63 / 66
63 寒い日の朝ごはんはオデーンで決まり!
しおりを挟む
翌朝、森のレクサスが啼くより早く、シロが啼く。
オレの頭にシロの前足がペチンパチンと叩きつけられる。腹が減ったときのネコのようである。
「きゅっぴぃ~~! きゅ~~! きゅ~!」
「わかった、おきる、おきます……」
ずいぶんと荒っぽい起こし方だが、起きられたから良しとしよう。
「もうあさか」
ミミものそのそと布団から出てくる。
緑の髪の毛が、ピンピンおどっていた。はねた毛先をつまんでおしえてやる。
「ミミ、寝癖」
「おおう」
「オレは畑の様子見てくるよ。ついでにポチにごはんをあげよう。シロも行くか?」
「きゅ~~」
抱っこをせがまれているような気がしたから、抱っこひもで抱え上げて庭に出た。
ここに転移してきた頃にくらべて、朝の空気が冷たい。
吐く息が白いや。海ヒツジの毛で編まれた上着を着ているから、事なきを得ている。
納屋の藁の上で丸くなっていたポチを呼ぶ。
「ポチ、ごはん」
〈にゃぅーーにゃーー〉
「はいはい」
収穫を終えているところの土を掘り返して、ポチ用のごはん皿(皿っていうかプランター)に盛ってやる。
毎日土を食われていたら、いずれ村の土がなくなるのでは? といった心配はご無用。
ツチネコの糞(フン)は土に混ぜ込むと、とても上質な土になる。
土を食って土を出す、かなり謎な生物だ。
地球の価値観で測れないから、そこらへん気にするのをやめた。
野菜の葉っぱを掴んで引っこ抜く。
ココロカブみたいなハート型をしているけれど、ココロカブよりも細長くて、色白。
その名もハートダイコ。
ファクターから種を買ったとき、煮るとうまいって言ってたな。
二本だけ採って、あとは食べるときに収穫しよう。
「シロ、家に入るぞ~……って、あわわわ」
興味を持ったのか、シロが見様見真似で、ポチの皿に入っていたモノを食べていた。
「ぺっぺっ、きゅうんー」
「こらこら。食べちゃメーだぞ、シロ。それはポチのごはんだ」
悲しそうに啼く。桶に無限ジョウロの水を汲んで、口の中をゆすいでやる。
何度かうがいして、スッキリしたシロは元気よく啼いた。
うん、次からは目を離さないように気をつけよう。
「ミミ、収穫したぞー」
「おお。ならあらって、きって。オデーンにする」
「はいよ~って、オデーン、おでん?」
「なにかもんだいか」
まじかよおでん。
いや、名前が似ているだけの別料理かもしれない。
「これくらいの、あつさ」
ミミが人差し指と親指で幅をつくり、厚さを示す。言われるままに、ハートダイコを洗って切る。
「わかった」
お湯の沸いた鍋に入れる。すでにミミが入れていた具が、半透明のスープの中で上下している。
肉だんご、コケトリスのゆでたまご、ニンジャ。この時点ですでにうまそう。
火が通るまでテーブルにつき、野草茶を飲んで待つ。
ミミも隣に座って、シロの尻尾の動きを目で追っている。
「シロはオデーンたべられるか」
「きゅう?」
「しらぬか。オデーンはうまい。あったまる」
「きゅきゅぴ~」
ペットのわんにゃんに話しかけるおばあちゃんのようである。二人の間ではしっかり会話が成立しているのだから面白い。
「なんて?」
「たべないとわからぬ」
「そりゃそうだ」
出来上がったオデーンは器に盛って、シロの分は具だけ平たい皿に乗せて冷ます。
茶色みのある透明スープに野菜とたまごと|肉だんご(つみれ)。
お祈りしたらいざ実食!
「……こ、これは、おでんだ! うまし! オデーンうまし!」
前日から漬け込んでいたのか、たまごは中までしっかりと出汁の味が染み込んでいる。レクサスの骨でとったお出汁。そして肉だんご。
こちらも丁寧にこねてあって舌触りが滑らか。歯ざわりが柔らかくてつるりといただける。
ニンジャも出汁風味が絶妙。
極めつけはハートダイコ。
まさしくダイコンである。素材そのものが薄味だから、出汁の旨味をじゅうぶんに吸い込んでいる。
まさか異世界でおでんを食べられるなんて、感無量だ。ミミも合間にフーフーしながら、黙々とオデーンをほおばっている。
「きゅー」
「ああ、ごめんよシロ。ほら、シロも。あーん」
肉だんごをスプーンで切り、シロの口に運ぶ。
もぐもぐもぐもぐ、味わって飲み込み、一声啼く。
「ぴぃ~!!」
「そうかそうか、美味しいか。よかった~。はい、次はダイコな」
「もぎゅもぎゅ」
シロのごはんをあげていると、ミミが再びキッチンに立った。
「シメをつくる」
「まじですか!」
ミミは深くうなずいて、パンをちぎっては投げ……でなく鍋に入れていく。パンはどんどんと煮崩れ、とろりとする。
あっという間にもう一品。
「オデーンかゆ」
「わーいうまそー! ミミ天才!」
具材の味が染み込んだシメおかゆ、まずいわけがない。
シロはオデーンのシメかゆを気に入ったようで、羽をパタパタさせて喜んだ。
オレも美味すぎて二回もおかわりした。罪深いぜシメのおかゆ。
オレの頭にシロの前足がペチンパチンと叩きつけられる。腹が減ったときのネコのようである。
「きゅっぴぃ~~! きゅ~~! きゅ~!」
「わかった、おきる、おきます……」
ずいぶんと荒っぽい起こし方だが、起きられたから良しとしよう。
「もうあさか」
ミミものそのそと布団から出てくる。
緑の髪の毛が、ピンピンおどっていた。はねた毛先をつまんでおしえてやる。
「ミミ、寝癖」
「おおう」
「オレは畑の様子見てくるよ。ついでにポチにごはんをあげよう。シロも行くか?」
「きゅ~~」
抱っこをせがまれているような気がしたから、抱っこひもで抱え上げて庭に出た。
ここに転移してきた頃にくらべて、朝の空気が冷たい。
吐く息が白いや。海ヒツジの毛で編まれた上着を着ているから、事なきを得ている。
納屋の藁の上で丸くなっていたポチを呼ぶ。
「ポチ、ごはん」
〈にゃぅーーにゃーー〉
「はいはい」
収穫を終えているところの土を掘り返して、ポチ用のごはん皿(皿っていうかプランター)に盛ってやる。
毎日土を食われていたら、いずれ村の土がなくなるのでは? といった心配はご無用。
ツチネコの糞(フン)は土に混ぜ込むと、とても上質な土になる。
土を食って土を出す、かなり謎な生物だ。
地球の価値観で測れないから、そこらへん気にするのをやめた。
野菜の葉っぱを掴んで引っこ抜く。
ココロカブみたいなハート型をしているけれど、ココロカブよりも細長くて、色白。
その名もハートダイコ。
ファクターから種を買ったとき、煮るとうまいって言ってたな。
二本だけ採って、あとは食べるときに収穫しよう。
「シロ、家に入るぞ~……って、あわわわ」
興味を持ったのか、シロが見様見真似で、ポチの皿に入っていたモノを食べていた。
「ぺっぺっ、きゅうんー」
「こらこら。食べちゃメーだぞ、シロ。それはポチのごはんだ」
悲しそうに啼く。桶に無限ジョウロの水を汲んで、口の中をゆすいでやる。
何度かうがいして、スッキリしたシロは元気よく啼いた。
うん、次からは目を離さないように気をつけよう。
「ミミ、収穫したぞー」
「おお。ならあらって、きって。オデーンにする」
「はいよ~って、オデーン、おでん?」
「なにかもんだいか」
まじかよおでん。
いや、名前が似ているだけの別料理かもしれない。
「これくらいの、あつさ」
ミミが人差し指と親指で幅をつくり、厚さを示す。言われるままに、ハートダイコを洗って切る。
「わかった」
お湯の沸いた鍋に入れる。すでにミミが入れていた具が、半透明のスープの中で上下している。
肉だんご、コケトリスのゆでたまご、ニンジャ。この時点ですでにうまそう。
火が通るまでテーブルにつき、野草茶を飲んで待つ。
ミミも隣に座って、シロの尻尾の動きを目で追っている。
「シロはオデーンたべられるか」
「きゅう?」
「しらぬか。オデーンはうまい。あったまる」
「きゅきゅぴ~」
ペットのわんにゃんに話しかけるおばあちゃんのようである。二人の間ではしっかり会話が成立しているのだから面白い。
「なんて?」
「たべないとわからぬ」
「そりゃそうだ」
出来上がったオデーンは器に盛って、シロの分は具だけ平たい皿に乗せて冷ます。
茶色みのある透明スープに野菜とたまごと|肉だんご(つみれ)。
お祈りしたらいざ実食!
「……こ、これは、おでんだ! うまし! オデーンうまし!」
前日から漬け込んでいたのか、たまごは中までしっかりと出汁の味が染み込んでいる。レクサスの骨でとったお出汁。そして肉だんご。
こちらも丁寧にこねてあって舌触りが滑らか。歯ざわりが柔らかくてつるりといただける。
ニンジャも出汁風味が絶妙。
極めつけはハートダイコ。
まさしくダイコンである。素材そのものが薄味だから、出汁の旨味をじゅうぶんに吸い込んでいる。
まさか異世界でおでんを食べられるなんて、感無量だ。ミミも合間にフーフーしながら、黙々とオデーンをほおばっている。
「きゅー」
「ああ、ごめんよシロ。ほら、シロも。あーん」
肉だんごをスプーンで切り、シロの口に運ぶ。
もぐもぐもぐもぐ、味わって飲み込み、一声啼く。
「ぴぃ~!!」
「そうかそうか、美味しいか。よかった~。はい、次はダイコな」
「もぎゅもぎゅ」
シロのごはんをあげていると、ミミが再びキッチンに立った。
「シメをつくる」
「まじですか!」
ミミは深くうなずいて、パンをちぎっては投げ……でなく鍋に入れていく。パンはどんどんと煮崩れ、とろりとする。
あっという間にもう一品。
「オデーンかゆ」
「わーいうまそー! ミミ天才!」
具材の味が染み込んだシメおかゆ、まずいわけがない。
シロはオデーンのシメかゆを気に入ったようで、羽をパタパタさせて喜んだ。
オレも美味すぎて二回もおかわりした。罪深いぜシメのおかゆ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
前世の忠国の騎士を探す元姫、その前にまずは今世の夫に離縁を申し出る~今世の夫がかつての忠国の騎士? そんな訳ないでしょう~
夜霞
ファンタジー
ソウェル王国の王女であるヘンリエッタは、小国であるクィルズ帝国の王子との結婚式の最中に反乱によって殺害される。
犯人は国を乗っ取ろうとした王子と王子が指揮する騎士団だった。
そんなヘンリエッタを救いに、幼い頃からヘンリエッタと国に仕えていた忠国の騎士であるグラナック卿が式場にやって来るが、グラナック卿はソウェル王国の王立騎士団の中に潜んでいた王子の騎士によって殺されてしまう。
互いに密かに愛し合っていたグラナック卿と共に死に、来世こそはグラナック卿と結ばれると決意するが、転生してエレンとなったヘンリエッタが前世の記憶を取り戻した時、既にエレンは別の騎士の妻となっていた。
エレンの夫となったのは、ヘンリエッタ殺害後に大国となったクィルズ帝国に仕える騎士のヘニングであった。
エレンは前世の無念を晴らす為に、ヘニングと離縁してグラナック卿を探そうとするが、ヘニングはそれを許してくれなかった。
「ようやく貴女を抱ける。これまでは出来なかったから――」
ヘニングとの時間を過ごす内に、次第にヘニングの姿がグラナック卿と重なってくる。
エレンはヘニングと離縁して、今世に転生したグラナック卿と再会出来るのか。そしてヘニングの正体とは――。
※エブリスタ、ベリーズカフェ、カクヨム他にも掲載しています。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる