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第三十一話 クリスマスはシュトーレンとフリッターテン・ズッペ①
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クリスマスイブの朝。商店街のイルミネーションが鮮やかに町を彩っている。
巨大クリスマスツリーにリース、LED。商店街に踏み入れた途端に世界観が一変する。
歩が店頭の掃除をしていると、ケーキ屋の女店主がシュトーレンを持ってきた。
シュトーレンとは、ブランデー漬けのドライフルーツが詰まったパウンドケーキのようなもの。北欧ではこれクリスマスケーキの主流だ。クリスマス当日にかけて削いで食べていく。
生クリームやチョコ、フルーツでデコレーションされた日本のケーキとは違うが、とても味わい深くて歩は好きだ。
「シュトーレンなんて珍しいわね。どうしたのよこれ」
「さすが歩さん、シュトーレンを知っているのね」
「当たり前でしょ、アタシはオーストリアにいたことあるんだから。それで、これを買えばいいの?」
店主は首を左右に振って手のひらを歩に向ける。
「お代は商店街のみんなからもらっているわ。毎年歩さんが商店街をかざりつけてくれるから、盛り上がっているの。そのお礼に、みんなからクリスマスプレゼントよ」
予想外のクリスマスプレゼントが届いて、歩は虚を突かれた。
歩が勝手に言い出したことだし、お礼がほしいなんて思っていなかったのだ。
「腕によりをかけて作ったから、アリスさんと一緒に食べて。シャンパンもあるわよ。これは私からのサービスね」
「ありがと、いただくわ」
なんだか泣きそうな気持ちで、シュトーレンを受け取った。アリスは太りたくなくて極端なダイエットをしていたから、食べてくれるかはわからない。けれど、少しでも良いからクリスマス気分を味わってもらえたなら嬉しい。
歩はいったん店に戻って冷蔵庫に入れて、開店作業にうつる。
アリスも出勤してきて、いつも通り仕事に取りかかろうとしている。
「アリスちゃん。今日はデザートがあるわよ。シュトーレンはお好きかしら」
「しゅと、れん? ってなんです? 果物か何かです?」
「北欧の国で食べるクリスマスケーキよ。商店街のみんなからのプレゼント」
アリスも予想していなかったみたいで、目をパチパチさせた。
シュトーレンがなにか分からないアリスのために、歩はさっきもらったシュトーレンを見せる。
「パウンドケーキにしては固そう。北欧ってこういうのを食べるんだ。でもこれ、歩さんのためのものでしょ。あたしも食べていいのかな」
「もちろんよ。アリスちゃんと食べてねって言ってくれたんだから、遠慮無く食べて。せっかくだからお昼ご飯もシュトーレンに合うメニューにしましょうか」
「楽しみにしとく」
十二月末で学校が冬休みに入っているから、学生たちがちらほら店をのぞきに来る。
アリスに店を任せ、歩は昼食を作る。
室温に戻しておいた卵と牛乳、バター、そして小麦粉をボウルに入れ、ダマにならないよう丁寧に混ぜていく。
熱したフライパンにバターをしいて、お玉の底で薄く伸ばす。
焼けたクレープ生地を皿にのせておく。
次は鍋にお湯を沸かす間に、クレープを麺のように細く切る。
歩は、オーストリアで雇ってくれたレストランの店主が、これを作ってくれたことを思い出して懐かしくなる。
湯にコンソメスープの素を入れて、クレープを煮込んだら塩こしょうで調味して、最後にパセリを散らす。
オーストリアの伝統料理、フリッターテン・ズッペの完成だ。
巨大クリスマスツリーにリース、LED。商店街に踏み入れた途端に世界観が一変する。
歩が店頭の掃除をしていると、ケーキ屋の女店主がシュトーレンを持ってきた。
シュトーレンとは、ブランデー漬けのドライフルーツが詰まったパウンドケーキのようなもの。北欧ではこれクリスマスケーキの主流だ。クリスマス当日にかけて削いで食べていく。
生クリームやチョコ、フルーツでデコレーションされた日本のケーキとは違うが、とても味わい深くて歩は好きだ。
「シュトーレンなんて珍しいわね。どうしたのよこれ」
「さすが歩さん、シュトーレンを知っているのね」
「当たり前でしょ、アタシはオーストリアにいたことあるんだから。それで、これを買えばいいの?」
店主は首を左右に振って手のひらを歩に向ける。
「お代は商店街のみんなからもらっているわ。毎年歩さんが商店街をかざりつけてくれるから、盛り上がっているの。そのお礼に、みんなからクリスマスプレゼントよ」
予想外のクリスマスプレゼントが届いて、歩は虚を突かれた。
歩が勝手に言い出したことだし、お礼がほしいなんて思っていなかったのだ。
「腕によりをかけて作ったから、アリスさんと一緒に食べて。シャンパンもあるわよ。これは私からのサービスね」
「ありがと、いただくわ」
なんだか泣きそうな気持ちで、シュトーレンを受け取った。アリスは太りたくなくて極端なダイエットをしていたから、食べてくれるかはわからない。けれど、少しでも良いからクリスマス気分を味わってもらえたなら嬉しい。
歩はいったん店に戻って冷蔵庫に入れて、開店作業にうつる。
アリスも出勤してきて、いつも通り仕事に取りかかろうとしている。
「アリスちゃん。今日はデザートがあるわよ。シュトーレンはお好きかしら」
「しゅと、れん? ってなんです? 果物か何かです?」
「北欧の国で食べるクリスマスケーキよ。商店街のみんなからのプレゼント」
アリスも予想していなかったみたいで、目をパチパチさせた。
シュトーレンがなにか分からないアリスのために、歩はさっきもらったシュトーレンを見せる。
「パウンドケーキにしては固そう。北欧ってこういうのを食べるんだ。でもこれ、歩さんのためのものでしょ。あたしも食べていいのかな」
「もちろんよ。アリスちゃんと食べてねって言ってくれたんだから、遠慮無く食べて。せっかくだからお昼ご飯もシュトーレンに合うメニューにしましょうか」
「楽しみにしとく」
十二月末で学校が冬休みに入っているから、学生たちがちらほら店をのぞきに来る。
アリスに店を任せ、歩は昼食を作る。
室温に戻しておいた卵と牛乳、バター、そして小麦粉をボウルに入れ、ダマにならないよう丁寧に混ぜていく。
熱したフライパンにバターをしいて、お玉の底で薄く伸ばす。
焼けたクレープ生地を皿にのせておく。
次は鍋にお湯を沸かす間に、クレープを麺のように細く切る。
歩は、オーストリアで雇ってくれたレストランの店主が、これを作ってくれたことを思い出して懐かしくなる。
湯にコンソメスープの素を入れて、クレープを煮込んだら塩こしょうで調味して、最後にパセリを散らす。
オーストリアの伝統料理、フリッターテン・ズッペの完成だ。
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