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バレンタインの贈り物と、感謝のチョコフォンデュ②
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「おはよう、アリスちゃん。はい、ハッピーバレンタイン」
「へ!?」
2月14日。
アリスが出勤すると同時に歩が、ラッピングされた小さな紙袋をくれた。
手のひらより少しだけ大きくて、オシャレな赤い袋。かなり軽くて柔らかいから、食べ物の類いではなさそう。
「え、あの、ええ?」
「あらあら混乱しちゃってるわねえ。日本だと女性が贈るのが主流だけど、海外だと男性が花やハンカチを贈るのが一般的なのよ」
「ってことは、これ、バレンタインの贈り物?」
「そうよー」
まさか自分がもらう側になるなんて想像をしていなかったので、アリスは硬直した。
「さ、開けてみて。気に入ってもらえたら嬉しいんだけど」
中身は青薔薇を模したシュシュだった。サテン地の布が薔薇の形に、緑のレースリボンが葉の形になっている。縁が金糸で縫われていて、とても上品だ。
「かわいい」
「よかった。アリスちゃんの髪は長くて柔らかいから、いろんなアレンジをできると思うのよね」
「うん、ありがとう。このシュシュ使って、たくさんヘアアレンジをためしてみる」
アリスはいままで使っていた黒のヘアゴムをとって、薔薇のシュシュを手首に通す。肩のところでゆるくまとめて結わえた。
「ど、どうかな」
「似合うわ。うん。薔薇を選んで良かった」
こういうことをさりげなくしてくれるから、嬉しくなってしまう。
にやけてしまうのをおさえられない。
仕事中もついつい鏡に映る自分を見て、シュシュをとめ直してしまう。自分がずいぶんと単純だなと気づいて少し恥ずかしくなった。
昼休憩に入る前に、アリスは家から持ってきた箱を取り出す。
今日のために考えていたお礼の言葉あれこれが全部吹っ飛んで、頭が真っ白くなってしまった。
ラッピングしなくていいです! と言ってしまったから、スーパーで売っているようなパッケージ箱そのまんま。いまさらながら、ちゃんと包装してもらえば良かったと後悔が押し寄せている。
歩はちゃんとかわいくラッピングされたものを用意してくれたのに。
「えと、あの、デザートに、チョコフォンデュしましょう。果物も、買ってあるんです」
「あら、楽しそうね。これをお昼にしちゃいましょうよ。さっきコーカスレースで買ってきたバゲットがあるの」
「ベーカリー・コーカスレースのバゲット!? 美味しいんですよね、あそこのパン」
商店街のパン屋、ベーカリー・コーカスレース。
『コーカスレースにハズレ無し』と近所で評判だ。
その中でもすぐ完売してしまう人気商品が、バゲットと食パン。
「そうよ~。ネルちゃんが「14日はバゲットを買っておくといいよ」って言っていたんだけど。こういうことだったのね」
歩はクスクス笑う。
なぜそんなことを言い出したのか、理由を言ってくれなかったけれど、とりあえず買ってみたという。
「最近の日本じゃ、職場でチョコを配るのも文化としてあるものねぇ。アタシに気を遣わなくていいのよ、アリスちゃん」
ネルにはただのお礼、深い意味はないって義理チョコ宣言しておきながら、いざ歩に義理チョコだと思われるとなんだか悔しい。
歩にだけは、なんの意味もない義理チョコだと思われたくなかった。
「へ!?」
2月14日。
アリスが出勤すると同時に歩が、ラッピングされた小さな紙袋をくれた。
手のひらより少しだけ大きくて、オシャレな赤い袋。かなり軽くて柔らかいから、食べ物の類いではなさそう。
「え、あの、ええ?」
「あらあら混乱しちゃってるわねえ。日本だと女性が贈るのが主流だけど、海外だと男性が花やハンカチを贈るのが一般的なのよ」
「ってことは、これ、バレンタインの贈り物?」
「そうよー」
まさか自分がもらう側になるなんて想像をしていなかったので、アリスは硬直した。
「さ、開けてみて。気に入ってもらえたら嬉しいんだけど」
中身は青薔薇を模したシュシュだった。サテン地の布が薔薇の形に、緑のレースリボンが葉の形になっている。縁が金糸で縫われていて、とても上品だ。
「かわいい」
「よかった。アリスちゃんの髪は長くて柔らかいから、いろんなアレンジをできると思うのよね」
「うん、ありがとう。このシュシュ使って、たくさんヘアアレンジをためしてみる」
アリスはいままで使っていた黒のヘアゴムをとって、薔薇のシュシュを手首に通す。肩のところでゆるくまとめて結わえた。
「ど、どうかな」
「似合うわ。うん。薔薇を選んで良かった」
こういうことをさりげなくしてくれるから、嬉しくなってしまう。
にやけてしまうのをおさえられない。
仕事中もついつい鏡に映る自分を見て、シュシュをとめ直してしまう。自分がずいぶんと単純だなと気づいて少し恥ずかしくなった。
昼休憩に入る前に、アリスは家から持ってきた箱を取り出す。
今日のために考えていたお礼の言葉あれこれが全部吹っ飛んで、頭が真っ白くなってしまった。
ラッピングしなくていいです! と言ってしまったから、スーパーで売っているようなパッケージ箱そのまんま。いまさらながら、ちゃんと包装してもらえば良かったと後悔が押し寄せている。
歩はちゃんとかわいくラッピングされたものを用意してくれたのに。
「えと、あの、デザートに、チョコフォンデュしましょう。果物も、買ってあるんです」
「あら、楽しそうね。これをお昼にしちゃいましょうよ。さっきコーカスレースで買ってきたバゲットがあるの」
「ベーカリー・コーカスレースのバゲット!? 美味しいんですよね、あそこのパン」
商店街のパン屋、ベーカリー・コーカスレース。
『コーカスレースにハズレ無し』と近所で評判だ。
その中でもすぐ完売してしまう人気商品が、バゲットと食パン。
「そうよ~。ネルちゃんが「14日はバゲットを買っておくといいよ」って言っていたんだけど。こういうことだったのね」
歩はクスクス笑う。
なぜそんなことを言い出したのか、理由を言ってくれなかったけれど、とりあえず買ってみたという。
「最近の日本じゃ、職場でチョコを配るのも文化としてあるものねぇ。アタシに気を遣わなくていいのよ、アリスちゃん」
ネルにはただのお礼、深い意味はないって義理チョコ宣言しておきながら、いざ歩に義理チョコだと思われるとなんだか悔しい。
歩にだけは、なんの意味もない義理チョコだと思われたくなかった。
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