13 / 21
12話 助けてくれた人
しおりを挟む翌朝、リオンが目覚めるとユウキがベッドの横に立っていた。
「ユウキ、おはよう」
「おはよ」
「ずっとそこに?」
「うん。リオン…ちょっと戻って来るよ」
「え?戻るって?」
「あの世に…」
「あの世って…何で⁈」
「ちょっと用があって」
「戻って来るんでしょ?行ったっきり戻って来ないってことはないよね?」
「戻って来るよ」
「いつ?」
「それは…なるべく早く戻るようにする」
「本当?」
「うん」
「ユウキ…また会えるよね?」
「うん。信じて」
「…わかった。待ってるから」
そしてユウキは消えた。
それからユウキがいなくなって5日が経った。
この日の夜、リオンは不安で眠れなかった。
ユウキ…戻って来るよね…?
それとももう会えないの?
翌日、リオンは寝不足で会社へ行った。
「名井野さん、今日は飲み会だからねっ」
「あっ…そうでしたねっ」
この日はリオンの部署の飲み会だった。
すっかり忘れてた…
あんまり寝てないからキツイなぁ…
仕事が終わり、全員でお店に行った。
飲み始めて1時間後、まさかの部長が来た。
えっ…どうして⁈
「村山部長っ、こっちです」
すると村山部長はリオンの隣に座った。
「みんな!◯◯支店の村山部長だ」
社員たちは村山部長に挨拶した。
「突然お邪魔してすみません。ご一緒していいですか?」
「もちろんですっ」
「私が誘ったんだ。名井野さんの元上司だしね」
「名井野さん久しぶり」
「…お久しぶりです」
リオンは前の職場の嫌な思い出が甦ってきて、お酒が進まなかった。
そして飲み会が終わり、全員店の外に出た。
「じゃ同じ方向の人はタクシーで一緒に帰ろう」
社員たちは何人かに分かれタクシーを拾い始めた。
「村山部長の家はどっち方面ですか?」
「私は名井野さんと同じ方向なので一緒に帰ります」
「えっ」
「わかりました。じゃ名井野さんは明日休みだからゆっくり休んで」
そう言うと課長はタクシーを拾い帰って行った。
「名井野さん、帰ろうか」
村山部長は近くにいたタクシーを捕まえた。
「方向…一緒じゃありませんよね?」
「いいから、送らせて」
すると村山部長はリオンをタクシーに乗せた。
「元気そうでよかった」
「部長も」
「オレは元気じゃない。名井野さんがいなくなって寂しいよ」
よく言うわ…
「名井野さんがうちの会社にとって、どれだけ大事な存在かがわかったよ…」
「みんな私がいなくなって、清々してるんじゃないですか?」
「そんなことないし」
「あっ、運転手さん…その辺で停めて下さい」
「はい」
リオンが降りると村山部長も一緒に降りてきた。
「どっ…どうして部長まで」
「家の前まで送らせて」
「えっ、そんな結構ですっ」
「いいでしょ。それ位させてよっ」
村山部長はリオンの手を掴んだ。
「何するんですかっ」
「好きなんだっ」
「やめて下さいっ」
村山部長はリオンに抱きつこうとすると後ろから誰かが村山部長の腕を掴みリオンから離した。
「何だ!お前っ」
「えっ…ユ…ユウキ⁈」
助けてくれたのはユウキだった。
13
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる