上 下
110 / 110
最終章

最終話 感動の結末

しおりを挟む

施設に着くとテルが出迎えた。


「中田くんっ‼︎」

「お久しぶりですっ」

「元気だったー?本当久しぶりだねっ」


今日初めて笑ったスミを見たシュンは隣で寂しそうにしていた。


「兄貴っ、1日ぶりですねっ」

「そうだね」 

「あゆみちゃんは元気にしてる?」

「元気ですよ。今部屋にいると思いますよ」

「じゃ後で会いに行こうかな」

「きっと喜びますよっ」

「とりあえずスミ、何か食べに行こう」

「、、、、」

「食べて来なかったんですかっ⁈」

「うん」

「じゃあ食事に行って来て下さいっ」

「うん。行こうスミ」

「行かない」

「え?お腹空いてないの?」

「中田くん、ここ食堂あるよね?」

「えっ…はい」

「私ここで食べるから、1人で行って来ていいよ」

「スミ…」

「あの…お2人…ケンカ中ですか?」

「いや…別に…じゃ俺、行って来るよ」

「僕も一緒に行きますっ」


シュンとテルは近くのレストランに行った。


「テルはお昼…食べたんでしょ?」

「はい。だからコーヒーだけでいいです。それにしても…どうして空港で食べて来なかったんですか?」

「そういう雰囲気じゃなかったし」

「やっぱりケンカしてるんですね。どうしてこんな大事な日に…」

「ここ最近ずっと連絡しなかった俺のせいだよ。それでスミを怒らせた…」

「あっ、そういう事かっ。ちゃんと謝りました?」

「もちろん」

「それで未だに怒ってるなんて…スミさん相当きてますね~」

「まだ14時か…長いなー」

「まぁ何とかなりますよっ。兄貴がフラれないように祈ってます」

「やっぱりその可能性あるよね?信用なくさせたもんな…」


シュンは次第に元気がなくなってきて食事を半分残してしまった。


「これから、夜までどうするんですか?」

「予定ではドライブする…つもり…」


施設に戻ると、結局スミはその気にならずシュンは子供と遊ぶ事になった。


その頃、テルはスミと食堂で話していた。


「兄貴から聞きました。まだ怒ってるんですねっ」

「…何かどう接していいのかわからなくて」

「連絡が取れなかったのって、今回が初めてでしょ?」

「そうだけど。昨日までここに居たんだよね?シュンはそんなに忙しかったの?」

「そりゃ忙しいってもんじゃないですよ。あっち行ったりこっち行ったりで、めちゃくちゃ大変そうだったし」

「そうなの⁈で…何でまた今日も福岡に来たの?」

「それは…まぁいいじゃないですかっ。スミさんを連れて来たかったんでしょう」

「、、、、」


スミはしっくりこなかった。


18時になりシュンはスーツ姿でスミを呼びに来た。


「どうしてスーツに着替えてきたの?」

「いやっ…子供と遊んで汚れたから」

「だからってスーツ?」

「とりあえず行こっ」

「どこに?」

「夕食だよ」


スミはシュンに連れられ歩いて海の方へ行った。
日も暮れ人は誰もいない。


こんなとこに食事する店あるのかな…


しばらく歩くとシュンが止まった。


「ここだよ」

「え…」


そこは全面ガラス張りの小さな建物だった。
中に入るとテーブルの上に料理とシャンパンが並べられていた。
クリスマスツリーも飾られてあった。


「え?ここ何?レストラン?誰もいないけど」

「今日だけのレストランだよ」

「どういう事?」

「いいから座って」

「う…うん」


シュンはグラスに水を注いだ。


「水だけど…乾杯しよ」

「うん」

「乾杯!」


見渡す限り白い砂浜と綺麗な海の景色にスミは見惚れていた。


「食べよっ」

「この料理…誰が作ったの?」

「ちゃんとシェフに作ってもらったよ」

「今日だけのレストランって?」

「この日の為だけに作った。俺たちは最初で最後の客だよ」

「えっ⁈作ったの⁈」

「うん。いいから食べよっ。冷めちゃうよ」

「あっ…うん」

「美味っ」


さすが…一流シェフだな…


「本当…美味しい…」


明かりはキャンドルが灯されており抜群のムードだった。


機嫌が悪かったスミが美味しそうに食べているのを見てシュンは安心した。


「全面ガラスだから、海に囲まれて食事してるみたい」

「うん」

「でも…何でこんなに人がいないの?来る途中も誰一人見かけなかったけど」

「そっ…そうだね」

「クリスマスだからみんな家で過ごしたりイルミネーションを見に行ってるのかな。あっ…プレゼント…何も準備してないっ」

「一緒に居てくれるだけでいいよ」

「、、、、」


シュンからは何もないのかな…


「シュン、お酒飲んでいいよ」

「いや…いいよ」

「私に合わせなくていいのに」

「今日はアルコールなしで…」

「そっか」

「スミ…」

「ん?」

「ごめんね。怒らせて」

「…ううん。私の方こそ大人げない態度とってごめん。シュンが忙しかったのは私の為だったんだね…」

「え…」

「ここ作るの大変そうだもん」

「あっ…う…うん」

「今わかった。これがシュンからのクリスマスプレゼントなんだね」

「え…」

「すごく嬉しいよ。こんな事なかなか出来ないし。ありがとう」

「…喜んでもらえて嬉しいよ」

「でもよくこんなお店作れたねっ。もう砂浜の上だし」

「職人さんにも手伝ってもらったから」


その時スミはシュンの手首に目がいった。


「ちょっと、この傷どうしたの⁈」


シュンは慌てて隠した。


「もしかして…ここ作ってて?」

「大した事ないよ」

「シュン…」


時刻は20時59分になった。

シュンは外を見ながら成功を祈った。


「どうしたの?」

「、、、、」


21時になった瞬間、目の前の真っ暗な景色が一気に青と白のイルミネーションに光り輝いた。


シュンはホッとした。


「えっ、なっ…何これ⁈」


シュンは立ち上がりスミの手を引いた。


「行こっ」

「えっ」


シュンとスミは光に囲まれながら砂浜を歩いた。


「信じられない…すごく綺麗…」


スミはシュンの計画だとすぐにわかった。


シュンが用意したベンチに2人は座り、感動しているスミにシュンは見惚れていた。


「今まで見たイルミネーションの中で1番だよ。光りが海に映って綺麗…」

「本当に綺麗…」

「ちょっとシュン?私ばっかり見てるでしょ」

「うん…」

「どうしたの?何か変だよっ」


シュンは今までの事が甦ってきて感極まっていた。


すると花火が上がった。


「えっ⁈うっ…嘘でしょっ⁈」


何発か上がって最後の一発は文字が浮かび上がった。


「、、、、」


その文字は “愛してる”    だった。


「シュ…シュン…」


そしてシュンは立ち上がり同時にスミも立ち上がった。
シュンはスミの目の前に立った。


「スミ…」

「うん」

「俺、スミと出逢えて本当によかったしスミに感謝してる」

「…うん」

「本当に色々あり過ぎて…ここまで時間がかかったけど…」

「え…」

「スミへの気持ちはずっと変わらない。これから先もずっと…」

「スミ、愛してる」

「シュン…」

「結婚しよう」

「、、、、」


スミは嬉しくて涙が溢れてきた。


そしてスミは頷いた。


「よろしくお願いします」


シュンは力いっぱいスミを抱きしめた。


「スミ…ありがとう」

「シュン…愛してる…」








プラグマとは、困難を耐え抜き時間をかけて成熟した愛のこと…



心から愛し合う2人の困難は並大抵の事ではなかった。

非情な出来事も過酷な状況も乗り越え、お互いへの愛を貫いてきた。



相手の為…守るべき小さな命の為に…






              ~END~






    
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

【完結】4公爵令嬢は、この世から居なくなる為に、魔女の薬を飲んだ。王子様のキスで目覚めて、本当の愛を与えてもらった。

華蓮
恋愛
王子の婚約者マリアが、浮気をされ、公務だけすることに絶えることができず、魔女に会い、薬をもらって自死する。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

全部、支払っていただきますわ

あくの
恋愛
第三王子エルネストに婚約破棄を宣言された伯爵令嬢リタ。王家から衆人環視の中での婚約破棄宣言や一方的な断罪に対して相応の慰謝料が払われた。  一息ついたリタは第三王子と共に自分を断罪した男爵令嬢ロミーにも慰謝料を請求する… ※設定ゆるふわです。雰囲気です。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...