92 / 110
92話 あゆみの為
しおりを挟む「何でも好きなの頼んで」
「、、、、」
「俺はステーキランチ。スミは?」
「私はハンバーグ」
「僕はいいです」
「何で?」
「何か…申し訳なくて」
「そう思うなら頼んで」
「でも…」
「じゃあ俺と同じステーキにするよ?」
「うん、お肉がいいと思う。ライスは大盛りがいいんじゃない?」
「それでいい?」
「…はい。すみません」
料理がテーブルに運ばれてきた。
「いただきまーす」
「スミ、一口欲しい?」
「食べたいっ」
「はいっ」
「ありがとう」
「美味っ」
「本当、美味しい」
「斉藤くんも食べろよ」
「はい…」
斉藤は一口食べると涙を流した。
「、、、、」
「…どうしたの?」
「どうしてここまで良くしてくれるんですか?保釈金まで払ってくれて…僕なんかの為に…」
「何言ってるのよ。あゆみちゃんの為よ」
「…え」
「そうだよ。妹さんには君しかいないんだから。しっかりして妹さんを守ってあげないと」
「、、、、」
「いくらお金が必要でも汚い金で妹さん喜ぶと思う?ちゃんと真面目に一生懸命働いてお金稼がないと」
「そうしたかったんですが…どこも雇ってくれなくて…」
「仕事なら用意してあるから」
「え…」
「工場だけど給料はいいと思う。寮付きだし、話は通してあるから安心して」
「ほっ…本当ですかっ…」
「明日か明後日、ここに書いてある住所を訪ねて」
シュンは会社の住所を控えたメモを渡した。
「…え?岡山…ですか?」
「うん。妹さんの病院の近くがいいでしょ?」
「えっ…あゆみは岡山の病院にいるんですか⁈」
「そうだよ。安心できる所だから」
「よかったね、斉藤くん」
「はいっ。本当にありがとうございますっ」
「今日、泊まるとこあるの?」
「…それは…」
「俺のホテルに泊まるといいよ」
「えっ…でも…お金が…」
「話しておくからお金は払わなくていいよ」
「え…」
「岡山には明日行く?」
「…はい」
「じゃ渡しとく」
「え…これは?」
「お金、必要でしょ」
「こっ…こんなに…」
「少し多めに入れといたから」
「何から何まで…ありがとうございます。必ずお返ししますっ」
「妹さんの為にも頑張れよ」
「はいっ。あっ…あの…あゆみにプレゼントしたいので、このお金から使っていいですか?」
「使うのは自由だよ。プレゼントか…喜ぶだろうね」
「今まであゆみにプレゼントした事がなかったので…ありがとうございます」
「明日、岡山に着いたら真っ先に病院に行くの?」
「はい。あゆみに会うのが楽しみです」
「あゆみちゃんも楽しみに待ってるよ」
食事を終えシュンはスミを会社に送った後、斉藤をホテルまで送った。
「ここだよ。フロントに俺の名前言ったら鍵くれるから」
「わかりました。あのっ、この近くにデパートありますか?」
「そこを真っ直ぐ行ったらあるよ。あゆみちゃんのプレゼント?」
「はいっ。じゃ後で行ってみます」
「うん。じゃ明日は気をつけて」
「はい。本当にありがとうございました。このご恩は忘れません。あゆみと地曽田さんたちの為にも精一杯頑張って働きます」
「わかった。頑張れよ」
車から降りた斉藤はシュンの車が見えなくなるまで頭を下げていた。
7
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
恋愛
第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる