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第五話 見た目も味のうち。可愛いフルーツヨーグルト①
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日曜の朝。歩が開店準備のため外に出ると、ウサギ頭の初斗がいた。
手には竹ホウキを持ち、空を見上げている。
「ああ、雨が降りそうですねえ……」
失礼ながら、身長一八〇ある男がウサギマスクをかぶって佇んでいる姿はとても目立つ。
これでもかというくらい悪目立ちしている。
道行く親子連れの子どもに「うさたんがいるー」と指さされ、「しっ、見ちゃいけません!」と母親が子どもの口をふさいで走り去った。
「なにしてるの初斗」
「罰を受けています」
「罰って何やらかしたの」
「大根おろしをつぶしたら怒られた」
「……だいこん?」
意味が分からなかった。頭がいいのに微妙にネジが外れているため、初斗の説明は要領を得ないときがある。
クリニックの扉を開けて、ネルが出てきた。
あくびをかみころしつつ、つっかけサンダルをカラカラいわせる。靴下の左右を間違えているけれど、それはいつものことなので指摘しない。本人も靴下が違うことを気にしていないらしい。
「歩さん、おはよう」
「おはようネルちゃん。初斗はどうしたの」
たぶんネルならわかるので聞いてみる。
「大根おろしをネコちゃんの形にできるグッズを買ったの。それで、サワラの塩焼きにのせるつもりだったのね。作っている途中だったのに、にいさんがスプーンで潰しちゃったの」
「なにしてんのよ初斗。小学生みたいないたずらしちゃ駄目じゃない」
「……怒らせるつもりはなかったんだ。ただちょっと、形で味は変わるのか気になっただけで」
たぶん本当に、興味本位で大根おろしをくずしたのだろう。
男子小学生が好きな女の子をいじめるようなことをする初田。次の誕生日で三十九歳になるのだが、こんな調子で大丈夫だろうか。
歩に咎められた初斗は、ホウキで地面をはきはき。無言でウサギ頭をそらした。自分のいたずらが話題になっているので、話から離脱しようとしている。
「歩さんにこれをあげる」
「あら、なあに?」
ネルはポケットから小さな箱を出して歩の手に乗せた。ネコの形をした小ぶりのなにかだ。
「これに大根おろしやすりおろしリンゴを入れると、ネコちゃんの形にできるの」
「あらかわいい。もらっていいの?」
「うん。使う用と、保存用、観賞用、布教用を買ってきたの。歩さんも使って。そして布教して」
「そう。ならありがたく使わせてもらうわ。布教するかどうかまでは約束できないけど」
あまりにも真剣な顔で言うので笑ってしまった。
手には竹ホウキを持ち、空を見上げている。
「ああ、雨が降りそうですねえ……」
失礼ながら、身長一八〇ある男がウサギマスクをかぶって佇んでいる姿はとても目立つ。
これでもかというくらい悪目立ちしている。
道行く親子連れの子どもに「うさたんがいるー」と指さされ、「しっ、見ちゃいけません!」と母親が子どもの口をふさいで走り去った。
「なにしてるの初斗」
「罰を受けています」
「罰って何やらかしたの」
「大根おろしをつぶしたら怒られた」
「……だいこん?」
意味が分からなかった。頭がいいのに微妙にネジが外れているため、初斗の説明は要領を得ないときがある。
クリニックの扉を開けて、ネルが出てきた。
あくびをかみころしつつ、つっかけサンダルをカラカラいわせる。靴下の左右を間違えているけれど、それはいつものことなので指摘しない。本人も靴下が違うことを気にしていないらしい。
「歩さん、おはよう」
「おはようネルちゃん。初斗はどうしたの」
たぶんネルならわかるので聞いてみる。
「大根おろしをネコちゃんの形にできるグッズを買ったの。それで、サワラの塩焼きにのせるつもりだったのね。作っている途中だったのに、にいさんがスプーンで潰しちゃったの」
「なにしてんのよ初斗。小学生みたいないたずらしちゃ駄目じゃない」
「……怒らせるつもりはなかったんだ。ただちょっと、形で味は変わるのか気になっただけで」
たぶん本当に、興味本位で大根おろしをくずしたのだろう。
男子小学生が好きな女の子をいじめるようなことをする初田。次の誕生日で三十九歳になるのだが、こんな調子で大丈夫だろうか。
歩に咎められた初斗は、ホウキで地面をはきはき。無言でウサギ頭をそらした。自分のいたずらが話題になっているので、話から離脱しようとしている。
「歩さんにこれをあげる」
「あら、なあに?」
ネルはポケットから小さな箱を出して歩の手に乗せた。ネコの形をした小ぶりのなにかだ。
「これに大根おろしやすりおろしリンゴを入れると、ネコちゃんの形にできるの」
「あらかわいい。もらっていいの?」
「うん。使う用と、保存用、観賞用、布教用を買ってきたの。歩さんも使って。そして布教して」
「そう。ならありがたく使わせてもらうわ。布教するかどうかまでは約束できないけど」
あまりにも真剣な顔で言うので笑ってしまった。
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