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湖畔村トランクル、湖の村で小休憩編
14.世界が違えば常識も違う
しおりを挟む※受けとしての自分に悩むだけの回です(´^ω^`)男の子の逡巡スキ
ふと目が覚めれば――――
「…………みし……ぃや……ここベッドだ……」
あぶねえ、見知らぬ天井とか言うテンプレ発言する所だった。
流石に手垢の付いたパロディ発言はアカンと思いつつもぞりと動くと、俺の動きに反応したのか背後で何かが動く音がした。
「…………」
これ……もしかして、あれか。
痛む腰を労わって、ゆっくりと背後を見やると、そこには……俺をさんざん犯しやがったのだろうクソ中年が、涎を垂らしてぐーすか寝こけていた。
チクショウ……こいつまた良いように俺をオナホにしやがって……。
俺の身を守るための勉強会だって言ったのに、蓋を開けたらやっぱり変態プレイだったじゃねーか! バカ、アホ、スカポンタン!!
ああもう色々言いたいけど喉が痛い。
せめてもの抵抗で少し距離を取ると、俺の腹に圧し掛かっていた腕がぽとりとシーツに落ちた。なるほど、俺を抱き枕にして寝てたわけね、この中年。
……べ、べつに良いですけど。恥ずかしくなっては無いですけど。
でもイラッとしたので、俺は腰が痛くならないようにずりずりと這ってベッドから降りると、バッグを持って部屋から出た。
廊下は外の月明りでとても明るくて、歩くのに支障はない。良い夜だけど……今は何時なんだろうか。夜なのは間違いないだろうが、まさか丸一日寝こけてたって訳じゃないよな。あれから数時間しか経ってないと良いんだが。
「……どっちにしろ、メシ食い忘れたな」
どのくらい寝てたのかは気になるけど……寝た子を起こすというのも面倒だし、今日はもう大人しくしていたいので放置しておこう。
体はつらいが、不快感は顔を顰める程でもないし……と思って、俺はふとある事に気付いた。
「…………また体洗われてる……」
所々痛みはあるけど、体はスッキリしている。そう言えば髪が少し濡れているので、たぶん二人が俺を風呂に入れて後始末をしてくれたんだろう。
……ナニをどうしたのかという説明は聞きたくないが。
まあでも、好き放題してくれたんだからそれくらいは当然だよな。うん。
「ありがたい……」とか思ってしまう日本人的な感覚で考えたら駄目だ。
「にしてもあんちくしょう、なんでこうエロに繋げたがるんだ……」
少し掠れた声で吐き捨て、バッグを引き摺りながら台所へと向かう。
その間に昼間にされた事が蘇って来て、俺は慌てて頭を振った。いや、そうじゃない。俺が考えたいのは、えっちなことではなく、お勉強会についてだ。
ええと、その……とにかく、ブラック達がやった事はただの変態調教だし、今度やられたら本気で殴るつもりだが、まあ、ブラックが言っていた事を考えると……納得できる部分もある。だって、今まで俺は「日本での自分と同じように振る舞いたい」って思って、結果的に危険な目に遭ってたんだからな……。
「やっぱ、そういう考えだったのはマズかったよなあ……」
過去の襲われた経験を思い返して、俺は溜息を吐く。
――ぶっちゃけた話、俺は自分が襲われている事を認めたくなかった。
だってさ、俺の姿形がこの世界の男にとってはサカる要因になるだなんて、どう考えたって納得できるはずも無いだろう。いくら性に奔放で、男女関係なく子供が生める世界だからと言って、日本じゃ普通の男子高校生である俺が、美形だらけの世界でモテ放題(ただし男に言い寄られる率が八割だが)とか酷すぎる。
今日日そんな設定ラノベでも取り扱わんわ。
当然、現実でそんな事になられても、俺には理解不能で只々怖いだけで。
だから、俺は今まで必死に「俺を襲うのは、物好きな奴だけだ」と思い込もうとしてた……んだと思う。
でも、そのせいで何度も怖い目に遭ってたわけで。
「認めたくないけど……俺みたいな弱そうなガキは“嫁属性”になっちまうんだな……この世界……。そっか、だから女の子も俺に対しては『カワイー』だったのか…………」
なるほどね。俺はこの世界の人達に「嫁ぐ側」の人間だと認識されていたから、女の子に「恋愛対象」として見て貰えなかったわけですね。
ははは、そりゃそうだ。女の子にしてみたら、俺は同性みたいなもんだよな。だったら「カッコイー」じゃなく「カワイー」になるのは仕方ない!
だから俺に言い寄って来るのは男ばっかりだったってワケか! そーかそーか、はははは……泣いて良いですか。
まあそう言う文化なら、俺の事なんてアウトオブ眼中ですよね。
だって、「嫁」になる彼女達からすれば、目の前に雄臭さ満点の長身美形中年がいたら、どうしたってそっちに行っちゃうだろうし……。自分と同じカテゴリーにいる変なガキより、中年でも雄々しい男がいいよねそりゃ。
そもそも、ファンタジー世界じゃ肉食系男子が圧倒的に人気なんだし……嫁認定されたエロオタクなんて、誰もお呼びじゃないでしょうよ。
ああ、ちくしょう。解ったけど解りたくなかった。
どうりで易々とおっぱいを押し付けられたりするわけだ。普通に考えたら、水商売のお姉さんでもそんな簡単におっぱいに顔埋めさせてくれるわきゃねーわ。
つーか俺みたいなのでも「嫁属性」認定って、どんだけ力強い雄が多いんですかこの異世界は…………。
「しかし……だとしたら、ボリスラフさんの『陛下の嫁に来い』発言も冗談じゃなくマジだったわけ……? こわ……。確か、この世界だと俺ってば結婚できる年齢だし、ノリで軽く頷いたりしてたらヤバい事になってたのかな、アレ……」
そうなると、クロウの「オレの子を孕んでくれ」という発言も、現実味を帯びて来て背筋が寒くなるな。……あの、おれ、日本ではそういうのまだ考えなくていい年齢だったんで、考えたくないんですけど……。
ていうか、妊娠に至っては俺性別違うからね、考えるとかの次元じゃないから!
でも、俺がそんな風に現実から逃げちゃうから、ブラックもあんな「お勉強会」なんてやったんだろうな……やっぱ考えて自衛しなきゃ駄目なのかな……。
そうだよな……俺のクラスメートの女子だって過剰防衛……おっと失礼。彼女達なりに嫁入り前の体を守ろうと、やれる自衛はやってたんだ。それは褒めるべき事で、何度も襲われた俺は見習わなきゃいけない。
俺だって、知らない奴に襲われるのは嫌だ。つーか「ツカサ君は男に犯されるのが普通でしょ」みたいな扱いは、絶対にされたくない。どれほど嫁扱いされようが、俺の中の日本男児の魂がそれを許さないのだ。
ならば、そろそろ腹を決めねばなるまい。
もう認めるんだ。俺は、捕食される側のか弱い人間なのだという事を。そして、自分を守るために、痴漢用の対策を練らねばならないという事を……。
……ホントは嫌だけど。女の子みたいで死ぬほど嫌なんだけど。
「はあ……」
溜息を吐いても一人。
……そう言えば、ブラックが「俺みたいなガキっぽい十七歳は、特に狙われる」とか言ってたな。長身が普通のこの世界では、俺みたいなのは珍しいんだろうか。十七歳って言うと驚いてたもんなあ、ギルドの人とか。
そういや忘れてたけど、この世界じゃ十七歳って成人なんだよね。
立派に結婚できるし子供も作れるっつー……。
「まあ、日本でも男なら十八歳で結婚できるけど、この世界は十二歳でもガタイが良い奴が多いから……年齢による幼さはあんまり関係ないのかも。大人らしい体になってれば、何歳でも問題ないんだろうな。……大人でも文字が描けない人がざらにいる世界だし……。そんな感じだったら、恋愛の道理も違って当然か」
オッサンが十七歳のガキを好きになるとか軽く犯罪じゃねーかって最初は思ってたけど、考えてみればそう言う事なんて歴史上はままある事だったし、これは俺の現代的考え方が悪かったな。
俺の世界でも十七歳で成人扱いするって国も有るし、昔から強者や金持ってる奴は若い嫁さん侍らせてたし、そう変な事でもなかったわ。
昔の歳の差婚に関しては、平均寿命が短いせいも有って、年齢一桁の少女がオッサンに嫁ぐってのもよくある話だったみたいだし……その延長線にこの世界があるとしたら、俺の十七歳なんて適齢期も適齢期って奴なのかもしれない。
「……まあ、俺もガキっぽいとは言われるけど、さすがにブサイクと罵られた事は無いし……。フツメン程度の顔だったから、この世界じゃ“充分に興奮出来る範囲”って事で男にロックオンされちゃったんだろうか。低身長でガキっぽさがあるってのもプラスだったのかな…………うわ……こわ……」
婿ならまだしも、嫁なんてまっぴらごめんだ。
本当に認めたくない事だが、俺が「嫁」側の人間だとしたら、色々と危険な事が起こる可能性がある。
例えば、この世界に誘拐結婚なんて言う酷い風習があったら、俺みたいな貧弱ボーイは即座に誘拐されて、無理矢理結婚させられてしまうだろう。
なんせ俺は自慢じゃないが力が弱い。日本じゃ平均的だったかもしれない体力も、この世界の平均と比べたら下の下だ。
ファンタジー世界の住人達は、男女問わずあまりにも逞しく、そして細い。
体の造りが違うのか、多分俺みたいなオタクは筋トレしても絶対に敵わない。
だからこそ、ヤバいのだ。
「だからこそ、ペコリアに守って貰う以外にも、襲われない為にケツを守る程度の自衛はしとかなきゃいけないんだよな……。本当はスッゲー嫌だけど……」
無人島でホモから逃げ切れたら百万円みたいなコピペがあったけど、今の心境はまさにアレの参加者だ。あれはまあ与太話だろうけど、こっちは本当にヤバいからな……誘えば相手がホイホイついて来るのが当たり前の世界なんだから、間違って連れ込まれないようにしとかないと……。
「しかし、数ヶ月旅してても全然筋肉がつかん俺に、何が出来るのか……」
階段を静かに降りて、月明かりが差し込む玄関を通り台所へ向かう。
……うーむ、今日は月が出てるから視界が良好だし怖くないけど、これで暗いと誰がどこにいるか解らないな……。自分が襲われる側だと自覚した今は、暗い所も大分危なく見えて来る。
また「お勉強会」をさせられるのも嫌だし(死ぬほど恥ずかしいから)、一人で行動したいのならブラック達を安心させる何かが必要だ。
しかし、こういう時、女子はどういう防衛方法を取っているのだろう。
よく話に聞くのは、防犯ブザーだとか催涙スプレーだよなあ。
ブザーは周囲に人がいないとダメだから……俺が持つとしたら、催涙スプレーだろうか。……ふむ、それなら戦闘アイテムとして使えるかも。
自分が犯されない為にと考えて作るのは物凄く恥ずかしいが、戦闘で便利だから作ろうと考えれば、心も休まってちゃんと作れるかもしれない。
……自分の立ち位置にまだ慣れないけど……まあ、ブラックも俺の無防備さは腹に据えかねてたみたいだし……何とか安心して貰わなくちゃな。
「にしても、マジで羞恥調教みたいな真似はやめてほしいんだが」
そりゃまあ、ブラックはちゃんと教えてくれたけど、アレはないよなあアレは。
普通に「好きでも無い人の隣に座ってはいけません」とか「好きな子に上目遣いをされたら誰でもドキッとします、注意しなさい」とかいう事は、口で言えば済むだろう。なのに、どうしてあいつらは……。
「いや待てよ、なんか言ってたな」
こんな事でもしないと、俺が充分に学習しないとかなんとか……。
し、失礼な。俺だって、その、勉強は嫌いだけど……でも記憶力はいいんだぞ!
体に教え込まないとダメみたいな考え方はやめて欲しいんですけお!!
……でも、あんな事されたせいか、具体的に何をしたのかはあまり覚えていないけど、ブラック達に「これはするな」って言われた事は何故だかちゃんと覚えちゃってる訳で……。
く、悔しい。俺が女騎士だったら屈辱で生きていけないよ! くっころ!
「…………なんかオッサンどもの思うツボになってる気がするけど……まあ、今後気を付けるか……。はぁ……」
色々げんなりして来たが、落ちこんでても仕方ない。
まあ……ブラックに愛想を尽かされるのは俺も嫌だし……少しずつ受け入れて、出来る事からやって行こう。
とりあえず今は……喉が渇いた。
やっとの事で台所に辿り着くと、俺は水琅石のランプをバッグから取り出した。
月の光で明るいとは言え、細かい作業をするには少し心許ないからな。水瓶の水を中に垂らして明かりを灯すと、俺は改めてバッグの中からある物を取り出した。
「どうせだし、アレを確かめてみるか。えーっと後は……」
他にもごそごそと目当ての物を探していると――――
――――ガサ。
「…………ん?」
なにやら、外で草を揺らす音が聞こえたような気がした。
ここにはモンスターは居ないという話だったが……だとしたら何だろう。今夜は無風だし、こんなに明るかったら影ぐらい解るよな。
まさか不審者……いやでも、それならランプの明かりが見えたら逃げるだろう。
相変わらずガサガサしてるし……一体なんなんだ?
そう思いながら、小さな窓から裏庭を見やると。
「うわっ!?」
荒れた裏庭の向こうにある森から、大きな音を立てて真っ黒い何かがにゅうっと突き出て来た。
窓の外が一気に暗くなったのに驚き、俺は思わず尻餅をついたが。
「グォオ……」
なんだか頼りないその声を聞いて、俺は外の「真っ黒い何か」の正体を知った。
→
※ツカサは過去に十四歳とかそこらに見られてましたが
この世界では結婚したって別段かまわない年齢です。
ただ、やっぱり十六歳くらいじゃないと「早くないか?」とは言われますが
基本的に十五歳越えたら「少年趣味」という誹りから免れる感じ。
というのもこの世界はサクサク人が死ぬ世界なうえに、ツカサの言う通り
十三歳くらいからもうガタイがかなり良い、成人と言っても良いくらいの体に
なってる子が沢山居るからでして、彼らは既に生活に必要な知識を身に
つけているので、立派な大人として扱われています。
もちろん十五歳の少年は立派な大人なのでハーレムを持つ事も可能。
この世界の人は体も心も大人になってるので当然なのです。
だから、ツカサの貧弱さとかスレてなさは深窓の令嬢(笑う所)とか
言われるわけであります。
まあそれ以外にもツカサは考え方が草食系博愛主義なのでとか色々
理由は有りますが……そりゃ強制的に受けになるよね(´^ω^`)
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