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59 ようこそラビィ。ニンジャづくしのおもてなし

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 翌朝。
 ご近所の皆さんと相談して、ラビィの歓迎会は各家庭一品ずつニンジャ料理を持ち寄ることになった。

 我が家はもちろんミミが作る。
 フライパンを火魔法コンロにのっけてフンスと胸をはる。

「ニンジャやき、つくる」
「ニンジャ焼き! なにそれうまそう!」

 ミミがどどんとニンジャを構える。誰に向けて見せているのか。

「ぱそこんのまえのみんなー、みてるー? きむらんだよー。ニンジャやきつくるよー」

 あ、オレの真似だ。ご希望に沿うようオレもユーチューバーモードで実況する。

“はい、ミミ母さんニンジャを1センチの輪切りにして、油を敷いたフライパンに投入しました! ナッツ系のいい香りが部屋中に広がっております”……ってやるとウルサイって怒られるから、別のことをいう。
 パソコンの前のみんな。キムランはちゃんと成長してるよー。

「いい香りですね~。ではここでミミ母さんにインタビューしてみましょう。ミミ母さん、あらゆるニンジャ料理がある中で、なぜニンジャ焼きを選ばれたのでしょう」

 マイクを向ける仕草をすると、ミミは首を傾げつつ答える。

「ラビィ、たぶんカリカリのがすき」
「なるほど。ニンジャの食感を活かすわけですね。さすがミミ母さんです」

 ナッツオイル自体にほんのり味があるため、あえて塩などはふらない。祭のときもタレつけずに食べていたものね。

 焼き上がったらお皿に盛り付ける。
 こんがりきつね色に色づいたニンジャ。オイルが染み込んでつややかな光沢を放っている。

「できた」
「完成しましたー! パソコンの前のみんな、見てるー? ニンジャ焼きできたよー」

 ピースピース!
 
「いつもおもう。キムランはだれにいってる」
「うーんと。説明が難しいな。オレのいた国にはね、別の国の人に、この場所の映像を見せる道具があったんだよ。今みたいにお料理を見てほしいときとかね」
「よくわからんが、とおくにえやこえをおくれるまほうぐ?」
「そんな感じそんな感じ。それでオレはここにはいない誰かに届けるために言ってるんだ」

 この世界にそんな便利な魔法具があったなら、絶対にユーチューバーやるのになー。村の宣伝できるしさ。

「カズタカにきいたら、つくれないか」
「あ、確かに! カズタカさんなら何か知ってるかもしれないね」

 話が脱線したものの、ニンジャ焼きができたので、ミミがスキップしながら歓迎会の会場に持っていく。

 ケーキやジュース、サラダなど大テーブルがニンジャカラーで埋め尽くされている。
 そこにオリビアさんとナルシェに連れられたラビィが入ってきて、歓声をあげた。

「うわあぁ!! ニンジャがいっぱい! あちきがこれを食べていいのかい?」
「うむ。ラビィ、くえ。たんとくえ」

 特等席にラビィを座らせて、オレとミミが両隣につく。村長が景気良くバシバシ叩いたらラビィが倒れかねないから。

「こんなに歓迎してもらえるなんて、来てよかったよ。ありがとう、サイハテのみんな」

 ラビィ、泣くのと食べるのに忙しい。
 泣いて目を赤くしながらも、ポリポリポリポリポリポリとニンジャ料理を食べていく。

「それではラビィが来たことを祝って、みんなで飲んで食うぞー!」
「おおー!」

 村長の音頭(おんど)でみんながニンジャ料理に手を伸ばす。
 オレは最初に、ミミの作ったニンジャ焼きを。

「うまーい。火が通っているのに食感風味が残っていてうま!!」

 鼻に抜けるオリーブに似た香り。歯ざわりも良くて、あーー、酒が進むやつだこれ。

「よかった」

 ミミもニコニコしながらニンジャ焼きを食べる。そしてニンジャケーキはパウンドケーキ的なやつ。
 甘さ控えめで、ニンジャそのものの甘みが活きている。すりおろしと、ジュース、それから小さめに切ったニンジャが入っているな。今度うちでも作ろう。

「ラビィ、どうだ?」
「美味いねぇ、美味いねぇ。これ全部、この村で採れたニンジャだろう」
「そうだね。どの家でも育てているからたくさんあるよ」
「ふふふ。ニンジャをたくさん食べられて嬉しいよ」

 会話しながらも、ラビィはもりもりニンジャを食べる。ほんとうにニンジャ好きだね。
 うさぎさんと会話しているという不思議体験、この世界に来なければ体験できなかったな。
 

 こうしてラビィ歓迎会は大成功で幕を閉じた。
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