蛇場見《じゃばみ》さんちのまかないごはん。 〜拒食症アリスとジャバーウォックのワンダーライフ〜

ちはやれいめい

文字の大きさ
上 下
7 / 74

第四話 小腹がすいたら、焼きリンゴを①

しおりを挟む
 そして安息日になりました。
 今日は冒険者服を買いに行く予定だけど、午前中はまたバーボルド伯爵領の教会の治療施設に向かう事になりました。
 今日は、イストワールさんだけでなくシャンティさんも慰問に同行する事になりました。
 みんなで馬車に乗って、教会に向かいます。

 パカパカパカ。

「今日も、沢山の人が街を歩いていますね。人だかりが凄いです!」
「それだけ、このバーボルド伯爵領が賑わっていてとても嬉しいですわ」
「市場も商店も本当に忙しそうにしていて、その分私達も頑張らないとっておもいますわよ」

 シロちゃんをイストワールさん、ユキちゃんをシャンティさんが抱っこしているけど、何だか久々に誰も僕のところにいなくて手持ち無沙汰になっちゃった。
 僕も馬車の窓から外を見るけど、安息日なのに本当に忙しく人が歩いていますね。
 という事で、無事に馬車は教会に到着しました。
 まずは挨拶をするので、教会の中に入ります。

「これはこれは皆さまお揃いで、ご足労をおかけいたします」
「こちらこそ、日々民のために色々と尽力頂き感謝申し上げます」

 おおー、イストワールさんがニコリとしながら威厳を持って話をしたよ。
 僕もシロちゃんもユキちゃんも、思わず拍手をしちゃった。
 この後は、予定通りに治療施設に移動します。

「わあ、もう多くの人が入院しているんてますね」
「風邪の流行は落ち着いてきたのですが、怪我人が多く出ています。どうも、先ほど街道で多くの魔物が出たそうですよ」

 シスターさんの言葉を聞いた瞬間、イストワールさんとシャンティさんはビックリした表情に変わりました。
 そして、直ぐに護衛の兵に何かを指示していました。

「レオ君、もしかしたら怪我人が増えるかもしれないわ」
「あの、僕が戦わなくて良いんですか?」
「バーボルド伯爵領の兵はとても強いから大丈夫よ。万が一の時は、レオ君に助けて貰うわ」

 ちょうどタイミング的に、さっき魔物が現れたのかもしれない。
 となると、今は目の前の怪我人を頑張って治療しないと駄目だね。
 よーし、頑張るぞ。
 さっそく僕たちは、それぞれ別れて治療を始めます。

 シュイン、ぴかー。

「これで、胸のつっかえは良くなったと思いますよ」
「あら、本当に良くなっているわ。流石は、黒髪の天使様ね」

 今日はユキちゃんが一頭で動けているので、僕とシロちゃんも付きっ切りじゃなくてすみます。
 なので、どんどんと入院患者の治療が進んでいきます。

「奥様、若奥様、黒髪の天使様は今日も物凄い勢いで治療していきますわ」
「まあ、レオ君ですから、このくらいはやりますわよ」
「そうですわね。今朝の訓練でも、気持ちよさそうに空を飛んでおりましたわ」
「はっ? 空を、飛んだ?」

 あっ、シャンティさんが今朝の訓練で飛行魔法を使ったと言ったら、付き添いの年配のシスターさんがポカーンとしちゃった。
 全員の治療が終わったら、飛行魔法を見せてあげないと。
 こうしてみんなで分担したので、あっという間に治療施設に入院している人の治療が終わりました。
 僕達は治療施設の前にある、ちょっとした芝生のあるスペースに移動します。
 ここで、僕とシロちゃんが使う飛行魔法を見せてあげる事にしました。

「クゥーン……」
「ユキちゃんも、頑張れば飛行魔法を覚えられるよ」
「キューン……」

 ユキちゃんはまだ魔法を覚えて直ぐなので、もっと頑張って訓練をしないと飛行魔法は使えないね。
 ちょっとしゅんとしちゃったけど、これから頑張ればきっと大丈夫です。
 という事で、さっそく飛行魔法を使います。

 シュイン、ふわっ。

「あ、あわわわわ。黒髪の天使様が宙に浮きましたわ」

 えっと、宙に浮いただけで、もうシスターさんが驚愕の表情に変わっちゃった。
 だ、大丈夫かな?
 僕とシロちゃんはそう思いながら、一分間だけ飛行魔法を使いました。

 ヒュン、ヒュン!

「す、凄い。本当に空を飛んでおりますわ。飛行魔法は、失われた魔法と聞いておりました……」

 そして、シスターさんは空を飛ぶ僕とシロちゃんを見て再びポカーンとしちゃいました。
 飛行魔法は難しいだけで、失われた魔法じゃないんだけどね。

「ふう、こんな感じです。今日は近くで戦いが起きているって聞いたので、魔力を残すためにこのくらいにしました」
「さ、流石は黒髪の天使様。何事もなかったの様にしておりますわ」

 あの、シスターさんが僕の方を向いて手を組んで祈り始めているのですが。
 僕だけでなくイストワールさんとシャンティさんも、そんなシスターさんの姿を見て思わず苦笑しちゃいました。
 すると、イストワールさんのところに兵がやってきました。

「報告します、魔物は全て撃退しました。倒したのは、オオカミの魔物となります。ただ、怪我人が複数出ております」
「そう、ありがとう。レオ君がいるから、怪我をした守備隊員を運んで頂戴」
「はっ」

 無事に魔物退治が終わったんだね。
 これから治療第二段を頑張らないと。
しおりを挟む
シリーズ作品
初田ハートクリニックの法度(完結済)
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

伊緒さんのお嫁ご飯

三條すずしろ
ライト文芸
貴女がいるから、まっすぐ家に帰ります――。 伊緒さんが作ってくれる、おいしい「お嫁ご飯」が楽しみな僕。 子供のころから憧れていた小さな幸せに、ほっと心が癒されていきます。 ちょっぴり歴女な伊緒さんの、とっても温かい料理のお話。 「第1回ライト文芸大賞」大賞候補作品。 「エブリスタ」「カクヨム」「すずしろブログ」にも掲載中です!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...