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第28話 お迎え
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「瑠衣!遅くなって悪かった!」
「佐藤さん、こちらこそごめんなさい。迷惑かけました」
トイレに15分ほど隠れていると、マネージャーの佐藤さんが迎えにきてくれた。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
佐藤さんが凛に対して深々と頭を下げる。
「慣れてるんで、別に大丈夫です」
凛はあからさまにどうでも良さそうだ。
「いえ本当に助かりました。今度改めてお礼させてください」
佐藤さんはいつもはほんわかしているが、今は完全に社会人モードだ。
「え、お礼?」
謝罪に対しては一切興味なさそうだったが、お礼という言葉に目の色が変わる。
「勿論です。この度はありがとうございました」
「いや、お礼なんて!全然気にしてないのに悪いな~。でもそこまで言うならいただきます!ありがとうございます!」
急に機嫌が良くなった友人に苦笑しつつも、今日は完全に助けられたので何も言うまい。
「凛本当ありがとう。もしもう帰るんだったら一緒に会社の車乗ってく?」
多分大丈夫だとは思うが、俺のせいで凛も少なからず注目されてしまったので今日は送った方がいいだろう。
「いいの?なら乗せてもらうわ」
「おっけー、佐藤さん、凛も乗せていってもらっても大丈夫ですか?」
「勿論!あっ!いやでも、うん。大丈夫。」
何かあるのか佐藤さんはなにやら1人で百面相している。
「もしかしてだめでした?」
「いや、全然だめじゃない!うん、その方がいいよ。危ないしね!」
===
俺たちは人通りが少ないところを歩き、無事に学校の駐車場まで来ることができた。
見慣れた会社のワゴン車を見つけて後部座席の扉を開けると、すでに予想外の先客がいた。
「瑠衣くん!」
ガバっと勢いよく飛びつかれる。
「え、颯太?なんで?」
「騒動知った颯太が行くって聞かなくて。凛くん、もしかしたら居づらいかもしれないけど、颯太のことは気にしないで」
佐藤さんが申し訳なさそうにしている。先ほどの百面相の原因は颯太か。
「瑠衣くん大丈夫だった?怪我してない?大変だったよね?」
颯太がいつになく不安そうで、随分と心配をかけてしまったようだ。颯太は俺の手を引いて座席に座らせる。
「心配かけてごめん。友達が助けてくれたから大丈夫だった」
「友達…?」
「あ、颯太に紹介したことなかったよな。大学の友達の凛」
「こんにちは~お邪魔します」
凛に対して颯太はぺこりと会釈している。
友達がメンバーに会っているのはなんだか不思議な感覚だ。凛も乗り込むと車が走り出す。
「この度は瑠衣くんが大変お世話になりました」
颯太は俺をシートに座らせた時の流れでそのまま手を握っている。颯太のスキンシップには慣れっこだが凛がいるので少し気まずい。さりげなく颯太の手から逃れようとするが、颯太は気がついていないのか離してくれる気配がない。
「颯太くん、こいつちゃんと見張っといた方がいいっすよ~」
「おい、見張るってなんだよ!」
「だって1年の頃から瑠衣ふらふらしたと思ったら、なぜか毎回トラブル抱えて戻ってくるんだもん」
大学に入ってすぐ、凛が言うようによくトラブルに巻き込まれていた。でも一つ言わせて欲しいのが俺がトラブルを起こしていたわけではない。主に凛が女子からモテすぎるせいでトラブルに巻き込まれていたのだ。凛は問題をしれっと回避し、結果として俺ばかりトラブルに巻き込まれていた。
「いや、それ俺のせいじゃなくてお前のせいだろ!あとどっちかっていうと俺の方が颯太の保護者だから」
「へー、そうなんだ」
凛の返事は明らかに信じていない時のやつで腹立たしい。
「お前信じてないだろ?」
「うん」
「颯太は見た目が大人っぽいだけで中身はまだまだ子供だから」
「え、そうなの?意外~」
「そうそう。なんせ颯太が夜寂しがって一緒に寝たがるから仕方なく俺が一緒に寝てあげてるんだから」
「「え?」」
佐藤さんと凛の声が重なる。
「うん?」
「あ、相変わらず瑠衣と颯太は仲良しだな!」
佐藤さんが心なしか焦っているような気がする。
「佐藤さん、こちらこそごめんなさい。迷惑かけました」
トイレに15分ほど隠れていると、マネージャーの佐藤さんが迎えにきてくれた。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
佐藤さんが凛に対して深々と頭を下げる。
「慣れてるんで、別に大丈夫です」
凛はあからさまにどうでも良さそうだ。
「いえ本当に助かりました。今度改めてお礼させてください」
佐藤さんはいつもはほんわかしているが、今は完全に社会人モードだ。
「え、お礼?」
謝罪に対しては一切興味なさそうだったが、お礼という言葉に目の色が変わる。
「勿論です。この度はありがとうございました」
「いや、お礼なんて!全然気にしてないのに悪いな~。でもそこまで言うならいただきます!ありがとうございます!」
急に機嫌が良くなった友人に苦笑しつつも、今日は完全に助けられたので何も言うまい。
「凛本当ありがとう。もしもう帰るんだったら一緒に会社の車乗ってく?」
多分大丈夫だとは思うが、俺のせいで凛も少なからず注目されてしまったので今日は送った方がいいだろう。
「いいの?なら乗せてもらうわ」
「おっけー、佐藤さん、凛も乗せていってもらっても大丈夫ですか?」
「勿論!あっ!いやでも、うん。大丈夫。」
何かあるのか佐藤さんはなにやら1人で百面相している。
「もしかしてだめでした?」
「いや、全然だめじゃない!うん、その方がいいよ。危ないしね!」
===
俺たちは人通りが少ないところを歩き、無事に学校の駐車場まで来ることができた。
見慣れた会社のワゴン車を見つけて後部座席の扉を開けると、すでに予想外の先客がいた。
「瑠衣くん!」
ガバっと勢いよく飛びつかれる。
「え、颯太?なんで?」
「騒動知った颯太が行くって聞かなくて。凛くん、もしかしたら居づらいかもしれないけど、颯太のことは気にしないで」
佐藤さんが申し訳なさそうにしている。先ほどの百面相の原因は颯太か。
「瑠衣くん大丈夫だった?怪我してない?大変だったよね?」
颯太がいつになく不安そうで、随分と心配をかけてしまったようだ。颯太は俺の手を引いて座席に座らせる。
「心配かけてごめん。友達が助けてくれたから大丈夫だった」
「友達…?」
「あ、颯太に紹介したことなかったよな。大学の友達の凛」
「こんにちは~お邪魔します」
凛に対して颯太はぺこりと会釈している。
友達がメンバーに会っているのはなんだか不思議な感覚だ。凛も乗り込むと車が走り出す。
「この度は瑠衣くんが大変お世話になりました」
颯太は俺をシートに座らせた時の流れでそのまま手を握っている。颯太のスキンシップには慣れっこだが凛がいるので少し気まずい。さりげなく颯太の手から逃れようとするが、颯太は気がついていないのか離してくれる気配がない。
「颯太くん、こいつちゃんと見張っといた方がいいっすよ~」
「おい、見張るってなんだよ!」
「だって1年の頃から瑠衣ふらふらしたと思ったら、なぜか毎回トラブル抱えて戻ってくるんだもん」
大学に入ってすぐ、凛が言うようによくトラブルに巻き込まれていた。でも一つ言わせて欲しいのが俺がトラブルを起こしていたわけではない。主に凛が女子からモテすぎるせいでトラブルに巻き込まれていたのだ。凛は問題をしれっと回避し、結果として俺ばかりトラブルに巻き込まれていた。
「いや、それ俺のせいじゃなくてお前のせいだろ!あとどっちかっていうと俺の方が颯太の保護者だから」
「へー、そうなんだ」
凛の返事は明らかに信じていない時のやつで腹立たしい。
「お前信じてないだろ?」
「うん」
「颯太は見た目が大人っぽいだけで中身はまだまだ子供だから」
「え、そうなの?意外~」
「そうそう。なんせ颯太が夜寂しがって一緒に寝たがるから仕方なく俺が一緒に寝てあげてるんだから」
「「え?」」
佐藤さんと凛の声が重なる。
「うん?」
「あ、相変わらず瑠衣と颯太は仲良しだな!」
佐藤さんが心なしか焦っているような気がする。
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