人気欲しさにBL営業なんてするんじゃなかった

第8話 大型犬

そしてオーディション番組最終回。ついに7人のデビュー組が決まる生放送が始まった。

俺だけでなくみんなが明らかに落ち着かない様子だった。

練習していたパフォーマンスは無事終了し、あとは順位発表を残すのみである。

番組上はCMが入り、少しの間観客の前で練習生が自由に過ごして良い時間が訪れた。

生放送中のリアルタイムでも投票は行われているため、俺はこの時間に少しでもファンにいい印象を与えて一票でも多い票が欲しかった。

「颯太！」

「どうしたの？」

近くでファンに手を振っている颯太の手を掴み仲良しアピールを試みる。とりあえず会場の人に颯太と仲良いところを見せないと。

「このまま会場回るぞ！」

「ええ、会場広いし疲れるよ…」

「うるさい！行くぞ」

手を引く俺とその場に止まりたがる颯太の図はまさに散歩を嫌がる大型犬と飼い主のようだった。

引っ張り合いを続けても埒が開かないので、一旦引っ張るのをやめると颯太がみんなに聞こえないように耳元で話しかけてきた。

「そんな面倒なことしなくても、いい方法あるよ」

「いい方法？」

「こうすればいいんだよ」

ぺろっ

内緒話の流れで颯太に耳を舐められたと頭で理解するまでにおそらく5秒くらいはかかったと思う。