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最終章

105話 対峙する2人

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「おっ…お前…」

「高っけーっ‼︎さすが12階だけあるな」

「どうしてこっちに来るんだ⁈」

「最後にお前と話したくてな…」

「、、、、」

「お前、死ぬの怖くねーのかよ」

「怖くないはずないだろ」

「だったら何で…」

「自分が死ぬ事よりもスミを失う事の方が怖いから」

「お前っ…」

「スミを守る為なら何だって出来る。いや…スミと子供の為…」

「お前、子供の顔見たくないのかよ」

「見たいに決まってるだろ」

「なのに死んでもいいんだな」

「スミの為なら死んでもいい。だけどスミはここから出て行ってないし、お前はスミに何するかわからない。だから…」

「だから…何だよ」

「俺が死ぬ時はお前も道連れだ」

「なるほどね~」


裕二はゆっくりと後退りしながらシュンから離れて行った。
シュンが近づこうとすると裕二はナイフを振り回した。


「近づいたら俺がお前を突き落とすぞ‼︎」

「シュン!」


スミは泣きながら必死にもがいていた。


「スミ!お願いだからここから出て行ってくれっ」

「嫌よっ‼︎シュン!私とこの子を置いていくのっ⁈」

「…ごめん」


シュンには考えがあった。
何とかして裕二を説得することを。
最悪…無理なら裕二と一緒に飛び降りる事を覚悟した。


「お前、バカか」

「お前から言われたくないよ‼︎」


すると痺れを切らした刑事たちが屋上に上がって来た。


「おっ、おいっ!そこから降りなさいっ‼︎」

「…もう来たのかよっ」

「来ないで下さいっ‼︎」


刑事は立ち止まってスミの両足が縛られているネクタイを解いた。


「大丈夫ですか⁈」


スミは立ち上がった瞬間、シュンの元へ行こうとした。


「来るなっ‼︎来たら落とすぞっ‼︎」

「えっ」


シュンはスミに目で合図し、スミは仕方なくその場に立ち止まった。


「あーあ、どっちにしても俺はもう終わりか」

「もう諦めろ」


スミの安全を確信したシュンは先端から離れた。


「お前もこっちに来いよ」

「、、、、」

「おいっ」

「地曽田…お前にとって幸せって何だ?」

「え?」

「何だよ」

「愛する人がいることだよ」

「愛する人がいることか…やっぱりお前みたいになれないわ…」

「いいからこっちに来るんだ」


シュンは裕二に手を差し伸べ、裕二の手を握った。


「何でそこまで出来るんだよ」


裕二の目には涙が溜まっていた。


「お前っ…」

「俺は…俺は…お前が羨ましかったんだな…やっとわかったよ」

「…え」

「だから…お前のこと憎かったんだな」

「わかったから…」


シュンは裕二の手を引き寄せるが、裕二は動こうとしない。


「お前っ、まさか…初めからこうなる事わかってて…」

「お前と一緒に死のうと思ったけど子供がいるんじゃなぁ~」

「ダ…ダメだ‼︎生きてちゃんと罪を償え」


その時、裕二はシュンの手を離した。


「スミと幸せにな」

「おっ…岡田っ…」

「死んで罪を償うよ」

「え…」

「今まで…悪かった」


裕二は初めて偽りなく言った。
そして微笑みながら裕二は飛び降りた。


「岡田ーっ!!」









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