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セレーネ大森林、爛れた恋のから騒ぎ編
2.徐々に慣らした方がお得だと思う
しおりを挟む何故だか妙な胸騒ぎがしたので、リタリアさんからの手紙は後で見るとして……先に、湖の馬亭の女将さんから届いた手紙の封を開けてみる。
流石は娼館の女将さんと言った感じの香り付きの綺麗な便箋には、美しい文字で俺の無事を喜んでいる事と、手紙の返事を出せて嬉しいと言う言葉が最初に書かれていた。いつもは一方的に連絡するだけだったから、やっぱ心配かけてたんだろうなあ……ごめんなさい女将さん……。
どうも、娼姫のお姉さん達や懐かしのハゲマッチョ男ゲイリーも、俺からの手紙を読んで心配していたようで、文面でちょっと怒られてしまった。
早く定住するか帰って来てくれ、と書かれていたが、中々に難しいな……。
定期的に帰るのはいいけど、定住するかどうかは俺の一存じゃ決められないし、そもそも住む家もないしなー……。まあそれは置いといて。
手紙の続きには「いつでも帰って来て良い」という温かい言葉と、ラクシズも今は落ち着いて、蛮人街も前よりかは平和になってるので、奴隷の事は心配しなくていいと言う事が書かれていた。
うーん……思い出すなあ、盗賊に捕まって奴隷として売られて、そっからあれよあれよと流されてブラックと出会って、強姦まがいの犯され方をした挙句に方々で付き纏われて……。
……なんかムカついてきたな。
「ん、なに? なにツカサく……いひゃひゃっ! ほっへいひゃいよ~!」
「ええい煩いっ、俺のケツの痛みに比べたら些細な痛みだっ!!」
ぬわーにが「ほっぺいたいよ~」だ!!
アナル処女なのにガンガン突っ込まれたおかげで数日も寝込んだ俺と比べたら、おめーの痛みなんぞ微々たるモンだろうがこのーッ!! ああもうアナル処女とか言う単語は出来れば一生使いたくなかったなあもう!!
今更ながらにあの時の事を思い出してイラッとしてしまったが、今ではこのダメなオッサンを拒めないくらいズコバコされてるんだと思うと、何だか自分も遠くへ来てしまったなあと嫌な衝動が込み上げて来る。
いかん、忘れよう。考えてるとあの頃の事を思い出して発狂しそうだったので、もうこれ以上はやめておく。
ああもう、ほんと、なんで俺こんなオッサン好きになっちゃったかなあ……。
「ツカサ君いきなりひどいよぉ……。ヒリヒリして痛いから、ツカサ君の柔らかいほっぺで癒して~」
癒して~じゃねえよ。無精髭がチクチクするからやめろ。
ていうか後ろから抱き着いてくんな! 拒否るだけで許してる自分も情けない!
なんでオッサンにこんなに甘くなっちゃったんだ俺は。
あの頃の俺だったら、パンチの一発くらいはコイツの顔面にお見舞いしてたのに……いやしませんけどね。俺暴力嫌いだし、っていうかそれやったら、俺が酷い目に遭うからね。このオッサンあの頃より遠慮してないからね。
「あれ、今の状況ってもしかして最悪……?」
「ツカサくーん? どったの?」
「……いや、何でもない……。ええと……続きは……」
何が書いてあるのかと読んでみると、ラーミンが会いたがっているみたいな事が書かれていた。……ってことは、女将さんはラーミンに話したのかな?
彼はかつて、フィルバード家と仲の良い御用聞き商人だった。でも今は、その家の御令嬢であるリタリアさんと結ばれて、後は結納という所まで来ているはずだ。
だとすれば、ラーミンの口からリタリアさんに俺の事が伝わった可能性がある。
……いや、もしくはベイシェールの村長さんから聞いたのかな?
いやいや待てよ、だったらギルド経由でフィルバード家に連絡が行ったって言う可能性もある訳で……うーむ、どうやって彼女に俺達の居場所が知れたのかがイマイチよく解らんな。
「湖の馬亭の手紙はそれで終わり? 次の手紙を見てみようよ」
「う、うん」
まあそうだな。開けてみなけりゃ結局どういう事なのか解らん。
俺はブラックを懐かせながら、封蝋を切って手紙を取り出した。……おお、貴族らしい装飾の施された便箋に、かなり達筆な文字……やっぱ貴族すげえ。
でも、正直ここまで達筆だと読めない……。
仕方なくブラックに渡すと、ブラックは俺を抱えたままで椅子に座り、無言で手紙を読み始めた。……しばらく、手が便箋を細かに動かしていたが……すべて読み終えたのか、ブラックは手紙を折りたたんで、ふうと溜息を吐く。
「なんて書いてあるか解った?」
「うん。まずはお礼の言葉と、ラーミンと仲良くやってるって事が書いてあったよ。あと、国内もだいぶん安定したって事と……」
「事と?」
言葉が途中で途切れたので鸚鵡返しでブラックを振り返ると、肩越しの相手は何だか不満そうに顔を歪めていたが……口を少し尖らせて、続きを喋った。
「祝宴を催すから、是非来て欲しいって…………」
「しゅくえん?」
「文面的に、結婚祝いの宴じゃないかなあ。僕とツカサ君の二人で来てって。……でもやだなあ、そう言う所って貴族ばっかりいるんだろ? 堅苦しいし、服も整えなきゃいけないし……行かなくたっていいよね? ツカサ君」
拗ねたようにぶちぶち言いながら、ブラックはぎゅっと俺を抱き締めて来る。
普通に聞けば「面倒臭い」の感情から来るワガママなんだろうけど、ブラックは基本的に堅苦しい場所や貴族が好きじゃないらしい。……というか、拒否感が有ると言った方が正しいだろうか。
多分、過去の事が原因なんだろうけど……。
「んー……とりあえず、出席は見送るにしても……挨拶には行こうな?」
リタリアさんの顔に泥を塗る事態になるのは避けたいが、ブラックの事を考えると、無理に出席するってのも遠慮したい。
じょりじょりと俺の頬に無精髭の頬をくっつけて懐くオッサンに、俺は安心しなさいと頭を軽く撫でてやった。
……ま、誰にだって嫌なモンはあるしな。
「つかしゃくんん……すきぃ……」
「ウザい。……で、他にはなにか書いてなかったの?」
「ツカサ君の噂が貴族の間でもちきりだって。だから、王都に来るときはお忍びの格好の方が良いって書いてあるよ。……じゃなかったら、フィルバード家がなんとかしてくれるみたい」
「も、もちきりって……」
なにそれ。なんで。俺なんかハデにやらかしたっけ?
事件の事は全部隠しといてってラスターに頼んだのに。
「でも、別に王都に行く用事はないし……これはどうでもいいかもね」
「う、うーん……」
何か大事な事を忘れてるような気がするけど……いや、まあ、何も不都合が無いわけだから……忘れたまんまで良いのかな……?
色々と不安になったが、そんな俺の真面目な考えをぶち壊すように、ブラックはいきなり俺の頬にちゅうちゅう吸い付き出した。
「おい。おいやめろ。吸うな」
「んむむ……はぁ、はぁ……つ、つかしゃくん、ほんと柔らかいよねぇ……んむ」
「吸いながら言うな!! ばかっ、スケベな事するなら降りるからな!」
「はぁ、はぁ、いっ、いいね……スケベってもっと言って、ツカサくぅん……」
「ひぃいいっ!」
息吹きかけんな頬舐めるな太腿揉むなぁああああ!!
こいつはもうっ、このっ、ちょっとの間くらい大人しく出来んのか!
「スケベな事をするんなら降りる」とブラックの膝の上から逃れようとしたが、相手の腕力がそれを許さない。俺をがっちりと捕えこんだまま、足の間に手を無理矢理突っ込んできた。
「ねえ、ところでさ、ツカサ君……この前した約束、覚えてる……?」
「ふぁっ、な……なに……?」
不意に問われて間抜けな声が出てしまう。
そんな俺の反応をニヤニヤして見つめながら、ブラックは内股を擦って来た。
「アレだよ……ツカサくんに、えっちな恰好をして貰うっていう話……」
「っ……ぃや……ちょ、っと……」
「色々考えたんだけど……せっかく他人が入ってこない場所にいるんだから、たまにはセックスばっかりするんじゃなくて、可愛い恋人のえっちな姿を堪能しようかなって思ってさあ」
「はぇ……」
「だからさ、今からその服を……」
ブラックの手がゆっくりと足の付け根へと向かい、言葉の終わりを待たずに俺の股間に触れようとした――――と、その時。
「ツカサ・クグルギさーん、お届けものでーす」
「あっ……ほ、ほら郵便! なんか知らんけど郵便きたよ! 出なきゃ!」
「………………チッ……」
ほーらほら、早く取りに行かないと大変な事になるぞ!
いやー今日は郵便が多くて良かった、本当によかったなあ!
思いっきり舌打ちしたブラックの膝から飛び降りて、俺は慌てて玄関に向かう。
あ、危ない。あのまま台所でヤられる所だった……。郵便屋さんに感謝。
「ツカサ、また誰か来たのか」
玄関フロアに出て来ると、やっと着替えたのか、丁度いいタイミングでクロウが部屋から出て来た。
うん、ちゃんと服は着てるな。でも襟がちょっと裏返っていたので、手を伸ばして直してやった。
「ツカサ、ありがとう」
「ん、気にすんなって」
嬉しそうに耳が動いてるのが分かり易いなぁ……。
まあ、可愛いからいいですけどね!
無表情ながらも上機嫌のクロウを従えて、玄関のドアを開ける。
するとそこには。
「あ、クグルギさんですね? ベイシェールから荷物が届いてます。受取証が必要ですので、サインかメダルをお願いします」
今度の配達人は、赤い帽子の郵便お兄さんではなく、警官みたいな帽子を被った不思議な配達人のお兄さんだった。
郵便の人よりもキッチリした服装だけど……管轄とか所属が違うんだろうか。
この人にもメダルを渡して受取証を作って貰い、荷物を受け取ろうとした。
……のだが。
「では、お荷物はお庭に置いておきましたんでー」
「えっ!? 庭!?」
「はい~、では、ご利用ありがとうございました~」
そう言うなりヒポカムの引く馬車に乗って帰ってしまった配達人さんを見送り、俺とクロウは顔を見合わせる。
何故なら、庭に置いてあった荷物は……とんでもない大きさだったのだから。
「えっと……これ…………丸太……だよね?」
「確かにシンジュの樹が届くとは聞いていたが、しかし……まさか丸太をそのまま送ってくるとは……太っ腹なんだか愚か者なのかよく解らんな」
こらこら、高級なモンをくれた人を愚か者とかいうんじゃありません。
でも、俺としてもちょっとこの量は予想外だったな……。高価な素材をグラムで貰えると思ってたらキロ単位だったとか、サプライズにしてもやりすぎだよこれ。
正直に言うと逆に困るよこれ。
「とりあえず…………家の中に入れるか?」
「そ、そだね……。まあ、強化剤の材料が手に入った事だし……少しだけ削いで、樵のマイルズさんに持っていこう」
強化剤の作り方は百科事典には載っていないので、マイルズさんに訊く必要が有る。まだ夕食には早いし、彼もまだあの小屋で作業をしているだろうから、今から聞きに行けば今日中に教えて貰えるはずだ。
催涙スプレーも作りたいし、出来る事は早めにやっとかなきゃな。
クロウに倒木を担いで貰って、ドアを壊さないように慎重に中に入れる。
とりあえず、使いどころのないリビングルームにでも置いておくかと思っていると――クロウが、倒木を担いだままで俺を覗き込んできた。
「ところでツカサ」
「ん? なに?」
「樵の所から帰って来たら、やらしい衣装を着るのか?」
「ブッ」
思わず吹き出してしまったが、必死にこらえてクロウを見上げる。
しかし、相手は相変わらずの無表情で、眠そうな目をしぱしぱさせていた。
…………クロウ、さてはお前……実はもうさっさと着替えていて、俺達の話を影からこっそり聞いてたんじゃ……。
「クロウ……いつから着替え終わってたの?」
恐る恐るそう訊くと、クロウは目を瞬かせて…………
「……とりあえず、シンジュの樹は部屋に転がして置くぞ。ああそうだ、ナタを持って来よう。普通のナタが使えるかは解らんが、やってみる価値はある」
とかなんとか言いながら、明らかに会話を避けやがった。
おい、クロウお前もか! お前も結局スケベなオッサンなのかおい!
熊さんが変態紳士とか、そういう設定は現実化して欲しくなかったよ!
「もおおぉなんでお前らはそう俺に変態な格好をさせて!!」
「何を言う。ツカサのえっちな恰好は可愛いぞ。だから、オレはツカサがどんな服を着るのか今から楽しみだ。用事は早く済ませて帰って来ような」
「…………軽く死にたい……」
約束しちゃったもんはしょうがないけど。
しょうがないけどさあ……ああ、もう、泣きたいわ……。
→
※服はひとまず置いといて次は調合とかします└(^o^└ )┘
今回はセクハラ多めで行きたいと思ってますのでよろしくおねがいします!!
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