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94話 衝撃の死

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何で繋がらないんだ…


シュンはとりあえずスミを迎えに行き車に乗せた。


「夜ご飯はどうする?何か作ろうか」

「スミ…斉藤くんだけど、今日岡山の会社に行ってないみたいなんだ」

「え…そうなの?じゃあ、あゆみちゃんの病院にいるんじゃない?」

「それならいいんだけど連絡つかなくて」

「病院だから電源切ってるんでしょ。明日会社に行くはずよ。元々明日か明後日行くって言ってたし」

「そうだよね。久しぶりにあゆみちゃんと会って会社の事忘れてるんだな、きっと」

「そうだよ。また明日連絡したらいいよ」

「そうだね。じゃ買い物して帰ろう」

「うんっ」


2人は買い物をしてシュンの家に行った。


「私が準備するからシュンはシャワー浴びてきていいよっ」

「シャワーは後でいい。一緒に作ろう」

「本当に?じゃあ、野菜切ってくれる?」

「オッケー」

「一緒に料理するの初めてだねっ」

「そうだね」

「シュンみたいな彼氏がいて幸せっ」

「おー!嬉しいこと言ってくれるね。今夜はお風呂、一緒に入ろっか」

「一緒に入るの⁈」

「入った事ないし、一緒に入ろうよっ」

「えー」


2人が戯れあっているとシュンの携帯が鳴った。


「…本田弁護士だ。ちょっと出るね」

「うん」

「もしもし」

「もしもし、地曽田社長っ」

「どうしました?」

「それが…」

「何かあったんですか?」

「斉藤くんが…」

「斉藤くんがどうしたんですか?」


スミは料理をしながら耳を傾けた。


「死亡しました」

「……え」


シュンは耳を疑った。


「いっ…今…何て…?」

「今日、空港の近くの湖で…遺体で発見されました」

「…そんな」

「遺書も現場にあり、自殺のようです」

「そっ…そんなはず有り得ませんっ。本当に本人ですかっ?確かめたいので今どこですか⁈」

「◯◯警察署の霊安室に居ます」


シュンは車の鍵を手に取りジャケットを着た。


「スミ、行くぞ」

「えっ?どこに⁈」

「斉藤くんか確かめに行く。あいつが自殺なんかするはずないっ」

「自殺⁈えっ…どういう事⁈」

「今日、遺体で発見されたらしいんだ。遺書もあったって」

「そんなっ、斉藤くんが自殺だなんてっ」

「だから確かめに行くんだ」


2人は警察署に着くと警官に連れられ霊安室に入った。


シュンはゆっくりと遺体にかけてある布をめくった。


「えっ」

「さっ…斉藤くんっ⁈」


2人は目を疑った。
遺体は斉藤だったのだ。
スミはショックでその場に座り込んだ。


「どっ…どうしてっ‼︎」

「こちらが遺書です」


警官は遺書をシュンに渡した。


「それと…これも本人の物と思われます」  


ピンク色の箱も一緒に渡した。


「他に…持ち物は?」

「財布だけです。現金はなく免許証だけでした」

「そんな…」


シュンは遺書を開いて見てみた。
そこには短い文章が書いてあった。


“生きるのが辛くなりました。自ら命を断つ僕を許して下さい”


そしてピンク色の箱の中身を見ると、女の子用の靴と髪留めが入っていた。


「これって…」

「あゆみちゃんへのプレゼントだ…」

「シュンが渡したお金は?どうしてないの?」

「…自殺と断定するんですか?」

「遺書もありますし目立った外傷もないので」

「司法解剖しないんですか?」

「それはご家族の許可がないと…ご両親もいないようなので…」

「そんなっ…自殺するはずないですっ。きっと誰かに…」

「ですが…」

「家族の許可があればいいんですね⁈」 

「えっ…はい」

「1日待って下さい。明日中にもう1度ここに来ます」


2人は一旦、警察署を出た。


「スミ…俺明日、あゆみちゃんの病院に行って来るよ」

「え…」

「あゆみちゃんに許可もらって来る」

「でも、それって…」

「斉藤くんのこと知ったらショック受けるだろうけど現実を受け止めないと。これからあゆみちゃんの側にずっと居られるから楽しみにしてたはずなのに…自殺なんかする訳ない」

「うん。絶対にそれはないと思う」

「金も無くなってたから他殺だよ。その為には司法解剖してもらわないと」


翌朝、シュンは斉藤が買ったであろう靴と髪留めを持って岡山へと向かった。


兄の死を妹に伝えなければいけない、相当の覚悟を持って行った。








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