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3話 アプローチ
しおりを挟む翌日、仕事が終わりリオンは他の社員にバレないように会社の裏に行き、村山部長とタクシーでお店に行った。
2時間後、接待は終わり取引先の人は帰って行った。
「それでは私も帰りますね」
「あっ…名井野さんっ」
「はい」
「よかったらこれから居酒屋でも行かない?」
「今から…ですか?」
「うん。あんまり食べてないでしょ?オレも話してばっかりで食べてないから」
確かにそうだけど…
「1人で行くのも何だし、ちょっとだけっ」
「わかりました」
2人は店を出て近くの居酒屋に入った。
村山部長はビール、リオンはハイボールを注文した。
「料理…頼み過ぎたかな」
「そっ…そうですね」
「まっいっか。とりあえず今日はお疲れ様。おかげで助かったよ。ありがとう」
「お役に立ててよかったです」
喉が渇いていたリオンはハイボールをグイグイ飲んだ。
「おおっ!飲みっぷりいいねー」
「あっ…喉が渇いていましたのでっ」
「そっか。遠慮せずどんどん飲んでね」
ストレスが溜まっているリオンは次々に飲み出した。
「名井野さんってお酒強そうだね」
「まぁ…弱くはないと思います」
「昨年、会社の飲み会の時あんまり飲んでなかったよね?」
「あ…そうでしたかね?」
会社の飲み会なんて…
酒が美味しい訳がない…
「オレ…お酒飲むの好きだから今度また飲みに行こうよ」
「…でも、それはちょっと…」
「あっ…嫌か」
「、、、、」
「名井野さんって、どのくらい彼氏いないの?」
「……3年です」
「3年も?モテそうなのにね。彼氏欲しくないの?」
「…忘れられない人がいるので」
「もしかして…その3年前まで付き合ってた人のこと?」
「…はい」
「忘れられないってことは名井野さんがフラれたってこと⁈名井野さんをフルなんて…」
「フラれたんじゃありません」
「え?そうなの?じゃどうして」
「それは…」
「お互い好きなのに別れたってこと?」
「…彼は…もういないんです…」
「えっ…」
「そういうことです」
「ごっ…ごめん。そうとは知らずに…」
「いえ…」
一気に空気が重くなり、村山部長は慌てて話題を変えた。
「名井野さんって…趣味は何?」
「趣味ですか?特には…でも本読むの好きです」
「本かぁ。いいね」
「部長は?」
「オレはゴルフとジムかな。料理するのも好き」
「料理するんですか?」
「するよ。1人暮らし長いし」
「部長は…彼女は?」
「いない。1年位いないな」
「部長はモテるから彼女とかすぐに出来そうですね」
「でも相手から言われて付き合っても長続きしない。だから今まで半年も持たなかった。自分から好きにならないとダメなんだ」
「そうですか」
「ただ、自分から好きになった女性は今まで何人かいたけど振り向いてもらえなかった。だから今回は…」
「、、、、」
「今回は振り向かせるよ」
「部長はどんな人がタイプなんですか?」
「名井野さんみたいな人」
「え…」
「本当だよ。見た目も性格もねっ」
なっ…何言ってるの…
部長…酔ってる…?
「ハハハ。部長酔ってるでしょ」
「え」
「顔赤いですもん」
「…そっ…そうだね」
それから1時間後、2人は店を出た。
「ごちそうさまでした」
「うん」
「それじゃ…また明日」
リオンがタクシーを拾おうとすると村山部長が引き止めた。
「えっ?」
「あっ…あの…ライン…交換しようよ」
「ライン?個人のですか?」
「うん。会社の携帯はグループラインだし個人的に何か悩みでもあれば聞くし」
「でも…個人の携帯ですよね」
「一応っ…社員全員の個人の携帯は登録してるから。名井野さんのだけオレ知らないから」
「そっ…そうなんですかっ?わかりました」
村山はリオンのラインを聞き出す為に嘘をついた。
そして2人はラインを交換した。
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