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45 旅のおやつは焼きケスターネのオーブン焼き!
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ツチネコのポチを仲間に加えて、オレたちの旅は再開した。
ママの言う事なら何でも聞くニャン、とは言ってないけどミミの言いなりである。
ミミが背中に乗っても文句の一つも言わず、乗馬もとい乗猫中だ。
「よし、ゆけ、ポチ」
〈みゃー〉
「にゃーー」
〈ニー〉
ミミに差された道の先を目指して、オレたちの歩調に合わせて歩くポチ。まだ腰砕けから回復しきっていないコトリさんが、デレデレでポチを眺めている。
「はぁ、いいなぁツチネコ。なんてきゃわゆい」
「アタシももふもふしたーい。ミミー。ポチに触ってもいい?」
「僕もいいかな。肉球さわりたい」
〈ミューー〉
モテモテだなあポチ。兄として嫉妬しちゃうぜ。オレも後でモフらせてもらおう。
しばらく歩いていたら、道端に丸いもんが落ちていた。ゴルフボール……いや、でっかいスーパーボール?
ポチが一直線に落ちていたボールに飛びついて、前足で転がして遊びはじめる。
「まてポチ。わたしをおろしてからにしろ」
〈なー、にゃー〉
ミミがポチから降りて、いくつか落ちていたボールの一つを拾いあげた。
表面の皮は焦げ茶で厚めで、日本でもよく見る何かを彷彿とさせる。なんだっけ。
見上げると道なりに群生している木の枝が、柳みたいにしなっている。枝の高さはちょうどオレの目線よりやや上。そこにミミが拾ったのと同じ、茶色い実が成っている。
「なぁなぁ、ナルシェ。あの木の実ってなんだ? 土産屋に売ってる花火玉のちっちゃい版みたいなやつ。投げたら爆発すんのかな」
「ハナビダマってなんです? あれはケスターネ。食べものです。そのまま焼いたり、ケーキなんかのお菓子に入れたりするんですよ」
「へー。ケスターネか。あれ、もいだら怒られるかな」
「ここは誰の私有地ってわけでもないから、構わないと思うわよ」
ユーイさんの言葉を信じて、いくつかもいでみることにする。警備の人に怒られたら謝ろう。
「わたしも、とる。キムラン、かがめ」
「はいよー」
ミミを肩車して木のまわりを歩き、ミミが気合いでもぎ取る。カゴを持ったコトリさんが横にスタンバイしていて、一つずつ受け取る。
小一時間でカゴいっぱいに取れた。
「キムラン、ミミ、コトリ。ちょうど小腹も空いてきていたし、休憩してそれを食べましょう」
「そうしよう。空腹は最大の敵だからな! いやー、ケスターネなんて久しぶりだな」
ユーイさんの一声で、休憩タイム決定である。
木陰に荷物をまとめておろす。
コトリさんはこれが好物なのかな。ケスターネを見る顔の筋肉が緩みきっている。
「ミミちゃん。僕も手伝うよ。何作る?」
「やきケスターネする」
「そうだね。シンプルに食べるのが一番美味しいもんね。さっきセロの実も見つけたから、飲み物はそれにしよう」
「おー」
我らがパーティの年少組かつ料理得意組が、ケスターネを両手に相談中だ。
大人組は座って待つ……だけだとミミかあさんに怒られるから、コトリさんとオレはモンスターが来ないように見張り番を…、ユーイさんはポチのごはん(泥だんご)を用意する。
しばらくすると漂ってくる良い香り。食欲をそそる甘みのある匂いだ。
「できましたよー」
「またせたな」
ナルシェとミミが、それぞれ鍋を持ってオレたちの前に出す。
「キムランさん、カップください。取り分けるので」
「おーけー!」
ナルシェが持ってきた鍋はロゼワインのような薄ピンクの液体が入っている。湯気の匂いまで美味しい。人数分のカップに、お玉で少しずつ入れていく。
フライングで一口飲んだら、ビネガージュースみたいに後味がスッキリしている。口当たりはサッパリサラサラ。疲れたときに飲みたいやつだな。
「ココの実は果肉を火にかけると溶けて、こんな感じの飲み物になるんですよ」
「へー。おもしれー」
「ケスターネも、できた。やけどにきをつけろ」
ミミが鍋の蓋を取ると、中からぱっくり口を開けたケスターネが出てきた。オーブン焼き状態になっていて、殻みたいに固かった皮が割れている。中に見えるのは黄色くとろみのある実。
コトリさんは待てをされたワンコみたいに、よだれをたらしている。
待てを続けるのはかわいそうなので、みんなで揃ってお祈りして食す。
ケスターネ、焼き立てだから殻がアッチイ。
タオルで手を保護しながら殻を指で割いて、中身を取り出す。
「はふ、はふ。う、うまし!」
食感は焼き栗か焼き芋か。砂糖や人工甘味料とは違う、食材そのものの自然な甘さがあとを引く。
暑い中でこれ食うのどうなのさって、視聴者の思うだろう。
真夏日に食うラーメンが美味いのと同じさ。
日差しの下で暑いもん食っても、うまいもんはうまい。
コトリさんがケスターネ(5個目)の殻を割りながら遠い目をする。
「懐かしいな。小さい頃、よくばあやがケスターネのお菓子を作ってくれたんだ」
「ば、ばあや? おばあちゃんでなくて?」
セロの実ジュースを飲んでいたユーイさんがむせた。
もしかしてコトリさん、召使いがいるようなご家庭のお嬢様……。
庶民には作れないと噂の魔法具を作れる家系だものね、そうだよね。
なんで今までその可能性に思い至らなかった。
──オレたちがこれから交渉しようとしているコトリさんの家族って、もしかして貴族?
ママの言う事なら何でも聞くニャン、とは言ってないけどミミの言いなりである。
ミミが背中に乗っても文句の一つも言わず、乗馬もとい乗猫中だ。
「よし、ゆけ、ポチ」
〈みゃー〉
「にゃーー」
〈ニー〉
ミミに差された道の先を目指して、オレたちの歩調に合わせて歩くポチ。まだ腰砕けから回復しきっていないコトリさんが、デレデレでポチを眺めている。
「はぁ、いいなぁツチネコ。なんてきゃわゆい」
「アタシももふもふしたーい。ミミー。ポチに触ってもいい?」
「僕もいいかな。肉球さわりたい」
〈ミューー〉
モテモテだなあポチ。兄として嫉妬しちゃうぜ。オレも後でモフらせてもらおう。
しばらく歩いていたら、道端に丸いもんが落ちていた。ゴルフボール……いや、でっかいスーパーボール?
ポチが一直線に落ちていたボールに飛びついて、前足で転がして遊びはじめる。
「まてポチ。わたしをおろしてからにしろ」
〈なー、にゃー〉
ミミがポチから降りて、いくつか落ちていたボールの一つを拾いあげた。
表面の皮は焦げ茶で厚めで、日本でもよく見る何かを彷彿とさせる。なんだっけ。
見上げると道なりに群生している木の枝が、柳みたいにしなっている。枝の高さはちょうどオレの目線よりやや上。そこにミミが拾ったのと同じ、茶色い実が成っている。
「なぁなぁ、ナルシェ。あの木の実ってなんだ? 土産屋に売ってる花火玉のちっちゃい版みたいなやつ。投げたら爆発すんのかな」
「ハナビダマってなんです? あれはケスターネ。食べものです。そのまま焼いたり、ケーキなんかのお菓子に入れたりするんですよ」
「へー。ケスターネか。あれ、もいだら怒られるかな」
「ここは誰の私有地ってわけでもないから、構わないと思うわよ」
ユーイさんの言葉を信じて、いくつかもいでみることにする。警備の人に怒られたら謝ろう。
「わたしも、とる。キムラン、かがめ」
「はいよー」
ミミを肩車して木のまわりを歩き、ミミが気合いでもぎ取る。カゴを持ったコトリさんが横にスタンバイしていて、一つずつ受け取る。
小一時間でカゴいっぱいに取れた。
「キムラン、ミミ、コトリ。ちょうど小腹も空いてきていたし、休憩してそれを食べましょう」
「そうしよう。空腹は最大の敵だからな! いやー、ケスターネなんて久しぶりだな」
ユーイさんの一声で、休憩タイム決定である。
木陰に荷物をまとめておろす。
コトリさんはこれが好物なのかな。ケスターネを見る顔の筋肉が緩みきっている。
「ミミちゃん。僕も手伝うよ。何作る?」
「やきケスターネする」
「そうだね。シンプルに食べるのが一番美味しいもんね。さっきセロの実も見つけたから、飲み物はそれにしよう」
「おー」
我らがパーティの年少組かつ料理得意組が、ケスターネを両手に相談中だ。
大人組は座って待つ……だけだとミミかあさんに怒られるから、コトリさんとオレはモンスターが来ないように見張り番を…、ユーイさんはポチのごはん(泥だんご)を用意する。
しばらくすると漂ってくる良い香り。食欲をそそる甘みのある匂いだ。
「できましたよー」
「またせたな」
ナルシェとミミが、それぞれ鍋を持ってオレたちの前に出す。
「キムランさん、カップください。取り分けるので」
「おーけー!」
ナルシェが持ってきた鍋はロゼワインのような薄ピンクの液体が入っている。湯気の匂いまで美味しい。人数分のカップに、お玉で少しずつ入れていく。
フライングで一口飲んだら、ビネガージュースみたいに後味がスッキリしている。口当たりはサッパリサラサラ。疲れたときに飲みたいやつだな。
「ココの実は果肉を火にかけると溶けて、こんな感じの飲み物になるんですよ」
「へー。おもしれー」
「ケスターネも、できた。やけどにきをつけろ」
ミミが鍋の蓋を取ると、中からぱっくり口を開けたケスターネが出てきた。オーブン焼き状態になっていて、殻みたいに固かった皮が割れている。中に見えるのは黄色くとろみのある実。
コトリさんは待てをされたワンコみたいに、よだれをたらしている。
待てを続けるのはかわいそうなので、みんなで揃ってお祈りして食す。
ケスターネ、焼き立てだから殻がアッチイ。
タオルで手を保護しながら殻を指で割いて、中身を取り出す。
「はふ、はふ。う、うまし!」
食感は焼き栗か焼き芋か。砂糖や人工甘味料とは違う、食材そのものの自然な甘さがあとを引く。
暑い中でこれ食うのどうなのさって、視聴者の思うだろう。
真夏日に食うラーメンが美味いのと同じさ。
日差しの下で暑いもん食っても、うまいもんはうまい。
コトリさんがケスターネ(5個目)の殻を割りながら遠い目をする。
「懐かしいな。小さい頃、よくばあやがケスターネのお菓子を作ってくれたんだ」
「ば、ばあや? おばあちゃんでなくて?」
セロの実ジュースを飲んでいたユーイさんがむせた。
もしかしてコトリさん、召使いがいるようなご家庭のお嬢様……。
庶民には作れないと噂の魔法具を作れる家系だものね、そうだよね。
なんで今までその可能性に思い至らなかった。
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