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19話 本当はプロポーズしたかった
しおりを挟む翌朝、リオンが起きるとユウキはいなかった。
どこ行ったんだろ…10時か…戻って来るよね…?
リオンが着替えて準備をしていると11時前5分にユウキが帰って来た。
「ユウキ、どこ行ってたの⁈」
「あっ…ちょっと…散歩」
「もうっ!心配したじゃない」
「ごめんっ。じゃ行こっか」
ユウキはリオンに渡すプレゼントを買いに行っていたのだ。
車に乗るとユウキがナビを付けた。
「どこに行くの?」
「ナビ通りに行って」
「うん…」
そして途中で昼食を済ませ15時過ぎに目的地に着いた。
「海…すごくキレイ」
「リオン、車はそこ入った所に停めて」
「えっ…う…うん」
そこは海の目の前にあるホテルだった。
車を降りるとホテルに入って行きフロントに向かった。
「ホテルとったの⁈」
「うん」
カードキーをもらい部屋に行った。
部屋に入ると窓一面、海だった。
「うわーっ、何この景色」
「あの日このホテルを予約してたんだ」
「そうだったんだ」
「18時にレストラン予約したから、それまで部屋でゆっくりしよう」
「うん…」
ユウキはここで消えてしまうんだ…
いなくなったら私…どうすればいいの…?
…あと8時間半…
リオンは考えないようにしようとしたが、時間が経つにつれ辛さが増してきた。
でも必死で涙を堪えて笑顔でいた。
2人がソファーで座っているとユウキはリオンの膝の上に横になった。
「リオンの膝枕、久しぶりだなー」
「うん。そうだね」
リオンはユウキの頭を優しく撫でていた。
ユウキも必死で涙を堪えていた。
「テレビでも…観よっか」
「うん」
気を紛らわす為にテレビをつけるが、2人共テレビの内容など全然入らずただ観ているだけだった。
「リオン、残りの時間…笑っていような」
「ユウキ…うん。そうしよう…」
そして18時になり2人はホテル内のレストランに行った。
「コースにしたの?高いんじゃない?」
「大丈夫。乾杯しよう」
「うん」
「リオンのこれからの幸せに…乾杯」
…ユウキ…
「ほらっ、乾杯」
「…うん。乾杯」
コースの料理が運ばれ2人は楽しく会話をしながら食べた。
「あー、美味しかった」
「まだあとデザートがくるよ」
「そっか」
リオンは腕時計をチラッと見た。
もう20時半…
「リオン…これ」
ユウキは小さな箱をリオンの目の前に置いた。
「え?何これ?」
「開けてみて」
「…うん」
箱を開けるとネックレスが入っていた。
「え…」
ユウキはリオンの後ろに行きリオンの首にネックレスを着けて席に戻った。
「プレゼントだよ」
「ユウキ…ありがとう。私からは何も用意してないっ」
「いいんだよ。本当は渡すの指輪だったんだけどね」
「…それって…」
「今だから言うけど実はあの日、ここでリオンにプロポーズするつもりだったんだ」
「ユウキ…」
「だけどもうプロポーズなんて出来ないでしょ…だからネックレスにした。それ気に入らない?」
「…ううん。気に入った」
「よかった…」
リオンはネックレスを握りしめ涙を堪えた。
「リオン…1つ聞いていい?」
「うん…」
「あの日…」
「…うん」
「あの日ここでオレがプロポーズしてたら…受け入れてくれた?」
「…もちろん…受け入れたよ」
するとユウキは笑顔になった。
「…それ聞けて安心した」
そして2人は店を出た。
21時15分…
時間は刻々と過ぎていく…
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