼んで貰う事にして、俺達は貸家に戻った。

 …………と、ここまでが今日のダイジェストだ。
 どうだ、とても計画開始からまだ一週間も経ってないとは思わないだろう。
 俺も全然そんな気がしない。なんでだろう。建物が早く出来ちゃったから?

 これなら半月も経たずに計画が完遂しちゃいそうだな……。

「ツカサ。おい、ツカサ。聞いているのか」
「えっ、はぇっ!?」

 ダイジェスト再生に気を取られていた俺は、名前を呼ばれて慌てて前を向く。
 と、そこには、不機嫌そうな顔をしているラスターがいた。
 ……あ、そうだ。今俺は、貸家に帰って来てから、ラスターに昨日持って帰った野苺みたいな赤桃色の実を鑑定して貰ってたんだっけ。

 ちなみに、ブラックとクロウには、以前取り決めたように風呂場の掃除や洗濯をやって貰っている。ま、そのくらいはして貰わないとな。……ってそうではなく。

 慌てて首を振ると、俺はラスターに謝った。

「ごめんごめん、ちょっと意識が飛んでて……で、これって何の実なの?」

 俺達が向かい合う、台所のテーブル。その上に転がる実は、昨日摘み取られた物ではあるが、リオート・リングの中に保存していた為か、その鮮やかな色や艶やかさは失われていない。
 ラスターはフンと鼻息を漏らすと、その実を一つ摘まんで俺の目線に上げた。

「これは【ヒメオトシ】と言う実だ」
「ひ……ひめおとし? なんか変な名前だな」
「別に変な由来は無いぞ。……昔は砂糖も発見されておらず、甘味がかなり少なくてな、その時代には、この【ヒメオトシ】が甘味としてよく食されていたんだ。【ヒメオトシ】は繁殖力が強く、実を取り尽くしても本体が残っていれば二日程度ですぐに花や実が成るからな。……だが、それがいけなかった」
「……?」

 聞いてる限りはかなり有用な実だと思うんだけど、なんでダメなんだろ。
 良く解らなくて首を傾げると、ラスターは俺ではない何かに呆れるように額に手を当てて溜息を吐くと首を振った。

「甘味と言うのは、時に毒以上に厄介な病を引き起こす。……或る美しい姫がこの実を気に入り、毎日毎日これを食したそうなんだが……実を食べ過ぎたせいなのか、彼女はみるみる内に体が膨れ上がり、太ってしまってな。それで、美しかった容姿は醜くなって……結果、彼女は自分の卑しさに絶望して、コレが群生した場所めがけて崖から飛び降りてしまったらしい」
「だ……だからヒメオトシ…………」

 なにその可哀想な女の子の話……。好きな子が太ったって俺は気にしないけど、でも昔の女の子って今よりもっと繊細で脆いって言うしな……。
 なんにせよ後味が悪い。
 少々青ざめてしまった俺に、ラスターはさもありなんとばかりに頷いた。

「……まあ、あくまでもこれは伝説にすぎんが……それほど、この実は栄養豊富で中毒性があるという事だ。……とは言え、今の時代は高価ではあるが砂糖という別の甘味が存在するし、常春のわが国は果実も豊富だ。今ではそんな風に中毒になることもないとは思うがな」
「そ、そっか……。だったら、コレを名物の一つに加えてもいいかな?」
「構わんだろう。ただ、ヒメオトシはわりと有名な甘味だ。名物にするなら、これもカレンドレスのように加工が必要だろうな」
「うーん……やっぱこれも料理にするっきゃないか……」

 まあ、そのまま出そうとは思ってなかったけど、また料理をひねり出さなきゃいけないのか……俺あんまり料理しないんだけど大丈夫かな……。
 果実系っつったら洒落た料理の方が良いだろうし、俺そんなの知ってたかなぁ。
 ぐぬぬ……これは相当悩みそうだ。

「今夜も研究するのか?」

 そう問われて、俺は思わず頷きそうになったが――あることを思いだし、慌てて自分の動作を取り消すと首を振った。

「あ、いや……今日はやめとくよ。ちょっと他にやる事が有るしね」
「そうか……出来たら、また味見させてくれ」

 そう言って微笑むラスターに、俺はぎこちなく頷く。
 いや、ラスターに味見させたくない訳じゃないんだ。というか、ラスターに忌憚きたんない感想を聞けるのはありがたい。
 俺がぎこちなくなってしまったのには、他に理由があるんだ。
 だって、その……今日は…………クロウと添い寝する約束の日……だったから。










※せっかくだからクロウとの添い寝はたっぷりやろうかと思って……
 
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