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たまには外食。ネコちゃんのいる店の手打ち蕎麦②
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ヘアサロンからの帰り、せっかく昼時だから近くにあった個人経営レストランに入って食事を取ることにした。
店の入り口に【ねこがいます。開けるときは逃がさないよう気をつけてください】と張り紙がしてある。
入ってみると、10席もないこじんまりとしたところだった。
対面キッチンとカウンター、二人がけのテーブル席が二つだけ。老齢の男店主は歩とアリスに「いらっしゃい」と短く言って、好きな席に座るよう促した。
耳に心地いい音量でサックスのジャズが流れている。
入り口の戸を閉めると、テーブル下のかごで寝ていた茶ハチワレが起きあがり、歩の足にすりよってきた。白猫の方は起きる気配がない。だるそうに顔を上げてまた寝てしまった。
ハチワレはニャーニャー鳴きながらアリスの足にも頭をすりつける。人なつっこい子とマイペースな子、性格がかなり違っていて面白い。
テーブル席についてメニュー表を開き、イチオシと書かれている手打ち蕎麦セットを注文する。
「ネルちゃんが好きそうな店ねぇ」
「ほんと。ネルに教えようかな」
「初斗も和食好きだから、持って帰ったら喜びそうね。テイクアウト用にも作りますって書いてあるわ」
今は事情があってほぼひきこもってウサギになっているけれど、十年前までは普通に歩と外食や散歩に出ていたのだ。
「ただ、初斗はネコに好かれやすすぎるから、ここに来たら大変なことになるわね」
「そうなの? あんま想像つかないけど」
「そうなのよ。学生時代の写真、どこかにあると思うんだけど」
話していると、蕎麦が運ばれてきた。薬味にはワサビと刻みネギ。細切りの焼き海苔もついている。
打ち立ての蕎麦は風味がいいし、舌触りも最高。出汁はカツオでとっているようで、とてもいい香りがする。
「んー。おいしいわね。やっぱり和食を食べると日本にいるなって実感するわ」
「歩さんは海外にいることが多かったんですよね」
「ええ。ワンダーウォーカーを開店する前はザルツブルグを旅していたわ。アニメやゲームにちょくちょく出てくる感じのお城があるの。中を歩けば、使用人になったような気分を味わえるわよ」
「あはは、王族でなく?」
アリスは肩を揺らしながら蕎麦をすする。歩の元に来てから自分を傷つけることをしなくなったけれど、これまで付けた傷が一瞬で消えたわけじゃない。だから七夕祭を間近に控えた今も長手袋を外せないまま。
初田の患者でなくなるまで、まだかかる。
「いつかアリスちゃんも行ってみるといいわ。アタシがおすすめの場所を案内するから」
「うん、そのときはお願いする。あたし、一度も日本からでたことないからさ、一回でいいから世界を見てみたい」
ささいな口約束だけど、アリスはそのいつかを楽しみにして笑う。
「その前に商店街の七夕祭をがんばらないとね。毎年ワンダーウォーカーも出店しているの。期待しているわよ」
「はい。がんばります」
お土産用に蕎麦を二人前打ってもらい、初斗のところに向かう。
毎年初斗とネルに露店を手伝ってもらっているから、そのお礼もかねて。
明日の仕事終わりに詳しい話をすることになった。
店の入り口に【ねこがいます。開けるときは逃がさないよう気をつけてください】と張り紙がしてある。
入ってみると、10席もないこじんまりとしたところだった。
対面キッチンとカウンター、二人がけのテーブル席が二つだけ。老齢の男店主は歩とアリスに「いらっしゃい」と短く言って、好きな席に座るよう促した。
耳に心地いい音量でサックスのジャズが流れている。
入り口の戸を閉めると、テーブル下のかごで寝ていた茶ハチワレが起きあがり、歩の足にすりよってきた。白猫の方は起きる気配がない。だるそうに顔を上げてまた寝てしまった。
ハチワレはニャーニャー鳴きながらアリスの足にも頭をすりつける。人なつっこい子とマイペースな子、性格がかなり違っていて面白い。
テーブル席についてメニュー表を開き、イチオシと書かれている手打ち蕎麦セットを注文する。
「ネルちゃんが好きそうな店ねぇ」
「ほんと。ネルに教えようかな」
「初斗も和食好きだから、持って帰ったら喜びそうね。テイクアウト用にも作りますって書いてあるわ」
今は事情があってほぼひきこもってウサギになっているけれど、十年前までは普通に歩と外食や散歩に出ていたのだ。
「ただ、初斗はネコに好かれやすすぎるから、ここに来たら大変なことになるわね」
「そうなの? あんま想像つかないけど」
「そうなのよ。学生時代の写真、どこかにあると思うんだけど」
話していると、蕎麦が運ばれてきた。薬味にはワサビと刻みネギ。細切りの焼き海苔もついている。
打ち立ての蕎麦は風味がいいし、舌触りも最高。出汁はカツオでとっているようで、とてもいい香りがする。
「んー。おいしいわね。やっぱり和食を食べると日本にいるなって実感するわ」
「歩さんは海外にいることが多かったんですよね」
「ええ。ワンダーウォーカーを開店する前はザルツブルグを旅していたわ。アニメやゲームにちょくちょく出てくる感じのお城があるの。中を歩けば、使用人になったような気分を味わえるわよ」
「あはは、王族でなく?」
アリスは肩を揺らしながら蕎麦をすする。歩の元に来てから自分を傷つけることをしなくなったけれど、これまで付けた傷が一瞬で消えたわけじゃない。だから七夕祭を間近に控えた今も長手袋を外せないまま。
初田の患者でなくなるまで、まだかかる。
「いつかアリスちゃんも行ってみるといいわ。アタシがおすすめの場所を案内するから」
「うん、そのときはお願いする。あたし、一度も日本からでたことないからさ、一回でいいから世界を見てみたい」
ささいな口約束だけど、アリスはそのいつかを楽しみにして笑う。
「その前に商店街の七夕祭をがんばらないとね。毎年ワンダーウォーカーも出店しているの。期待しているわよ」
「はい。がんばります」
お土産用に蕎麦を二人前打ってもらい、初斗のところに向かう。
毎年初斗とネルに露店を手伝ってもらっているから、そのお礼もかねて。
明日の仕事終わりに詳しい話をすることになった。
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