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第10話 疎遠計画
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帰りの車で颯太の膝に寝っ転がりながら今日のサイン会レポのエゴサをしている。
『瑠衣くんとのサイン会レポです!
----
私:メンバーで付き合うならだれ?
瑠衣: うーん、春くんかな!颯太はまだ子供だから難しいんだよね…
私:そうなんだ!ありがとう!
----
颯太まだ高校生だもんね><でもやっぱり颯瑠衣両想いみたいでよかった♡』
…脚色がすごい。でもファンの子達がサイン会のレポを脚色するのは今に始まった事ではないし、真っ赤な嘘を書き込む人も多いくらいなのでこのくらいなら特に怒りも湧かない。
ただ、レポのリプ欄は結構壮絶だった。
『やっぱり2人は付き合ってます』
『颯太と春両方手放さない高等テクニック』
『瑠衣の本命は結局誰なの!?』
『颯太を腐妄想に巻き込むのやめてほしい…』
『またカップル営業してるの?』
うーん…また揉めてるな。
俺は無事デビューを勝ち取ったわけなので、メンバーとの仲良しスキンシップ計画は功を奏したと言えるだろう。
ただ、代償としてデビュー後もなにかコンテンツが出るたびにファンの子が誰と誰が一番仲良いとか、そういうよくわからない喧嘩を始めるようになってしまった。
また、最近では『瑠衣はメンバーを仲良し営業の道具にしている』とかも言われ始めている。
今は誓ってそんなことはないが、サバイバル中はまさに自分の順位上げのために颯太や他の練習生を利用していたわけなので、図星でもあり心が痛かった。
そしてそういった争いが加速するにつれて、だんだん俺自身に対する質問や応援メッセージも減ってきた気がする。
「うん、俺たちしばらく絡むのやめよう」
何が楽しいのかわからないがご機嫌で俺の頭を撫でていた颯太の手が止まり表情が凍りついた。
「え?」
「お前が知ってるかわからないけど、エゴサすると最近ますます俺たち2人の組合せの人気がすごくて、別のメンバーと仲良くすると若干荒れたり、付き合ってるって言われてたりするんだよ。あと最近ファンに過激な人も多くてblみたいなのを勝手に描いてる人もいるみたいで、正直怖いんだよな。だからここらで一回絡むのやめた方がいい気がする」
颯太は普段エゴサをよくする方ではないので、今自分たちのファンがどんな感じなのか知らないかもしれないが、ちゃんと説明したらわかってくれるはずだ。
「嫌だ」
「別に本当に仲悪くなるわけじゃなくてしばらくの間素知らぬ顔するんだよ」
「絶対に嫌!」
「そこをなんとか…」
このモードになった颯太を説得することは簡単ではない。だが俺はこの半年で悪知恵を身につけた。
俺は颯太の膝から起き上がって顔を近づけて耳元に話しかける。
「颯、俺がずっと一緒にいるのは颯じゃん?今日帰ったら観たがってた映画見るし一緒に寝るでしょ?それで良くない?」
颯太の耳が真っ赤になるのが見てわかる。
半年のエゴサで得た成果。
颯太は俺の顔がめちゃくちゃ好きらしい。
ファンの子のツイートで知ったことだが、サバイバル中のイケメンだと思う練習生で俺を選んでいたし、よく俺のパフォーマンス動画を見ているところを見かける。
それに言われてみると何気ないタイミングで顔をよく見られている気がする。
俺もデビュー前は好きなアイドルは性別問わずのダンス動画やバラエティ動画をよく見て癒されていたし気持ちは理解できた。
本人に確認したわけではないが、勝手に自分のファンが近くにいたような気持ちになって嬉しかった。
そして、それ以来たまに顔を近づけては純朴なファンボーイ(?)を弄んでいるのだ。
「ね?少しの間だけでいいから」
「…嫌だ」
「うん。まずは1ヶ月くらい」
「1週間」
「いや1週間じゃ意味ないでしょ」
「…2週間」
「わかった。3週間後のファンコンサートが終わるまで!」
長い沈黙の末颯太が折れた。
「はぁ…わかった。でも明日予定してる2人のインスタライブは一緒にやるよね?」
「え?」
「もう2人でやるって前回言ってるし、ファンの人たちも楽しみにしてるのに今更キャンセルしないよね?」
大きな目を可能な限り細めてジト目でこちらを責めるようにみてくる。たしかに直前でのキャンセルは心が痛いな…
「あー…わかったわかった。明後日から3週間後のファンコンサートまででいいから!」
こうして颯太と疎遠計画が始まった。
『瑠衣くんとのサイン会レポです!
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私:メンバーで付き合うならだれ?
瑠衣: うーん、春くんかな!颯太はまだ子供だから難しいんだよね…
私:そうなんだ!ありがとう!
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颯太まだ高校生だもんね><でもやっぱり颯瑠衣両想いみたいでよかった♡』
…脚色がすごい。でもファンの子達がサイン会のレポを脚色するのは今に始まった事ではないし、真っ赤な嘘を書き込む人も多いくらいなのでこのくらいなら特に怒りも湧かない。
ただ、レポのリプ欄は結構壮絶だった。
『やっぱり2人は付き合ってます』
『颯太と春両方手放さない高等テクニック』
『瑠衣の本命は結局誰なの!?』
『颯太を腐妄想に巻き込むのやめてほしい…』
『またカップル営業してるの?』
うーん…また揉めてるな。
俺は無事デビューを勝ち取ったわけなので、メンバーとの仲良しスキンシップ計画は功を奏したと言えるだろう。
ただ、代償としてデビュー後もなにかコンテンツが出るたびにファンの子が誰と誰が一番仲良いとか、そういうよくわからない喧嘩を始めるようになってしまった。
また、最近では『瑠衣はメンバーを仲良し営業の道具にしている』とかも言われ始めている。
今は誓ってそんなことはないが、サバイバル中はまさに自分の順位上げのために颯太や他の練習生を利用していたわけなので、図星でもあり心が痛かった。
そしてそういった争いが加速するにつれて、だんだん俺自身に対する質問や応援メッセージも減ってきた気がする。
「うん、俺たちしばらく絡むのやめよう」
何が楽しいのかわからないがご機嫌で俺の頭を撫でていた颯太の手が止まり表情が凍りついた。
「え?」
「お前が知ってるかわからないけど、エゴサすると最近ますます俺たち2人の組合せの人気がすごくて、別のメンバーと仲良くすると若干荒れたり、付き合ってるって言われてたりするんだよ。あと最近ファンに過激な人も多くてblみたいなのを勝手に描いてる人もいるみたいで、正直怖いんだよな。だからここらで一回絡むのやめた方がいい気がする」
颯太は普段エゴサをよくする方ではないので、今自分たちのファンがどんな感じなのか知らないかもしれないが、ちゃんと説明したらわかってくれるはずだ。
「嫌だ」
「別に本当に仲悪くなるわけじゃなくてしばらくの間素知らぬ顔するんだよ」
「絶対に嫌!」
「そこをなんとか…」
このモードになった颯太を説得することは簡単ではない。だが俺はこの半年で悪知恵を身につけた。
俺は颯太の膝から起き上がって顔を近づけて耳元に話しかける。
「颯、俺がずっと一緒にいるのは颯じゃん?今日帰ったら観たがってた映画見るし一緒に寝るでしょ?それで良くない?」
颯太の耳が真っ赤になるのが見てわかる。
半年のエゴサで得た成果。
颯太は俺の顔がめちゃくちゃ好きらしい。
ファンの子のツイートで知ったことだが、サバイバル中のイケメンだと思う練習生で俺を選んでいたし、よく俺のパフォーマンス動画を見ているところを見かける。
それに言われてみると何気ないタイミングで顔をよく見られている気がする。
俺もデビュー前は好きなアイドルは性別問わずのダンス動画やバラエティ動画をよく見て癒されていたし気持ちは理解できた。
本人に確認したわけではないが、勝手に自分のファンが近くにいたような気持ちになって嬉しかった。
そして、それ以来たまに顔を近づけては純朴なファンボーイ(?)を弄んでいるのだ。
「ね?少しの間だけでいいから」
「…嫌だ」
「うん。まずは1ヶ月くらい」
「1週間」
「いや1週間じゃ意味ないでしょ」
「…2週間」
「わかった。3週間後のファンコンサートが終わるまで!」
長い沈黙の末颯太が折れた。
「はぁ…わかった。でも明日予定してる2人のインスタライブは一緒にやるよね?」
「え?」
「もう2人でやるって前回言ってるし、ファンの人たちも楽しみにしてるのに今更キャンセルしないよね?」
大きな目を可能な限り細めてジト目でこちらを責めるようにみてくる。たしかに直前でのキャンセルは心が痛いな…
「あー…わかったわかった。明後日から3週間後のファンコンサートまででいいから!」
こうして颯太と疎遠計画が始まった。
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