人気欲しさにBL営業なんてするんじゃなかった

第1話 サイン会

「瑠衣くんはメンバーの中なら誰と付き合いたい？」

この手の質問をサイン会でファンの子にされた回数は最早数えきれない。初めは「女の子が好きなのにメンバーに付き合いたいやつなんているわけない」と思っていたが、デビューして半年も経てば慣れたものだ。

目の前の綺麗なお姉さんが目を輝かせながら聞いてくる。
だいたいこの手の質問をする子は自分の推しを言ってほしいんだよな…

質問してきた人の特徴は、ブランドバッグに茶髪の巻髪、花柄スカート。何か推し特定できるアイテムがあればいいがない場合はなんとなく服装から予測するしかない。こういう年上のお姉さんタイプは春くん推しが多いはず。

「付き合いたいメンバー…優しいし春くんかな！でも俺はあなたの方が…」

「えー！！そうなの！？意外…絶対颯太だと思ったのに」

決め台詞を遮られてしまった。俺単体には興味ないのが透けていて少し、いや正直とても悲しかった。お姉さんは颯太推しだったようだ。

「颯太は子供だからだめ！！」

決め台詞を遮られた腹いせにお姉さんの推しは褒めてやらないことにした。