人気欲しさにBL営業なんてするんじゃなかった

第9話 デビュー

その後のことは聞かないでほしい。俺は恥ずかしさから自分でもわかるくらい顔が真っ赤になり、颯太から逃げて春くんの後ろに隠れていた。

そしていよいよ番組も終盤に差し掛かり、運命の順位発表の時間となった。

発表の盛り上がりを考慮して、第7位は最後に発表するらしい。

「第6位　宮本咲人」
「第5位　進藤大河」
「第4位　蒼悠真」

次々と一緒に練習してきた仲間の名前がよばれていき、俺の心臓は止まりそうだった。

「第3位　関谷春」

春くんが呼ばれた時は正直驚いた。もちろんデビューしてほしいと願っていたが、順位的にはこれまでずっとデビュー圏外だったためだ。

「春くんおめでとう…」

すでに半泣きになりながら抱きつく俺を慰めるように頭をポンポンしてくれた。

「瑠衣、先に行ってる」

「うん」

春くんは先にと言ったが、俺はデビュー組に入れる自信は全くなかった。

「第2位　一ノ瀬翔」

「第1位　先島颯太」

颯太は結局一度も他の練習生に一位を譲ることなくデビューした。

ビジュアル、年齢、パフォーマンス、何をとっても嫌味なくらい完璧なのに、性格が親しみやすく可愛い弟として練習生のみんなに愛されていた。他の練習生からみても文句のつけようもない一位だった。

「颯太、おめでとう」

一位で名前を呼ばれたことをまだ信じられないようで、颯太はボーッとしていた。

颯太は番組の顔、プロデューサーにも気に入られてるからデビュー安定圏、順位が高くて羨ましい、そう言われているのを数えきれないほど耳にした。颯太には颯太なりの一位にしかわからないプレッシャーや苦しさがあっただろう。

「お疲れ様」

俺の声を聞くと安心したのか颯太は目に涙を溜めて抱きついてきた。

「瑠衣くんがデビューしなかったら俺が養うから」

「おい縁起でもないこと言うな」

番組ディレクターが尺の都合で急かす中、俺から離れようとしない颯太を無理やり引き剥がして一位の席に送り出す。

尺が押してしまったのか、7位の発表は案外あっさりとしていた。

「そして、7TEMP最後のメンバーとなる第7位は…園坂瑠衣！」

夢のようだった。全身から力が抜けた。
数ヶ月間のオーディション番組の中で毎日寝不足になりながら練習し、アンチの言葉に苦しみながらもなんとか生き残るために必死だった日々が無駄にならず報われた事実が本当に嬉しかった。

興奮で震えが止まらない両足をなんとか動かしてデビュー組のみんなのところに向かっていく。

こうして俺のアイドル人生は幕を開けた。