上 下
20 / 66

20 初討伐お祝い! 化けきのことレクサスステーキ、きのこクリームを乗せて

しおりを挟む
 前回の狩りと同様、帰り道はモンスターよけの香木を焚きながら村についた。
 みんなで狩ったモンスター、食べられる部分は各家庭に分配される。
 木の実や薬草なんかも採取しながら来たから、しばらく食べるのに困らないだろう。

 オレは分配されたレクサスのもも肉と、多めにもらったきのこを持って帰宅する。



「ただいまーー!! ほらミミ。見てくれ! この化けきのこオレが倒したんだぞー!」
「おかえり。キムランは、やればできるこ。わたしはしんじてたぞ」

 ミミの子どもらしい小さな手が、オレの頭を撫で回す。わー、オレ高校卒業して以降子ども扱いされたの初めてだわ。しかもこんな年下の子に。

「そんちょから、まえのかりのときキムランがにげまわってたときいてた。だから、かりがちゃんとできたキムラン、すごい」
「うぐ」

 悪意ゼロだからよけい刺さるぜ、ミミ。オレの豆腐ハートが粉々。

「キムランなぜなく。きのこがこわかったか」
「怖くない、ぜんっぜん怖くないから! それよりメシ作ろうぜ!」

 村人自体そんなに人数が多いわけじゃないから、みんなで分けても一家族への配分はかなり大きい。
 大玉スイカよりもふたまわり以上でかい肉ときのこ。日本で同じサイズのものを買ったらユキチ何人分になるだろう。

「せっかくキムランがとったから、きのこりょうりたくさんつくる」
「やったー!」

 ミミがいそいそと、包丁とフライパンを用意する。
 化けきのこは厚めに2枚スライス。傘の部分は細かくカットしてザルにあげておく。食べきれない分は魔法の冷蔵庫にイン。
 レクサスの肉も食べる分だけ削ぐ。肉には豪快に塩とスパイスをふって擦り込む。

 熱したフライパンに海ひつじのバターを溶かして、きのこと肉を一緒に投入する。ジワジワと滲み出て来る肉汁が、きのこに吸われていく。美味そう。めっちゃ美味そう。
 焼いている間に、ミミは鍋をオレに渡してくる。

 さっきの細かく切ったきのこと、海ひつじのミルクと、それから小麦粉的なものの紙袋。

「きのこソース、つくる。おにくに、かける」
「オッケー!」
「ミルクのかたまりと、なかむぎのこな、きのこいためる。ミルクいれる」
「ふむふむ」

 ミミに言われるままに、木べらでバターを溶かして中麦粉(この世界では小麦粉ではなく中麦粉らしい)と練り合わせる。ミルクを注いだらなんだかとろみがでてきた。塩とスパイスの木の実で味を整える。
 鍋の中に出来上がったのは、ホワイトソース系のきのこソースだった!

「おおおおぉ! さっすがオレ、やればできる子! 初めてでこんなうまく作れるなんて天才じゃーん! スマホがあったらこれ写メりたい」
「キムランうるさい」
「ごめんなさい」

 ステーキを作っていたミミかあさんに叱られた。
 ミミの焼いていたきのことレクサスのバターソテーを皿に盛り付けて、できたて熱々トロトロのきのこクリームソースをかける。

「これも」

 ミミがレクサスの肉にモリベリーのジャムを乗せて、完成! バターの香りと肉の香ばしさが、オレの食欲をこれでもかと刺激してくる。

「イエーイ!! 化けきのことレクサスのステーキきのこクリームを乗せて、完成~! パソコンの前の皆さん盛大な拍手を! パチパチパチパチ」
「キムランうるさい」
「ごめんなさい」

 ミミに怒られながらも食卓につく。
 左胸に手を当て、この世界の神様にお祈りして、ごちそうにありつく。

「うんまーー!!! 化けきのこもレクサスもウマ!!」

 ほっぺた落ちる! 厚めに切ったきのこはコリコリ食感。バターとレクサス肉の肉汁を吸っているから旨味も抜群。見た目すごく不気味なきのこなのになんて美味さだ。
 レクサス肉は、前に食べたときは燻製だったけれど今回は生肉から調理した。燻製とは味がまるで違う。これは本当に同じ肉か!?

 焼いたときあれだけ肉汁が溢れ出ていたのに、噛んでも噛んでも止めどなくうまい汁が溢れてくる。ミミがミディアムレアな焼き加減にしてくたおかげで、柔らかくかつジューシー。添えたベリージャムがほどよい酸味を加えてくれるおかげで、こんなにジューシーなのに脂っこくならない。
 あまりの美味さに、オレの細胞一つ一つが喜んでいる。
 ミミもコクコクうなずいて肉にかぶりつく。
 皿の上がすっからかんになった頃に、ビリーがボウルに山盛りの素揚げを持ってきた。化けきのこは揚げ物にしても美味いんだってさ。

「おーいキムラン、おふくろがこれ持ってけってよ。食ってくれ。化けきのこ狩りが成功したお祝いだ」
「おお! ありがとビリー! おばさんには次あったら礼を言わないとな! ミミ、おばさんから差し入れだってさ」
「うむ。かんしゃ。そんちょのとこのごはん、おいしい」

 夕飯が終わったばかりでも、美食は別腹である。
 一口大にカットされた化けきのこの素揚げは、二人で仲良く半分こで食べた。

 このあとお隣のオリビアさんも、化けきのこ狩りお祝いと称して炭化した何かを持ってきてくれたが、ミミが受け取る前にナルシェが横からかっさらって平謝りしながら帰っていった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公を助ける実力者を目指して、

漆黒 光(ダークネス ライト)
ファンタジー
主人公でもなく、ラスボスでもなく、影に潜み実力を見せつけるものでもない、表に出でて、主人公を助ける実力者を目指すものの物語の異世界転生です。舞台は中世の世界観で主人公がブランド王国の第三王子に転生する、転生した世界では魔力があり理不尽で殺されることがなくなる、自分自身の考えで自分自身のエゴで正義を語る、僕は主人公を助ける実力者を目指してーー!

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...