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第20話 葛藤
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配信終了後帰宅し、約束通り颯太と2人で寝っ転がりながら俺はいつも通りエゴサをする。
『1時間も配信してたのに颯太と瑠衣が話さないなんて』
『【悲報】颯瑠衣ついに運営STOP』
『颯太と瑠衣ついにBL営業やめた?』
『瑠衣が途中で話すのやめたとき颯太っていいかけてない?』
前回配信の終わり方が俺の泥酔動画エンドだったことや、普段との様子の違いから颯太とのことが沢山言われているが、疎遠作戦初回にしては悪くなかった。こういった反応も、作戦を継続していけば徐々に収まっていくだろう。
「瑠衣くん終わった?」
「おー」
「今日の配信、満足した?」
「うーん、良い感じだったけどまだまだだな」
俺は壁側を向いて寝転んでおり、颯太には背を向けているので颯太の様子は見えないが、後ろから俺のスマホを覗き込んでくる気配がする。
「…やっぱりむかつく」
そう呟くと、颯太は突然俺の首に噛みついてきた。
「痛っ」
一瞬何が起こったかわからず硬直していると、その隙に腕を回し抱きついてくる。
「ちょっ、邪魔、離せ」
そこそこしっかりと噛まれたのか、颯太に噛まれたところがヒリヒリする。
「噛んだとこ赤くなってる」
そう言われ俺は顔面蒼白になる。
明日のスケジュールは初めて1人でやる雑誌の撮影だ。
俺の焦りを知ってか知らずか颯太は噛んだところをぺろりと舐めた。
「ひゃっ…や、やめろ!」
なんとか颯太の拘束から逃れようと抵抗するがびくともしない。
「瑠衣くん首弱いよね」
俺の抵抗はむなしく、颯太は背後から再び舌を這わせる。
「っ…ぐ、触んなぁ」
颯太は俺の腕を片手で器用に一つにまとめあげ抑えつけた。全力で抵抗したにも関わらずあっさりといなされてしまい、少しばかり残っていた俺の男としてのプライドはズタボロだ。
「…怖い?」
無表情で俺を見下ろすこの男が今何を考えているのかわからない。
「は?怖いわけないだろ」
完全に力負けしているこの状況では強がりのようで我ながらとてもださいが、紛れもなく本心だった。
俺の上でしばらく静止していた颯太は大きくため息をつくと、きつく押さえつけていた腕の拘束を解いた。
そのまま重力に任せて俺に覆い被さってくる。「重い」とか「邪魔だ」とか言いたいことはたくさんあったが、俺から何か話すことはしなかった。
体感的にはかなりの時間が過ぎたころ、ようやく颯太が口を開いた。
「…俺瑠衣くんが他の人と話して、他の人と仲良くして、他の人を大切にするの、本当に嫌」
「え?」
「それでもこれまではオフの時間も仕事中もずっと一緒だったから我慢できたけど、これからは俺以外のメンバーといる瑠衣くんの姿が増えて、それが色んな人の記憶に残ってくと思うと、頭おかしくなりそう」
颯太は漸く俺の上から降り、横からぎゅっと抱きしめてくる。俺はさっきからずっとされるがままなので、まるで枕にでもなった気分だった。
颯太の言葉を聞いてぐるぐる頭で解決法を考えるが、疲れている頭では何も良いアイデアが浮かばない。
「…わかった、疎遠作戦はやめよう」
颯太がこんなにも疎遠作戦を嫌がるなら、強行はできない。
「え?いいの?」
「うん、嫌なことさせたいわけじゃないし」
こうして疎遠作戦は大きな成果を出すことができないまま終了した。
『1時間も配信してたのに颯太と瑠衣が話さないなんて』
『【悲報】颯瑠衣ついに運営STOP』
『颯太と瑠衣ついにBL営業やめた?』
『瑠衣が途中で話すのやめたとき颯太っていいかけてない?』
前回配信の終わり方が俺の泥酔動画エンドだったことや、普段との様子の違いから颯太とのことが沢山言われているが、疎遠作戦初回にしては悪くなかった。こういった反応も、作戦を継続していけば徐々に収まっていくだろう。
「瑠衣くん終わった?」
「おー」
「今日の配信、満足した?」
「うーん、良い感じだったけどまだまだだな」
俺は壁側を向いて寝転んでおり、颯太には背を向けているので颯太の様子は見えないが、後ろから俺のスマホを覗き込んでくる気配がする。
「…やっぱりむかつく」
そう呟くと、颯太は突然俺の首に噛みついてきた。
「痛っ」
一瞬何が起こったかわからず硬直していると、その隙に腕を回し抱きついてくる。
「ちょっ、邪魔、離せ」
そこそこしっかりと噛まれたのか、颯太に噛まれたところがヒリヒリする。
「噛んだとこ赤くなってる」
そう言われ俺は顔面蒼白になる。
明日のスケジュールは初めて1人でやる雑誌の撮影だ。
俺の焦りを知ってか知らずか颯太は噛んだところをぺろりと舐めた。
「ひゃっ…や、やめろ!」
なんとか颯太の拘束から逃れようと抵抗するがびくともしない。
「瑠衣くん首弱いよね」
俺の抵抗はむなしく、颯太は背後から再び舌を這わせる。
「っ…ぐ、触んなぁ」
颯太は俺の腕を片手で器用に一つにまとめあげ抑えつけた。全力で抵抗したにも関わらずあっさりといなされてしまい、少しばかり残っていた俺の男としてのプライドはズタボロだ。
「…怖い?」
無表情で俺を見下ろすこの男が今何を考えているのかわからない。
「は?怖いわけないだろ」
完全に力負けしているこの状況では強がりのようで我ながらとてもださいが、紛れもなく本心だった。
俺の上でしばらく静止していた颯太は大きくため息をつくと、きつく押さえつけていた腕の拘束を解いた。
そのまま重力に任せて俺に覆い被さってくる。「重い」とか「邪魔だ」とか言いたいことはたくさんあったが、俺から何か話すことはしなかった。
体感的にはかなりの時間が過ぎたころ、ようやく颯太が口を開いた。
「…俺瑠衣くんが他の人と話して、他の人と仲良くして、他の人を大切にするの、本当に嫌」
「え?」
「それでもこれまではオフの時間も仕事中もずっと一緒だったから我慢できたけど、これからは俺以外のメンバーといる瑠衣くんの姿が増えて、それが色んな人の記憶に残ってくと思うと、頭おかしくなりそう」
颯太は漸く俺の上から降り、横からぎゅっと抱きしめてくる。俺はさっきからずっとされるがままなので、まるで枕にでもなった気分だった。
颯太の言葉を聞いてぐるぐる頭で解決法を考えるが、疲れている頭では何も良いアイデアが浮かばない。
「…わかった、疎遠作戦はやめよう」
颯太がこんなにも疎遠作戦を嫌がるなら、強行はできない。
「え?いいの?」
「うん、嫌なことさせたいわけじゃないし」
こうして疎遠作戦は大きな成果を出すことができないまま終了した。
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