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アリスの体調不良と、ミルクがゆ②

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 店が落ち着いてから、歩は今日のまかないを作る。

「アリスちゃん、帰る前にご飯食べていきなさいな」
「うん。ありがとう、歩さん」

 なるべく温かい物をとった方がいいと初斗が言っていたので、ミルクがゆを作ることにした。
 鍋にごはんを水を入れて煮立て、牛乳を入れて再び煮立たせる。火を止めてフタを閉め、少し蒸らしたら完成だ。
 器に盛って黒こしょうとパセリをふる。

 部屋に運ぶと、アリスは上半身を起こして申し訳なさそうに会釈する。

「なんだか至れり尽くせり。ありがとう」
「いいのよ。具合が悪いときは存分に甘えなさいな。冷めないうちに食べなさい」
「……はい。いただきます」

 アリスはレンゲでおかゆをすくい、息で冷まして一口食べる。

「わぁ。おかゆなのにすごくコクがある」
「ミルクがゆだからね。ちょっとチーズみたいな味になっているでしょ」
「うん。おいしい」

 照れたように笑い、アリスはおかゆを食べた。

「いつもなにかしてもらってばかりだなあ……」
「そうねえ。何かしたいと思うなら、来月、お留守番をお願いできないかしら」
「お留守番?」
「ええ。二週間くらい、海外へ仕入れに行ってこようと思うの。台湾や香港を巡ってくる予定」

 アリスが店を開けていてくれるなら、歩が不在でも常連客が困ることはない。
 少し考えてから、アリスはうなずく。

「うん。あたし、がんばってみる」
「時差が一時間くらいしかないから、何かあったらいつでもライン通話してもいいわ」


 頼もしくも、アリスは店の留守を守ることを請け負ってくれた。


 十月になり、歩は旅支度を調えた。
 旅立つ日、アリスだけでなく初斗とネルも駅まで見送りに来てくれた。 

「いってらっしゃい、歩さん」
「お土産よろしく、歩」
「ネコちゃんグッズがあったらお願いします!」

 三人に見送られ、歩は久しぶりに日本を発つ。
 今からもう、どんなお土産を買って帰ったら喜んでくれるだろう、なんて考えていた。
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