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じめじめした日は、ところてんサラダと青じそごはん②
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「さあ。今日はところてんを使いましょうか。キュウリを買ってあるから、蒸したササミと和えて……」
「白ごまを振ってもおいしそうですね」
「ナイスアイディア。アリスちゃんセンスいいわね」
耐熱皿に細く切ったササミは、白ワインをなじませてラップをかけてレンジで蒸す。
歩の隣では、アリスがキュウリを細切りして、塩もみしていく。
「ごはんも混ぜご飯にしてみましょ」
人肌くらいに冷ましたごはんに、塩昆布と千切りの青じそを混ぜ、軽く塩を振る。
キュウリとササミのところてんサラダに、昆布と青じその混ぜご飯。
アリスはずいぶんと食べられる種類が増えた。
一度に摂取できる量はまだ小学生レベルだけれど、もともとはおかゆ茶碗半分で断念していたことを考えると進歩している。
揚げ物などの脂っこい物以外は摂っていいと、初斗の許可が出たのでメニューに取り入れられる食材が増えた。
「それじゃ、いただきましょ。今日は混ぜご飯と相性が良さそうだから、しそ茶にしてみたわ。赤紫蘇で作られているの」
「わ、きれい! こんなに赤くなるんだね」
赤紫蘇が材料だから、このお茶は鮮やかな赤紫色をしている。レモン汁とハチミツを少々垂らしているから、甘酸っぱさが際立っていて香りもいい。
「サラダ、つるつるしてて食べやすいね。すごくおいしい」
「うふふ。アリスちゃんはおいしいって言って食べてくれるから作るのが楽しいわね」
「そう、かな。ああ、そっか。だからなんだ」
アリスは一人で納得して、さみしそうに肩を落とす。
「どうしたの?」
「来たばかりの頃のあたしを見ていたからわかるでしょう。あたし、初田先生のところに行くまではほとんど物を食べなかった。お母さんの料理、ずっと長いこと、まともに食べていなかったなって。嫌われるようなことしてたから、大事にしてくれないのもしかたなかったのかも」
心を込めて作った物に一切手をつけてくれなかったら、母親の立場なら腹が立つし、食べ物を無駄にするなとも思うだろう。アリスは過去の自分の行いを省みて、母に申し訳ないとつぶやいた。
「そう……」
「歩さんが作ってくれる物には、そんなことしないから」
アリスは箸を握りながら真剣な顔で言う。
「あたしも働いて、自分のお金で食材を買って作るようになってから、自分が馬鹿だったって思うようになった。稼ぐのも作るのも大変だってわかったから」
「そう。気づけたなら偉いわ」
親がアリスと姉を格差を持って育てたのも確かだけど、アリスが食べ物を無駄にして、親の反感を買っていたのも事実。
「お母さんたちに会いたくはないけど、これまで迷惑かけてごめんなさいって気持ちは持っておく」
「全部一度にわりきらなくてもいいのよ。そういうのは時間がかかるものだから」
「初田先生も同じことを言ってた。歩さんと先生って、気が合うだけあってどこか似てるね」
アリスに言われて、歩はかすかに笑う。
食器を洗っていると、半泣きの初斗から電話がかかってきた。
『たすけて歩。なんかたいへんなことに』
初斗の背後からリナの声が聞こえる。初田に借りを作るなんて嫌だからさっさと返す、もらった血液の分お金を払えばいいのか云々……。
出禁にした歩が割って入ったら、ヒートアップすることは目に見えている。
初斗が自分で言いくるめることを信じて、「がんばりなさいな」とだけ伝えて電話を切る。
閉店後、「薄情者ー」と言いに来たけれど、解決したみたいなので、やはり電話を切って良かった。
「白ごまを振ってもおいしそうですね」
「ナイスアイディア。アリスちゃんセンスいいわね」
耐熱皿に細く切ったササミは、白ワインをなじませてラップをかけてレンジで蒸す。
歩の隣では、アリスがキュウリを細切りして、塩もみしていく。
「ごはんも混ぜご飯にしてみましょ」
人肌くらいに冷ましたごはんに、塩昆布と千切りの青じそを混ぜ、軽く塩を振る。
キュウリとササミのところてんサラダに、昆布と青じその混ぜご飯。
アリスはずいぶんと食べられる種類が増えた。
一度に摂取できる量はまだ小学生レベルだけれど、もともとはおかゆ茶碗半分で断念していたことを考えると進歩している。
揚げ物などの脂っこい物以外は摂っていいと、初斗の許可が出たのでメニューに取り入れられる食材が増えた。
「それじゃ、いただきましょ。今日は混ぜご飯と相性が良さそうだから、しそ茶にしてみたわ。赤紫蘇で作られているの」
「わ、きれい! こんなに赤くなるんだね」
赤紫蘇が材料だから、このお茶は鮮やかな赤紫色をしている。レモン汁とハチミツを少々垂らしているから、甘酸っぱさが際立っていて香りもいい。
「サラダ、つるつるしてて食べやすいね。すごくおいしい」
「うふふ。アリスちゃんはおいしいって言って食べてくれるから作るのが楽しいわね」
「そう、かな。ああ、そっか。だからなんだ」
アリスは一人で納得して、さみしそうに肩を落とす。
「どうしたの?」
「来たばかりの頃のあたしを見ていたからわかるでしょう。あたし、初田先生のところに行くまではほとんど物を食べなかった。お母さんの料理、ずっと長いこと、まともに食べていなかったなって。嫌われるようなことしてたから、大事にしてくれないのもしかたなかったのかも」
心を込めて作った物に一切手をつけてくれなかったら、母親の立場なら腹が立つし、食べ物を無駄にするなとも思うだろう。アリスは過去の自分の行いを省みて、母に申し訳ないとつぶやいた。
「そう……」
「歩さんが作ってくれる物には、そんなことしないから」
アリスは箸を握りながら真剣な顔で言う。
「あたしも働いて、自分のお金で食材を買って作るようになってから、自分が馬鹿だったって思うようになった。稼ぐのも作るのも大変だってわかったから」
「そう。気づけたなら偉いわ」
親がアリスと姉を格差を持って育てたのも確かだけど、アリスが食べ物を無駄にして、親の反感を買っていたのも事実。
「お母さんたちに会いたくはないけど、これまで迷惑かけてごめんなさいって気持ちは持っておく」
「全部一度にわりきらなくてもいいのよ。そういうのは時間がかかるものだから」
「初田先生も同じことを言ってた。歩さんと先生って、気が合うだけあってどこか似てるね」
アリスに言われて、歩はかすかに笑う。
食器を洗っていると、半泣きの初斗から電話がかかってきた。
『たすけて歩。なんかたいへんなことに』
初斗の背後からリナの声が聞こえる。初田に借りを作るなんて嫌だからさっさと返す、もらった血液の分お金を払えばいいのか云々……。
出禁にした歩が割って入ったら、ヒートアップすることは目に見えている。
初斗が自分で言いくるめることを信じて、「がんばりなさいな」とだけ伝えて電話を切る。
閉店後、「薄情者ー」と言いに来たけれど、解決したみたいなので、やはり電話を切って良かった。
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