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95話 兄に会いたい
しおりを挟むシュンは病院に着くと、まずは担当医にあゆみの現状を聞きに行った。
「順調ですよ。来週辺りから薬だけで大丈夫だと思います」
「じゃあ…退院させても大丈夫って事ですか?」
「月1回定期的な検査は必要ですが無理をしなければ大丈夫です」
「わかりました」
シュンはあゆみが居る病室に行った。
中へ入るとあゆみは絵を描いていた。
「あゆみちゃん」
「あっ…シュンお兄ちゃん」
「何してるの?」
シュンはあゆみが描いている絵を覗いて見ると、女の子と男が手を繋いでいる絵だった。
「これ…」
「あゆみとお兄ちゃんだよ。昨日来なかったから今日来るんでしょ?だからお兄ちゃんにこの絵をプレゼントするのっ」
「…あゆみちゃん」
「シュンお兄ちゃん1人で来たの?お兄ちゃんは?」
「…うん」
「あー、お兄ちゃん早く来ないかなー。これからお兄ちゃんとずっと一緒に居られるんだよね?」
「あのね、あゆみちゃん…」
言わないとな…
「その箱なぁに?」
「あっ…これ…あゆみちゃんのお兄ちゃんからだよ」
「えーっ、お兄ちゃんから?」
あゆみは箱を開け靴と髪留めを取り出した。
「うわーっ、可愛いっ」
あゆみは体を起こし早速、靴を履いた。
「シュンお兄ちゃん、髪留めてー」
シュンはあゆみの髪に髪留めを着けてあげた。
あゆみは鏡を見てはしゃいでいた。
その姿を見ていられなくなったシュンは一旦、病室を出た。
何て言えばいいんだ…
シュンが頭を抱えているとスミから電話が入った。
「もしもし」
「シュン、もう岡山に着いたの?」
「うん。今病院」
「そっか…あゆみちゃんにはもう話したの?」
「まだ…」
「シュン?大丈夫?」
「…いざあゆみちゃんを目の前にすると何て言っていいのかわからない…」
「そうだよね…」
「でも、ちゃんと話さないとな…」
「…うん」
スミとの電話を終え、シュンは病室に戻った。
「とこに行ってたの?お兄ちゃんまだかなぁ」
「…あゆみちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんは…お兄ちゃんは…」
「どうしたの?」
「もう来ないんだ」
「…え?どうしてっ⁈」
シュンはあゆみを抱きしめた。
「どうして来ないの⁈どうして⁈」
「お兄ちゃんはもう居ないんだ」
「え…」
「お兄ちゃんは…」
「何で居ないのよっ‼︎お兄ちゃんはどこ⁈」
「…亡くなったんだ」
「…え?亡くなった?」
「…そうだよ」
「嘘よ…そんなの嘘に決まってる」
「あゆみちゃん…」
「嫌っ‼︎お兄ちゃんに会いに行くっ‼︎」
シュンから離れようとするあゆみを強く抱きしめた。
「ごめん…あゆみちゃん…」
「お兄ちゃんがあゆみを置いて死んだりしないっ‼︎嘘よっ」
あゆみは泣き叫んだ。
シュンの言葉に聞く耳を持たずに散々泣き喚いた。
しばらくしてあゆみはようやく落ち着きを取り戻した。
「…お兄ちゃんのとこ行きたい…」
「うん…行こう…」
シュンは先生の許可をもらい、あゆみを連れて東京に戻った。
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